アジア政治経済掲示板から転載貼り付け2

会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2010/09/23 09:42

会員番号4655の佐藤裕一です。

途中で切れてしまって失敗した。どうもリニューアル後、容量オーバーエラーが表示されなくなったようだ。やはり無理せず、ある程度でわけた方がよさそうだ。

前回最後の続きからそのまま、アジア政治経済掲示板から転載貼り付け致します。

【佐藤裕一による転載貼り付け始め】

フランス国籍のアメリカのアルタイ学者デニス・サイナー(一九一六年生まれ、インディアナ大学名誉教授)である。サイナーは一九六三年、フランス文の『中央ユーラシア研究入門』を出版したが、この書物の内容は、まず大きく「言語」の部と「歴史」の部に分かれている。

「言語」の部はさらに「ウラル諸語」と「アルタイ諸語」の二部に分かれる。「ウラル諸語」に数えられるのは、ハンガリー語をはじめとして、ウゴル諸語、フィン語、サーメ(ラップ)語など、中部ヨーロッパからシベリアにかけて分布する言語である。「アルタイ諸語」は、オスマン語をはじめとするトルコ(テュルク)諸語、モンゴル語、ツングース語、女直語、満州語をふくむ。これらは東部ヨーロッパから東北アジアにかけて分布する言語であって、これらをあわせてウラル系・アルタイ系の言語が話される範囲が中央ユーラシア(フランス語ではウーラジー・サントラール)であるということになる。

一方、「歴史」の部は、四つの時代に区別する。「古代」では、西方ではスキュタイ人、サマルタイ人、東方では匈奴、月氏(月支)、トロイカ人、烏孫、鮮卑、拓抜氏をあつかう。「中世」では、東方では蠕蠕(柔然)、エフタル、吐谷渾、突厥、トクズ・オグズ、カルルク、ウイグル、キルギス、契丹、女直、党項、西方ではフン、アヴァール、サビル、オン・オグル(オノグル)、ブルガール、ハザール、ハンガリー人の先史時代、カラ・ハーン朝、ガズナ朝、オグズ、セルジューク朝、ペチェネグ、コマン(クマン)、カイをあつかう。つぎはいよいよ「モンゴル時代」で、これが中央ユーラシア史の頂点であり、最後は十四世紀以後の「頽廃の時代」で締めくくっている。

このデニス・サイナーの『中央ユーラシア研究入門』は、資料と研究文献の解題という性質の書物であるから、中央ユーラシアという地域を著者がどう定義しているかについては正面から説くことは少ないが、それでもだいたいのところはうかがえる。

しかし、ウラル系・アルタイ系の言語を話す諸民族がかつて活躍し、今なお占拠している地域が中央ユーラシアだとすると、同じ地域はまたほかの系統の言語を持つ民族、ことにインド・ヨーロッパ諸語を話す諸民族の活躍の舞台でもあったのであるが、この人びとは中央ユーラシアの民族史の対象にはならないのか、ということが問題になる。この点について、サイナーは「序説」のなかで、「古アジア人や、中央ユーラシアのインド・ヨーロッパ人や、あるいはチベットをふくめないのは、自分の不得意な分野だからである」とことわっていて、ウラル系・アルタイ系だけが言語の面で中央ユーラシアを代表すると考えているわけではないことを示している。

中央ユーラシアの起源

ここであらためて、中央ユーラシアという概念を、歴史の見地から見直してみよう。

地図をちょっと眺めるだけですぐわかるように、中央ユーラシアという地域は、その周辺に、中国文明、インド文明、メソポタミア文明、地中海文明という、古代世界の四大文明の発祥地をもつ地域である。たんに周辺にもつばかりではない。これらの古代文明が発展して現在の中国や、インドや、西南アジアのイスラム諸国や、ソ連や、ヨーロッパ諸国になる過程で、中央ユーラシアから四方にむかって放射する力が、決定的な影響をあたえたのである。現在でこそ、中央ユーラシアは中国とソ連という二大国によってその大部分を支配されているが、こうした形勢は十七世紀以後のものであって、中央ユーラシアの歴史のうえではごく最近の現象にすぎない。それ以前の中央ユーラシアには、中央ユーラシア独自の歴史があり、土着の諸民族がその主人公だったのである。

中央ユーラシアがその周辺の世界の歴史に影響を及ぼした最初の事件は、なんといっても前三千年紀にはじまるインド・ヨーロッパ語を話す人びとの移住である。彼らはこの時期に、中央ユーラシアのどこかにあったと考えられる原住地を離れて、西方及び南方にむかって移動を開始した。つぎの前二千紀の初めには、ギリシア人がバルカン半島を南下して現在のギリシアの地に定住し、同時にアナトリアでは、ヒッタイト人が古王国を建設した。こうして地中海世界とメソポタミア世界に姿を現わすのとほぼ同時に、インド亜大陸では、同じインド・ヨーロッパ系の言語を話すアーリア人がイラン高原から南下して、ドラヴィダ系のインダス文明を滅亡させた。

(引用終わり)『日本人のための歴史学 こうして世界史は創られた!』(ワック出版刊、2007年5月24日初版発行、岡田英弘著、90~92、94~97項)(弓立社刊『歴史の読み方』の改題・改訂版)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[1445] アジア・アズ・ナンバーワン 投稿者:会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2009/11/06(Fri) 03:33:31

会員番号4655の佐藤裕一です。

この掲示板設置時点の2002年1月27日は、アメリカは9・11事件発生後、既にアフガニスタンのタリバン政権とアルカイダ(実際にどの程度いたのか不明だが)に報復攻撃を仕掛けていたと思います。

9・11の本土テロ攻撃(誰がテロ攻撃したの?)によってアメリカの威信は表面上は揺らいだように見えるものの、90年代から継続して世界覇権国家として絶頂期(の最終部分、下り坂の手前)にある事は間違いありませんでした。

日本の小泉政権やイギリスのブレア政権はじめ、当時の親米政権の国々はアメリカ一辺倒の外交姿勢を、程度の差こそあれ保っていた。明確にアメリカを中心にして世界政治が回っていたわけです。

あるいは大雑把ですが、イラク戦争からの「中東、アラブ・イスラム圏世界」対「アメリカ・キリスト教圏(主に宗教右派とネオコンが中心)イスラエル・ユダヤ教連合」の対立軸が世界政治の中心に見えました(アフガン自体は中東ではなく、中央アジアから南に位置していますが、イスラム教圏)。

中東は、ヨーロッパからみて東の中東アジア(日本からすると西に感じられるので違和感がある)であり、トルコなどはヨーロッパとアジアの狭間ですが、やはりアジアに属すると思います。

サミュエル・P・ハンティントン(Samuel Phillips Huntington)の言うところの『(諸)文明(間)の衝突』(The Clash of Civilizations)ですね。概念の表現としては使い易い言葉ですね、私は翻訳した本を1回通して読んだだけですが。「日本文明」なる言葉を置き土産にしてくれました。ネット検索してみると、日本は他に例をみない孤立文明だとかなんだとか。欧米の有名学者によるお墨付きを得たわけです。まさにありがた迷惑です。

さて2000年代前半は、アジアの政治と経済における地位と役割が拡大してきたとはいえ、相対的には低い事に変わりはありませんでした。「アジアの時代」というフレーズは、エズラ・ヴォーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と同じ美辞麗句の褒め殺し、建前上の社交辞令で、この頃だとその様にしか感じられなかった。結局は政治・外交・軍事的に押さえつけられ翻弄されていて、決定権が無いのですから、何の実感もわきませんでした。アジアは鬱屈しているので経済成長と発展に励むしかなかった(日本はそれすら出来なくなりましたが)。

あれから住宅バブル崩壊などを経て、世界的不況が訪れています。本番はこれからの可能性も有ります。アメリカの世界覇権後退(世界は健康体?)に伴って、更にその先には、占領地域からの全世界的撤退が始まる事が予想されます。

この過渡期にあって、「アジアの時代」が現実味を帯びてきました。[1444]でも書いた通り、BRICs(ブリックス)のうち3ヶ国、ロシア(の大部分)、インド、中国がアジア圏です。ブリックス以外でも、カザフスタン(中央アジア)やモンゴル、インドネシア(アジア最南端)など潜在力がある国々があります。それでもやはり「チャイナ・アズ・ナンバーワン」といわれる中国が伸びるんでしょうね。

オーストラリアとニュージーランドは、おそらくアジアに入らない(入れない)のでしょう。英連邦を離脱し自治領である事を止めて共和国になり、先住民のアボリジニが大統領にでもなればアジアと認められるでしょうけれども。マレーシアのマハティール元首相はじめアジアの政治指導者達にそんな嫌味をチクチクと言われ続けるよりは、白人としての優越感と存在意義を優先させる、と言われる通りになると思います。

それに対してフィリピンはキリスト教国であり、国名の由来や国内政治支配者層からしてアジア的ではなかったですが、それも独立以来貧困国のまま右往左往するうちに、段々と政治意識も変わってきたのではないでしょうか。位置からしても明確に極東アジアです。

日本もアジアの極東にあります。日本は戦後の高度成長経済で、他のアジア諸国より一歩先に輝かしい時代を向かえて過ごしてしまったので、当然上り坂があれば下り坂がきます。他のアジア後進工業国は「どうやったら時代の波に乗れるのか、乗り切れるか、乗り遅れないようにするか」という課題がありますが、日本の場合は先進工業空洞国(産業空洞化国家)になってしまったので、後進国なみの低賃金に後戻りするわけにもいかずにグズグズすることになります。失われた20年、日本病の発症です。

かつてのアメリカに対するヨーロッパのように、全ての先進国が通る道ですから、日本だけが避けて通れるわけがありませんので、仕方のないことです。日本の国民感情として、どのような精神状態でこれからの時代を迎え対処・対応出来るのか、今から考えなければと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[1446] 阿修羅掲示板からゲーツ国防長官来日についての投稿文を転載します 投稿者:会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2009/11/09(Mon) 18:15:14

会員番号4655の佐藤裕一です。

阿修羅掲示板から転載します。転載内容よりもTORAさんという投稿者のコメントの方が優れています。

(転載貼り付け始め)

米国との合意の再交渉を求めた日本の新政権に対し、ゲーツ国防長官は総理大臣に屈辱を与えた。米国の対アジア政策は間違っている

http://www.asyura2.com/09/senkyo74/msg/486.html

投稿者 TORA 日時 2009 年 11 月 06 日 15:20:03: CP1Vgnax47n1s

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu203.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
——————————————————————————–
米国との合意の再交渉を求めた日本の新政権に対し、ゲーツ国防長官
は総理大臣に屈辱を与えた。米国の対アジア政策は間違っている。

2009年11月6日 金曜日

◆きしむ日米関係、ほくそ笑む中国 11月6日 宮家 邦彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2080?page=1

迷走を続ける日米安保関係について、中国政府は今も沈黙を守っている。これまで何度試みても微動だにしなかった日米同盟が、ようやく、しかも日米双方の事情から混乱し始めた事実は決して小さくなかろう。今回は、最近の日米間の確執を中国の立場から検証してみたい。

日本で報じられなかったワシントンポストの報道部分

日本の大手マスコミは10月22日付ワシントンポスト紙の記事を大きく報じた。同紙が引用した「米国はこれまで対アジア関係で日本を『不変要素』と考えてきたが、現在最も困難(the hardest thing)なのは中国ではなく、日本である」との米国務省高官の発言が注目されたからだ。

予想されたこととはいえ、米政府内の対日懸念の大きさを象徴するこの発言は日本側安保関係者に少なからぬショックを与えたようだ。しかし、同記事の本質は同盟関係に関する日米間の確執の深刻さを伝えることだけではない。

記事を書いたのはワシントンポストの元北京特派員で、中国語にも堪能な敏腕記者である。筆者は8年前の北京駐在時代に知り合った。中国人を配偶者に持つ中国専門家ながら、ジャーナリストとしてのバランス感覚の高さには大いに敬服したものだ。

彼の記事の中で日本のマスコミが報じなかった部分を一部抜粋してみよう。

○オバマ政権は、もし日本の新政権が中国の台頭に対応する米軍再編計画に関する合意を反故にすれば重大な結果を招くと警告した。

○基地再編計画は、中国海軍に対抗すべくグアムの米軍基地を増強し、中国と北朝鮮の強力なロケット部隊を相殺すべく米軍のミサイル防衛能力を向上させることにより、増強を続ける中国軍事力と対峙するために練り上げられたものだ。

オバマ政権の対日政策批判

日本ではほとんど報じられていないこの部分こそが、ワシントンのアジア安全保障問題専門家の「常識」である。この友人は中国の軍事的脅威について比較的穏やかに書いているが、米国の反中・保守派ともなれば、その対中批判はさらに手厳しい。

例えば、10月30日の米フォーブス誌では中国批判で有名なゴードン・チャン氏がオバマ政権の対日政策を次のように痛烈に批判している。普天間移設問題は米国の対中軍事戦略と直結しているのだ。

○最近中国は米国の衛星を攻撃し、米国防総省に対するサイバー攻撃を行い、今年には南シナ海の米海軍艦船が曳航中のソナー装置を切り離し、盗もうとする「戦争行為」すら犯している。これら不当な行為に対し米国は公の場で何も発言していない。

○これとは対照的に、米国との合意の再交渉を求めた日本の新政権に対し、ロバート・ゲーツ国防長官は総理大臣に屈辱を与えた。・・・米国の対アジア政策は基本的に間違っている。

沈黙を守る中国

当然ながら、中国側も米軍再編問題を日米の対中軍事戦略の一環と考えている。最近の日米関係の迷走は、まさに中国の望むところであろう。しかし、賢明な中国政府関係者は、内心ほくそ笑みつつも、余計なコメントは避けているようだ。(中略)

チャンス到来

この調査を見る限り、最近の日米確執に関する中国側の見方は驚くほど冷めている。要するに、(1)米国の対日強硬姿勢は虚勢に過ぎず(2)中国を仮想敵とする日米同盟は今後とも続くが(3)中国の影響力には限界があり(4)当面現行の政策を変える必要はない、ということだ。

もちろん、これらは中国のネット使用者の意見でしかない。しかし、人民日報系の「環球時報」が報じていることを考えれば、中国政府の見方もそれほど大きく違わないと考えてよいかもしれない。

そうだとすれば、現在の中国側の沈黙もそれなりに理解できるだろう。建国以来、日米安保は中国にとって常に潜在的脅威であった。それが鳩山新政権になって混乱し始めたのだから、中国にとってはまさに千載一遇のチャンスなのである。

中国側が、ここは慎重ながらも、確実に日米間に楔を打ち込まなければならないと考えている可能性は高いだろう。中国が12月にも、次期総書記として最有力視される習近平国家副主席の訪日を検討しているとの最近の報道も、こうした文脈で理解すべきである。

「環球網」のアンケート調査が示すとおり、日米安保関係に対する中国の影響力には自ずから限界があるが、今後中国側が日米同盟関係の混乱に乗じて、民主党新政権に対する中国の影響力を拡大しようとすることは間違いなかろう。

報道によれば、習近平氏訪日の準備のため、楊潔?外相など中国側要人が今後相次いで訪日するとも言われる。11月の米大統領訪日と12月の中国国家副主席訪日を、日米、日中外交だけではなく、日本を巡る米中間の水面下での熾烈な外交の一環として考える視点を忘れてはならない。

◆ゲーツ国防長官はなぜ自衛隊栄誉礼を辞退したのか――日米同盟の危機?! 10月26日 古森義久
http://komoriy.iza.ne.jp/blog/entry/1290009/alltb/

ワシントンの日米関係政策コミュニティーでは「ゲーツ氏の辞退」が少なくとも重大な出来事として論議の対象となっています。その論議の背後にあるのは「日米同盟は危機を迎えつつあるのか?」という疑問です。

ワシントンでゲーツ長官の外交儀礼を欠いたかのような態度が最初に話題となったのは、ワシントン・ポスト10月22日の記事が契機でした。この記事はジョン・パンフレット記者とブレイン・ハーデン記者との共同執筆です。

ハーデン記者は東京駐在のようですが、パンフレット記者は元来は中国報道で名声を確立したベテランです。いまはワシントン駐在で、部長級のエディターとして取材も執筆もするという感じです。ちょうど私の北京駐在時代にパンフレット記者も北京にいて、知己を得ました。

その両記者の長文の記事はゲーツ長官の訪日にからめて鳩山新政権のアメリカや日米同盟に対する態度にオバマ政権がいらだちを深めているという趣旨でした。見出しは「アメリカは軍事パッケージに関して日本に圧力をかける」「ワシントンは東京の新リーダーたちが同盟を再定義しようとすることに懸念を抱いている」でした。

その記事でとくに興味深い部分は以下の記述でした。

「外交儀礼が重要性をにじませることの多い(日米同盟)関係で、

ゲーツ長官は自分自身のスケジュールに(米側の受け止め方を)語らせた。長官は防衛省高官たちとの夕食会と防衛省での歓迎の儀式への招待をともに辞退したのだ」

このことは日本側では少なくとも読売新聞が報じていました。しかしごく小さな扱い、しかも他の解説記事のなかの短い言及という感じでした。産経新聞もワシントン・ポストの報道を受ける形で25日付で報じています。「ゲーツ長官はいったんはセットされていた北澤防衛相との夕食を断った」というのでした。

ゲーツ長官は明らかに鳩山新政権への不満のために、あえて会食も栄誉礼歓迎式もボイコットしたのです。こんなことは日米安保関係の長い歴史でもまず例がありません。アメリカ側はそれだけ現状を重大だと認識し、不満や抗議の念を強めているのでしょう。

オバマ政権がこのように強硬に、しかも臆するところなく不満を表明するという現実は、日本の安全保障にとっても深刻です。米側の硬化は今回は夕食と歓迎式の辞退、あるいは拒否だけに留まったようですが、安全保障でのこうした負の変化は必ず経済面にまで波及します。そうなると安保面での悪影響を認めたがらない日本側の特定勢力も、さすがに経済面での悪影響は認めざるを得ないことになるでしょう。そういう流れが少なくとも過去のパターンでした。

オバマ政権がこうして強硬な姿勢を打ち出してきたことの理由や経緯はまた回を改めて報告しましょう。

今回、強調したいことは、たかが夕食会とか歓迎式といって、軽視をすると、全体図の不吉な変化の予兆をまったく見逃すことになるだろうという点です。日米同盟は破棄したほうがよい、という立場を取るのなら、またアプローチはまったく別になりますが。

(私のコメント)
アメリカのゲーツ国防長官の高圧的な態度は、古森記者が書いているように異例のものですが、それくらい今のアメリカ政府は日本の民主党政権に苛立ちを覚えているのでしょう。従来の自民党政権の時では考えられないほど日本政府の態度が硬いからですが、親米ポチ保守の記者はアメリカ様がお怒りだと言う事なのでしょう。

沖縄の普天間基地の問題は、自民党政権以来の10年にも及ぶ問題であり、地元との調整に手間取っている。しかし自民党でも踏み切れなくなったのは、新たな基地を建設するのに4000億円もの費用がかかると言う事であり、外国の軍隊の為にどうしてそんな負担をしなければならないのでしょうか? 岡田外相が言うように嘉手納基地に移転すればたいした費用もかからない。

ゲーツ国防長官の態度は失礼千万な態度であり、日本の防衛大臣がアメリカに行って国防総省の栄誉礼や幹部との会談を拒否したらどういう事なのか分かるだろう。しかし日本の新聞にはこの事実がほとんど報じられなかった。たいした事じゃないから報じられなかったのではなくたいした事でありすぎたから日本のマスコミは報じなかったのだ。

この事はもはや従来の日米の力関係では考えられなかった事なのですが、アメリカはリーマンショック以来国力を大きく失ってしまってプレゼンスが無くなってしまった。中国に対するアメリカ政府の卑屈なまでの態度は日本から見てもアメリカの権威を失わせるものであり、クリントン国務長官もぺロシ下院議長も北京に行っても人権問題を言う事は出来なかった。それくらいアメリカは中国に権威で負けてしまったのだ。

アメリカ自慢の国防力でも、中国が衛星を打ち落として宇宙にゴミをばら撒いてもアメリカ政府は一言も抗議しない。国防総省に中国からのサイバー攻撃を仕掛けても国防総省は何の反応も返さない。米海軍のソナーを曳航したロープも切断しても米海軍は何も出来ない。アメリカの中国に対する弱腰は日本を不安にさせますが、アメリカはもはや中国の軍事的脅威にアジアでは対抗できなくなっているのだ。

戦争はもはやミサイルが飛びかう戦争ではなくて、経済力や情報戦争が主な舞台になってきている。アメリカがいくら核ミサイルを持っていた所で使えなければ何の意味も無いのであり、現代の戦争ではミサイルよりもドルやユーロや元が飛びかう戦争になっている。ソ連は滅びたのもソ連経済が破局したからですが、アメリカが滅びるのも経済破綻が原因となるだろう。だから「株式日記」ではそれに備えろと書き続けてきました。

このような状況では、アメリカのゲーツ国防長官が圧力を掛けても鳩山首相はハトが豆鉄砲食らった程度のダメージしかないのであり、アメリカの一極覇権主義の時代はイラクやアフガニスタンで負けたことで終わってしまったのだ。後はアメリカが何時イラクやアフガニスタンから撤退するかの段階であり、撤退が遅れれば遅れるほどアメリカの滅亡の時は早まる。

その事に気がつかないのは自民党でありマスコミだ。古森記者もその一人なのでしょうが、確かにアメリカ国内にいればアメリカは豊かな国であり、その風景は昔と変わらないだろう。しかし一歩海外に出ればアメリカの威光は失墜してアメリカの影響力は急激に弱まってきている。アメリカの中国に対する媚びへつらいはその象徴のようなものだ。

アメリカは日本にとっての巨大市場だったのですが、リーマンショック以降は対米輸出は四割も減ってしまった。だからトヨタもホンダも大幅に減益か赤字で、市場を中国やEUに求めざるを得なくなった。そしてアメリカの消費が回復する事は不動産価格が元に戻らなければ無理だ。こうなれば日本にとっても背に腹は代えられないから「アメリカさんさようなら、中国さんEUさんこんにちわ」にならざるを得ない。金の切れ目が縁の切れ目であり、アメリカからは金をたかられるだけであり、同盟国としてもメリットも少なくなる一方だ。

◆上海協力機構という存在-ユーラシアの地政学の新局面 8月号 寺島実郎
http://mgssi.com/terashima/nouriki0908.php

注意深く見つめている数字がある。今年に入っての日本の貿易構造の変化を示す数字である。二〇〇九年一~五月の輸出と輸入を合計した貿易総額における相手先の比重において、米国との貿易が占める比重はわずか一三・五%となり、中国との貿易比重は二〇・三%と、ついに二割を超した。また、アジアとの貿易比重は四八・五%となった。短期的要因としては、中国依存の景気回復に傾斜する日本ということであり、長期的構造要因としては、通商国家日本が「米国との貿易で飯を食う国」から「中国を中核とするアジアとの貿易で飯を食う国」へと変質していることにほかならない。

さらに、欧州やロシア、中東を含むユーラシア大陸との貿易という視点でいえば、実に日本の貿易の七五%はユーラシアとの貿易となった。より踏み込んで凝視すれば、上海協力機構(準加盟国を含む)の国々との貿易が、日本の貿易総額の二六・〇%を占めるまでに拡大していることに気付く。米国との貿易比重が一三・五%と、八年前の半分にまで落ち込み、上海協力機構との貿易比重が八年前比で倍増しているところに、二一世紀日本の国際関係の基盤の変化が凝縮されている。

拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント 削除
2009・11・6「米テキサス州、米軍基地で軍医が銃乱射し12人死亡」とのニュース。
沖縄の米海兵隊員にも「事件」が多く、海兵隊基地を引き受ける都市がないとか。在日米軍基地内は米国憲法下にあるが、「日本の領土」を米軍が守る義務はないと聞く。もし日米安保と「思いやり予算」が釣り合わないなら、見直すのがふつうではありませんか?アジアの戦闘から米が引き上げる方が、今の米にも有益ではないでしょうか。EUは「日本が米にジャブジャブマネーを貸したので世界不況を起こした」と怒っている。オバマ大統領に聞いてほしいです。「米の日本への過度な内政干渉を、大統領は本当に不快に思っておられますか?」と。
2009/11/06 16:47
 また古森か、と、古森義久を阿修羅検索してみるとでるわでるわ。
こやつ統一協会に属しているとしか思えへんで。
2009/11/06 17:48
バカなネウヨどもが日米同盟が無くなればさも日本が無くなるかのようなアホコメントをたくさん出しているが、この連中は純粋に日本人ではないのと違うか?
2009/11/06 21:55
小沢が言うように、米、中国、日本の三者鼎立テことなのか。
 まもなく覇権国は中国にとって替わるダロウから、少し前の中国軍事パレード、はたまた航空母艦自国建造を具体化させること等により、米に対して中国を武力で打ち倒すことが出来ないことを米に充分自覚させておいて、米ドルの崩壊前に、ドル売りをしかけて、米を滅ぼすつもりだ。
 武力でこれを防ぐことは出来ない米だから来年、再来年ソノ後には確実にこうした事態が出来すると目される。
 鳩山政権はこれを見越して、日米同盟は主軸と口でいいつつ、中国といい関係を築いていく所存であろう。中国と一緒にドル売りを出来る立場に日本を持っていく必要がある。民主党政権下こうした変動の時代がおこることは確実だろう。コノぐらいのことが出来なくて、コノ国が、欧米に「日本みたいになりたくない。」といわれ、特に米国にいわれて、黙っているなら、クソだ。

2009/11/07 00:29

(転載貼り付け終わり)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[1447] 岡田英弘歴史掲示板から副島隆彦先生による投稿を転載します 投稿者:会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2009/11/18(Wed) 20:32:24

会員番号4655の佐藤裕一です。

岡田英弘歴史掲示板から、副島先生の投稿(転載文章)を再掲載します。

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

[66] 岡田英弘論を、ネット上で見つけましたので転載します 投稿者:副島隆彦 投稿日:2002/02/05(Tue) 12:29:38

副島隆彦です。 岐丸君にご挨拶するのは初めてです。
ネット上で、岡田英弘先生の著作を論じた文章を見つけましたの
で、転載します。ワーカーズ・ネットとありました。

(転載貼り付け始め)

真性保守から「日本文明」派に放たれたキッーイ一発
近代学問は個々の政治的思惑を易々と打ち砕いていく
――岡田英弘氏『歴史とはなにか』文春新書に学ぶ

岡田英弘氏といっても、一般の人で知る人は少ないであろう。しかし、歴史に関心のある人なら、彼の名前は、まさに逸することができないものがある。
 
 岡田氏は、モンゴル史・満州史の世界的権威にして、日本古代史と中国史の権威としても学会では知られているが、この世界では、徹底的と言っていいほど無視されてきたが、近代学問の実力で、ここ二十年ぶりに復活してきたばかりか、今や大いに注目されるまでになっている。
 
 そもそも、一般書におけるデビュー作は『倭国』1977年、姉妹本として『倭国の時代』1976年の二冊があるが、これらの本の内容は、日本の平泉澄ほどの皇国史観の頑迷派でなくとも、日本文明派のいう民族の尊厳や自信を打ち砕くのに充分なものがあり、その根拠とされた中国の正史のもつ本来的な政治性やいい加減さを容赦なく暴ききったために、日本史学会や中国史学会から追放に等しい扱いを受けたといわれている。
それほど、学会とは陰湿な世界なのである。前置きはこのぐらいにして本論に入ろう。

この本は、「岡田史学」の入門書とも言うべき本で、単なる新書版でありながら、実にコンパクトに、岡田理論が展開されている。

第一部は、「歴史のある文明、歴史のない文明」という岡田史学の原論である。彼によると、歴史のない文明の代表は、インド文明と後で地中海文明に巻き込まれていくことになるイスラム文明と現在と未来にしか関心がないアメリカ文明が挙げられている。

それに対して、常に「正統」の継承性のみを問題にして、世界の変化を認めない中国文明の歴史観と、二つの勢力が対立し最後に正義が勝って終わる地中海文明の歴史観があるという。また、歴史があっても借り物で、歴史の弱い文明があるとして、先にあった文明から文化要素を借りてきて独立した文明を「対抗文明」とし、日本文明を中国文明の対抗文明とした。

こうした論断は、日本文明派には許せざる所行であろう。さらに、まとめとして、「閉鎖的な日本の性格は、中国の侵略に対して自衛するという、建国をめぐる国際情勢が生みだしたもので、反中国が日本のアイデンティティなのであり、そうしたアイデンティティに根拠を与えたのが、『日本書紀』が創りだした日本文明の歴史観だった」と日本文明の成立事情を、大胆に説明しているのである。まさに、日本文明派にとっては、ゆるすべからざる発言ではあった。

第二部は、「日本史はどう作られたか」というもので、「神話はどう扱うべきか」、「『魏志倭人伝』の古代と現代」、「隣国と歴史を共有するむずかしさ」の各章で、先の日本文明の成立事情を具体的に補足する形で展開されており、西尾幹二ら日本文明派にとっては、一大痛打が浴びせられている。

彼によれば、『古事記』は偽書で、『日本書紀』は、天皇という君主の正当性を保証するために作られたとし、「天武天皇」以前の天皇の実在性を否定した。それ以前の天皇、たとえば神武天皇や日本武尊などは、天智天皇・天武天皇兄弟と両親の時代に起こったことを下敷きにして筋書きが決められているという。これだけでも保守反動側には大打撃である。さらに、中国正史の政治性といい加減さを暴くことに欠けても徹底しており、反動に対する武器となること請け合いである。また最後に、隣国と歴史を共有する難しさについて語り、自己の正当化は、歴史のおちいりやすい落とし穴であると忠告している。是非精読していただきたい。

第三部は、「現代史のとらえかた」と題して、「時代区分は二つ」、「古代史のなかの区切り」、「国民国家とはなにか」、「結語」の各章が展開されている。ここも山場であり、岡田史学の世界性を示している。中でも、国民国家に対する議論は、新鮮なものがあり、「国家」とか「国民」という枠組みを使って、十八世紀以前の歴史を叙述するのは、時代錯誤だという彼の主張は正しい。

また、十九世紀になるまで、中国人はいなかったという彼の主張は、彼が排撃される原因となったが、このことは、日本文明派が、『国民の歴史』などという怪しげな本を押し立てて策動していることを考えると全く正当な主張である。

「こういう枠組みを取り払って、まったく新しい術語の体系をつくって、歴史の叙述をはじめなければならない」とする岡田史学に、私は共鳴する。関心がある人は、先に紹介した『倭国』・『倭国の時代』、さらに『日本史の誕生』を検討いただきたい。

最後に,彼を師と仰ぐ人物に「属国・日本論」の副島隆彦氏がいるが、副島氏への批判とも読める205ページの「朝貢冊封体制」論批判を引用して終わろう。
 
 「朝貢冊封体制」というのは、第二次世界大戦後の日本で発明されたことばだ。これは どういう説かというと、「中国は世界(当時の東アジア)の中心であって、そこに異民族 の代表が朝貢し、貿易を許される。皇帝からもらう辞令(冊)によって、異民族の代表の 地位が保証される。こうして、中国の皇帝を中心として、東アジアには、朝貢と冊封に 基づく関係の網の目が張りめぐらされていた。これが東アジアの秩序を保証していた」 というものだ。ところが現実には、そんなことはぜんぜんなかった。

このように、朝貢に対する誤解に対する反感を露わにする岡田氏と、『天皇がわかれば日本がわかる』との本でも一貫させたように、「冊封体制」を、世界覇権国家と属国との関係とするとの副島氏の認識との明確な違いについては、彼の出藍の誉れかどうか、今の私には判断がつかないが、機会があれば直接本人に確かめてみたいと考える。

それはともかくとして、是非読者に一読を勧めたい本ではある。(直)

(転載貼り付け終わり)

副島隆彦拝

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[1448] 岡田英弘歴史掲示板から「天皇がわかれば日本がわかる」についての投稿を転載します 投稿者:会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2009/11/18(Wed) 20:33:47

会員番号4655の佐藤裕一です。

続けて、法制史学者の斎川眞さんの著作「天皇がわかれば日本がわかる」の引用文章の投稿を転載します。

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

[133] 陛下・殿下・閣下という言葉の役割 投稿者:会員番号2003 投稿日:2004/10/26(Tue) 12:24:27

“「天皇がわかれば日本がわかる」斎川 眞 著”から引用します。
(引用はじめ)

陛下の「陛」とは、「きざはし」、すなわち宮殿に昇る階段のことである。
だから、陛下とは、文字通り読めば、「階段(きざはし)の下」ということであるが、それは、「階段の下にいる君主の側仕えの臣下」を指す言葉である。

この臣下が何をしている人物かというと、君主への取り次ぎをやっているのである。
君主に直接言上したり、直に文書や何かを渡すことが、恐れ多いということである。
その言葉が転じて「陛下」とは、「自分(たち)は、この階段の下にいる貴方様の臣下です」という意味になったのである。尊敬の対象である天皇を直接指し示さないことによって、へりくだって敬意を表しているのである。

いまでも、これと同じことが、手紙の脇付けにかすかに残っている。
 宛名の「何々様」の脇に、「侍史」(書記役・祐筆)あるいは「足下」などと脇付をつける-今では書く人はごく稀であろう-ことが、現在かろうじて残っているのは、昔の慣行の名残である。つまり、「この手紙を書いた私は、宛名の貴方に敬意を表して、貴方の名前を直に指し示すことを憚り、脇に仕えている人から渡してもらうという気持ちでおります」というのである。

「殿下」という言葉も、同じように、「自分(たち)は、この御殿の下にいる貴方様の臣下です」という意味である。
 陛下は、英語では、国王に対する呼びかけの敬称であるユア・マジェスティ(Your Majesty)に当たる。

殿下は、ユア・ハイネス(Your Highness)に相当する。
 ついでに言うと、「閣下」という言葉も、台閣や楼閣という言葉から連想されるように-名曲「荒城の月」にでてくる「春高楼の花の宴」の「高楼」である-高殿にいる高官を指す言葉である。この言葉も、「自分(たち)は、この高殿の下にいる、高官である貴方様の臣下です」という意味である。

とにかく、直に相手の名を呼びかけないというのが、陛下・殿下・閣下という言葉の役割である。

(引用おわり)

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

[1449] 阿修羅掲示板から転載します。「中美共治」とは? 投稿者:会員番号4655 佐藤裕一 投稿日:2009/11/19(Thu) 08:43:55

会員番号4655の佐藤裕一です。

阿修羅掲示板から転載貼り付けします。

(佐藤裕一による転載貼り付け始め)

「中美共治」という言葉が中国のマスコミに登場した。「G2」とは米中で世界を統治するという意味であり米国の衰退を鮮明にした

http://www.asyura2.com/09/senkyo74/msg/916.html

投稿者 TORA 日時 2009 年 11 月 18 日 14:13:02: GZSz.C7aK2zXo

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu204.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
——————————————————————————–
「中美共治」という傲慢な言葉が中国のマスコミに登場した。「G2」とは、
中国と米国で世界を統治するという意味であり、米国の衰退を鮮明にした

2009年11月18日 水曜日

◆オバマ米大統領の訪中、さらなる米中「蜜月」? 11月16日 サーチナ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=1116&f=column_1116_005.shtml

「1979年の国交正常化から30年、米中関係はこれから第二段階に入る。そこにはルールブックはない。キーワードは、『互相幇助、互相発展』(相互に助け合い、相互に発展する)だ」

8月に着任したばかりのハンスマン駐中アメリカ大使は、先日、流暢な中国語で私にこう語った。

11月15日(昨晩)深夜、オバマ大統領が中国へやってきた。歴代のアメリカ大統領の中で、就任以来、最も早い訪中である。しかもオバマ氏にとっては初訪中で、アジア歴訪8日間のうち、実に半分の4日間を中国で過ごす。貿易摩擦、通貨統制、地球温暖化、北朝鮮・・。オバマ訪中で取り上げられる議題は多々あるが、米中ともに、より高次元で両国関係を捉え始めている。中国の外交関係者が明かす。

「9月24日、アメリカのスタンバーグ国務副長官が、『今後の米中は、‘戦略的保証‘(Strategic Reassurance)の関係になるべきだ』と発言した。『アメリカは中国の台頭を歓迎し、中国は他国の安全と利益を脅かさない。米中は共に戦略的に保証しあうべきだ』というのが主旨だ。以来われわれは、オバマ政権の提起した『戦略的保証』の概念の真意を探ろうと、あらゆるルートを通じて研究を開始した。これはブッシュ前政権が中国を『利益相関者』(Stakeholder)と提起して以来、アメリカ政府の4年ぶりの方向転換を意味する」

少し説明が必要だろう。2005年9月に、当時のブッシュ政権随一の親中派と目されていたゼーリック国務副長官が、「今後アメリカは中国を利益相関者(Stakeholder)とみなす」と発言。これが中国外交当局者の間で、大きな波紋を呼んだ。つまり、これまで自分たちを敵視しているとみなしてきたアメリカが、初めて「利益を共有する者」と評価してくれたと受け取ったからだ。実際この「ゼーリック発言」以降、中国のアメリカ外交は大きく協調路線に転換していった。

そして今回、オバマ政権は新たに、「戦略的保証」なる外交方針を掲げたわけだ。これは冒頭のハンスマン大使の発言にも連なる、「30年ぶりの対中政策の大方向転換」を意味する可能性があるのだ。だが中国は、警戒心を解いていない。前出の中国の外交関係者が続ける。

「確かに『戦略的保証』の概念は、21世紀にふさわしい中米関係の構築という意味で、大変重要である。いまや米中関係は、単に2国間の関係から、よりグローバルな全地球的な関係へと進化・発展しつつあるからだ。しかしその一方で、『戦略的保証』の概念は、『我明彼暗、我優彼劣、我対彼錯』(我が方は明るくて優位で正しい、先方は暗くて劣っていて誤っている)というアメリカの伝統的な中国蔑視政策から抜け出ていないという指摘も、われわれの中である。中国が今回、オバマ大統領を手放しで‘熱烈歓迎‘しているわけではないのも、まあしばらく様子を見てみようということだ」

9月11日にオバマ大統領が中国製タイヤに3年間の報復関税をかけると宣言して以来(これを中国の外交関係者たちは「9・11事件」と揶揄している)、米中は貿易問題に関して、水面下で‘死闘‘を繰り返してきた。中国メディアは「オバマとの60日戦争」と煽動するなど、マスコミを巻き込んだ‘総力戦‘となっている。

そんな中、訪中したオバマ大統領に対して、中国はアメとムチをそれぞれ用意した。まずアメとは、上海ディズニーランドの許諾だ。米企業としては史上最大の35億ドルを初期投資して、上海万博後のオープンを目指す。今回オバマ大統領が超多忙のスケジュールの中、わざわざ上海まで足を伸ばしたのも、この一件が大きい。「中国のディズニー」を、アメリカの金融危機の救世主にしようというわけだ。他にも、アメリカの航空技術投資を決めている。

逆にムチとは、オバマ大統領訪中直前に、温家宝首相をアフリカに派遣したことだ。11月8日、温首相はカイロにアフリカ49ヵ国の代表を集め、対中債務の免除と、新たな100億ドルの借款を約束し、アメリカの度肝を抜いた。「遠交近攻」(遠くの国と組んで近くの国を攻める)とは、古代からの中国外交の常套手段だ。中国は、アフリカを取り込んで、国連を始め多国間外交においてアメリカを包囲しようという長期戦略を抱いているわけだ。

いずれにしても、世界を遍く巻き込む米中外交が、ますます「日本抜きで」進んでいくことだけは確かだ。。

◆宮崎正弘の国際ニュース・早読み 11月18日
http://www.melma.com/backnumber_45206_4675678/

米中新時代のどこか「新しい」のか。オバマ訪中の意義とは?
オバマの米国も「中国様」に平身低頭。「中美共治」という美辞麗句も登場

オバマ大統領の訪中は「多大な成果」を挙げられず、12年ぶりの「共同声明」を出して終わった。「戦略的信頼」を謳った米中共同声明の中味に新味はなく、1998年の米中共同声明を塗り替えただけのものである。
 これでは日本の媚中外交も霞んでしまいそう。

米国は人権批判もチベットもウィグルも議題に持ち出さず、唯一、共同声明に「人権で意見の相違がある」と文章化したのみ。

地球温暖化との協力を一応は提議したが、もっぱら専心したのは「人民元」「貿易不均衡」だった。ただし、北京での記者会見の席上、オバマは「台湾関係法」の維持を明確に言い切った。

「周到に慎重に手配された」(ヘラルドトリビューン、11月18日付け)中国訪問だったが、オバマがのぞんだ「民主活動家」「ブログの言論人」「学生活動家」らの対話は実現せず、上海でのタウン・ミィーティングは共産党が指名し、動員された「やらせ」の聴衆だった。
 中国のマスコミは、いつものように都合の良い報道しか許可せず、北京の学生は、上海で行われた大統領との対話集会を知らなかった。

「つまり自由民主をのぞむ学生、知識人との対話や軍視察、研究所視察というオバマの事前の訪問希望はすべて断わられ(警備の都合という理由がついた)、かわりに用意されたのが紫禁城と万里の長城見学。これで合計六時間。まるで観光旅行に終わった」(ディビッド・シャンボー、前ブルッキングス研究所シニアフェロー、IHT=11月18日コラム)。
 
 「中美共治」という傲慢な言葉が中国のマスコミに登場した。
文字通りに解釈すれば「G2」とは、中国と米国で世界を統治するという意味であり、ロシアもEUも、もちろん日本も入らない。
 「米ソ冷戦」から「米中共治」。
嗚呼、米帝国の衰退によって状況はかくも鮮明に変貌した。

(私のコメント)
米中関係の力の変化は今回のオバマ大統領の中国訪問でも現れてきている。アメリカは債務国であり中国は債権国なのだ。日本もアメリカに対する中国に次ぐ債権国なのですが、軽視されて全く相手にされていない。民間も含めれば日本はアメリカに対して400兆円以上のドル債券を持っており、それらが売りに出ればアメリカ経済は破綻する。

しかしアメリカは日本を軽視し中国を重視している。それくらい日本はアメリカにバカにされているのですが、そうさせているのは日本の政治家とマスコミだ。日本の政治家は田中角栄のようになりたくなければアメリカの言う事を聞けといった脅しに屈してアメリカに従属政治を行なってきた。中曽根政権や小泉政権のように対米関係がよければ長期政権となり、悪ければ短期政権になる。

アメリカに対する貿易摩擦問題でも、日本に対してはスーパー301条をかざしながら制裁を辞さない圧力外交できましたが、中国に対してはアメリカは及び腰だ。今回のオバマ訪中でも人権問題や民主化問題は全くスルーされて台湾との関係も中国は一つといった事が再確認されてクリントン大統領以上の媚中ぶりだ。

人民元のドルペッグに対してもこれと言った成果が見られず、貿易不均衡は酷くなる一方なのにオバマ大統領は「戦略的保証」と言った中国を喜ばせる美辞麗句を連発した。「戦略的保証」が何を意味するかは謎ですが、ステークホルダーをより強化したものだろう。アメリカの国力の衰えを中国の力を利用する戦略なのでしょうが、中国の周辺国にとっては迷惑な話だ。鳩山首相がアメリカ離れを模索するのは当然であり、米中の力関係が変化している以上は当然だ。

90年代頃まではアメリカの第七機動艦隊は中国の沿岸を悠々と航行する事ができましたが、今では米機動艦隊の周りには中国の潜水艦が出没するようになった。通常型の潜水艦でもリチウムイオン電池の実用化で1週間程度の潜行活動が出来るようになって発見が難しくなったのだ。その事によって南シナ海は中国の内海化している。

アメリカの軍事力はこれ以上の増強は無理であり、イラクやアフガンで陸上戦力は釘付けにされている。イラクやアフガンでアメリカ軍の陸上戦闘能力の限界を見せており、中国の周辺地域ではアメリカ軍は中国軍に勝つ事は出来ない。だから日本は今までならアメリカ様さま外交で用が済んでいましたが、アメリカは戦略的に東アジアから撤退せざるを得なくなっている。

そこで問題になるのが沖縄の普天間基地問題であり、鳩山首相の抵抗がアメリカ政府をビックリさせている原因だ。鳩山首相はアメリカ抜きの東アジア共同体を構想している。このような鳩山政権の構想はアメリカにとっては大きな痛手であり、「G2]構想そのものも成り立たなくなる事になる。アメリカが中国に「G2]と言えるのも日本がアメリカについていればの話であり、日本が中国に付けばアメリカは西太平洋インド洋から追い出される。

それでアメリカからゲーツ国防長官がやってきて日米合意を守れと高圧的な脅しをかけてきましたが、鳩山民主党政権はぬらりくらりと引き伸ばしを図っている。鳩山首相がこのような強気でいるのはアメリカの奥の院と裏取引があるからだろう。アメリカにしても東アジアから軍を退くには軍部の抵抗がある。それに対して日本政府が出て行けといえば軍縮派としては渡りに船だ。

アングロサクソンの伝統的な戦略は分断して統治する事ですが、中国をこのまま強大化して日本を弱体化させることはアメリカとしても得策ではないだろう。自民党政権時代のようにアメリカに従属的なら「思いやり予算」などでアメリカが直接関与できますが、鳩山内閣では「思いやり予算」も見直しの対象だ。「思いやり予算」がカットされれば米軍基地は縮小されていくだろう。

つまり日本の3000億円あまりの「思いやり予算」がアメリカの「G2」構想を支えるものであり、沖縄の普天間基地問題が今後の日米中の力関係を左右するものになりかねない。中国から見れば鳩山政権の動きは中国の超大国化に力を貸すものかもしれないが、中国にとっては痛し痒しであり、アメリカに対しては「思いやり予算」中国に対しては「ODA]と金で米中を操っている事になる。

◆中国は世界最強国になりうるか、鍵を握るのは日本の民主党政権? 9月7日 サーチナ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0907&f=column_0907_005.shtml

昨年あたりから、米中の2大国首脳が定期会談を行い国際社会をしきっていこうという「G2論」が一部米国の専門家の間で話題になり、チャイナメリカという言葉もできた。辛亥革命から約100年、新中国建国から60年。中国の大国崛起物語は最終章に入ったという見方は国内外で広がっている。

次期外相の岡田克也氏は「中国重視でいく」と言明している。アメリカと距離をはかり、米軍の太平洋におけるフォーメーションの要である沖縄の普天間基地を県外移設したい考えも持っている。これに加えて中国が着々とすすめている「真珠の首飾り」戦略(インド洋をめぐる港建設・増築計画、中国海軍の制海権強化が目的とされる)が完成した暁には、中国も米国と肩を並べる軍事的影響力をもつかもしれない。

かりに日本が中国の同盟国にでもなれば、今のアメリカの地位に中国を押し上げることは可能かもしれない。鳩山由紀夫氏が月刊誌に書いた“反米論文”に対して米国側が示した過剰なまでの反応は、日本人に自分たちがキャスティングボートを握りうる立場にあることに気付かせた、かもしれない。

問題は、独裁国家・中国がそういう形で世界最強国になったとしても、世界中の誰ひとり、日本人はもちろん中国人ですら、おそらく喜ばないだろうということだ。民主党政権はくれぐれも血迷わないでほしい。

(私のコメント)
「株式日記」ではアメリカが唯一の超大国でいられるのは日本がアメリカについているからであり、大英帝国が最強だった時も日英同盟が支えていた。もし日米が普天間問題で拗れて日米同盟が解消されればアメリカは急速に超大国の地位から転落していくだろう。中国はドルの基軸通貨体制を批判しているし、日本もそれに同調すればドルは紙切れになる。それくらいアメリカにとっては日中が同調する事は脅威になる。

アメリカ政府が必要以上にナーバスになっているのは鳩山首相が何を考えているかが読めないからだ。鳩山首相はもともと自民党議員であり自民党と同じと考えていたのだろう。しかし鳩山論文を読めば自民党とは異なり脱アメリカの政策だ。日米同盟が機軸とは言っても敵にはならないと言う意味だけだ。90年代からの日本軽視と中国重視の政策が日本のアメリカ離れを促すものであり、アメリカの中枢にはこのような考えがあるということだ。

(佐藤裕一による転載貼り付け終わり)