今西錦司の『生物の世界』に悪戦苦闘

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2010/10/19 22:00

 会員番号4655の佐藤裕一です。

「副島隆彦の論文教室」において管理人の古村治彦氏による最新論文が掲載された。

 

副島隆彦の論文教室
http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/okotowari.html

「0106」 論文 社会科学とは何か―「法則」の発見を目指して 古村治彦(ふるむらはるひこ)筆 2010年10月19日
http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/files/ronbun110.html

 

 鴨川光氏の「サイエンス=学問体系の全体像」諸論文と同じく、近代学問を正しく提示し捉え直すという、素晴らしい試みがなされている。

 その基本参考文献であり骨格理解となるのは、先生の『新版 決然たる政治学への道』(副島隆彦著、PHP研究所刊、2010年3月8日 第1版第1刷発行)である。

 この作品は日陰にあるべきではない重要な本である。売り切れでもないのに在庫がないとか、大きい書店でも取り寄せなければ入手出来ない、などという状況があるとすれば、はなはだ遺憾である。すぐに手に入るべきであり、政治学志望者に限らず、これからの学問の有志(志が有る者)必読の書である。

 

Amazon.co.jp: 新版 決然たる政治学への道 副島 隆彦 本
http://www.amazon.co.jp/新版-決然たる政治学への道-副島-隆彦/dp/4569776396

 

「副島隆彦の論文教室」がもっと注目され「副島隆彦の学問道場」とともに発展していくことが日本の利益である。

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 さて、私は故・今西錦司の『生物の世界 ほか』(今西錦司著、中央公論新社刊、2002年6日10日発行)と格闘中。カチコチに固まったパンを齧るがごとく読解に悪戦苦闘する。吉本隆明先生ほどの難解な言い回しではなく、執筆された時期を考慮すれば比較的平易な文章だとは思うのだが、やはり書き方なのかな。棲み分け理論がなかなか頭に入っていかない。

 ……なんか棲み分けが経済の話になると競争原理否定とか資本主義否定とかに援用されそうで正直嫌なんだよな~。先生も何年か前のぼやきで船井幸雄氏との関連でそんな話をしているみたいだし。そういえば先生も京都学派の暴露追撃を最近止めている感じがする。この辺でいつでも反撃を繰り出せるよう、注意警戒を怠らずに理論武装の準備をせねば。競争原理断固肯定。

 とにかく今西が主著の『生物の世界』の序で、第四章にあたる「社会について」が中心だと述べているのは、その通り隠れ社会生物学者だということなのだろう。棲み分け理論には、弱肉強食や自然淘汰とは別の種類の残酷さが潜んでいる気がする。人間社会に適用して考えていく、という恐ろしさが必要だろう。今西説の理論や仮説が将来正しいことが分かる日が来る可能性もあるが、まだまだ現状の段階では方法がないので証明のしようがないだろう。

 

Amazon.co.jp: 生物の世界 ほか (中公クラシックス) 今西 錦司 本
http://www.amazon.co.jp/生物の世界-ほか-中公クラシックス-今西-錦司/dp/4121600320

 

 それから京都学派、といっても西田幾多郎、田辺元、和辻哲郎、梅原猛ら哲学の系統にはさっぱり興味が湧かないが、新・京都学派の、中でも今西学派門下で西北研究所組であり、今年の7月3日に亡くなった故・梅棹忠夫の『文明の生態史観 ほか』(梅棹忠夫著、中央公論新社刊、2002年11月10日発行)も読む予定。こっちも読み進めるのが大変そうだ。

 人間の文明を「生態観察」するという観点で論じているということで、やはり今西の系譜を受け継ぐ学統なのだろうが、梅棹が最後の大物なのかな。はたして後継者はいるのだろうか。他にも日高敏隆、竹内久美子らの動物行動学もこっちだろうが、そろそろこういう危ない学問・研究が、もう表に出てきてもいい頃合の時代になってきたのか。

 

Amazon.co.jp: 文明の生態史観ほか (中公クラシックス) 梅棹 忠夫 本
http://www.amazon.co.jp/gp/product/412160041X/ref=pd_lpo_k2_dp_sr_1?pf_rd_p=466449256&pf_rd_s=lpo-top-stripe&pf_rd_t=201&pf_rd_i=4122030374&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_r=1ATG7482JE2JZX3W095B

 

 それにしても、中公クラシックスはいい仕事してると判断してもいいんじゃないだろうか。赤いカバーの本でまとめられてて、世界と日本の名著を改訂新版で出しているが、各人物に焦点をあてているところなんかも良い。もはや世界の偉人の著書群も、岩波文庫の専売特許というわけではないというわけだ。