ブレイク:現代中国における都市戸籍VS農村戸籍の問題は、古代からの大問題だ。(1)

伊藤 投稿日:2025/01/15 20:55

 伊藤睦月です。現代中国における、「都市戸籍」、「農村戸籍」をご存じだろうか。30年ほど前、中国との交流事業に携わっていた時に、この問題を知った。

(1)当時は、鄧小平の改革開放政策の真っただ中。経済特区の深圳(シンセン)の労働力を確保するため、農村戸籍を持つ人間が、期限付き(3年くらい。最近の日本の移民政策に似ている。)で深圳への出稼ぎが認められ、ものすごい人の移動がああった。

(2)その時、中国深圳市の役人か、ガイドだか忘れたが、彼だか彼女だかが言うには、中国には都市戸籍と農村戸籍がある。都市に生まれた者は、都市戸籍が与えられ、都市間の移動、移住、大学(都市にしかない)への進学、国内旅行や海外旅行も条件付きで可能。

(3)一方で、農村に生まれた者は、農村戸籍が与えられ、都市への移動が原則できず、進学の機会もほとんどない。経済格差、教育格差、その他もろもろの格差が大きい。だから今回の特例措置は画期的なのだ、と胸を張っていた。

(4)伊藤睦月です。この状況は、だいぶん改善されているらしいが、未だに二つの国籍は現存する。例えば、日本に来るインバウンドもほとんどが、都市戸籍を持っている中国人である。大学生も同様。農村から都市に行くには、都市に出稼ぎして結婚するか、進学しかないらしいが、結婚はともかく、進学は、学力格差がひどすぎて、かなり困難なようだ。政府としては、少数民族と同様、農村出身者向けの政策をやっているらしいが、結局は改革開放政策で、都市に行けた者が結婚し、その子供は都市戸籍が取得できるので、都市にとどまり勉強させて進学させ、上昇の機会をつかませることが、チャイナドリームへの道としてポピュラーらしい。

(5)また、この戸籍問題は、都市対農村の対立構造を象徴し、例えば、国共内戦や文化大革命において両者の対立をあおるような政策(農村が都市を包囲する。農村へ下放(追放)する)がとられたこともあって、この対立構造は、未だ根強く残っているとされる。

(6)中国の最高実力者習近平は、自らも、文革時、農村に「下放」された経験をもつが、2014年、両者の対立構造を解消するため、戸籍統一の方針を出し、2020年を目標年としたが、実現できていない。

(7)この記事の元ネタのウィキペディアは、この戸籍問題は、中華人民共和国建国以来の大問題としている。

(8)しかし、私、伊藤はこの問題は、もっと、昔、古代中国社会の成立時からの宿痾(しゅくあ)のようなものと考える。次回でそのことを説明する。

以上、伊藤睦月筆