あまりにも平凡な当確の出し方。
伊藤睦月です。今回は、日本の選挙における、「当確」の出し方について、30年ほど前に、選挙管理委員会の総括みたいな仕事をしていた、知人に聞いた話。ずいぶん昔の話だが、基本的なメカニズムは変わらないだろう。
(1)まず、投票された用紙は、開票所に集められ、立会人の元、広い場所にザーッとぶちまけられる。開票所には、そういう「立会人」が結構いるらしい。
(2)投票用紙は特殊な作りで、ぶちまけられると、二つ折りにされていても、自然と開くようになっている。
(3)それらをまず、候補者ごと(例えばA候補者、B候補者、C候補者、その他(無効票)など。)に仕分けする。その時はカウントしない。時間がかかるから。
(4)そうして、投票用紙の山ができる。
(5)山がすべてできた時点で、それを数える。当時は一枚一枚数えていたが、今はどうだろう。
(6)ところで、どんな選挙だろうと、米大統領選における激戦州のような、その選挙の勝敗を決する選挙区や投票所が必ずあって、それは、メディア記者やベテランの選挙参謀は、経験的にわかっていて、そういうところに「張り込んで」いる。
(7)彼らは、開票が始まると、そういう投票所及び集計をまとめるところの「山」を目視、観察する。
(8)そして明らかに「山」が他の候補者と比べて、大きいと、これも経験則から「当確」を判断する。
(9)よくテレビの開票速報で、開票率数パーセントとか、あるいは、確定した得票数が少ない方の候補者に当確が出る時があるが、それは、まだ数えられていないけど、明らかに「山の大きさ」に差があるときだ。
(10)では、そういう状況で選挙不正をやるとしたらどうするだろうか。
(11)日本では、ネット投票や郵便投票の制度は原則ないから、あえて、他の候補者分を山に混ぜ込んだだ投票用紙の山を作るか、数を数えるのをごまかすか、いずれにしても、衆人環視のなかでやるので、そういうアナログな作業では限界があるだろう。
(12)集票機を操作する。しかしあまりに大差をつけると「山」を確認している人たちから怪しまれる。その辺の塩梅が重要?になる。
(13)ごまかす余地がありそうなのは、不在者投票箱だが、これも最初にぶちまけて、山をつくるので、なかなかスリリングな行為になる。スーパーで万引きをするようなものだから。
(14)結局は、投票前に、勝負をつけてしまう。いわば組織選挙だ。日本人は義理堅いから、そういう組織選挙に割と拘束されるものらしい。
(15)私の亡母は、いつかの選挙のとき、高熱を出していたにも関わらず、某支援団体の人が、投票所まで運んでいってくれたそうだ。(帰りは送ってもらえなかったらしい)母はぼやいていたが、普段のつきあいがあるので仕方ない、とか言っていた。母のような一票、一票を積み上げていくのが、最もオーソドックスなのだろう。
(16)最近では「浮動票」がSNSなどによって、大きく動くことがあるらしい。組織選挙をやっている人たちにとって、脅威らしいが、よくはわかりません。
(17)今後は組織運動で「岩盤票」を固め、SNSなどで、「浮動票」を捕まえる、という二段構えにならざるを得ないのだろう。両者のバランスはそれこそ、ケースバイケースなので、選挙参謀も大変でしょうね。
(18)そうなると、ますますオルテガ『大衆の反逆』の様相を呈していく、ということか。やれやれ。
以上、面白くもない、昔話でした。
伊藤睦月筆