(参考文献)田村康二「“震度7”を生き抜く」より(3/4)

藤村 甲子園 投稿日:2011/03/17 01:51

(承 前)

[身体のリズムを取り戻すポイント]

地震では、一挙に急激な生活や環境の変化に出会う。このために体調がすっかり狂ってしまう。だから、変化に慣れるためにリズムを調律し直す必要がある。新しい環境に馴染み、溶け込み、適応し、順応して同化していくのである。どのように慣れていったらいいのかを知ることは、大切な生活の知恵だ。

新しい環境に慣れていくには、「基になる周期の四~五倍の時間」がかかる。まず、この原則をよく承知してほしい。

①一日のリズムを治すには最低四日はかかる。

病院に入院すると、普通、最初の四~五日間は微熱と軽い頻脈が起こる。その後は正常に戻るが、昔から医師はこれを「病院熱」と呼んできた。理由は、入院する前の生活リズムが入院で一変するからだ。しかし、一日の四~五倍、つまり入院四~五日目になると、ようやく新しい生活リズムに慣れてくる。

時差ボケも病院熱と同じである。交代勤務や海外旅行のために昼夜が逆転すると、体内に時差が生じる。これを「時差ボケ」と呼ぶ。海外旅行による時差は、日本から東西どちらへでも五時間以上続けて飛ぶと起きてくる現象だ。この結果、普通は寝ている時間に急に起こされ、寝ボケている状態と同じになってしまう。原因は、急に現地時間が異なる場所に移動して夜と昼が逆転してしまい、身体の時計が狂うからである。さらに疲労・ストレスが加わる。
ただ、このボケ状態も、病院熱と同じように四~五日でおさまる。ともあれ、一日のリズムの乱れを治すには、四~五日かかると思ってほしい。

②一週間のリズムの狂いを治すには最低四週間はかかる。

人には、「労働の一週間リズム」がある。旧約聖書には、「天地万物は完成された。第七の日に神はご自分の仕事を離れて安息された。この日に神は、すべての創造の仕事を離れ安息されたので、第七の日を神は祝福し聖別された。これが天地創造の由来である」と書かれている。

「神が全能なら、なぜ万物を作るのに六日間もかかったのか? なぜ一秒で作れなかったのか?」と異教徒なら当然の疑問を問うと、ユダヤ・キリストの聖職者の顔色が変わるだろう。しかし、彼らに感謝しなくてはならない。なぜなら、そのおかげで日本でも日曜日を休むという習慣が根づいてきたからだ。

医学的に、身体には「一週間」というリズムがあることがわかってきた。実験用のネズミも七日目には活動が鈍る。

要するに、環境の急な変化に対しては、まず、一日の四倍の四日間を使って慣れ、次に七日の四倍、約一カ月で慣れていくことが大切である。一週間のリズムを取り戻すには、四週間の連続した休養が必要となることを知ってほしい。もちろん、一カ月を取り戻すには、四カ月間辛抱しないと日ごろの生活は戻ってこない。

(以下、次号)