「世論調査政治になっていないか」

直木 明 投稿日:2010/06/03 09:12

「エレクトリック ジャーナル」から貼り付けます。

(転載貼り付け開始)

2010年06月03日
●「世論調査政治になっていないか」(EJ第2826号)
 2005年の郵政民営化をめぐる、いわゆる「小泉劇場」のさ
い、メディアはどう対応したでしょうか。「民営化こそが改革の
本丸」として、徹底的に民意を煽り、支持率が下降ぎみであった
小泉政権を圧勝させています。
 しかし、2009年11月に朝日新聞が行った世論調査では、
「郵政民営化の見直し」に対して「賛成」は49%、「反対」は
33%なのです。これによって、あの郵政改革ブームは世論誘導
ジャーナリズムの作り出したものであることがわかります。
 前回述べたように、日本では3日に1回の割合で内閣支持率に
ついて世論調査が行われている計算になるのです。テレビ番組の
視聴率調査やタレントの人気度調査ではあるまいし、内閣の仕事
は最低でも一年程度の期間でとらえないと、成果など問えるもの
ではないのです。そして、結局のところそれが選挙の結果に反映
する──これでは世論調査政治になってしまいます。
 埼玉大学社会調査研究センター長である松本正生教授が次のよ
うに警鐘を鳴らしています。
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 忘れてはならないことは、民意の動向を探る世論調査は国民投
 票のシミュレーションにすぎないということ、世論調査の結果
 が政治の行方や選挙の意義が危うくなってしまう。
              ──『週刊ポスト』6/4号より
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 世論調査が悪用されると、それは恐ろしい結果を招くのです。
EJでは、公開されている情報を分析して70回以上にわたって
小沢氏の犯罪(?)を調べましたが、どこにも彼の犯罪を実証す
るものはないのです。しかし、それにもかかわらず、今や小沢氏
はまるで犯罪人扱いです。それはメディアの執拗な小沢批判の結
果であると思います。
 桂敬一立正大学元教授──日本新聞協会研究所所長を歴任し、
ジャーナリズム研究の第一人者は、普天間問題について次のよう
に述べています。
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 本来、世論調査は、日米安保はどうあるべきか、普天間基地を
 どこに移設し、沖縄県民の負担を国民がどのように分担するべ
 きと考えているかと聞くべきでしょう。そういった質問はなく
 各紙横並びで鳩山退陣を煽り、国民総ヒステリーの状態に追い
 込んでいる。これではジャーナリズムとは言い難い。
              ──『週刊ポスト』6/4号より
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 普天間問題を振り返ってみると、最初に岡田外相と北沢防衛相
がその移転先についていろいろなことを言い出したことを覚えて
おられると思います。このバックには明らかに官僚の存在があり
ます。官僚の方から意見具申に行ったでしょうし、外相や防衛相
が、それまで普天間問題を担当してきた官僚の意見を聴取したこ
とも考えられます。
 これは担当閣僚として当然ことです。しかし、問題なのはそれ
がリサーチの段階であるにもかかわらず、責任ある地位にいる閣
僚が安易に口にしてしまったことです。これによって、民主党は
閣僚によっていうことが違う内閣不一致批判を生んだのです。
 それに加えて、今回の普天間問題を一番迷走させた張本人が登
場し、問題を一層混乱させたのです。その人は、沖縄基地問題検
討委員会委員長である平野博文官房長官です。
 既出のフリージャーナリストの上杉隆氏は、平野官房長官につ
いて次のように厳しい意見を述べています。
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 普天間問題に限定すれば、私はある人物が官邸に存在する以上
 必ずこうなると一貫して指摘してきました。その元凶は言うま
 でもなく平野官房長官です。その平野氏を政権の要である内閣
 官房長官に据えた昨年9月、さらにはその無能な人物を沖縄基
 地問題検討委員会の委員長に定めた昨年12月、この2つの人
 事が鳩山政権のすべての失敗と迷走の始まりだったのです。
              ──『週刊朝日』5/21号より
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 上杉氏は、徳之島案がここまでこじれたのは、平野官房長官の
ついたウソが原因であるといっています。上杉氏は取材を通して
当初徳之島の3町長は「政府が誠意を持って話し合うつもりなら
話し合いに応じないことはない」といっていたのを確認している
のです。
 ところが、平野長官がおそらく記者懇でリークしたとみられる
「徳之島案」が報道されると、徳之島の3町長が官邸を訪ねてそ
の真意を確かめたのです。そのとき平野長官は「政府内では徳之
島の『と』の字も出ていない」と答えているのです。長官として
はその時点ではいえないという判断なのでしょうが、もともと情
報を漏らしたのは平野長官自身なのです。
 この平野長官のウソによって、3町長は島に帰って、住民や議
会や有力者に「徳之島案はない」と説明してしまったのです。ま
た、平野長官は、昨年12月には次のようなことをいって、顰蹙
を買っているのです。
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 極論ではありますが、危険除去のために普天間基地から地域住
 民に動いて、移ってもらうことなど、いろいろな方法がある。
              ──『週刊朝日』5/21号より
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 また、ルース米大使が折り入って相談したいと申し入れてきた
とき、大使側がマスコミに漏れないよう大使館や長官公邸を希望
していたのに、わざわざマスコミに伝わるようホテルオークラを
セットし、米側の不信を買うなど、やることなすことすべてに問
題のある人物なのです。しかし、何よりも責任があるのは、そう
いう人物を官房長官という重要ポストに据える鳩山首相であると
いえます。        ―──[ジャーナリズム論/30]

≪画像および関連情報≫
 ●自民党政治の残滓としての平野官房長官
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  平野博文官房長官。報道でも皆さんご承知のとおり、普天間
  基地移転問題に関し、名護市長選挙の結果を受けて「民意を
  斟酌する必要はない」と発言されました。この発言が波紋ど
  ころか、「波浪警報」を呼んでいる状態です。わたしもちょ
  っと表現する適切な言葉が思いつきません。もちろん、市長
  選挙が「基地問題だけ」が争点ではなかったのは確かでしょ
  う。しかし「斟酌する必要はない」というご発言には度肝を
  抜かれました。この人はそもそも、民主党推薦の稲嶺名護市
  新市長の当選を願っていたかどうかさえ疑わしい。自公推薦
  の島袋候補が当選し、「名護市は基地を受け入れました。」
  ということにしたかったのではないか、という疑いさえ抱か
  せます。
      http://www.janjannews.jp/archives/2452892.html
(転載貼り付け終了)