82年 鈴木・サッチャー会談 尖閣「現状維持」日中合意と伝達

本多俊一 投稿日:2014/12/31 19:26

 尖閣問題について、英公文書館が両首脳のやりとりを記録した公文書を機密解除して明らかになりました。

 その記事が重要なので、東京新聞の記事と、NHK記事を掲載しておきます。

尚、東京新聞の記事では、最後に「78年10月に来日した〓小平氏は記者会見で、日中両国政府が72年の日中国交正常化交渉の際に「(尖閣諸島の問題に)触れない」ことで合意し、78年の日中平和友好条約の交渉でも同様のことを確認したと述べた。」(福島民友、12月31日朝刊より)が抜けています。

 NHK記事では、外務省幹部「『棚上げ』合意した事実ない」と述べていますから、それを配慮したかもしれません。

しかし、外務省幹部の名前を公表し、その根拠(当時の速記録やメモ等)を明らかにすべきです。もし、間違えていたとしたら、どんな理由があれ罪に問われなければなりません。そのような法がなければ、制定しなくてはなりません。

過去に280番の発言として、関連文書があります。
> [280]日本の領有権に疑問 英、71年、尖閣問題で公文書

(引用開始)
82年 鈴木・サッチャー会談 尖閣「現状維持」日中合意と伝達
2014年12月31日 東京新聞 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014123102000121.html

 【ロンドン=共同】一九八二年九月、鈴木善幸首相が来日したサッチャー英首相(いずれも当時)との首脳会談で、沖縄県・尖閣諸島の領有権に関し、日本と中国の間に「現状維持する合意」があると明かしていたことが分かった。英公文書館が両首脳のやりとりを記録した公文書を三十日付で機密解除した。「合意」は外交上の正式なものではないとみられるが、鈴木氏の発言は、日中の専門家らが指摘する「暗黙の了解」の存在を裏付けている。

 日本政府は現在、尖閣諸島問題について「中国側と棚上げ、現状維持で合意した事実はない」と主張、暗黙の了解も否定している。

 首脳会談は八二年九月二十日午前に首相官邸で行われ、サッチャー氏の秘書官らのメモを基に会話録が作られたとみられる。

 鈴木氏は尖閣問題について中国の実力者、〓小平氏と直接交渉した結果、「日中両国政府は大きな共通利益に基づいて協力すべきで、詳細に関する差異は脇に置くべきだ」との合意に容易に達したと説明。その結果「(尖閣の)問題を明示的に示すことなしに現状を維持することで合意し、問題は事実上、棚上げされた」と述べた。

 鈴木氏は尖閣問題で〓氏は極めて協力的で「尖閣の将来は未来の世代の決定に委ねることができる」と述べたと紹介。その後、中国は尖閣問題に言及することはなくなったと説明した。

 〓氏とは七八年八月に園田直外相が北京で会談、鈴木氏も首相就任前の七九年五月に訪中し会談しており、鈴木氏のサッチャー氏への発言はこうした経緯を踏まえたものとみられる。

※〓は登にこざとへん
(引用終了)

(引用開始)
「尖閣は現状維持で合意」機密解除の英記録
NHK NEWSWEB 12月31日 14時29分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141231/k10014374941000.html

沖縄県の尖閣諸島を巡り、昭和57年、当時の鈴木善幸総理大臣がイギリスのサッチャー首相と会談した際、「中国との間で現状を維持することで合意し、問題は実質的に棚上げされたとサッチャー首相に伝えた」とイギリス側が記録していたことが明らかになりました。

これは昭和57年9月に当時の鈴木善幸総理大臣が来日したサッチャー首相と会談した際の内容をイギリス政府が記録したもので30日、機密解除されました。
それによりますと、鈴木総理大臣は沖縄県の尖閣諸島について、みずからが中国の当時の最高実力者※トウ小平氏と会談した経験を紹介し、「日中両政府は大きな共通の利益に基づいて協力し、詳細についての違いはひとまず触れないことで一致したと伝えた」としています。
そして、記録は「鈴木総理大臣は、その結果、問題を具体的に取り上げることなく現状を維持することで合意し、実質的に棚上げされたとサッチャー首相に伝えた」としています。
当時、サッチャー首相はイギリス領だった香港の将来の統治の在り方について中国側と本格的な話し合いに臨もうとしており、鈴木総理大臣は、トウ小平氏との直接対話を勧めたということです。
日本政府は尖閣諸島に関して、わが国固有の領土であり、解決すべき領有権問題は存在せず、中国との間で「棚上げ」や「現状維持」で合意した事実もないという立場を一貫して示しています。

外務省幹部「『棚上げ』合意した事実ない」

これについて外務省幹部はNHKの取材に対し、「鈴木元総理大臣の発言は確認できていないが、尖閣諸島を巡って中国側と『棚上げ』することで合意したという事実はない。尖閣諸島は、歴史的にも国際法上もわが国固有の領土であるという日本政府の立場に変わりはない」としています。
※「登」に「おおざと」
(引用終了)