新型コロナ感染症:ノーベル賞を受賞した日本発の治療薬「イベルメクチン」が救世主に?

会員 投稿日:2020/05/03 18:00

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新型コロナ感染症:ノーベル賞を受賞した日本発の治療薬「イベルメクチン」が救世主に?

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20200408-00172075/

石田雅彦 | ライター、編集者
2020/4/8(水) 8:00

 寄生虫感染症の「ワンダードラッグ」と称賛されるイベルメクチン(Ivermectin)は、2015年のノーベル医学生理学賞を受賞した大村智氏が土壌の微生物から分離したアベルメクチンという物質からできた薬だ。今回、オーストラリアの研究グループにより、イベルメクチンが新型コロナウイルスの増殖抑制に効果的という研究結果が発表された

◆土の中からワンダードラッグ

 北里研究所にいた大村智氏が、静岡県伊東市川奈の土壌から採取した放線菌の一種(Streptomyces avermitilis)にアベルメクチンという物質を作り出す能力があるのを発見したのは1979年のことだ(※1)。この物質がマウスに寄生した線虫を殺す作用があることがわかり、当初はウシなど家畜の寄生虫感染症に効く薬として開発された。

 その後、アベルメクチンから開発されたイベルメクチンが発展途上国の人々を苦しめていた河川盲目症(オンコセルカ症、ブヨにより感染)という寄生虫感染症にも効果があることがわかり、ヒト用のイベルメクチンが開発されることになる。

 そしてイベルメクチンは、象皮病にもなるリンパ系フィラリア症(カにより感染するフィラリアという蠕虫による寄生虫感染症)、世界で数千万人が感染しているとされる糞線虫症(糞線虫が消化器官に寄生する寄生虫感染症)、などにも効果があるということがわかり、特に熱帯・亜熱帯地域の発展途上国で多くの人を救ってきた(※2)。

 新型コロナ感染症が世界的に猖獗を極めている。治療薬の開発は喫緊の課題だが、このウイルスに対してはこれまで抗インフルエンザ薬のアビガン、抗エイズウイルス薬のカレトラ、エボラ出血熱の治療薬のレムデシビルなど様々な医薬品が試されてきた。

 今回、そうした候補薬に名乗りを上げたのがイベルメクチンだ。オーストラリアのビクトリア感染研究所の研究グループが、イベルメクチンを試したところ、新型コロナウイルスの増殖を抑え、ウイルス数を劇的に減少させる可能性があることを発表した(※3)。ちなみに、世界で最初に新型コロナウイルスを培養したのもオーストラリアの研究グループ(メルボルン大学ドハーティ研究所)だ。

◆新型コロナウイルスを99.98%も抑制

 本来、イベルメクチンは寄生虫感染症の薬剤だが、HIV-1(ヒト免疫不全ウイルス)のタンパク質生成を阻害することが確認され、インフルエンザウイルスなどのRNAウイルス、狂犬病ウイルスなどのDNAウイルスの増殖を防ぐことが実証されているようだ。

 重要なのは、米国のFDA(食品医薬品局)にも承認されているように、イベルメクチンが約30年間に渡ってヒトの寄生虫感染症の薬剤として広汎に使用されてきたことだろう。特に、河川盲目症やリンパ系フィラリア症の薬剤として多くの発展途上国で使われてきた。

 もし、イベルメクチンが新型コロナウイルスの増殖を抑えることができれば、各国の薬事承認の過程を省くことが期待され、ストックも大量にある上に生産ラインもすでに整備され、特許も切れている(大村智氏は特許を放棄した)ことから大きな可能性があることがわかる。また、イベルメクチンの安全性は、妊娠中の使用に関してはっきりとわかっていないものの、システマティックレビュー研究で有害事象の報告はないとしている(※4)。

 同研究グループは、新型コロナウイルスとよく似たSARSウイルス(SARS-CoV)が1本鎖のRNAウイルスであることから、イベルメクチンも新型コロナウイルスに効くのではないかと考え、細胞を使った試験(in vitro)をしてみたという。

 すると、イベルメクチンを使ってから24時間後に新型コロナウイルスのRNAが93%減少し、48時間後には99.98%減少したことを観察した。また、イベルメクチンによる毒性作用は見られなかったという。

 これは、イベルメクチンが新型コロナウイルスのタンパク質生成を阻害し、増殖を強く抑制したことを意味する。同研究グループは、まだ細胞を使った実験室内の結果であり、さらなる研究が必要としている。

 新型コロナ感染症には、一刻も早いワクチンと治療薬の開発が待たれている。イベルメクチンという日本発の治療薬に期待したい。

※1:Satoshi Omura, Kazuro Shiomi, “Discovery, Chemistry, and Chemical biology
of microbial products.” Pure and Applied Chemistry, Vol.79, Issue4, 2007

※2:Eric A. Ottesen, William Campbell, “Ivermectin in human medicine.” Journa
l of Antimicrobial Chemotherapy, Vol.34, Issue2, 195-203, 1994

※3:Leon Caly, et al., “The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replica
tion of SARS-CoV-2 in vitro.” Antiviral Research, doi.org/10.1016/j.antiviral.
2020.104787, April, 3, 2020

※4:Patricia Nicolas, et al., “Safety of oral ivermectin during pergnancy: a
systematic review and meta-analysis.” THE LANCET, Global Health, Vol.8, Issue1
, e92-e100, January, 2020

石田雅彦
ライター、編集者
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いしだまさひこ:医科学修士(MMSc)。近代映画社で出版の基礎を学び、独立後はネットメディア編集長、紙媒体の商業誌編集長などを経験。ライターとして自然科学から社会科学まで多様な著述活動を行う。横浜市立大学大学院医学研究科博士課程在学中。JASTJ会員。元喫煙者。サイエンス系の著書に『恐竜大接近』(集英社、監修:小畠郁生)、『遺伝子・ゲノム最前線』(扶桑社、監修:和田昭允)、『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』(ポプラ社)など、人文系著書に『季節の実用語』(アカシック)、『おんな城主 井伊直虎』(アスペクト)など、出版プロデュースに『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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