情報災害 福島を翻弄
平田です。
長崎新聞ホームページ から記事を転載します。
(記事の貼り付け始め)
●「インタビュー/長崎大医歯薬学総合研究科・山下俊一教授 情報災害 福島を翻弄」
2011年5月20日
http://www.nagasaki-np.co.jp/news/daisinsai/2011/05/20130049.shtml
山下俊一教授は、福島第1原発から一定離れた福島県内の自治体での講演会などで、放射線量などの分析から「安心していい」「国のレベルを順守するのが重要」などと丁寧に説明している。住民たちは理解を示す一方、一部の講演会場やインターネット上では「本当に安心していいと言い切れるのか」と疑問を抱く意見や、「福島では『安心』と言いながら長崎新聞紙上で子どもや妊婦を中心に避難させるべきだと言っている。真意はどうなのか」などの声もある。
福島第1原発事故で、政府が放射線量をめぐる校庭活動などの各種基準を設定した以降も、安全性に対する不安の声は後を絶たない。被爆地長崎や約20年間にわたるチェルノブイリでの医療経験を生かし、福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーとして講演活動を続けている長崎大医歯薬学総合研究科の山下俊一教授(58)に現状などを聞いた。
-「安全」ばかり主張しているなどとして、現地の講演会やインターネット上で一部批判を受けている。
市民との対話を繰り返して放射線の恐怖を取り除くことが自分の仕事。避難住民に一貫して伝えているのは、一度に100ミリシーベルト以上の放射線を浴びれば発がんリスクが少し高まるが、それ以下は疫学的に証明できないということ。「100」は広島、長崎、チェルノブイリでの長年の研究から蓄積されたデータ。私は毎時では10マイクロシーベルトを下回れば心配ないと言ってきたが、国の校庭活動の規制値は毎時3・8マイクロシーベルトでさらに厳しい。それを超えたとしてもすぐに健康被害が起きるわけではなく、会場ではあくまで目安だと話している。
大事なことは厳格なモニタリングと被ばく線量を正確に評価し、その上で健康リスクを議論すること。何も二枚舌を使っているわけではなく、放射線量が高い地域は20キロ圏外でも避難すべきだと思うし、その主張は変わっていない。
- 現地の状況は。
専門の有無にかかわらず、いろんな人たちがさまざまな主張を展開しているので、住民もぶれてしまう。住民は情報洪水、情報災害にさいなまれている。放射線に対する影響を正しく伝え、恐怖を取り除くには、住民との信頼関係が不可欠。そのためには時間もかかるが、難しい側面もある。今、非常事態の被災地に何をすべきか、何ができるかを最優先に議論すべきであり、そのお手伝いをできるのが広島、長崎だと考えている。一番の被害者は、大量の情報に翻弄(ほんろう)されている福島県民。この混乱を乗り越える最善の方法は、今も放射性物質の放出が続く原発を封じ込めることだ。
- さまざまな情報がある中、住民はどう動けばいいのか。
▽正しい情報源▽正しい伝達(メディア)▽正しく理解する住民の力-、この三つが必要だ。それと何より政府がぶれないこと。住民は複数の情報に惑わされることなく、事実をしっかりと認識していく必要がある。福島県は被爆地長崎に期待してくれている。そういう意味では責任は重い。中長期的なビジョンで長崎、福島の関係を構築していく必要がある。
(聞き手は報道部・向井真樹)
(記事の貼り付け終わり)