通貨戦争

5670 投稿日:2010/10/12 16:48

以下、田村秀夫氏(産経新聞)のブログから貼り付けます。

~ 貼 付 開 始 ~
通貨戦争の裏に米国の株価維持活動
2010/10/10 09:14

G7では通貨切り下げ競争回避があたかも主議題になったかのごとく報じられているが、それは現下の国際通貨金融戦争の本質を理解していない。

金融・通貨戦争の真相とは、米国のドル安誘導と株価維持活動 である。自国通貨を大量発行し、自国の株式、不動産市場の底上げを図り、通貨安による輸出増進を図る。このやり方は、米国、中国、欧州に共通しているが、日本何周も遅れて押っ取り刀で参戦、しかも小規模という構図である。このからくりは以下の米金融の分析ではっきりする。

日本は追い込まれて円売り介入したことが目立ち、国際的に批判されているが、為替市場への介入はテクニカルな対応でしかない。そのことを、米国も欧州も中国も当局はわかっているに違いない。これら当局はブラジルなど新興国が日本を非難するのをほくそ笑んでいるに違いない。

一昨年の「リーマン・ショック」後、米連邦準備制度理事会(FRB)は狂ったようにドル札を刷り、問題を抱える債券を100兆円分も買い上げた。この100兆円を原資に、米国債や株式を買う市場操作を開始して金利を下げ、株価を維持し、ドル安を促進している。さすがの日銀もじっとしていられなくなり、周回遅れで小規模な株式や不動産の投資信託の買いに入ったが、円高を止められない。米国は金融政策を軸にした“通貨戦争”を展開しているのだ。
 9月27日、ビジネス・ニュース専門テレビの米CNBCに登場した英証券会社「カザノブ・キャピタル」のアナリストがさらっと言いのけた。「米政府公認の証券会社はFRB資金で米株価指数平均の証券を買い、相場を押し上げている」。カザノブは19世紀以来、英王室ご用達の名門証券であり、ウォール街の内情にも通じている。
 ◆大統領のもと官民結集
 この市場操作についてアナリスト氏は「暴落防護チームの指揮による」と明言したが、正式名称は「米大統領金融市場作業チーム」である。1987年10月19日に株価が大暴落した「ブラック・マンデー」を受け、大統領行政命令第12631号により創設されている。
 財務長官を議長に、FRB議長ら金融当局代表で構成されるが、適宜、民間代表と協議する。きれい事で片づかない課題が発生したとき、大統領のもとに官民が結集し、荒業を繰り出していく。オバマ政権も09年6月25日、同チームを招集した。
 メディアに暴露されても米当局は動じない。ニューヨーク連銀のB・サック副総裁は今月4日付のウォールストリート・ジャーナル紙で、FRBによる米国債買いの原資がFRB保有の米住宅ローン担保証券(MBS)の元本償還金で、その額は「10月の総額は270億ドル、11月からは300億ドル、来年にかけてもっと増える」と打ち明けた。
 ニューヨーク株式市場の1日当たりの取引総額は、300億~700億ドルである。米金融機関がFRB資金を株価指数などに集中して投じれば、株価全体を押し上げることは十分に可能だ。
 FRB資金の市場投入についてサック副総裁は「家計や企業の借り入れコストを低下させ、資産価格を高めに維持することで家計の富を追加する」と強調した。資産価格とは株式と不動産相場をいう。20年に及ぶデフレに伴う株価低迷に知らん顔で、リーマン・ショック後の急落にも無為で通したどこかの中央銀行と大違いではないか。
 FRB保有のMBSとはリーマン・ショックに際し、紙くずになりかけた米連邦住宅金融公社発行の証券化商品のことである。
 FRBは09年1月、買い出動に入り、今年4月に買い取りをやめたが、その元本の償還金が入ってくる。6月21日時点の保有残高は1兆1286億ドル。この結果、リーマン・ショック前は1兆ドル弱だったFRBの資産総額は2兆3480億ドルに膨れ上がった。増加分はドル資金の追加発行による。
FRBは垂れ流したドル資金を回収せず、株式など金融資産に回る仕組みを考えた。この8月、傘下のニューヨーク連銀内に専用部署を設置し、プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)と呼ばれる特定の大手証券と米国債を取引し、大手証券がその巨額資金を株式などで運用するわけである。
 ◆一層のドル垂れ流し
 FRBマネーがどのような効果を株式相場に及ぼしたかはグラフ(※)からも一目瞭然(りょうぜん)である。ニューヨーク平均株価はFRBがMBSを買い増すのと連動して上昇し、MBS購入を打ち切った4月、株価は下落局面に入った。ところが、ニューヨーク連銀が米国債購入を通じてMBS元本償還金を市場に流し始めた8月中旬以降、株価はジワジワと上昇を続けている。
 FRBはこのMBS償還金だけでも不十分とみているのか、金融の量的緩和の強化、つまりより一層のドル資金発行による米国債購入の上積みを検討している。米国債利回りは低水準で推移し、あふれるドル資金の一部は日本国債の先物にも回り、円高ドル安が進む。オバマ政権はドル安をテコに輸出を倍増させようと躍起になっている。2ケタの失業率に象徴されるように不振続きでも、株価安定を図り、有権者の支持をつなぎ止めたいのだ。
 見えも外聞もかなぐり捨てたオバマ政権とFRBと金融機関が一体となった米国に比べ、日本の場合、日銀が市場対策の一歩を踏み出したにすぎない。菅直人政権もまとまりに欠ける。これでは“通貨戦争”に勝てるはずがない。

~ 貼 付 以 上 ~
※グラフはhttp://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/1837210/ でご覧ください。
※カブ知恵の藤井氏の紹介です。尚、藤井英敏氏は今日、日本株の買いを推奨宣言されています。