「お役所仕事」は中国伝統の政治・行政スキルだ(3)前例主義と印章行政:菅義偉は、後世に名が残るかも?

伊藤 投稿日:2024/07/22 09:55

伊藤睦月です。

(1)「お役所仕事」の3アイテム、自己申請主義、文書主義、査定主義、に追加します。前例主義と印章(ハンコ)行政。

(2)前例主義は、これはもう有名ですね。悪しきお役所仕事の典型。しかし、特段支障が出なければ、そのままにして、支障が出たり、方針変われば、その時点で上書き修正する、というのは、仕事の効率からいって、とても望ましいことなのです。

(3)実際、役所の取り扱いがその場その場でころころ変わるのは、住民にとって迷惑な話で、公平性の見地からも問題あります。程度問題化と思いますが。

(4)そして、印章(ハンコ)行政。これって最近ずいぶん少なくなったと思いませんか。役所の諸手続きで。不動産取引とか、印鑑証明が必要とされるような重要な案件は別として、日常的に使う「3文判」の出番がずいぶん減りました。

(5)これは、菅内閣で「印章廃止」の方針が出されてから、特にめだつようになった現象、だと感じています。そうおもいませんか。

(6)菅内閣は短命に終わったので、何か中途半端な印象ですが、それでもジワジワと「印章廃止」が広がってきています。役人は一度方針(レール)がひかれると、その路線をできるだけ続けます。「お役所仕事慣性の法則(伊藤)」と名付けましょう。「前例主義」の一種です。

(7)実は、この「印章廃止」、日本文化にとって歴史的大事件、です。

(8)この「印章主義」こそ中国伝統の政治手法なのです。少なくとも、秦の始皇帝の時代までいけます。

(9)栗原朋信や、西嶋定生、といった、中国古代史の大先生たちが解明した、中国政治システムの肝、それが「印璽」(いんじ:印鑑のこと)なのです。

(10)その中国伝統2千年の超重要アイテムである、「印章(ハンコ)行政」を廃止しようとして、ある程度成果を上げた、この菅義偉、という男。実はなかなかの者ではないか。

(11)中国文明の伝統の破壊者、もしくは欧米文明導入の完成者。

(12)100年後の日本文化史、社会学史に残っているかもしれませんよ。

(以上、伊藤睦月筆)