「「菅首相の増税発言で揺れる民主党」(EJ第2848号)」

投稿日:2010/07/05 07:14

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(転載貼り付け開始)

2010年07月05日
「「菅首相の増税発言で揺れる民主党」(EJ第2848号)」

 菅政権になったとたんいわゆる記者クラブメディアと大手テレ
ビメディアは、今まで集中豪雨のようにやっていた民主党叩きを
なぜか中断させているようにみえます。
 菅政権が反小沢を鮮明にし、財務省を中心とする官僚組織の意
向に沿った路線になりつつあることを受けて、官僚サイドが「し
ばらく打ち方ヤメ!」を指示したものと思われます。民主党の支
持率が一挙に急回復したのも、記者クラブメディアのそういう報
道のサジ加減によるものと考えられます。
 菅首相が消費税増税路線を打ち出しても、メディアは基本的に
容認の論陣を張り、菅政権をサポートしています。しかし、時間
が経つにつれて、菅首相の経済や財政や税制についての知識の浅
さが露呈するに及んで、かなり雰囲気が変わりつつあります。
 そもそも菅首相がなぜ消費税増税を口にし、その税率まで踏み
込んで発言したかについて、政官財の事情通がそれぞれ意見を述
べ合う「日刊ゲンダイ」紙の「政官財ウオッチング」では、次の
ように解き明かしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 永:たしかに、消費税増税など持ち出さず、マニフェストに書
 いたように「税制改革の論議を野党に呼びかける」と言うだけ
 にとどめておけば単独過半数はそう難しくはなかっただろう。
 でも、菅氏の「勘」では、そこが違った。ここで小沢一郎前幹
 事長が封印してきた消費税引き上げを掲げて参院選に勝てば、
 小沢氏離れが完全に進む。そうひらめいて、周囲の制止も振り
 切った。 ──「日刊ゲンダイ」紙の「政官財ウオッチング」
―――――――――――――――――――――――――――――
 マニュフェストに「税制改革論議をする」ということを掲げる
ことは別に問題ではないし、国民も反対しないはずです。小沢前
幹事長も反対していないはずです。しかし、その論議をする前に
菅首相は、10%の税率まで踏み込んで発言したのです。
 消費税を上げるとなった場合は、その使い道を明確にする必要
があります。一体何を増税分で賄うのかについてきちんと説明が
必要です。それこそ族議員の根絶のために廃止した政調会を復活
させたのですから、そこで論議すべきです。何に使うかを決めて
はじめて必要な金額と税率が出てくるのです。しかし、何も議論
しないまま、いきなり菅首相によって、税率10%が打ち出され
たのです。党内の意見もバラバラで未調整です。
 ところが、消費税増税の評判が悪く、政権の支持率が下がり出
すと、菅首相は慌てて発言をトーンダウンさせて、複数税率の導
入や低所得者に対しては「かかる税金分は全額還付する」などと
いい出しています。
 しかし、低所得者の定義が揺れ動いているのです。400万円
以下といったかと思うと、300万円や200万円までも口にす
る始末──これでは、ドロナワそのものです。
 経済評論家の高橋乗宣氏は、菅首相がどれほど税制を理解して
発言しているのか疑問であるといっています。とくに低所得者ほ
ど負担感が増す逆進性の緩和の道筋や複数税率の導入については
基本的な知識が欠けているとして、複数税率の導入について次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 複数税率の導入も簡単ではない。日本の消費税は欧米の付加価
 値税と違って、消費税の支払いと受け取りを記録するインボイ
 ス方式を採用していない。事務処理の負担増を最小限にするよ
 うに自民党が企業に配慮したため、不完全な格好でスタートし
 たのだ。その欠陥を改めるのは当然としても、すでに20年以
 上も放置してきたツケは大きい。今さらの制度設計には相当な
 時間が掛かりそうである。         ──高橋乗宣氏
              「日刊ゲンダイ」7/2発行より
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、ここにきてそれまで静かにしていたはずの小沢前幹事
長が動き始めたのです。しかも、はっきりと「増税反対」を明言
して、幹事長時代に擁立した新人候補を中心に応援を開始してい
るのです。これは菅政権にとってはショックです。
 しかも、その小沢氏には強力な助っ人がついています。河村た
かし名古屋市長です。河村市長は菅首相の増税に反対し、「消費
税5%を4%に下げよ」と主張しています。菅民主党の「増税民
主党」に対して、「減税民主党」を主導しようとしています。河
村市長は、北海道を皮切りに、宮城、千葉、京都、大阪、兵庫な
どの10選挙区を回っています。これは完全な分裂選挙です。
 小沢氏は少なくとも現在は動けない状況にあります。選挙の結
果を見て動くといわれていますが、そうではないと思います。ど
うせ選挙は民主党が過半数を確保すれば、メディアは枝野執行部
の手柄を称えるでしょうし、過半数が取れなければ小沢の選挙対
策の失敗と書くに決まっています。
 そうではなく、小沢氏は現在、検察審査会の議決を待っている
はずです。その検察審査会の議決は7月末にも出ると予想されて
います。その結果によって行動が大きく変わってくるからです。
 もし、「起訴相当」が出ると、菅政権は小沢氏に議員辞職か離
党を迫ることは確実ですし、小沢氏も離党するはずです。選挙結
果によりますが、問題は何人を引き連れて離党するかです。それ
によっては、小沢氏は政界再編を仕掛ける可能性があります。
 そのためにこそ小沢氏がいわゆる小沢候補者を応援する理由が
あるのです。一人でも小沢グループを増やしておく必要があるか
らです。民主党は衆議院の方は人数に余裕がありますが、参議院
の議員はぎりぎりなので、小沢氏と一緒に参議院議員が党を離れ
ると、菅政権は崩壊しかねないのです。
 しかし、小沢氏は、はっきりと消費税増税に反対を明言して活
動を開始したのです。これは党からみると反党行為になります。
これには、ある状況変化があるのです。小沢グループはそれを読
み取って行動を起こしたと考えられます。
              ──[ジャーナリズム論/52]

≪画像および関連情報≫
 ●選挙の票読みの達人・小林吉弥氏の民主党分析
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  選挙資金を平等に分配するのではなく、負けそうな重点地区
  に集中して投入する"選択と集中″は、選挙の基本です。複
  数区に2人の候補を立て、お互いに切磋琢磨して票の底上げ
  を図るのは、かつて自民党もやっていたこと。小沢氏が幹事
  長を辞任して単独過半数を取れる体制を整えたのに、首相の
  増税発言や稚拙な選挙対策で台無しにしてしまった。挙げ句
  に、仲間が選挙を戦っているさなかに、枝野幹事長がみんな
  の党との連携に言及したりする。これでは士気が下がる一方
  ですよ。オウンゴールで議席を減らしているのです。
       ──小林吉弥氏/「日刊ゲンダイ」7月1日発行
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(転載貼り付け終了)