「大企業減税庶民10兆円増税阻止が参院選争点」
「植草一秀の『知られざる真実』」から貼り付けます。
(転載貼り付け開始)
2010年6月24日 (木)
「大企業減税庶民10兆円増税阻止が参院選争点」
参議院選挙が公示された。
7月11日投票に向けて17日間の選挙戦が展開される。
政権交代実現後、初めての国政選挙になるが、直前に鳩山政権から菅政権への交代があり、菅首相が消費税増税方針を示したため、参院選最大の争点として消費税問題が浮上することになった。
1996年10月20日の総選挙では、橋本政権が消費税率の2%引き上げ方針を掲げ、この問題が大きな争点になった。
比例区での得票率では自民党が32%、新進党が28%を獲得した。この年に創設された民主党は14%を獲得し、新進・民主両党の合計得票率は42%と自民党を大幅に上回った。
しかし、小選挙区制を軸とする選挙では、得票率1位の政党が圧倒的多数の議席を獲得する。自民党獲得議席は239、新進党は156、民主党は56となり、橋本政権は政権を維持して消費税増税に踏み切った。
日経平均株価は1996年6月に22,666円にまで上昇し、日本経済は順調に回復軌道に乗っていたが、消費税増税方針が閣議決定された翌日から株価は下落トレンドに転換。98年10月の12,879円に向けて大暴落した。
日本経済は深刻な不況に突入、大証券、大銀行が相次いで破たんし、日本経済は金融恐慌の淵にまで追い込まれた。
1996年10月の総選挙で、非自民勢力が結集したならば、日本の運命は異なるものになったと考えられる。政権は交代し、消費税増税は回避されていた。日本経済の回復は維持され、税収が増加して財政赤字の減少も進展したはずである。
橋本政権は消費税増税を強行実施したが、財政赤字は96年度の21兆円から99年度の37兆円へと激増してしまった。
菅首相は消費税率の10%への引き上げを示唆した。菅内閣の閣僚で政策調査会長を兼ねる政策決定責任者である玄葉光一郎氏は、
「マニフェスト発表の場で自身の言葉で言ったのだから、当然、公約になる」
と明言した。
民主党内で民主的に論議した形跡はまったくないが、消費税大増税10兆円庶民大増税が民主党の選挙公約になった。
他方、自民党、立ちあがれ日本、が消費税増税方針を明確に掲げている。
これらの勢力が衆参両院で過半数の議席を確保すれば、消費税大増税=庶民直撃10兆円大増税が実行に移される可能性が一気に高まる。
選挙前に消費税増税を掲げた勢力に議会過半数の議席を主権者国民が付与すれば、財政当局は主権者国民の「お墨付き」をいただいたと説明することになる。
世界経済は2011年に向けて、極めて大きなリスクを抱えている。
2008年から2009年にかけて、世界経済は100年に1度の「金融津波」に見舞われた。震源地の米国で財政、金融、資本増強の三位一体の政策対応がフルに動員されたため、2009年から2010年にかけて小幅改善が示されたが、問題が解消したわけではない。
詳しくは『金利・為替・株価特報』2010年6月25日号に記述するが、日本経済もなんとか戦後最悪の状況から一歩抜け出ただけの状況だ。
1996年の橋本政権、2000年~2001年の森・小泉政権は、回復初期の日本経済に超緊縮財政を実行して、日本経済を破壊した。
まったく同じ過ちに菅政権が着手し始めたのである。
『賢者は歴史に学び、愚者は歴史を繰り返す」
の言葉をかみしめる必要がある。
主権者国民が主要税目の税収推移をよく知らないと思われるので、あらためて税収推移グラフを掲載する。
国税収入は1990年度の60.1兆円から2009年度の36.9兆円に減少した。このなかで、消費税は1990年度の4.6兆円が2009年度には9.4兆円に倍増。他方、法人税は1990年度の18.4兆円から2009年度の5.2兆円に激減した。4分の1に激減した。
菅政権はこの期間に倍増した消費税収入をさらに倍増させる、9~10兆円庶民大増税を公約に掲げたのだ。他方、4分の1に激減した法人税を減税すると公約しているのだ。
大企業優遇=庶民いじめの税制改悪が公約に掲げられている。
民主党は政府支出の無駄排除をやり抜くまでは増税に移行しないと約束してきたが、この約束を破棄して、政府支出の無駄を温存したままで庶民大増税に踏み切ることを公約に掲げたのである。
この悪政を容認することはできない。
参院選では、民主党の小沢一郎氏グループの候補者を個別に支援する以外は、比例区では国民新党、社民党を中心に消費税大増税反対を明示する政党に投票するしか選択肢はない。
菅政権を選挙管理内閣に限定し、9月民主党代表選で主権者国民の意思を尊重する新しいリーダーを生み出さなければならない。
(転載貼り付け終了)