学会通説を確認しなければいけない不自由さ、を蹴とばす!

伊藤 投稿日:2024/12/24 10:06

 伊藤睦月です。本日は、2024年12月24日です。

 私が、自他に対して、うるさいくらい「学会主流」「通説」にこだわっているのは、それらが好きだからでも、追随すべきと考えているのではない。そうしないと、せっかく自分の頭で考えたことであっても、通説とか少数説でもアカデミックの世界で、似たような見解があれば、そちらがオリジナルになる、というのが世間の掟だからだ。そして「通説の壁」を突破しないと、結局は「独りよがりの個人学説」になる。松本清張、矢切止夫、井沢元彦、そして副島隆彦先生、みなそういう世間の掟と闘い、オリジナリティを確保してきた人たちだと思う。小林恵子氏もそうだろう。だから敬意を持ちつつ、批判する。まあ、私のようなアマ初級者など歯牙にもかけていないだろうけど。それでもかまわない。客がいなくてもひたすら、場末の劇場でネタを出し続ける、売れない芸人のように、投稿するだけだ。(これ、副島先生のパクリ!)

 それにしても、かつて、井沢元彦(逆説の日本史)が矢切止夫のことを取り上げていた。井沢は言う。

 矢切が存命中はその先駆的な仮説には誰も見向きをしなかったくせに、本人が亡くなると、いつの間にか、「学会の通説」になっている。この日本の学問界の姑息さは許せない、と。私も早くそう言えるようになりたい。少なくともそれを目指したい。

 という、固い口調は、これくらいにして、

 吉村武彦(古田武彦とは別人)編「新版古代史の基礎知識」(2020年角川選書)という本がある。古代史のほとんどの論点の標準学説をコンパクトにまとめてあって、今現在の学者たちの多数派の見解を確認するのに便利だ。大体10年に1回くらいで改定されているようだ。値段も税別2100円と少しお高めだが、私はアマゾンの古本ショップで、1000円ほどで入手できた。これをみると、

1)厩戸皇子(聖徳太子)の標記は現状そのまま。大山誠一氏は、厩戸皇子=蘇我馬子説を「いつのまにか」となえている。学会に100条委員会はないのか。

2)法隆寺再建論争は、通説変更の可能性あり。(古田武彦説に接近している)

3)遣唐使では、「日本号」は使用できたが「天皇号」は、中国側に言えなかった(日中の外交関係は、対等という通説の事実上の変更)

※先を越されたなあ(ややおこ)

4)「騎馬民族」という語は一ミリも出てこない。(小林恵子先生、ガンバ!)

5)道教的信仰:苦しい言い訳をしているが、いまだ通説変更なし(下條竜夫さん、ガンバ!)

6)邪馬台国畿内説:まだ箸墓古墳を根拠としている。早晩、なしくずしに消えるだろう。安本美典説の勝利は近い。

7)古事記、日本書紀:記述が全くない。シメシメ。偽書説だけが論点じゃないのに。

 などと、わが副島学派の歴史好きにとっては、色々突っ込みどころありますよ。

 年末年始の暇つぶしにどうぞ。次の改定が楽しみだ。

 また、類書に『万葉集の基礎知識』がありますよ。柿本人麻呂の正体についての標準見解も載ってます。

 あ、それから、梅原猛『水底の歌』も少数説ながら無視できませんねえ。

老婆心ながら。

以上、伊藤睦月筆