ブレイク:田中英道には、偏見をもっています。
伊藤睦月です。先日地元の大型書店の日本史コーナーで、下條氏の「物理学者が解き明かす邪馬台国の謎」が平積みで売られているのを見て、なんかうれしくなった。著者が主張する、「卑弥呼と道教との関係」など、もっと関係者間に広まればよい、と思います。
そんな中、少し気になったのが、下條氏が「田中英道」を取り上げていることだ。もちろん、引用は正確だし、指摘に間違いはないのだが、なんか気になってぞわぞわする。そこで、彼に関する記憶を思い起こすことにした。
(1)田中英道氏の西洋美術研究者としての評価はよく知らないが、2000年前後に「天平のミケランジェロ」という本で、奈良平城京をルネサンス期のフィレンチェになぞらえて讃えていて、なんか違和感を持ったこと。
(2)写楽の正体を葛飾北斎とする説を唱えていたこと。
(3)関東の古墳から、出土された、埴輪がユダヤ教正統派の恰好にそっくりなことから「ユダヤ埴輪」と名付け、日本には大量のユダヤ人が渡来してきて、その代表が山城の秦氏だという説を展開。
(4)「新しい教科書を作る会」の教科書編纂メンバーとして、渡部昇一(国民の歴史:教育勅語教育の復活を主張)、西尾幹二(国民の歴史:日本民族として誇りが持てる歴史にするべき、と主張)とならんで、「国民の芸術」という大部の本を執筆したが、その中で絶賛した「旧石器」が捏造だと判明したこと
などが、2000年前後の記憶にあります。
(5)また、日本史関連では『日本国史』という百田尚樹『日本国記』の内容とほぼ同趣旨(という私の印象)の本があり、縄文弥生のルーツは関東にあり、そこから西へ広がった、というような説を唱えておられるようです。(現在、同書をアマゾン注文中であり、確認出来たらまた報告します)
(6)下條氏引用の本の主旨は、氏の言われる通りなのですが、私が本屋で立ち読みした印象では、どちらかと言えば、小冊子的な作りで、「魏志倭人伝はいんちきだ」からさらに一歩を進めて、「だから、古事記、日本書紀の書いてあることは真実だ」と主張されているように思えました。(日本書紀には卑弥呼のことも書いてあるのに・・・)
(7)また、田中氏は、『日本国史学会』(任意団体。学会登録はしていない)の会長でもあります。
(8)また、田中氏は政治的立場も明確、で最近『虚構の戦後レジーム』という本を出し、東京裁判否定、「歴史修正主義」の考えを鮮明にしておられます。
(9)この本のアマゾン説明文の一部を紹介しますと、「・・・戦後レジームからの脱却を目指していた安倍晋三元首相が凶弾に倒れてしまった今、日本国民一人一人がこの問題に対峙しなければならない。・・・「美しい国・日本」を取り戻すために、歴史・美術史の知の巨人・田中英道がまやかしの戦後体制を一刀両断する一冊!」
(10)伊藤睦月です。田中氏の主張、歴史観は、岡田英弘博士や副島隆彦先生とは、対局にある、と私、伊藤は考えます。いくら自説への導入のための「つかみ」とはいえ、これはちょっといただけない。
(11)「新しい教科書を作る会」騒動から、四半世紀近く経過しているので、忘れたり、知らない人達もふえているのだろう。ので備忘録として書いています。これに関しては、当時、副島先生も、「ぼやき」や「重たい掲示板」でかなり発言されていた、とかすかに覚えています。
(12)それにしても、「知の巨人」とは、立花隆や佐藤優だけではなかったのですね。いくらなんでも、こういう「知の巨人」の肩には乗りたくないものだと、ぶつぶつ言ってる今日この頃です。
以上、伊藤睦月筆