天才・岡田英弘の孤独(5):おまけ

伊藤 投稿日:2024/11/16 10:32

伊藤睦月です。おまけ2つ

(1)「岡田英弘イジメ問題」については、ウィキペディア「岡田英弘」に本人と弟子のコメントを参照。読んでて切なくなった。

(2)それから、下條本に岡田英弘著作集全8巻を、中国の要人が読んで、絶賛し、その評価が日本に逆輸入されるだろう、という旨の、文があるが、楽観視が過ぎる、と考える。

(3)伊藤睦月です。上記「中国要人絶賛」の記事もウィキペディア(岡田正弘)に掲載されているが、この記事が事実だとしたら、そのポイントは、次の4点

(1)この記事は2015年、出元が「福嶋香織」であること。

(2)この福嶋香織がインタヴューした中国要人が「王岐山」であること。

(3)王岐山は、2014年の1年間にわたり、岡田博士の本を読んでいること。

(4)王岐山は、岡田英弘博士を「蔑視派」の歴史学者と認定していること。

(5)そのうえで、岡田博士は素晴らしい、とほめていること。

私は、この記事を読んで背筋が寒くなった。以下私の考えを簡潔に述べる。

(1)福嶋香織は、元産経新聞中国特派員で、現在フリー。新疆ウイグル自治区やチベットの人権弾圧に関する著書があるようだ。(私は、読んでいない)そんな「好ましからぬ人物」が介在している岡田本を彼らは歓迎するだろうか。

(2)この「王岐山」という人物の現在の政治勢力、パワーはどれくらいあるのだろう。これが習近平が読んで、褒めたのなら、その翌日には、中国中の本屋に岡田先生の本があふれかえっているはずだ。中国には「出版の自由」はほとんどない。そのほとんどすべては、なんらかの「政治色、政治的意図」があると見た方がよい。そんな「色」がつくことを岡田先生は望まれただろうか。

(3)この「王岐山」は、日本語の本は読めたのか、読めなくて、中国語に訳させて読んだのか、その辺は明らかではないが、それにしても、「1年間にわたって読んだ」ということは、著作集8巻を読んだ、ということだけではなく、それを含め、「岡田英弘」の「人物と思想調査」が完了した、ということだ、と思う

(4)一番の問題は「蔑視派」という認定だ。「蔑視派」とは何のことか、誰が誰を「蔑視」しているのか。そう、これは「日本人」が「中国人」を蔑視する歴史観という意味だと思う。そうだとするなら、岡田先生の本の随所に出てくる、「漢民族は、2世紀にはその大半が死に絶えた」とか「中国の近代化はすべて日本経由」みたいな見解を一貫して主張している、岡田英弘、という学者の本を中国で広めようとするだろうか。また逆輸入が実現するだろうか。

(5)そんな岡田先生を「王岐山」が褒めたという。それはいわゆる「ほめ殺し」とうもので、これを解読すれば「岡田英弘博士は、「蔑視派」として正々堂々と持論を展開している。それは、敵ながらあっぱれである。岡田先生は、われわれ、中華帝国に堂々と逆らった「国士」だ。国士には礼をもって、国士にふさわしい「名誉の死」をあたえよう。かの文天祥や方抗儒のように」

 伊藤睦月です。これって私の考えすぎだろうか。なお、岡田先生は、台湾の大学の先生をしたことがあるが、1980年に北京図書館に自分の業績論文を寄贈し、「林彪事件」の現場を視察(著作集第5巻にその時の写真が掲載されている)した以降は、中国に入国された、できた、のであろうか。

 そのへんの状況は私にはわからないが、そんなに中国に褒められることが、めでたいことなのだろうか。私にはよくわからない。アメリカに代わり、我々の宗主国になるかもしれない、国とつきあうことはそれはそれでやっかいだな、と正直に思う。

以上小休止。伊藤睦月筆