「小沢氏菅氏共同記者会見に示された三つの論点」
「植草一秀の『知られざる真実』」から貼り付けます。
(転載貼り付け開始)
2010年9月 1日 (水)
「小沢氏菅氏共同記者会見に示された三つの論点」
小沢一郎氏と菅直人氏による共同記者会見が行われた。
事前に示されていた主張と大きな違いはなく、目立ったサプライズはなかった。
共同記者会見でので特筆すべき点は以下の三点である。
第一は、参院選の責任について問われた菅直人氏が何も答えなかったことだ。小沢一郎氏は日本の民主主義制度において国政選挙は最重要であることを強調したが、正論そのものである。
マスゴミは「ミンイ」だの「セロン」だのを強調するが、国政選挙こそ、主権者国民が民意を表明できる唯一にして最大の重要行事である。
菅直人氏は総理に就任して3ヵ月足らずであることを強調し、これから本格的に活動を始めたいとの願望を主張するが、その前に、自分が参院選の前に主権者国民に何を言ったのかをよく考えてもらいたい。
菅直人氏は参院選に際して、「菅政権に対する信任投票」であると明言したのである。政権は民意を反映するものでなければならないというのが菅直人氏の持論なのだろう。だからこそ、参院選で主権者国民から信任を得ない限り、政権には正統性がないことを発言したのではないか。
その参院選で民主党は大敗北を喫した。主権者国民は菅政権に対して不信任を突き付けたのである。したがって、菅政権が存続する正統制は消滅した。菅直人氏が自らの言葉に責任を持つなら、総理を辞任する以外に道はない。
それでも、何らかの特別な理由があって、総理の座に居座りたいと言うなら、その事情を主権者国民が納得できるように説明する責任がある。今日の記者会見でこの点についての質問があったにもかかわらず、菅氏は何も答えなかった。
国民に総理大臣を選出することを依頼する前に、参院選で主権者国民が菅首相=NOとの意思表示を示したにもかかわらず、首相の座にとどまろうとすることについて主権者国民が納得できる説明を示すのが先である。小沢一郎氏に説明責任を求めるなら、まず自分自身が説明責任を果たすべきだ。
第二は、沖縄普天間問題についての基本姿勢に明確な相違が見られたことである。小沢一郎氏は地元住民と米国の両者の意向を尊重する必要性を訴えた。
これに対し、菅直人氏は沖縄の主権者国民の意向を完全に無視した、米国の意向だけを反映した日米合意をてこでも動かさないことを主張し続けている。菅直人氏が沖縄の主権者の意向を完全に無視する姿勢が改めて鮮明に示された。
菅直人氏は日米合意を決定した時点で小沢一郎氏が幹事長であったことを理由に、小沢氏にも決定に責任があるとの趣旨の主張をしたが、完全な誤りである。
鳩山政権の時代、小沢氏が政策について意見を述べることを強く批判したのが菅直人氏自身だった。政策決定は政府に一元化するとの方針で、党務を担当する幹事長には政策決定に関与させなかった。したがって、菅氏の主張は完全な誤りである。小沢氏が指摘したことが100%正しい。
第三は、菅直人氏が「雇用重視」と発言したことの根本矛盾である。
菅直人氏は「雇用、雇用、雇用」と発言したが、菅直人氏が推進している財政再建原理主義の経済政策が、現在の日本経済を悪化させている主因である。このために、株価が9000円を割り込んだ。
代表選との関連で言えば、小沢氏出馬辞退観測が強まると株価が下落し、小沢氏出馬観測が強まると株価が上昇するとの市場の反応が観測されている。
このまま菅政権が存続するなら、日本経済が「菅製不況」に突入することは間違いない。追加金融緩和政策は効果がない。「流動性のわな」に直面した状況では、財政政策しか景気を支持する方策はない。そのなかで、菅直人氏は緊縮財政を推進しているのである。この政策を進めるなかで「雇用、雇用、雇用」と主張するのは完全な自己矛盾である。
(転載貼り付け終了)