認証官のかわりに国会同意人事

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2010/12/01 17:00

 会員番号4655の佐藤裕一です。

 本日は2010年12月1日(水)です。時間の流れが速すぎます。師走だから先生はさぞ忙しいことでしょう。

[91]に続いて「第22回副島隆彦を囲む会主催定例会 大政治(ハイポリティックス)が生む金融破局の裏筋道を解明する」の感想を、記録DVD販売の営業妨害にならない程度に少々。といっても、先生が既に重掲に[134]「私たちの定例会が無事終わりました。平野貞夫(ひらのさだお)氏の文を載せます。」を掲載なさいましたので、経緯を簡単にさらっと記して終わらせます。

 

 須藤喜直研究員の講演が終了し、一旦休憩。ここで私はホールを見渡したり廊下に出たりして菊地研一郎さんがいるかどうか探してみたが、人が多過ぎて見当たらず。それで自分の席に戻っていたところ、何席か前の列に菊地さんらしい人物が着座する様子を目撃。もう休憩時間終了近かったので、次の休憩で確かめることにした。

 先生の講演前半部が開始された。内容詳細は書きませんが、1つだけ個人的にショックを受けて、記憶しておこうと印象強くしていた箇所があった。

 先生がイタリアのルネッサンスの話に関連して、

「かつてタニゴロウのトシの論理が、わけも分からず沢山読まれた時期があった。このトシの論理を知らなければ読書人階級ではない!」

 と発言されたのでビックリした。私は、

(タニゴロウって誰? トシの論理って本を読んだこともないし、聞いたこともないなぁ。家に帰ったら調べよう)

 と思いながら動揺、あまり先生の話が頭に入ってこなくなった。先生言及の本については後述する。

 前半部が終了し休憩時間に入ると菊地さんはすぐに席を立っていたので、戻って来た際に思い切ってこちらから「菊地さん」と声をかけたら、本人だった。ほぼ確信していたとはいえ、人違いだったらまずかったよなぁと今になって思う。

 私は以前菊地さんと掲示板で話題にしたことがある、故・小室直樹先生が生前直筆の著者謹呈サイン本(真偽不明。●●●●様は元代議士か)で、流れて入手した『中国共産党帝国の崩壊―呪われた五千年の末路』(小室直樹著、光文社刊、1989年9月30日 初版第1刷発行)を本人証明用に持っていったのだが、よく考えると入場ハガキを見せれば済む話であった。

 

Amazon.co.jp: 中国共産党帝国の崩壊―呪われた五千年の末路 (カッパ・ビジネス) 小室 直樹 本
http://www.amazon.co.jp/dp/433401237X

 

 ↑菊地さんから教えて頂いた通りURLを短縮致しました。

 さて、このときはすぐに休憩時間が終了してしまったので菊地さんとは軽い挨拶だけ。先生の講演後半部スタート。先生の[134]にあるようにちょっと会場全体が暑くなってきて、休憩中にジャケットを脱いでおけばよかった。

 講演内容省略。

 講演時間終了後、質問タイムだが2人だけだった。アンケート用紙に記入したが、ホール横の廊下がさっそく電気が落とされていて、要望など具体的なことは書けなかった。

 それから菊地さんが私の席近くにいらっしゃった。私が「今からどうやって帰ったらいいか……」と不安を口にすると、菊地さんが「それでは一緒に行きましょうか」と[90]に書いてあるように道案内をしてくださった。

 道中、先生のことや世川行介さんのこと、東京の地域ごとの勢力など、本屋に立ち寄ったりしながらお話を訊く。その後夜行バスで帰宅。二度と乗るもんか。夜行バスで眠れる人ってすごいよね。

 さて菊地さんのお話によると小沢一郎を巡る問題において、検察庁という組織の検事総長・次長検事・検事長らの職階の認証官降格問題が1つあるということだった。

 ウィキペディアの「認証官」などの項目にもあるように、日本国憲法第七条の五に基づく天皇の国事行為として、任命される際に法律形式上は天皇が直接に認証官任命式を執り行うことになる。ウィキペディア「日本国憲法第7条」の項目から憲法の当該条文を転載貼り付けする。註番号など略。

 

認証官 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/認証官#.E5.86.85.E9.96.A3.E7.AD.89

日本国憲法第7条 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/日本国憲法第7条#cite_note-0 

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

 検事総長・次長検事・検事長らは日本国憲法第七条の五の「法律の定めるその他の官吏」である。

 日本の最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所に最高検察庁・高等検察庁・地方検察庁がそれぞれ対応しているわけだ。最高裁判事と高裁長官は認証官なので、最高裁判事と対応関係にある最高検の検事総長・次長検事、高裁長官と対応する検事長が認証官となる。検事総長・次長検事・検事長が認証官でなければ、裁判所と検察庁の釣り合いがとれず、バランスが崩れるということらしい。

 ハッキリ言ってこんな官僚の理屈などに、国民や議会が振り回される必要はない。だいたいにして裁判所と検察庁は元から対等などではないし、整合性がどうのというならば法務事務次官より検事総長が格上の現状の方がおかしい。ウィキペディア「日本国憲法第77条」の項目から転載貼り付けする。

 

日本国憲法第77条 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/日本国憲法第77条

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

1.最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2.検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3.最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

 確か日本国憲法には、第七十七条第二項にしか「検察官」という言葉は出てこないはずだ。残りの法的根拠は全て下位法による。法廷においても検事と対等なのは判事ではなく弁護士であるべきだろう。

 日本国憲法は「検察官」の職務を詳細に定めることを避け、下位法で柔軟に改正することを妨げないようにしている。そのこと自体には一定の理解が出来るのだが、日本人の法意識が前近代のままなので弊害も多い。

 私は普段から憲法を読み返すたびにとても残念に感じる箇所があるのだが、「検察官」という言葉を憲法に登場させることを是としてそれを前提とするのであれば、少なくとも日本国憲法第六十四条第一項には「裁判官」だけではなく、「検察官」も制定時に入れておいてほしかった。ウィキペディア「日本国憲法第64条」から転載貼り付けする。註番号など略。

 

日本国憲法第64条 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/日本国憲法第64条

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

1.国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2.弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

 

 このように日本国憲法第六十四条でも弾劾裁判に関する条項を定めているが、第二項を読めば誰でも分かるように、ちょっと下位法に投げっぱなしである。いくら憲法が大きいところを定めて下位法が細かい部分を定めるとはいえ、あまりにも大雑把にすぎると思う。

 弾劾裁判は議会が行うと決まっている。職務違反などの事由により訴追された公務員の地位に関して、判決により罷免や法曹資格剥奪などが決定される可能性がある。日本の場合は憲法では裁判官だけだが、諸外国では裁判官以外の公務員も対象となり得る。

 日本には憲法条文に規定がなく、下位法で規定される「人事官弾劾裁判」という制度もあるから、「検察官弾劾裁判」も憲法改正ではなく下位法による立法の制定で設置出来ると考えられるだろう。ただし「人事官弾劾裁判」は国会が訴追するものの、裁判自体は最高裁で行うので駄目な法制度である。弾劾は訴追も裁判も全て議会で議員が行わなければならない。

 それから弾劾裁判で有罪の場合に刑罰を科す国もあるようだが、私はこれについては分離して別個に裁判所で行うべきだと考える。というのは、弾劾裁判所で刑事罰まで課すとなると、通常の裁判所との区別が曖昧になり、弾劾裁判自体の意義や定義がぼやけてくるからだ。弾劾裁判はあくまで「公務員として職務を遂行する資格がある人間であるかどうか」を判断し「罷免か否か」を決定すべきである。復権も同じく判断する。

 考えなしに何でもアメリカの法制度の真似をすればいいというものではないが、日本も衆議院で訴追し参議院で審理する制度だともっと良かったのになぁと思う。日本の検察官適格審査会みたいな法務省の審議会では仕方がない。せめて構成員が全員国会議員であるちゃんとした審査委員会でなければならない。検察官適格審査会から「官適格」を抜いた検察審査会は行政に属さない「準」司法機関だという。憲法違反でないの?

 

弾劾 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/弾劾

裁判官弾劾法 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/裁判官弾劾法

裁判官弾劾裁判所 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/裁判官弾劾裁判所

裁判官訴追委員会 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/裁判官訴追委員会

検察官適格審査会 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/検察官適格審査会

検察審査会 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/検察審査会

 

 話を認証官に戻すが、ウィキペディアに挙げられる現在の「認証官」のうち「国務大臣」は
日本国憲法第七条の五で直接定められている。下位法の根拠は様々だが、裁判官以外で「その他の官吏」にあたるのが内閣の「副大臣」「内官房副長官」、会計検査院の「検査官」、人事院の「人事官」、内閣府の「宮内庁長官」「侍従長」「公正取引委員会委員長」、法務省の「検事総長」「次長検事」「検事長」、外務省の「特命全権大使」「特命全権公使」となる。

 私の考えでは上記の「その他の官吏」のうち、「特命全権大使」「特命全権公使」は立憲君主政体をとる国として元首の認証式を経るから除外するとして、「検査官」「人事官」「宮内庁長官」「侍従長」「公正取引委員会委員長」「検事総長」「次長検事」「検事長」には天皇の認証は必要ないから改正すべき。そもそも会計検査院と人事院は不用だから廃止していい(ただし会計検査院は憲法設置期間であり廃止の改正はハードルがいきなり高い)。「副大臣」「内官房副長官」は「国務大臣」の下で職務を執り行うのだから認証式を経てもいいかも。

 細かい法解釈はいろいろあるだろうが、総体として私が言いたいのは国や国民の代表達は立憲君主制であるからには天皇の認証があっていいが、それ以外の行政の事務公務員には不要だし、むしろ「天皇の官僚」「天皇の官吏」という増長を招くので害悪だということだ。宮内庁や検察庁の思い上がりを叩きのめさなければならない。

 検事総長、次長検事、検事長らを「認証官」から降格するかわりに、「国会同意人事」という栄誉を彼らにプレゼントするべきである。

 

国会同意人事 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/国会同意人事