硬貨論

菊地研一郎(会員番号2555) 投稿日:2010/12/04 03:45

菊地研一郎(会員番号2555)です。

金(地金)を買え、と数年前から道場で叫ばれている。
貧乏な筆者は「GINZA TANAKA」で1/10オンス金貨1枚を購入した。
人生で最も虚しかった経験のひとつに数えられる。

与太話はさておき、愛読しているブログ〈戦闘教師「ケン」 激闘永田町編〉で
大変興味深い記事が目に入った。
現代ロシアにおける硬貨の改鋳の話題である。
なんでも、2009年に出た新10ルーブル硬貨は
鋼鉄の真鍮メッキらしい。

(引用開始)

ブログ:戦闘教師「ケン」 激闘永田町編

2010年12月02日
ロシアは財政難で悪鋳?

安木新一郎氏の論文「2009年ロシアにおける鉄貨の発行をめぐって」を興味深く読む(ロシア・ユーラシア経済 2010/6)。
……
ロシア銀行は2009年5月に、同国の硬貨を銅貨から鉄貨に切り替えると発表。
1、2、5ルーブル額面のものが対象で、同年後半から流通している。
09年10月からは、10ルーブル札廃止に伴って、記念硬貨ではない正規の10ルーブル硬貨が流通するようになり、…
1と5カペイカ貨幣は、数年前から廃止が取りざたされていたが、正式に廃止されてこそいないものの、実際の流通は減少の一途を辿っているようだ。
……
銅貨から鉄貨への移行は、メキシコで先行されており、そこではやはりコストを理由に挙げている。
資源価格の上昇に伴い、銅の原価もまた高騰し、1トンあたり約5千ドルになっているが、それに対して鋼鉄は400ドルだという。
ロシア・ルーブルの場合、……1ルーブル硬貨を1枚つくるのに、原材料だけで約4ルーブルもかかっていることになる。
ちなみに、2010年11月現在で1ルーブルは2.6~2.8円、100円玉の原材料費は約15円である。

硬貨の原材料費が額面よりも著しく高い場合、その硬貨を鋳つぶして地金に戻す人が出てくる。
……
また逆に原材料費が額面よりも著しく安い場合は、偽造硬貨が出回ることになる。
……
話を戻すと、鉄貨の場合、軟らかい銅貨と違って成型や極印のコストが高くなるのと、腐食や摩耗を防ぐためのコーティングにも新たな技術が必要となるため、製造コスト削減に直結するとは言い難いと著者は言う。
やはりロシア人だから、私銷(私的な熔解、鋳つぶし)対策なのであろうか。

なお、昨年出た新しい10ルーブル硬貨は、何と真鍮メッキの鋼鉄だという。
……
いくらなんでもロシア人、ケチ過ぎだろう。
真鍮は「黄銅」とも言われ、日本では5円玉に使われている。
……
銅合金よりも摩耗しやすい上に、錆びやすく、その上重たい鉄貨に対するロシア国民の信頼がどうなるか、非常に興味深いところである。
それにしても、21世紀の今日に、いくら資源相場が低迷しているとはいえ、国家財政が危機に瀕しているわけでもないロシアにおいて、貨幣の悪鋳がなされるのはナゾとしか言いようがない。

私がシベリアで教鞭をとっていた頃でも、すでにコペイカに対する信用は失われており、……
1コペイカや5コペイカに限らず、お釣りの50コペイカですら、客の方から「いらないから」と言うのは日常茶飯事であり、子どもですら道ばたに投げ捨てたりするほどである。
コンビニでお釣りをもらって、寄付箱に入れることはあっても、「いらない」とか捨てるなどということは、日本人的には理解しがたいのではないか。
これもまた、貨幣に対する国民の信頼度の表れなのだ。

幕末に貨幣の悪鋳を繰り返した結果、幕府への信頼が失われていったことは、以前述べた。プーチン氏が、「ルーブルを国際通貨に」と演説したのは、確か2008年始めだったが、わずか2年で硬貨の改悪をなすことになろうとは、ロシア人でも(分かる人は)ちょっと驚くだろう。
やはり、資源への依存性が高い経済では、通貨価値も資源相場に左右されてしまい、安定感に欠くということであろう。

(引用終了)

菊地です。

聞くところによると、中国の紙幣・貨幣事情も
かなりヤヤコシイらしいそうである。