天才・岡田英弘の孤独(3)

伊藤 投稿日:2024/11/15 10:21

 伊藤睦月です。寄り道が過ぎるようですが、このまま、行っちゃいます。

(1)現在、『世界史の誕生』、『日本史の誕生』及び『倭国の時代』は、ちくま文庫に似たような装丁でならんでいる。しかし、その成り立ちは、前者と後2者とで全く違う。

(2)『世界史誕生』は将来この分野での専門家を目指す学生のための入門テキストとして企画された。たしか、「ちくまプリマー双書」とかというシリーズだったと思う。私はその中の「法哲学」とか「法思想史」とか「民法」などを読んだ記憶がある。

(3)この『世界史の誕生』の本文は、文章に「遊び」がない。論文、教科書スタイルである。ぎっしりと硬質な文章で埋められている。

(4)巻末に、「参考文献の解説」があり、各章ごとに必読の文献(日本語と英語)が、その解説(というか、読みどころ)とともに、紹介されている(全100本くらい)この本に取り組む者(学生)は、著者のナビに従って、、この100冊を読破、習得すれば、この分野での、必須文献をマスターし、専門家(大学院)への道が開ける、といった趣向である。これは決して一般向きの本ではない。

(5)伊藤睦月です。私はこのリストと解説をみて、驚愕した。岡田博士は、研究者としてだけでなく、教育者(メンター)としても優れた方だったんだろう、と痛感した。

(6)なお、私はこのリストにある文献を一冊も読んでないし、これからも手にすることすらしないだろう。私には無理。しかしこの分野では、入門中の入門文献なのだろう。せいぜい本文を読んでその雰囲気を味わうだけだ。

(7)また、この本は、私の知る範囲では、この分野の学術論文や、一般向けの本でも、必ず、参考文献として挙げられ、引用もされている。言及すらされない「日本史の誕生」とは好対照だ。この『世界史の誕生』を一般読者むきにかみ砕いて語っているのが、「歴史とは何か」(文春新書)である。これには、参考文献や引用はほとんどない、岡田先生の語りおろしである。

(8)だから、岡田先生が生涯かけて、言いたかったことを手っ取り早く知りたいのであれば、『歴史とは何か』、世界的な学者としての、「岡田英弘」をその雰囲気だけでも知りたい方は、『世界史の誕生』に取り組まれてみたらどうだろう。あなたも「モンゴル史」の専門家になれるかも?信じる信じないはあなた次第です・・・?(どこかで聞いたようなフレーズ・・・)

ここで小休止、以上。伊藤睦月筆