Re:[98]硬貨論

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2010/12/16 19:01

 菊地研一郎さんへ

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 投稿[98]「硬貨論」ですが金貨1枚を購入されたそうで、「人生で最も虚しかった経験」とのことですが、いいではないですか。「虚しい」どころか「実のある」行為ですよ。「紙ペラ」を「実物」にかえたのですから。近い将来に訪れる経済体制の大変動と新体制移行に備えての資産防衛は各人当然の行動であり、私はむしろ積極的に肯定致します。

 件名の「硬貨論」も素晴らしい着眼ですね。インターネットのキーワード検索ではまとまった単語として全然ヒットしませんでしたので、おそらく日本語としては菊地さんが元祖「硬貨論」の造語でしょう。

「貨幣論」は沢山ありますが、「貨幣」はかなり語義が広いので「紙幣」の対義語としては「硬貨」が区別として分かり易いかと存じます。いちいち広義の・狭義のと断りを付けなくて済みますからね。

 ウィキペディアの項目「硬貨」には経済学用語として、

 

(引用始め)

硬貨(こうか)は金属で作られた貨幣である。コイン (coin) ともいわれる。ただし、経済学では硬貨とはハードカレンシー(国際決済通貨)や本位貨幣を指すことばである(逆に「軟貨」ソフトカレンシーとは国際決済に用いられない・用いることが出来ない通貨)。一般には硬貨はコインのことを表すので、この項目ではコインについて述べる。ハードカレンシーや本位貨幣については各々の項目を参照されたい。

(引用終わり)

硬貨 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/硬貨

 

 とありますが、「軟貨」っていう言葉があるとは初めて知りました。

 正直、この辺では英語の多義語ハード(hard)・ソフト(soft)の語義変遷に付き合わなくてもいいかなぁ。単に物質として硬い・軟らかいということと、通貨の国際決済能力の有る・無しは、関係が薄いのではないでしょうか。実際、硬いコイン(coin)よりも軟らかいペーパーマネー(paper money)の方が軽いし運び易くて便利なので、国際的にも流通しているのですから。

 ということで「硬貨」はコイン(coin)として従来通りの使い方に限るとすると、ハードカレンシー(hard currency)が「国際決済通貨」で、キーカレンシー(key currency)が「基軸通貨」なら、ソフトカレンシー(soft currency)は……「国際通用能力無し通貨」とか「国際決済不能通貨」とか「国際的信用力無し通貨」かな。

 ストロングカレンシー(strong currency)とウィークカレンシー(weak currency)の方が語意が明瞭でよほど実態を表しています。やはり強い・弱いをハード・ソフトの語義に含めることが混乱の元なのだと感じます。強いということと硬いということは違うし、弱いということと柔らかいということも違う。アメリカ人はこの区別が出来ているのでしょうか、多少不安になります。

 ところで引用文中の「コペイカ」は何だか懐かしいと思ったら、ドストエフスキーの『罪と罰』に頻繁に出てくるお金の単位でしたね。ロシア文学だから当然ですが。確かあっちは「カペイカ」表記だったかと記憶しています。

 グレシャムの法則で「悪貨は良貨を駆逐する」というのがありますが、これは額面が同じ貨幣での質の良し悪し(金の含有量の違い等)が流通に影響するということですけれども、現代の補助貨幣の場合は使い勝手が悪いのが悪貨ですね。あんまり悪貨過ぎるとかえって誰も市場で使いたがらないので「悪貨は自然淘汰される」でしょうか。誰も資産保全策で退蔵しているわけでもない2000円札みたいなものですね。とっておくでもなし、放っておくみたいな。まぁあれは記念紙幣みたいなもんですが。

 ついでに「悪銭身につかず」という諺もありますが、こちらは元来の「良銭」「悪銭」という質を表す言葉に倫理を持ち込んでしまって、思考を混濁させている典型ですね。気に食わない。実際の世の中は「悪銭身につく」。「悪銭」が倫理的語意を前提とするならば。

 さて菊地さんの金貨は日本国法定通貨としての流通貨幣ではありませんでしょうから、コレクターが収集している記念硬貨なんかより価値がありますね。もっとも先生が仰せのように、金貨や銀貨は作るのに技術や手間がかかっているということでの値段の分も含まれていて、ほかの金地金とは違って半分趣味の要素もありますから、買うとしたら最初からそのつもりで買えばいいのだと思います。

 硬貨はペーパーマネーの紙ペラ経済と実物経済の中間に位置していますが、これからは紙幣の補助という役割から変わっていく可能性もありますでしょうか。考えられる案としては現行の紙幣の換わりに高級金属を含有する硬貨を導入する。しかし引用文中にあるように私的に熔解して地金に戻されてしまうのが難点でしょうか。現行の補助硬貨の場合はそんな手間をかけても元が取れないということで誰もしませんからね。

 菊地さん、これまで存じ上げませんでしたが引用元サイト、面白い文章がありますね。ありがとうございます。

 

戦闘教師「ケン」 激闘永田町編
http://kenuchka.paslog.jp/

戦闘教師「ケン」 激闘永田町編 ロシアは財政難で悪鋳?
http://kenuchka.paslog.jp/article/1709850.html

 

ロシア・ルーブル – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/ロシア・ルーブル

グレシャムの法則 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/グレシャムの法則