尖閣ビデオ流出事件は平成の五・一五事件である

岡山アキラ 投稿日:2010/11/16 02:30

国家公務員をしている岡山アキラ(筆名、会員番号1603)です。

私が、[12][15]及び[16]に投稿しているいわゆる「尖閣ビデオ流出問題の件であるが、以下の記事のとおり、自民党の谷垣氏が二・二六事件を引き合いに出し映像を流出させた海保職員を批判した。
(記事は、リンク先を参照。特に引用する必要がなければ、以下、記事のタイトル及びリンク先のみ記す。)

「二・二六も命令無視」映像流出保安官を自民・谷垣氏が批判
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101114/stt1011141824004-n1.htm

しかし、この事件は、世相や事件の状況等からすると、二・二六事件よりもむしろ以下のとおり元外務省職員の佐藤勝氏が本件の論評で取り上げている五・一五事件に似ており、平成の五・一五事件というべきものだと考える。

(はりつけはじめ)
(前略)
「力の省庁」に属する官僚の下剋上について、われわれは苦い経験をもっている。1932年5月15日、政界と財界の腐敗に義憤を感じた海軍と陸軍の青年将校が決起し、犬養毅首相らを殺害した。「方法はよくないが、動機は正しい」と五・一五事件の犯人たちへの同情論が世論でわき起こり、公判には多くの除名嘆願書が届けられた。本来、死刑もしくは無期禁錮が言い渡されるべき事件であったにもかかわらず、裁判所は世論に流され、被告人に対して温情判決を言い渡し、五・一五事件の首謀者、実行犯は数年で娑婆にでてくることになった。この様子を見た陸軍青年将校がクーデターを起こしても世論に支持されればたいしたことにはならないという見通しで、1936年2月26日に1400名の下士官・兵士を動員しクーデターを起こした。二・二六事件は、昭和天皇の逆鱗に触れ、徹底的に鎮圧された。しかし、二・二六事件後、政治家、財界人、
論壇人などは軍事官僚の威力に怯えるようになり、日本は破滅への道を歩んでいくことになった。
(中略)
 マスメディアは、国家の秘密情報を公開した者を徹底的に批判することができない。合法、非合法を問わず、このようなリーク情報なくしてマスメディアが生きていくことはできないからだ。それだから、マスメディア関係者には保安官を擁護しようとする集合的無意識が働く。これが国民の判断を誤らせる。
(以下略)

(はりつけおわり)
(はりつけ元)
【佐藤優の眼光紙背】尖閣ビデオ流出は官僚によるクーデターだ
http://news.livedoor.com/article/detail/5140247/

この佐藤優氏の評論はすぐれており、必読である。

日本政府が、本件の対応を誤ると、次は、「平成の二・二六事件」が発生するであろう。そして最悪は、「平成の日中戦争」の勃発や日本が「第三次大戦」に巻き込まれるなどということもあり得る。

これらを回避するためには、本件について、五・一五事件において日本政府がとった対応とは逆の対応を取ることが必要である。

すなわち、映像を流出させた海保職員が、法に則った範囲内の最高刑を受けることになるよう捜査当局・検察当局は世論にかかわらず努力することである。
また、海上保安庁は、世論にかかわらず内規上処分し得るもっとも重い処分を同職員に下すべきである。

また、このような政府を揺るがす事件が発生した時、どさくさまぎれに法令の改悪が行われることがあるが、今回も管・仙石政権は、以下のゲンダイの記事がとりあげてているように機密漏洩の罰則強化を打ち出している。

いよいよ表に出てきた仙谷長官「超危険思想」
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/gendai-000130262/1.htm

機密漏洩の罰則強化自体は、別に悪いことではないが、何を「機密」にするかが問題だ。
この記事を読むと、管・仙石政権は、例えば、以前あったイージス艦の機密漏洩事件、あるいは最近の警視庁公安部の資料流出事件等の機密漏洩事件の際の本当に機密にすべきものの漏洩の阻止だけなく、尖閣ビデオのような「政府に都合が悪い物も機密に指定」しその漏洩を阻止することを意図しているということがわかる。

これでは、機密漏洩の罰則強化の名を借りた言論統制強化である。
まだ、提言程度の段階であるから実質の動きはこれからであろうが、今後、報道の自由や言論の自由を含む概念である憲法第21条で言うところの表現の自由を守る上で、この「機密漏洩の罰則強化」の内容を今後もしっかり注目していく必要があるのは間違いない。

岡山 拝