ウクライナ戦争特需 米軍事企業 

会員 投稿日:2023/01/04 18:34

副島先生のいうアメリカの「公共破壊事業」、軍需産業が、ウクライナ戦争特需に湧いているという記事を2本転載します。

●ウクライナ危機に色めき立つ世界の巨大軍需産業
 戦況長期化で利益を得るものは誰か
長周新聞 2022年4月9日
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/23227

(以下貼り付け開始)

 アメリカのバイデン政府はウクライナに「米軍を派遣しない」といって、大量の武器や弾薬による軍事支援を重ねている。マスコミを動員してウクライナの民衆の悲惨を叫ぶが、その実、「人道的支援」には冷淡である。そして、この戦争でも巨大な富を得てにんまりとしている者がいるのだ。

 英エセックス大学の『コンバセーション』誌は3月9日、ピーター・ブルーム経営学教授の「世界の巨大軍需産業は静かに、戦争から数十億ドルを稼いでいる」と題する文章を掲載した。同教授はそのなかで次のようにのべている。

 巨大軍需産業はすでに約5000億ドル(約60兆円)の武器を両陣営に供給し、かなりの利益を得ようとしている。アメリカはウクライナに90トン以上の軍事物資と、昨年だけでも6億5000万ドル(約780億円)の援助をしたが、さらに3億5000万ドル(その後5億ドルと発表)の軍事支援を約束した。EUは4億5000万ユーロの武器を購入し、ウクライナに輸送している。

 アメリカとNATOはウクライナに1万7000発の対戦車兵器と、2000発の対空ミサイル「スティンガー」を供給している。イギリス、オーストラリア、トルコ、カナダを含め、世界的な国家連合もまた、ウクライナに積極的に武器を供給している。これが世界最大級の防衛関連企業に多大な恩恵を与えているのだ。レイセオン社はスティンガー・ミサイルを製造し、さらにロッキード・マーティン社と共同でジャベリン対戦車ミサイルを製造している。これらはアメリカやエストニアなどから供給されている。

 西側諸国のトップ兵器企業はこの戦争に先駆け、利益が増大しそうであることを投資家たちに報告していた。アメリカの巨大防衛関連企業、レイセオン社の最高経営責任者であるグレゴリー・J・ハイエスは、1月25日、以下のように業績発表をおこなっている。

 「先週UAEで起きたドローン攻撃に注目する必要がある……そしてもちろん、東ヨーロッパの緊張、南シナ海の緊張、こういったことはすべて、現地における軍事費増額への圧力となっている。だからそれによる利益を獲得できると期待している」

 ブルーム教授はそこから、次のように結論づけている。

 「この戦争の余波で、私たちはこの産業の力と影響力を制限する方法を探求する必要がある。これには、特定の武器の売却を制限する国際協定、防衛産業の削減にとりくむ国々への多国間支援、軍事費の増加のロビー活動をおこなうような兵器企業への制裁などが考えられる。より根本的には軍事力のさらなる拡張に挑戦する運動を支援することである」と。

 報道によれば、ロッキード・マーティン社の株価はウクライナ危機が発生してから16%、イギリスのBAEシステムズ社の株価は26%の上昇を見せている。レイセオン、ロッキード・マーティン、ジェネラル・ダイナミクスの社長たちは、株主に対して「ウクライナ情勢の緊迫化はわが社の利益を押し上げる効果が抜群だ」と、意気揚々としている。

 アメリカの経済がベトナム戦争を期して失速するなかで、国家予算の半分を占める国防費を奪い合う巨大軍需企業のロビー活動がしのぎを削ってきた。それは武器の消費(戦争特需)による景気刺激を求める軍産複合体を巨大化させ、その利益を代表するネオコン(新保守主義者)が引き起こしたイラクやアフガニスタンなどの戦争で巨額の利益を得た。

しかしアフガン撤退後、軍事的緊張を欠いた状態が続いては身が持たぬのが死の商人たちだ。彼らにとって、ウクライナは米軍が直接武力を使って手を汚さなくても同様の暴利をむさぼる場として、格好のターゲットとなっていた。事実、アメリカはウクライナに対して、これまでもパトリオットミサイルや戦車、重火器などの新旧武器を供給し新たな戦争特需を求めてきた。

 アメリカはこれら兵器の操作を教えるために、ウクライナに軍事顧問団を常駐させ、この8年間ドンバス地域での実戦を通して1万人以上のウクライナ軍兵士を訓練し、使用させてきたのである。これは最近のウクライナ報道でも、メディアに出演する「軍事専門家」や元外交官などがアメリカを擁護する側から明らかにしていることである。

(貼り付け終わり)

●ウクライナ戦争特需で笑いが止まらない米軍事企業
増産に次ぐ増産、雇用増に加え、待望の法案まで通過
2022.12.31(土)
堀田 佳男
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73342

(以下貼り付け開始)

 2023年を迎える今、古典的といえる「マネー・メイキング」の方策が、世界では生きている――。

 戦争が武器メーカーを潤すという図式はいまに始まったことではない。

 過去から現在、今後に及んでも、軍事衝突が勃発することで、戦争当事国と支援国は武器を調達することで武器メーカーに利益をもたらす。

 捉え方を変えれば、人を殺害し、都市を破壊することで特定企業は儲かるのだ。

 2022年12月初旬、米首都ワシントンにあるウクライナ大使館で、あるレセプションが開かれた。

 招待客は米政府関係者、外交官、ジャーナリストなどで、マーク・ミリー統合参謀本部議長の姿もあった。

 ここまではワシントンではよくある大使館レセプションの光景である。

 少しばかり様子が違ったのは、レセプションの招待状の下段にイベントのスポンサーとして、大手軍事企業のロゴが描かれていたことだ。

 その企業とはロッキード・マーティン、レイセオン、ノースロップ・グラマン、プラット&ホイットニーといった世界に名を馳せた兵器メーカーである。

 さらに招待状には、ウクライナ大使の言葉として、軍事企業の関係者と「ご一緒できることを楽しみにしています」という文字も記されていた。

 招待客の中には、軍事企業のロゴが招待状に記されていることに違和感を抱いた人もいた。

 だが、そのレセプションは参加者の顔ぶれから、現在進行中のウクライナ戦争で、ウクライナ政府と米政府、さらに米軍事企業がいかに親密な関係であるかを如実に示すものとなった。

 ロッキード・マーティンの年間売上高の半分は今、米国防総省(ペンタゴン)からの受注である。

 同社を含めた前述の4社は、米国がウクライナに送った対戦車ミサイルやミサイル防衛システムなどを製造している企業である。

 ジョー・バイデン大統領はこれまで、ウクライナに軍事支援として約193億ドル(約2兆5600億円)という巨費を約束している。

 こうした米政府による支出は武器メーカーにとっては何よりの「ボーナス」である。

 ロッキード・マーティンが製造する携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」の生産台数は、年間2100発から、今年4000発へと拡大された。

 バイデン大統領は今年、アラバマ州にある同社工場に足を運び、社員に向けてこう述べている。

「米国産の兵器をウクライナに送り込むことで、第3次世界大戦に巻き込まれる危険を回避し、ウクライナの人々が自衛できるようにしているのです」

「この施設で働くすべての人たちが自由のために貢献しています」

 さらに同社は今年、6000万ドル(約80億円)をかけて高機動ロケット砲システム(HIMARS)を増産した。

 ハイマースと呼ばれる同ロケット砲システムは、約90キロの弾薬を積載した誘導ロケットを約80キロ離れた目標に命中させることができる車両で、ロシア軍に壊滅的な打撃を与えられる。

 ロッキード・マーティンはこれまでハイマースを年間60台製造してきたが、現在は週7日、24時間の生産シフトに移行し、年間96台の製造を目指している。

 そうしたこともあり、同社は今年、株価が38%も上昇した。

 レイセオンも受注が増大している。

 同社の経営最高責任者(CEO)のグレゴリー・ヘイズ氏は12月初旬、米メディアとのインタビューで、次のように自慢げに語った。

「米政府がウクライナに送った携行地対空ミサイル『FIM-92スティンガー』は、本来であれば6年で使用する数量の1600発を、10カ月で使い切った」

 こうした需要の急増は何をもたらしているのか。

 数年分のミサイルを数カ月で使い果たすことは、もちろん製造側にも大きな変化をもたらす。

 約18万人の従業員を抱えるレイセオンは今年、11月初旬までに2万7000人を新規採用した。それでも人員が足らず、今後さらに1万人を追加雇用する予定でいる。

 それでもなお、同社幹部は労働力不足と入手可能な部品の調達に間に合わない事態に陥ると述べているほどだ。

 それほど戦争特需は軍事企業に大きなプラスに働いている。

 ワシントンでもこれまでとは違った動きが出ている。

 12月初旬、米上院はある法案を通過させた。

 年次軍事許可法案というもので、空軍と海軍が退役させたいと考えている「C-130」輸送機や「F-22」戦闘機などを温存させるだけでなく、新しい船舶や航空機を建造するために数十億ドルの追加予算を計上する内容である。

 さらに米政府は米東部ペンシルバニア州北東部のスクラントン市にある弾薬工場と中西部アイオワ州東部のミドルタウン市にある弾薬工場、さらに南部テネシー州北東部キングスポート市にある弾薬工場を拡張するために6億7800万ドル(約900億円)の予算を割く。

 上記3工場はいずれも陸軍と契約しているところで、すでに話は進められている。

 こうした動きは単年度ではなく、今後複数年で支出を増やす予定だ。

 これは軍事産業のロビイストたちが長年求めてきたもので、ウクライナ戦争によって法案が通り、予算がつき、新たな軍事産業の扉が開かれたことを意味する。

 上院軍事委員会のメンバーであるデブ・フィッシャー上院議員(ネブラスカ州)は「政治家は軍事産業と前向きに契約を結ばなくてはいけない。そうすれば軍事産業は生産ラインの再開や拡大に踏み切ることができる」と述べている。

 業界では、こうした動きだけでも今後3年で730億ドル(約9兆7600億円)もの追加受注が見込まれ、ロッキード・マーティンやレイセオンといった大手軍事企業に大きな利益をもたらすと見られている。

 前出のレイセオンCEOのグレゴリー・ヘイズ氏は直近の決算説明会で、「ウクライナでの紛争が『残念ながら』続いているため、特に東欧で先進的な防空システムの世界的な需要が高まっている」と述べた。

「残念ながら」という言葉は、一般的には戦争が継続されていることへの憂慮と解釈される。

 しかし、軍事企業のトップとしてはこれほど「おいしい」話はないのであって、本音としてはとことんやってくださいという思いのはずである。

 これが今の戦争特需の核心と言えるかもしれない。

(貼り付け終わり)