痛みの管理についてなど
拙投稿にコメントありがとうございます。「西洋医学に対して徒に批難しているつもりはない」というのは確かにそうだと私も思うのですが、「言葉が足りない」ところがあって読む方としてはそのように捕らえてしまう部分があると思うのです。
椎間板ヘルニアによる痛みの治療は針やマッサージなどが有用な場合もあると思いますが、痺れを伴う場合や進行して麻痺が出かかっているような時はやはり手術による除圧が必要というのは否定しようのない「まっとうな医療」と思います。また単なる腰痛(ヘルニアでなないやつ)と椎間板ヘルニアは別の病気です。そこを分けてしっかりと説明してください。
神経末端の痛み受容器が刺激されない限り痛みは起きないと断定することは、一般の患者さんに誤解を与えます。指圧をしても皮膚にめり込むことはありませんが、慢性的な圧を皮膚に加えると骨が露出するような蓐瘡(床ずれ)ができるのと同様に、神経についても慢性的な圧迫により変性がおこって知覚過敏や鈍麻が生ずると思います。
現在頚椎から周辺の神経に癌が浸潤して痛みが強く、痛みのコントロールと分子標的剤によつ制がんを目的に入院している患者さんがいます。がんによる疼痛も、神経を刺激して痺れを伴うようなものは、単に鎮痛目的にモルヒネを使うのみではなくギャバペンチンなどの抗痙攣剤を併用するとずいぶん楽になると言われていて、痛みのアセスメントが大事であると言われていて緩和チームと共にいろいろ試みています。
日本の医療では疼痛管理がおざなりである、という指摘は一理あります。日本では疼痛管理目的の麻薬の使用が諸外国より少ないのは事実で、これは医師の認識、勉強が足りないことによるものでしょう。また例えば小生の専門領域である尿管結石の疼痛発作において、NSAIDと抗コリン剤を併用すると20分程度で痛みが治まるのに、保険上は抗コリン剤しか使用できないというのはシステム上の問題と言えるでしょう。李先生が以前指摘しておられた、尿管の走行にそって背部の皮膚を指圧したり、蒸留水の皮内注射(0.3ml位)を数ヶ所行なうと痛みが取れるというのは、私もNSAID 抗コリン、ペンタゾシン静注の次にモルヒネを使用する前に行なう鎮痛手技ですが、このような方法が一般的でないのは教育の問題かもしれません。
私は学生時代に北里大学の東洋医学研究所に勉強に行ったり、鍼を自分で購入して研究してみたりと東洋医学を否定するものではありません。「患者さんが良くなれば良い」というのはそのとおりで、解らないのに適当に診断してシップや痛み止めを出したりしているのは確かによくないとは思います。ただもう少し細かく具体的に指摘したほうが建設的な意見になるのではと思う次第です。
失礼しました。