「臨界点」(crisis)

菊地研一郎(会員番号2555) 投稿日:2010/11/06 08:43

佐藤裕一さん へ

菊地研一郎(会員番号2555)です。

「黒木 臨界点」をgoogle検索(ウェブとアップデート)すると、
最新でヒットするのは私kenitirokikutiのツイートだったりします。
氏の『臨界点』はさほど読まれも言及されもしていないようです。
故・黒木昭雄氏の『臨界点』を実際に読んだ私は、
その核心部分を説く義務を有しているでしょう。

黒木昭雄は娯楽作家ではなく元警察官のフリージャーナリストでした。
だから『臨界点』もほとんどノンフィクション小説の趣です。
氏の“捜査”乃至“調査”が成した仕事は他の著作や
ブログで充分に明かされています。
そこでここではそれ以外の部分、氏の考えや狙いといった
理想部分を素描します。

警察官僚は時折「組織防衛」によって、本来は守るべき対象である市民や、
或いは“良心派”組織人を抹殺することがあります。
警察官僚が自浄作用を喪失しきってしまったら終わりである。
それが黒木氏の動機でした。

『臨界点』本編は、警察の過剰「組織防衛」の悪が露見したところで終わり、
長いエピローグに続きます。

社会に自浄能力を欠いた警察への怒りが満ち、
各地各所で警察と市民の衝突が発生します。
そこで警察が機動隊を出動させてしまうのです。
紛争はエスカレートしてゆき、内乱(革命)か戒厳令か、
ということろまで進行します。

ここでやっと「臨界点(クライシス・ポイント)を
超えそうになった」という言葉が出て来るのです。

最後に、あるビデオメッセージが公開されます。
内部告発を試みて謀殺されたジャーナリストが
前もって用意していた遺言ビデオです。その内容は次のようなものです。

 自分はこうして内部告発せざるをえなかった。
 それはいつか誰かが成さねばならぬ仕事だった。
 だが、それによって社会が動揺し、暴動や内乱が発生する
 「臨界点(クライシス・ポイント)を超えそうになるだろう。
 どうか警察・大衆双方は理性的になって社会秩序を取り戻して欲しい。

ビデオ公開の翌日、警視庁トップらは辞職し、暴動も沈静化します。

おまけで専門術語「臨界点」(crisis)の語史を記します。
宗教から医術を分離したヒポクラテス(派)が使った言葉です。
ギリシア語で「クリシス」という。

施療後に患者の容態が回復するか悪化するか、
それの見極めることを「クリシス」と言う。

「科学(≒知識、物を知る Knowledge)と宗教(≒呪術、まじない)を
どうして分けたのか」とは道場内で副島隆彦が主張しています。
その前に、医術が病気治しのおまじないから分離独立したのです。
医学史は哲学史と比べるとマイナーなので、ここに書き留めました。