原伸一ブログ記事を引用する。「プーチンに軍配 西が「NATOは1インチも東方拡大しない」と言った言わない論争 米国の公文書よりその該当箇所」
かたせ2号です。
貴重な記録なので、引用する。
原伸一さんブログから。
記事名:プーチンに軍配 西が「NATOは1インチも東方拡大しない」と言った言わない論争 米国の公文書よりその該当箇所
2022年5月15日
http://hara.livedoor.biz/archives/52323379.html
(一部、抜粋引用開始)
2022年5月9日ロシア戦勝記念日のプーチンの演説の中の、この部分:
「国際関係におけるあらゆる立場の違いにもかかわらず、ロシアは常に、平等かつ不可分の安全保障体制、すなわち国際社会全体にとって必要不可欠な体制を構築するよう呼びかけてきた。
去年(2021年)12月、われわれは安全保障条約の締結を提案した。
ロシアは西側諸国に対し、誠実な対話を行い、賢明な妥協策を模索し、互いの国益を考慮するよう促した。
しかし、すべてはむだだった。
NATO加盟国は、われわれの話を聞く耳を持たなかった。
つまり実際には、全く別の計画を持っていたということだ。」
上記の「去年(2021年)12月の安全保障条約締結の提案」は、これのこと。下はブルームバーグの昨年(2021年)12月22日の記事:
「ロシアは先週、新たな安全保障条約に関する提案の一部として、NATOに1997年の状態へと駐留軍を後退させるよう要求した。これは、NATOが東欧の旧ソ連諸国の加盟を認めて勢力を拡大する以前の状態を意味する。」
これを突き付けた上で、NATOの東方拡大に対しては軍事的な対応も辞さないよと警告しました。そんなムチャなと一見思いますが、この論拠というのがかつてゴルバチョフの時代に西側首脳が「NATOは1インチも東方拡大しない」と言ったではないかということ。
で、そんな約束はないだのあるだの、色んな人が色んなことを言っています。
これですが、東京外国語大学の伊勢崎教授はじめ気付く人は気付いていて、実は米国では2017年に公文書開示されジョージワシントン大学が公文書アーカイブサイトに掲載しており、確認できます。
1990年2月9日のゴルバチョフソ連書記長とベイカー米国務長官のモスクワでの会談の記録。全体を概説したページがこちら。
https://nsarchive.gwu.edu/briefing-book/russia-programs/2017-12-12/nato-expansion-what-gorbachev-heard-western-leaders-early
当該箇所のページがこちら。
https://nsarchive.gwu.edu/document/16117-document-06-record-conversation-between
ページを下にスクロールしてDocument6をクリックしpage5。該当部分だけ下に転載します。この赤線部。
https://livedoor.blogimg.jp/hara047/imgs/0/1/0130fb2d.png
ソ連シュワルナゼ外相の「東西が統一された後のドイツが何を要求するかわからない」という質問に対して、ベイカー米国務長官:
【ソビエト連邦だけでなく、他のヨーロッパ諸国にとっても、このことを保証することが重要であることを理解しています。米国がNATOの枠組みの中でドイツに駐留し続けるならば、NATOの現在の軍事管轄は1インチも東の方向に広がることはありません。「2 4」メカニズムの枠組みの協議と議論が、ドイツ統一がNATO軍事組織の東への拡大につながらないことを保証するはずであると私たちは信じています。 】
本件について、「その発言は東ドイツについてのものだったのだ」と解説する評論家が居るようです。確かに東西ドイツの統一について話をする文脈で出た発言ですが、前後を読むとNATO全体の軍事管轄区域であることが解ります。統一ドイツが何を言おうと、米国が駐留する限りドイツは抑え込める(NATOは拡大しない)と。
これに基づいて、ソ連は東西ドイツ統一を了承したのでした。
という訳で、ベイカー米国務長官の「NATOは1インチも東方拡大しない」発言は「あった」で確定です。この投稿をお読みいただいたみなさまは、貴重な歴史の目撃者・証言者です
(引用終わり)
以上