「極私的新聞解説+佐藤優氏の分析」

投稿日:2010/06/19 07:15

「渡瀬夏彦の「沖縄 チムワサワサ 日記」」から貼り付けます。

(転載貼り付け開始)

2010年06月17日
「極私的新聞解説+佐藤優氏の分析」

仲井真知事が菅首相と官邸で会談し、国会での代表質問が一通り終わったのが、6月15日。

翌16日には、いつも読んでいる東京新聞と朝日新聞のほかに、ご近所の図書館で毎日、読売、日経、産経の全国紙を手にした。この日は、重要な日であるからして、WEBで読めない記事までチェックしたかったのだ。

注目すべきは、東京や朝日だけでなく、毎日新聞が「普天間問題」に関連して真っ当な署名記事を載せていたことだ

ちなみに読売、産経は、国会での質疑を載せたのみで、「普天間問題は終了!!」と言わんばかりに、「沖縄の民意」や沖縄の現実を意図的に無視している。相変わらずの「対米追従・沖縄切り捨て」の徹底ぶり。わたしはこの2紙を図書館とWEBでチェックはするが、個人的不買運動続行中である。

日経は、普天間については当たり障りのない小さな囲み記事でお茶を濁しており、特筆すべき点なし。

さて、毎日新聞である。
オピニオン面(10面)の「記者の目」欄。政治部の上野央絵(うえの・なかえ)記者による次の記事を読んで頼もしく感じたのは、わたしだけだろうか。部屋に帰って毎日jpをチェックしたら、幸いWEBでも読めるようになっていたので、全文を引用紹介したい。

毎日新聞・2010年6月16日・[記者の目]欄
菅新政権の「普天間」政策 「県外・国外」の原点に立ち返れ
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100616k0000m070123000c.html

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記者の目:菅新政権の「普天間」政策=上野央絵(政治部)
 「沖縄に迷惑をかけ、社民党を政権離脱に追い込んだ責任を取る」。鳩山由紀夫前首相は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をこう総括して辞任した。後を引き継いだ菅直人首相は11日の所信表明演説で「私の最大の責務は歴史的な政権交代の原点に立ち返って、国民の信頼を回復することだ」と語った。そこで菅首相にお願いしたい。普天間問題においても「県外、国外」の原点に立ち返って、沖縄県民の信頼を回復してほしい。さもなければ自ら「外交の基軸」とうたった日米同盟を結果的に危うくすることになる。
 ◇辺野古84%反対 知事容認は困難
 鳩山氏が党代表として昨年の衆院選で訴えた「最低でも県外」が守れず、自民党政権下で日米が合意した「沖縄県名護市辺野古移設」をほぼ追認したことは、民主党政権に対する沖縄の不信感を決定的にした。毎日新聞と琉球新報が5月末、沖縄県民を対象に実施した合同世論調査では、辺野古移設に「反対」との回答が84%で、反対のうち、▽無条件撤去38%▽国外36%▽県外16%だった。
 民主党内でも「国外」がくすぶり続けている。
 「君、サイパンに行ったんだよなあ。今度ゆっくり話を聞かせてくれよ」。4日午後、衆院本会議場での首相指名選挙の最中。民主党の小沢一郎前幹事長が川内博史衆院議員の肩をたたき、ささやいた。川内氏は5月上旬に米自治領北マリアナ連邦のサイパン、テニアン両島を視察。地元首長から「米海兵隊の駐留を受け入れる余地がある」との言質を引き出していた。
 さらに川内氏が自分の席に戻りがてら、鳩山氏に「お疲れさまでした」と声をかけると、返ってきた言葉は「やっぱり、テニアンだよね」だった。「自らの思いを実現できなかった無念さ」を感じ取った川内氏は、新たな日米合意に盛り込まれた「グアムなど日本国外への訓練移転」を足掛かりに「訓練だけでなく代替施設も国外に移す働き掛けを今後も続ける」と話す。
 鳩山氏の「思い」とは、2日の辞任表明で訴えた「対米依存の安全保障からの脱却」だ。であれば最初からそう内閣の方針を決め、関係閣僚に号令をかければよかったと思うが、鳩山氏はそうしなかった。大きな要因は、社民党との連立だろう。「沖縄の米軍基地縮小と自衛力増強はセット」が鳩山氏の考え。安保観の異なる社民党と、いずれ衝突は避けられなかった。
 菅首相は党代表選に出馬表明した3日の記者会見で、普天間問題について「鳩山首相自ら辞めることで重荷を取り除いていただいた」と語った。菅政権発足を受けた毎日新聞の世論調査では「辺野古移設賛成」が過半数を占め、5月の調査と賛否の傾向が逆転した。しかし、社民党の連立離脱で「重荷が取り除かれた」とみるのは早計だ。むしろ、本土と沖縄の民意のギャップが広がった深刻な状況と受け止めた方がいい。
 仲井真弘多知事は15日、菅首相と初めて会談し、「県外、国外への県民の強い要求」を改めて指摘、「日米共同声明でまた辺野古という方向が出て、県民の期待は失望に変わった。声明の実現は難しい」と明言した。知事が4月25日の県民大会で語った「沖縄の過剰な基地負担は差別だ」との言葉は重い。
 普天間移設を巡る日米合意には代替施設の具体的な位置、配置、工法の検討を8月末までに完了するという期限が設けられた。政府は「環境配慮型埋め立て」工法を念頭に置いており、公有水面埋め立て許可権限を持つ知事の了解が必要だが、11月の知事選で再選を目指すとみられる仲井真知事が県民世論の大勢に反する「辺野古移設」を容認できる状況にはない。
 ◇安保のあり方 党内論争決着を
 菅首相が「日米合意を踏襲する」とする中で知事が了解できる状況を作り出すには、日米合意に盛り込まれた「米軍の訓練の県外・国外への移転」の具体化が最低条件。さらに、鳩山氏が言うように、自主防衛力を高めて沖縄の米軍基地縮小を目指すなら憲法や日米安保条約の問題に踏み込むべきだし、それに触れないのであれば国内で基地負担の平等化を目指すべきだ。
 菅首相は就任後、最初の街頭演説(12日、東京・新宿駅前)で「外交とは内政だ。国民が多少の代償を払っても、この国を守ろうとしているのか。それが外交の最も基本的な力だ」と訴えた。鳩山氏が身をていして問題提起した「日本の安全保障はいかにあるべきか」の論争に、民主党政権として決着をつけなければ、沖縄県民は納得しないと私は思う。「内政」なくして日米同盟の深化もあり得ない。

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記事中とくに注目していただきたいのは、川内博史衆議院議員が、今月4日の国会で、前幹事長の小沢一郎氏やそれから鳩山由紀夫氏からも、「ねぎらいの言葉」と受け取れる声をかけられているくだり。おいおい、あんたら「辺野古回帰」の日米合意をしておいて、どういうこっちや、ええ加減にせーよ!! とツッコミを入れたくもなるが、貴重な事実を知らせる記事であることに変わりはない。

川内氏は、当ブログで何度か紹介してきた人物だ(6月20日の名護市民会館でのシンポジウムにも登場予定)。彼が務める沖縄等米軍基地問題議員懇談会・会長のポジションは、民主党代表としての職務に専念しなければならぬ鳩山由紀夫氏から川内氏へ「あとはよろしく頼む」と託されたものであることは、あまり知られていない気がする。鳩山氏の「思い」だけは、やはりウソではなかったようなのである。

いずれにしても、「グアム・テニアン移転案」の意見が、あるいは「県外・国外移設」を目指す動きが、民主党内において、決して軽んじられていたわけではない、というその証明のような記事がここにあるわけである。

そうなると、また浮かび上がってくるのは、鳩山政権におけるこの流れを見事なまでに叩き潰した「A級戦犯」はいったい誰かという話。

面白いことにタイミングよく、昨日の紙面では、この「記者の目」と並ぶ位置に、佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)の文章も載っている。

「異論反論」というコーナーで、タイトルはこんな具合に問いと答えがセットになった形である。

《佐藤さん! 鳩山さん辞任の原因どう見る?
外務官僚の「クーデター」》

そこで佐藤氏は、外務官僚だった自身の意識を振り返りつつ、持論を述べている。

わたしの言葉で乱暴に翻訳すると、「首相には、国民の代表としての立場と、エリート意識に溢れた官僚たちのトップとしての立場の二つがあるが、このたびは、国民の代表としての立場の首相が、エリート意識の塊の官僚側の意思決定に負けてしまった」ということになるけれども、以下、佐藤氏の寄稿の後半部分を引用しておこう。

《米海兵隊普天間飛行場の移設先を自民党政権時代の辺野古(沖縄県名護市)に戻すことによって「国家の重要事項に関しては政権交代で生まれた首相であっても官僚の決定を覆すことはできない。日本国家を支配するのは官僚である」という現実を突きつけ、官僚の政治に対する優位を目に見える形で示そうとしたのである。普段は霞が関の嫌われ者である外務官僚が、今回は官僚階級総体の利益を代表した。

 鳩山政権崩壊後に生じた政官の力関係の現状を「ゲームのルール」として定着させることを霞が関の集合的無意識が望んでいる。このルールが定着すると政府の政策は、自民党政権時代よりも国民から遠ざかる。どのようにして、菅直人首相の中にある国民の代表としての立場を強化するかが焦眉の課題だ。》

さらに付け加えれば、同日の毎日新聞24面(文化面)では、我部政明・琉球大教授が、「安全保障 節目の年に」と題するシリーズ対談の最終回に登場し、相容れぬ主張の持ち主・松尾文夫氏(ジャーナリスト)を相手に、「日米合意は結局、履行できないでしょう」と明言している。同感である。興味のある方はぜひ図書館でご覧ください。

同日の朝日新聞と東京新聞の「普天間問題」関連記事については、改めて。

東京は梅雨の晴れ間の真夏日。ふーっ、暑い。

ところで、きょうは明るいニュースがあった。
友人の沖縄在住スポーツフォトグラファー・黒田史夫氏から、写真つき携帯メールが届いた。
待望の「第一子誕生」の知らせであった。

ほんっとに、おめでとう!!
幸せのおすそ分け、ありがとうねー。

本日は良き一日なり。

(転載貼り付け終了)