5.23株価急落について(下)
『経済のベース、金融のドラム』より
この日の昼、日銀黒田総裁は都内で講演を行っていて、長期金利は安定することが望ましい、などと発言したそうなのですが、しかしそんなことは総裁に言われるまでもなく当たり前のことであり、日銀総裁ならば長期金利を安定させるべくどのような手を打つのか、それが重要であるにも拘らず、その具体的な手段等についての言及がまったくなかったらしく、そして長期金利に関してのこの黒田総裁のまるで他人事のような発言を受け、後場に入り、前日に続いてまたしても株式先物を売って債権先物を買うというトレードが多発します。また、それに併せてドルを売って円を買う動きも発生するのですが、このような株売り・円買い(による円高)も、そのスピードは前日とはまったく異なるものでした。前日が陸上トラックの400メートル走なら、この日はさながら100メートル走といった感じで、物凄いスピードで株安・円高が進行したのです。12時40分ぐらいまでは、1万4900円あたりで揉み合っていた日経平均は、そのおよそ1時間後にはなんと1万4000円を割り込んで1万3900円台まで急降下します。
このとんでもない急降下は、いくらなんでも黒田総裁の発言だけで起こるものではありません。何か、別の材料も必要です。岡村友哉さんによると、この急降下はどうやら個人投資家の損失が自動的に生んだもののようです。というのも、前日の大幅な下落を受けて、信用取引で株の売買をしていた個人投資家の中にはかなり損失が膨らんだらしく、たとえばネット証券大手の松井証券では、それまでプラス圏にあった個人投資家の評価損益率はたった1日でマイナス5%まで行ってしまったそうなのですが、証券会社の中には、信用取引に関して、証拠金不足に陥った場合、翌日の12時までに入金しなければならないという決まりになっているところが結構多いらしく、そこで入金がなかった(もしくは入金しようとしたけど間に合わなかった)場合、証券会社の方で、その投資家が所有する別の銘柄の株が自動的に売りに出されるシステムになっているそうなのです。
12時半の昼休み終了後、つまり後場になっての株価の急降下の発端は、どうやらこのような売りの自動執行が大量になされたことが原因のようで、そこに黒田総裁の発言が伝わったことが更なる不安感を呼び、そうして前日に引き続いて株式先物の売りが大量に出され、そうやって株価が急落することが、またしても外資系ヘッジファンドのコンピューターのアルゴリズムを発動させ、こうして売りが売りを呼び、たった1時間で一気に1000円ほど下落するという恐ろしいことなったわけです。
このことは、日経平均が1万4000円を割った次の瞬間から、突然買い戻しが起こったことからも明らかなように思います。というのも、1万4000円を割ったと思ったら、その次の瞬間から突然株価が上昇し始めたのです。これはいかにも数字で動くコンピューターのプログラムならでは、という感じでして、そしてこのように株価が再度上昇を開始したところで、まだ割安な今のうちに! と言わんばかりに次々と押し目買いが入り、結局そこから600円以上も上昇してこの日の取引を終えることになります。
これは、国内の個人投資家も、それから外国のヘッジファンドも、共にたまったものではない、という訳ですが、しかし損失の規模に合わせて自動的に売りが執行されるシステムになっていることは、お互いそれぞれ解ったうえで取引に参加している筈なのです。
(ここまでがブログなどから抜粋したものです)
上記、コンピュータによる取引について触れてあります。
証券会社のサイトでチャートを確認して頂ければお分かりいただけるかも知れません。
コード3231:野村不動産の分足チャートをご覧ください。日足では分かりません。
5月30日がまともな動き、翌31日が異常な動きです。株価が上下に大きく振れた跡、いわゆる髭(ひげ)の長さが尋常(じんじょう)ではありません。2200円台のなかばから、2300円を越えるところまで一瞬だったりしました。とても人の目では追いつけません。40円、30円といった幅で上下させるには、成行でいっぺんに大量売買(しかも何回も)しないとこういう具合にはなりません。私はリアルタイムで見ていましたが、人間じゃなくて機械が売買しているんじゃないかと感じました。
比較していただきたいのですが、
コード6752パナソニックはこの日よく動きました。分足で長い実線部や髭がありますが、大口が大量に処分売りしたり、まとめ買いした時には起きることです。少なくとも、ついていけないほどの速さではありませんでした。
コード9401TBS(東京放送)も髭の長い部分がありますが、これはこの株の特性で板が薄いために起きることです。1200円の下が1199円でなく、1185円だったりすることがあるためです。誰かがいっぺんに売ったり買ったりすることによって生じることがあります。
ともかくも株の怖さを思い知らされる毎日です。