冬の玉川温泉は穴場でした

六城 雅敦 投稿日:2012/04/03 18:59

会員の六城雅敦です。この掲示板にふさわしい内容ではないのですが、重掲に載せるほどの内容でもないのでこちらに気軽に読める温泉記として記述させていただきます。

三月末に秋田の玉川温泉に両親と訪れました。
健康診断結果があまり思わしくない母のために、私が思い立って玉川温泉に誘ったのです。
東京からはちょうど3時間で田沢湖に着きます。まだ3月末では玉川温泉への国道は閉鎖されているために路線バスで2km下にある「新玉川温泉」で向かいます。乗車時間は1時間です。


「新玉川温泉」からはクローラーの雪上車に乗り換えてさらに上流の玉川温泉へゆっくりゆっくりガタガタと登ります。
宿泊中は雨が二日降り続け、夜半は雪でした。前日はドシーンドドーンと夜間には落雪の音が響いていたそうです。

2月1日に雪崩により宿泊客が3名亡くなったことにより噴煙を上げる地熱地帯への立入は禁止されてしまいました。雪がなくなる5月頃には解除される模様です。
ですから、宿泊予約が難しい玉川温泉がなんと前日にとれるほど冬場は宿泊希望者がいないのです。大きな理由にほとんどの宿泊客は岩盤浴が目当てだからでしょう。

私は玉川温泉でゆっくり癒すためには冬場(12月~3月)が良いと思えます。

まず岩盤浴は北投石の上にあるわけではありません。せいぜい入り口にある鳥居前で数μS/hで大部分は舗装された遊歩道の下に埋められています。
大噴(おおぶき)から立ち上る硫黄を嗅ぐことで呼吸器系にも好影響があるのかもしれませんが、それならば大浴場のサウナや箱蒸し風呂でも十分な硫黄臭を嗅げるので雨風の中留まる必要もありません。

それでも宿泊客は団体客を入れても20名程度。ほとんどが年に何度か定期的に訪れるリピーター客です。外は深雪なので風呂と食堂と部屋の往復ぐらいしかやることがありません。そういう状況下ですからすぐに世間話をするようになります。ほとんどの方が大病をして来られているのです。このようなことから玉川温泉は看護婦が常駐する特殊な温泉です。

料理は普段はバイキング方式(アラカルト)ですが、宿泊客が少ないのでお膳でだされます。内容は至って普通の温泉旅館らしいメニューです。山梨の増富温泉の不老閣や北海道の二股ラジウム温泉では五穀米のお粥や精進料理のようなお年寄り向けなものではありません。少食を実践する私にとっては玉川温泉はちょっと量が多いですね。二日で1kg近く太りました。普段のバイキング方式(アラカルト方式)であれば食べ過ぎないようにするのですが、貧乏性だから親が残したものも綺麗に食べないと落ち着かないのです。

さて重要な湯質と湯治の基本を押さえてみたいと思います。
玉川温泉はPh1.03の強酸性のお湯であるとパンフレットには表記されています。今回はリトマス液を持っていきました。PHメーターという機器もあるのですが、簡易な方法で観てみました。感度の悪いリトマス液ではPH3前後でしょうか。口に含むと濃いめのレモン果汁のような味がします。アルミニウムが含まれているのであまり飲み過ぎると下痢や便秘などになりますから入浴のたびに一口だけ含みました。旅館の案内には6倍に希釈してコップ一杯を限度とするように書かれています。

ちなみに小銭を浴槽に漬けてみました。10円玉はピカピカにはならないまでも白っぽい同色になりました。1円玉は変化無し。100円玉は表面で沁み模様がつきました。部屋の座卓には100円や10円硬貨の跡があるので私のような実験をした人たちも多いのでしょう。

増富温泉のミョウバンの味がする苦い源泉はお猪口一杯でも飲めませんでしたが、玉川温泉はいくらでも飲めます。温泉で効果を期待するには飲泉はするべきでしょう。
年配の女性客も多いです。ご夫婦で来られる方や単身で逗留されている方もいます。
玉川温泉は長期逗留者が多いことも特徴的です。最低でも5泊はしたい、理想は10日といったところです。20日や一ヶ月という方もいました。若者には携帯電話も使えず、テレビラジオもない場所ですから身をもてあますことの方が辛いでしょう。

長逗留することでどうなるかは周りの方に聞けばいくらでも教えてもらえます。
早い人で二泊目あたりから、普通は5泊で湿疹が身体のどこかにできます。私の場合、首とおしりに小さな発疹の初期的な状態ができました。母は背中の肩胛骨が赤くなっていました。健康な身体では入浴はなんともないのですが、発疹ができると段々痛くなってきます。ですから日が経つほど毎日の入浴が辛くなると口々に話されます。

甲状腺で手術された女性は膝裏に発疹がでて、それが沁みるそうです。でもこの玉川温泉では発疹は吉兆です。毒気が皮膚から出て行くのだと誰もが信じているようです。私も母に早くそのような兆候が出て欲しいと願っていたのですが、たった二泊ではそこまでには至りませんでした。なぜなら4月から中盤まで玉川温泉は閉鎖されてしまうからです。(この閑散期に施設の点検や整備が行われるのです)
下流の新玉川温泉や湯治館そよ風に移り湯治を続ける方も何人かいらっしゃいました。

玉川温泉の成分表には元素の成分量が啓示されているだけです。ラドンガスの検査項目は残念ながらありませんでした。
ですが、自分の感覚を信じれば間違いなくラジウム温泉です。私の場合入浴すると胸骨あたりがキューっと縮こまる感覚がするのです。源泉50%と100%を入り比べてみても、やはり濃度にあわせた感覚がします。
ちなみに売店で販売されている湯の華「玉川温泉の華」はだいたい5μSv/hです。湯の華にラジウムが含まれていることがわかります。

硫黄が風呂釜やステンレスの浴槽を傷めるので入浴剤として気軽に使うことは難しいですが、給湯式でプラスチックの浴槽ならば手軽に玉川温泉を楽しめるでしょう。
(六城ラヂウム 店主)