2022年6月23日から25日までにウクライナで起きたことを再現してみる。
かたせ2号です。
(最初に)
この投稿は、ふじむら掲示板[359]「2022年6月23日からウクライナ軍や州知事たちは、ゼレンスキー大統領の判断を通さず、自分たちの判断で行動(撤退)している。」の続きになるので、そちらをまずお読みいただければありがたいです。
(以下、本文)
これまで報道された情報を総合すると、だいたい、ウクライナで、以下のことが起きたと推測できます。
・ウクライナ軍は、セベロドネツクからの撤退を2022年6月23日に独断で決定した。ゼレンスキー大統領の承認をとっていない。しかも、この決定をゼレンスキー大統領サイドに通知していない。
・2022年6月23日・24日にかけて、州知事を中心に、軍は撤退するという内容を、ゼレンスキーサイドを通さずに、独自の手段(テレビやテレグラム)で発信した。
・2022年6月24日、この州知事たちの発言は事実かと報道機関に聞かれたゼレンスキー大統領サイドは、これに応える情報が手元にないため、「ノーコメント」として、お茶を濁すしかなかった。
・2022年6月25日、ロイター通信が「セベロドネツクからの撤退をウクライナ軍が決定」との情報を配信。ただし、ゼレンスキー大統領の許可なく決定した、という情報には触れなくてよい巧妙な表現方法で。これにより、ゼレンスキー大統領サイドは、これが確定した事実であることを確認できた。
・2022年6月25日、セベロドネツクからの撤退を情報に織り込んだ形での、ゼレンスキー大統領からのビデオメッセージを世界に発信することができた。これで、ウクライナのトップとしての格好がついた。ただし、セベロドネツクの状況につき、細かい情報を発信することのできない状況は現在も継続中。
・2022年6月25日、依然として、ゼレンスキー大統領サイドからの戦況情報に頼ることができない(彼らは情報を持っていないから)。ロイター通信は、ゼレンスキー以外のウクライナサイド、およびロシア軍の情報を合わせる形で確認の上、独自の判断で、セベロドネツクからのウクライナ軍が撤退した事実を報道した。戦況についての事実は、ウクライナ軍から情報を直接取得し、それをウクライナの意思として報道している。ここでも、戦況に関する情報がゼレンスキー大統領側に伝わっていない状況は巧妙に伏せられている。
かたせ2号です。
これまでまだご紹介できていなかった、ロイター記事2本を紹介し、その後に解説を加えます。ご参考ください。
ロイター記事から。
記事名:ウクライナ軍、東部の要衝セベロドネツクから撤退指示
2022年6月25日
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-idJPKBN2O6079
(引用開始)
ウクライナ軍は2022年6月24日、東部ルガンスク州の要衝セベロドネツクからの撤退を指示された。さらなる犠牲を防ぎ、部隊を再編制するためとしているが、ロシア側は重要な勝利と位置づけるとみられる。
同市では数週間にわたり激しい市街戦が行われ、化学薬品工場には市民数百人が避難しているが、ウクライナ当局者は、町は激しい損害を受けており、守るべきものはあまり残されていないとしていた。
同州のガイダイ知事は2022年6月24日、すでに部隊に移動命令が出ているとした上で、「ただとどまるという目的のために破壊された地域に何カ月もとどまるのは理にかなわない」とし「撤退せざるを得ない」との見方を示していた。
ウクライナ側にとって、セベロドネツクからの撤退は、2022年5月のマリウポリ陥落以降で最大の損失となる。
(引用終わり)
かたせ2号です。
「ウクライナ軍は2022年6月24日、東部ルガンスク州の要衝セベロドネツクからの撤退を指示された。」とあります。これは、誰が指示したかについて触れていません。なので、たとえ、軍総司令官がゼレンスキー大統領の許可なく、独断で、という場合でも、成り立ちうる表現です。しかし、普通の読者は、「ああ、ゼレンスキー大統領が指示したんだな」と理解するでしょう。そのようなミスリードを狙った表現です。これで、ウクライナ軍の独断による撤退、という情報が隠されます。ロイター通信は、これくらいのことは、平気でします。
ロイター通信から。
記事名:ウクライナ東部セベロドネツクが陥落、ロシアの「完全な占領下」
2022年6月25日配信
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-idJPKBN2O700X
(一部引用開始)
ロシア軍は2022年6月25日、ウクライナ東部ルガンスク州の要衝セベロドネツクを完全に占領した。ロシアとウクライナ双方が確認した。
セベロドネツクのストリュク市長は「今やロシアの完全な占領下にある」と認めた。セベロドネツクの陥落は、南東部の港湾都市マリウポリの先月の占領以降、ロシアにとって最大の勝利となる。
ウクライナは軍をセベロドネツクから引き揚げたことについて、ドネツ川を挟んで対岸に位置する都市リシチャンスクの部隊と合流させ今後のロシア軍への反抗を目指すための「戦術的撤退」と強調。一方、親ロシア派は、ロシア軍が現在リシチャンスクを攻撃中としている。
ゼレンスキー大統領は、セベロドネツクなどこれまでに失った都市を取り戻すと演説。同時に「(戦争が)いつまで続くのか、勝利が見えてくるまでにあとどれだけの犠牲を払わねばならないのか分からない」と述べた。
(一部引用終わり)
かたせ2号です。
記事の最初に、セベロドネツクからウクライナから撤退した事実を「ロシアとウクライナ双方が確認した。」とあります。ゼレンスキー大統領サイドから、撤退した旨の発表が出ないことをロイターはわかっているわけです。だから、ロシアとウクライナ双方が確認、という方法によって、撤退した事実をロイターが勝手に確定させたわけです。
また、「ウクライナは軍をセベロドネツクから引き揚げたことについて、ドネツ川を挟んで対岸に位置する都市リシチャンスクの部隊と合流させ今後のロシア軍への反抗を目指すための「戦術的撤退」と強調。」とあります。この情報は、ウクライナ軍の幹部から直接取材した内容でしょう。ゼレンスキー大統領の判断ではない。
ただし、そうであったとしても、上の表現は決して、ウソをついていることにはなりません。
しかも、この後段に、「ゼレンスキー大統領は、セベロドネツクなどこれまでに失った都市を取り戻すと演説。」という文が控えています。
ここまで読んだ読者は上の「ウクライナは」以下の判断は、ゼレンスキー大統領の了承を得たものと理解するはずです。この記事では、そのようなミスリードを狙っています。以上の流れにより、「戦術的撤退」という判断がゼレンスキー大統領の許可を得たものではなかった事実が巧妙に隠されます。
さすがは、ロイター。見事なものです。
以上