■■ 平田啓先生の『外国為替市場の動向と予測』 ■■

なんでかな 投稿日:2010/06/13 10:24

「マエストロ」の株式デイリーコメント(無料メールマガジン)から 平田啓先生の『外国為替市場の動向と予測』 を貼り付けます。

(転載貼り付け始め)

■□ なるほど! ザ・外国為替市場 □■

先々週、ユーロ安は一概にユーロにとって悪ではなく、
欧州の輸出企業などは潤っているということをお伝えしました。

それに関連する記事が
6月12日(土)日本経済新聞の朝刊において
『ユーロ危機で独輸出企業に恩恵 日本企業、競り負け懸念』
という見出しで報じられていました。

記事のポイントをおさらいすると、

・ ドイツ株堅調
・ BMW株28%上昇
・ 金融危機後の世界的需要不足の中で、通貨安を武器に独輸出企業
との競争に日本企業が苦戦

と、なっています。

まさにユーロ安によってドイツ企業が潤っていることが明確になってきました。

時々、「日本経済に円高は悪い、円安は良い」といったような議論がされますが、
通貨には2面性があり、
自国通貨が安くなればその国の輸出企業が、高くなれば輸入企業が潤います。

急激な変動は対応が大変なので、良いとは言えませんが、
自国通貨安・高それ自体が良いのか悪いのかは一概に言えないのです。

変動相場制以降以来、
自国通貨『円』が高くなる歴史を辿った日本の輸出企業は、
為替リスクを抑えるという意味もあって、
特に1980年代海外進出をどんどん進めました。

現地で資金を調達して工場を作り、
売上・利益もその国で決済してしまえば、
為替による変動から解放されるからです。

現在、ユーロ安・円高によって日本の輸出企業が窮地に追い込まれていますが、
これが続くようなら、おそらく欧州に工場の誘致などが加速することでしょう。

そうなると、欧州に雇用を創出することになるので、
欧州はユーロ安によって経済が活性化されることになります。

つまり、自国通貨安は一概に悪ではないのです。

それを見込んでか否か、
ECBは財政危機には神経を使っているようですが、
昨年来から続くユーロ安については全く言及がありません。

現在のユーロドルやユーロ円のレベルは想定内なのか、
それとも財政危機への対応に追われて、
為替どころではないのか・・・

ドイツとフランスが株式取引の空売り規制に踏み切った割には、
為替にはあまりにも無頓着なのが不思議です。

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■□ 外国為替市場の動向と予想 □■

☆3月27日号からお伝えしている2010年 春~夏にかけての大局観☆
外国為替市場: ドル高・円安
株式市場: 上昇

先週は、

『ドルはユーロに対して買われましたが、
基本的には円が避難通貨の役割を果たし、
ドルとユーロから円へと資金の移動が行われた一週間だったので、
来週はその戻しがそれぞれ起こるのではないかと見ています。
つまり、ドル円は1ドル=92円台、
ユーロ円は1ユーロ=111円台あたりを
回復しているのではないかと思います。
また今週ターニング・ポイントとなったのは、
NYダウが心理線である1万ドルを割り込んでいることです。
再度1万ドルを回復するまでの期間によって、
現在が上昇相場の調整局面であったのかどうかが分かります。
来週中にも1万ドルを回復するようなことがあれば、
強気に攻めたら良いと思います。』

と、お伝えしていました。

今週の各市場の動向を
http://www.fexcellence.com/data/Jun12.pdf
で見てみると、
ドル円は1ドル=92円台、ユーロ円は1ユーロ=111円台と
それぞれ目前まで回復したので、おおよそ予想通りでした。

また、NYダウはあっさり1万ドルを回復しているので、
上昇局面の調整段階であったことが確認できました。

やはり今後の株式市場は強気に攻めて良いでしょう。

今週の株式市場上昇に貢献したのは「ベージュ・ブック」です。

「ベージュ・ブック」というのは、
米国の金融政策を管理・運営している
FOMC(Federal Open Market Committee、連邦公開市場委員会)
に、連邦準備12地区から提出される報告書です。

この報告書の表紙がベージュ色をしているので、
「ベージュ・ブック」と呼ばれています。

各地区において、
経済界の要人に対するヒアリングや独自調査を元に
報告書をまとめて提出しています。

FOMCは年に8回開催され、
ベージュ・ブックもそれに合わせて年8回、
各会合の約2週間前に提出されます。

次回のFOMCは6月22・23日に予定されていて、
ベージュ・ブックが6月9日(日本時間 6月10日早朝)に
提出されたのです。

今回の報告書の最も重要な一文を抜粋すると、

「Economic activity continued to improve since the last report across
all twelve Federal Reserve Districts, although many Districts described
the pace of growth as “modest.”」
(多くの地区が成長ペースは緩やかであると述べていたけれども、12連邦準備
地区全てにおいて、前回の報告書以来、引き続き経済活動は改善している。)

となっていました。

この箇所は、前回4月14日に提出されたベージュ・ブックでは、

「Overall economic activity increased somewhat since the last report
across all Federal Reserve Districts except St. Louis, which reported
“softened” economic conditions.」
(穏やかな経済状況と報告したセントルイス以外、全ての連邦準備地区において、
前回の報告書以来、経済活動は総体的にいくらか増加した。)

となっていました。

この2つを比較すると、異なる箇所が2点あります。

まず1点目が、前回はセントルイス地区ではまだ経済が活発に
なっていないのですが、今回はセントルイス地区も含めて米国全体で
経済が活発になっていると報告されたことです。

もう1点が、経済活動の総括した箇所に相当する表現です。

前回の「いくらか増加した<increased somewhat>」から、
今回の「引き続き改善している<continued to improve>」に
変わっているのです。

わずかな表現の違いですが、
『増加』と『改善』では勢いに差があることが分かります。

つまり、前回は目に見える経済活動の変化があったのですが、
今回はそれに比べて若干足踏みしているのです。

しかし、米国全体で前回経済活動が増加したと報告されたときよりも
さらに改善しているとの報告に、市場参加者が好感し、
株式市場も上昇したと見られます。

外国為替市場において、
米国の金融政策動向に注目が集まっている時、
このベージュ・ブックの微妙なニュアンスの変化によって
相場が大きく動くことがあります。

しかし、現在米国の景気が依然強いとは言えない状況にあることや、
インフレ率が低く抑えられていることなどから、
長らくゼロ金利が続いているため、
注目度は低くなっています。

そのため、ベージュ・ブック発表後も
外国為替市場はもみ合いが続きました。

但し、今回敏感に反応したのは株式市場で、
事実発表後の木・金曜日でダウは1万ドルを越え、
さらに上昇しています。

外国為替市場では「ユーロ不安」からの「ユーロ売り」、
ドル円はもみあいという流れはもうしばらく続きそうなので、
「買い」よりも「売り」を中心に攻めると良いでしょう。

一方、株式市場は断然強気に攻めて良い環境となってきました。

現在、株式市場では「バッド・ニュース現象」が起きています。

全体的に市場が低迷している時、
優良銘柄まで必要以上に下がる現象です。

普段は手の出ない高値の銘柄も今なら手が届くかもしれません。

年後半に向けて、ガンガン攻めましょう。

では、今週はこの辺で。

See you next week!

(転載貼り付け終わり)