ブレイク:「邪馬台国畿内説」は政治的な邪魔が入らなければ、そのうちフェードアウトするだろう。

伊藤 投稿日:2024/12/02 13:57

伊藤睦月です。前回、コメントした、邪馬台国論争ですが、すでに、学会内では「九州説」で決着済みのようだ。その間の事情は安本美典典『邪馬台国は、99.9%福岡県にあった』(2015年勉誠出版)に詳しい。この本に書かれてあることが事実なら、勝負はついている。でもなぜ・・・

(1)「邪馬台国は北部九州にあった」という学説は、魏志倭人伝にでてくる、鏡、鉄の矢じり、勾玉、𥿻、について各県の遺跡から出土する数を調べて、数理統計学上の分析をすれば、99.9%の確率で、福岡県に邪馬台国はあった、ということになるらしい。

(2)これについては、畿内説をとる考古学者からは、無視されているようだが、専門の統計学者からすれば、「勝負あった」ということらしい。たぶんそうなんだろう。

(3)それよりも、注目すべきは、箸墓古墳=卑弥呼の墓説で、考古学の分析手法である、「炭素14年代測定法」で箸墓古墳の築造年代が、卑弥呼と同時期というのが、最大の論拠だとされていた。これが否定されたことだ。

(4)そして、この説が、2009年に朝日新聞で全国ニュースで報道されると、「畿内説」で決まり、という風潮になっていった。

(5)しかし、安本前掲書によると、この説が日本考古学会で発表されると批判が相次ぎ、当時の考古学会の会長が、取材にきていたマスコミ各社に対し、「この説は、学会多数説でない」という声明を出したという。

(6)これを受け、「週刊文春」が追跡記事を書いたり、先の安本説が、月刊「文芸春秋」に掲載されたりしたが、(2013年11月号)世間一般には、「畿内説」で決まり、という風潮は消えず、今に至っているそうだ。

(7)この説を学会で発表したのが、「国立歴史民俗博物館(千葉県)の研究グループ」で、発表前に、当時朝日新聞の文化部記者だった、塚本和人記者に事前リークし、塚本記者は、地元桜井市教育委員会や奈良県教育委員会、学会の重鎮で、元日本考古学会会長だった、「大塚初重明治大学名誉教授」(1926-2022)への取材を加え、学会での発表とほぼ同時並行で、新聞記事にしたという。

(8)この箸墓古墳=卑弥呼の墓説はその発表直後から、「邪馬台国畿内説」をとっている研究者でさえ、その大半は否定的であり、「炭素21年測定法」もそのずさんなやり方が、専門家の批判を浴びている。

(9)そして、実際に「箸墓古墳」や「纒向遺跡」を発掘調査している「奈良県立橿原考古学研究所」の研究員たちからも、異論がでており、ここで、「九州説」で一件落着、・・・とはならないのが不思議。

(10)また、このPRのやり方について、「調査費予算」を確保するためだと暴露する、関係者も現れた。

(11)安本氏は、これは、「旧石器捏造事件」や「STAP細胞捏造事件」と同じことではないか、と嘆いているが、マスコミ的には、前2者より、盛り上がりに欠けるようだ。

(12)伊藤睦月です。この箸墓古墳問題が長引いた要因の一つに考古学会重鎮の一人が加担していたことがあるだろう。本人がどれだけ自覚的かは今となっては不明だ。安本先生の憤りはもっともですが。重鎮の生前中は誰も阻止できなかった。

(13)しかし、その重鎮もこの世を去った。今から本格的な見直しが始まるだろう。というか、いつのまにか畿内説はなかったことになり、教科書の記述もいつのまにか変更されているだろう。聖徳太子のように。釈然とはしないけどね。その日を楽しみにしていよう。

以上、伊藤睦月筆