「亀井静香痛快譚」

投稿日:2010/07/19 07:07

「心に青雲」から貼り付けます。

(転載貼り付け開始)

2010年07月19日 | ひと 
「亀井静香痛快譚」

以下は国民新党・亀井静香氏のホームページである。
http://www.kamei-shizuka.net/home.html
 いきなり亀井さんの歌がはじまる。
 むちゃくちゃ下手だ。どういうセンスしているのかと疑う向きもあろうが…。
 でもなんとなく心にしみる。歌はへたでも、これでいいのだと思う。

「♪おなかこわすな 風邪ひくな
 雨のふる日は 傘となり
 雪のふる日は ぬくもりを あたえてくれた
 おかあさん」

 この ホームページにある「おかあさんの歌」は、高橋清隆氏の新著『亀井静香が吠える』(K&Kプレス 新書判 800円)で知った。
 
 同書は副題に「痛快言行録」とあって、亀井氏が1009年9月に発足した鳩山内閣で郵政改革・金融担当大臣を務め、2010年6月11日に民主党に裏切られて辞任するまでの約8か月の発言を中心に集めてある。 閣僚から去ったことは残念なことだった。
 
 鳩山内閣は、首相自身がお坊ちゃまで、ほかの民主党の大臣はみんな影が薄く、とりわけ千葉景子法相なんかいるのかいないのかわからないほどだったが、亀井氏だけは情熱的に仕事をこなし、強烈な個性を発揮していた。
 その愛すべきキャラクターを特長づける言行録を、高橋氏がジャーナリストの視線で見事に採取してみせてくれている。

 高橋清隆氏はこう語る。
 「確かに、顔立ちはお世辞にも端整とは言えず、体型もずんぐりして見える。しかし、亀井氏は現代の政治家の中で、最も国民のことを考えている一人であることは間違いない。」
 「実際の亀井氏は、気さくでユーモアにあふれている。質問に答える際は、事務的な見解を言いっ放しすることはない。相手の顔を見詰め、納得したか確かめる。記者に話しかけ、冗談を向けたり。「ソープランドつくるわけにはいかんだろう」「金髪大好き」など、現職の大臣の発言とは思えない話も飛び出す。テレビなら、毎回放送コードに引っかかるだろう。」

 こういうインタビューしていても「一緒に飲んでいるかのような気にさせてくれる」くだけた亀井氏の大臣時代の言行が紹介されているのだ。

 いくつものエピソードが紹介され、論じられているなか、私が最も印象に残ったのは、酒席での亀井氏を描写したくだりであった。

 亀井さんは在任中、よく時宜を捉えて酒席を設けたそうである。会場は金融庁の16階庁議室。職員だけでなく、クラブ記者やフリー記者も招いてくれる。情に厚く、とても寛大だそうだ。大塚副大臣や田村政務官も、金融庁長官も同席する。
 最初は職員に亀井大臣が15分ほど訓示をし、終わるとそのまま、亀井氏は勝手にマイクを持って歌を歌い始める。
 ホームページにある「おかあさんの歌」。「兄弟仁義」もおはこだそうで。

 職員から「よっ!」とかけ声がとびだす。全員が手拍子。おわって万来の拍手がおきると、ただちに「それじゃあもう一曲」と言って「兄弟仁義」を歌う。というより、がなる。
 歌いながら取り囲む職員に握手してまわり、懐から自作のCDを出して職員にプレゼントすると、職員は小躍りして喜ぶそうだ。忘年会では「一昨年、レコード大賞を取り損ねた」と冗談を言って、周囲の笑いをとる。

 自分が歌い終わると、金融庁長官、副大臣、政務官の順にマイクを持たせて歌わせる気遣いをする。最初に指名された金融庁長官は、大臣より数段うまい歌唱力で歌う。地味な役割の長官に、こういう席で光を当てて、花を添える粋なはからい。

 次は、大塚副大臣。大塚氏は『明日があるさ」を歌います、と替え歌を。
 「♪ 亀井静香が来ると聞き どうなることかと思ったら
  実は細かい 実は鋭い 大臣はすごい人
  すて~きな大臣  すて~きな大臣 金融庁はパタダイス」
 座はおおいに受ける。

 次の田村政務官は東大出の堅物、亀井氏がなんか歌えというと、「はあ、でも…」なんて言っている。大塚副大臣が「『もしもし亀よ』でもいいんだから」と言うと、
「じゃあ」と歌いだす。
「もしもし亀よ亀さんよ、世界のうちでお前ほど あゆみののろ…」で言葉が詰まった。大臣を前にこれ以上は歌えない。失礼になる。しかし田村氏は「♪ こんなにすごい人はない どうしてこんなにすごいのか」と即座に替え歌を歌った。

 霞ヶ関では、こんなふうに飲み会の場を省庁で催す大臣はいないそうである。
 しかし亀井さんのおかげで雰囲気はすごくいいと、職員たちは喜んでいる。
 酒席のみんなが笑顔でいるとのこと。個々の能力と性格を認めてくれるトップの下で、気持ちよく働けるのだろう。

 酒席がはじまって20分ほどすると、大塚副大臣が「宴たけんわでありますが、この辺で中締めしたい思います」といって、手拍子で締める。
 そこで別れの挨拶を亀井さんがする。

 「まだみなさんと飲みたいんですが、彼女がシャワー浴びて待っているので、湯冷めさせるといけないから、わたしはこのへんでおいとまします」
 実にすばらしい文句だ。側近に気を遣わせない配慮の言葉。それをユーモアたっぷりに、また酒席を盛り上げるちょっと艶のある冗談をひとつ言って立ち去る。
 ここまで気配りのできる人は少ないだろう。

 こういうエピソードが高橋清隆氏の『亀井静香が吠える』に満載されている。
 高橋氏が金融庁の女性に「庁内では大臣はどうみられているのですか? やっぱり亀井大臣に魅力を感じておられますか?」と尋ねると、
「当たりまえじゃないですか。それは愚問です。亀井さんは最高です。みんな大ファンです」と答えたそうだ。
 金融庁の女性たちはみんな亀井大臣を慕っている。

 それはそうだろう。官僚の実権を握るワル以外は、彼ら役人だってまじめな仕事をし、国民のために役立ちたい者が大半を占めるであろう。売国奴はキャリアばかりなのだ。

 というわけで、亀井氏のこの見事な気配り、私は圧倒される。
 座がほぐれないといけないから、まず自分が下手な歌をうたって、それも1曲ではまだみんなが遠慮するから、2曲歌う。マイクを独占すれば嫌われるが、適当なところでさっと切り上げ、部下を持ち上げる。
 歌いながら部下と握手して回るなんて、実にすごい。人心をあっという間に掌握するでだろう。その優しさというより人間味と配慮を女性職員は、するどく見抜く。
 
 『亀井静香が吠える』で高橋清隆氏は、亀井静香氏の人情味だけを取り上げているのではない。
 亀井氏は、売国奴政権である小泉・竹中が議会制民主主義を踏みにじって強行した郵政民営化法案、すなわち郵政米営化に強硬に反対して、綿貫民輔氏らと自民党を脱退して、国民新党をつくり、筋をとおした立派な政治家である。

 いっときは郵政民営化に反対しながらも、ビビって賛成に回ったのが麻生太郎や鴻池祥肇、中曽根弘文らであったし、選挙後、頭を垂れて自民党に復党させてもらったみっともない輩が大勢いた。
 郵政民営化とは、改めて説くまでもなく、郵貯と簡保あわせて350兆円を民営化することで、建前上は自由に外国国債でも買って運用することができる体制にするのであるが、実質はアメリカの(ユダヤ)金融会社に貢ぐのが目的である。
 いまだに日本のマスゴミは、この事実を国民に知らせない。なぜかならば、2005年の「郵政選挙」では、アメリカの保険業界が自民党を勝たせるべく、広告代理店・電通を通じて5000億円も投じて世論工作をしたからである。

 亀井氏は、2005年総選挙のときに、日本の資産をアメリカに奪い取られないようにするため、郵政民営化法案に反対票を投じ、信念を通したのだった。わずか4人で国民新党を立ち上げ、自ら新橋駅前でビラ配りまでしたそうだ。
 その亀井氏が、小泉・竹中・飯嶋らの売国奴集団と5年間闘って、ついに郵政民営化=米営化を叩き潰す寸前まできたのに、鳩山や菅に裏切られた。民主党はわざと参院選で敗北し、郵政改革法案が廃案になりそうな気配濃厚である。

 国士・亀井静香の心中、察するにあまりある。

 亀井氏は警察官の出身である。浅間山荘事件では陣頭指揮をとり、目の前で部下を殺されている。そのまま出世すれば警察庁長官も視野に入っただろうが、途中から政治家を目指した。
 警察は社会の出すゴミを掃除する役割だと亀井氏は言う。そして社会の出すゴミを掃除するより、ゴミをださないようするために政治家を志した、とのこと。この言葉が、『亀井静香が吠える』のなかで最も心に響いた言葉であった。

 亀井氏に期待し、また好きな方には、お奨めの書である。
 植草一秀氏もそのブログ「植草一秀の『知られざる真実』」(7月16日付け)
 http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-31a0.html
 で詳しく紹介している。

 だが、この本はアマゾンで1週間以上「一時的に在庫切れ」が続く異常な状態にあるそうだ。
 かつて関岡英之氏の『拒否できない日本』が郵政民営化決議まで「在庫なし」にされたのと同じ理由でないかと推察できようか。それだけ権力側が亀井氏を煙たがっている証左だろう。

(転載貼り付け終了)