腰痛を取り巻く問題点
久しぶりに投稿させていただきます。
先の皆様の御投稿で腰痛などの緩和治療が話題になっておりましたので、私の周りの臨床現場から一言、言わせていただきます。
当院にもぎっくり腰から始まり、整形外科で椎間板ヘルニア、圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症など立派な病名がつけられ鎮痛剤の対症療法や手術をすすめられている新患がセカンド・オピニオンを兼ねて、ほぼ毎日来院されます。
ぎっくり腰においては来院初日にはほぼ改善します。骨折や重篤な臓器障害がない、腰痛や股関節痛、坐骨神経痛なども、初回から数回の治療でほぼ症状が改善しています。
残念ながら腰痛(や下肢の痺れなど)の原因といわれている、これらの多くの診断は間違っております。おそらく腰痛の95%以上は腰椎など骨関節に関与しないものでしょう。
つまり、MRI等レントゲンでの神経圧迫所見と腰痛、痺れなどの臨床症状には大きな乖離があるわけです。
皆様にもすでにご指摘いただいた通り、腰椎の異常所見→即腰痛・痺れと短絡的に考えて疑わないことが、整形外科をはじめとする現代医療の盲点です。
腰椎所見→ブラックボックス→腰痛の思考過程において、途中の箱を覗かないで骨だけで考えることが問題です。
当然、筋腱・靭帯などの硬結や弛緩は骨関節より、症状に大きく関与しております。
これらの運動器障害(あくまでも原因でなく結果)を引き起すものとして、無理な姿勢や咬合異常や生活動作、生活習慣やストレス過多から来る体のねじれや凝りなどの異常は、メンタルバランスやバイタルフォースの低下など、エネルギーレベルの問題も包括的に関わってきます。
ところが、臨床の現場において腰痛の新患に対しては、CTなどで臓器や骨所見があれば、それが原因と決めつけられて(所見がない場合は、堂々と「原因不明」と言われてしまう!)対症的な鎮痛や手術が行われるだけです。
あるいは、おきまりの血液検査や理学的所見に終始するだけで、筋肉・靭帯などの運動器に触って、指先の感覚で異常を見つ出して治そうと考えることは、医療の現場では先ずありません。
理学療法などのリハビリにおいても、脳や意識に自発的に働きかけることをせず、無意味な筋力増強や関節可動域の(他動的な)拡大や動作訓練など、ルーティンの反復を、患者の為でなく理学療法士の自己満足の為にしているにすぎません。
先日リウマチの研究会で、関節手術の第一人者である某国立大学の教授とお会いしたとき、「クリニカルエンドポイント(手術などでの治療の完遂後)においても、40%の患者はまだなお満足していない。」ということを拝聴させていただきました。
何万例も経験を積まれた臨床の大学教授ゆえに、整形外科医療の現状を冷静に認識された謙虚なお言葉だと思いますが、もう一歩踏み込んでなぜ骨関節の問題に終始していては治らないのか、疾患や病をもう少し大きく捉えていただくことを、僭越ながら助言させていただきました。