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  1. 相田英男
    2019-12-27 21:57

    相田です。
    今日は真面目な技術の話です。

    副島先生の新刊に、レアメタルでディスプロシウムという元素が最も重要だ、という記載があったので、説明する。

    ディスプロシウムとは、ネオジム磁石と呼ばれる材料に必要な元素である。ネオジム磁石とは、現在の世の中では、最も強力な磁力を持つ磁石である。ハイブリッド車や電気自動車の車輪を駆動するためには、力の強い効率の高いモーターが必要となる。それに使われる最強の磁石が、ネオジム磁石である。

    ネオジム磁石を開発したのは、佐川真人(さがわまさと)という日本人技術者である。佐川は、富士通の研究所の材料技術者だった。佐川は富士通で、ネオジムと鉄とホウ素(ボロン)の3元素を組み合わせると強い磁石になると考えて、実験を開始した。しかし、組織の中であまり大事にされない性格のせいか、佐川は実験の途中で上司と喧嘩してしまい、会社を辞める事となる。

    その後に佐川は、関西の住友特殊金属という会社に移り、ネオジム磁石を完成させた。佐川の磁石の性能は史上最強であり、アメリカでの学会発表で一躍注目の的になった。ただし、室温でのネオジム磁石は極めて強力だったが、100℃以上の高温に加熱すると、磁力が大幅に低下する欠点があった。この現象を熱減磁(ねつげんじ)という。磁石をモーターに組込んで動かすと、100℃以上に熱くなる場合がかなりある。(モーターの設計にもよるが)このままでは、実用モーターにネオジム磁石は使えない。

    佐川達は、周期律表のあらゆる元素をネオジム磁石に添加して、特性の変化を調べた。その結果、熱減磁を起こさないために、最も効果があったのが、中国で産出されるディスプロシウムだった。その当時のディスプロシウムには、特に使い道などなかった。佐川達は、中国から安く大量にディスプロシウムを購入して磁石を作り、大きな利益を挙げる事ができたのだった。

    しかし時が過ぎて、中国の技術力、経済力が高まると、話が変わる。自国のディスプロシウムの価値に気付いた中国は、ネオジム磁石を国産化する一方で、ディスプロシウムの輸出に制限を掛けるようになる。当たり前の対応だ。何事にも、上手い話がずっと続く訳では無い。

    日本も中国に対抗して、ディスプロシウム使わずに磁力低下を防ぐ技術を追求して、問題を解決した、と言われる。しかし、日本が苦労の末、技術革新によりディスプロシウム量を減らしても、中国ではディスプロシウムをちょっと入れるだけで、磁石のベースの性能を簡単に上げる事ができる。中々に悩ましいものがある。

    ネオジム磁石を超える高性能の磁石についても、盛んに研究されて来た。が、結局の処、成功していない。鉄とニッケルを組合わせた、変わった結晶構造の物質が、隕石の中に僅かながら存在し、ネオジム磁石を超える磁力を持つ、とか言われる。しかし、地球上では実験室で作るのが非常に難しいらしく、実用化の目処は全く立っていないという。

    佐川はもう70歳過ぎだと思う。彼があと10年長生きすれば、間違いなくノーベル物理学賞を受賞するだろう。

    最近のノーベル物理学賞も質が落ちて、出すネタが無くなりつつある。これまでは、南部陽一郎のように、素粒子分野で数年おきに受賞者が出ていた。今の素粒子物理学の最先端は「超ひも理論」というもので、多くの学者がこれに群がっている。しかし「超ひも理論」では、誰もノーベル物理学賞を取れないだろう。理論の結果を加速器による実験で検証する事が、最早不可能になってしまったからだ。現代の技術では到底作れない、超高出力の加速器を使わないと、「超ひも理論」の結果を検証出来ない。実験で検証出来ない研究には、賞を与えないのが、ノーベル賞のルールだ。

    南部陽一郎は、歴代日本人物理学者の頂点の人だったが、武谷三男の弟子でもあった。武谷の有名な三段階論は、科学の発展を、経験、実体、本質、の順に進歩するとした。武谷の薫陶を受けた南部は、素粒子物理の進み方について、ローレンス・湯川モード、アインシュタインモード、という、彼独自の分類をしている。アーネスト・ローレンスとはサイクロトロン等の、原子核実験で使われる、高出力の粒子線加速器の技術を確立した学者だ。マンハッタン計画でウラン濃縮を行う際にも、ローレンスが設計したカルトロンと呼ばれる、巨大な電磁石を使った電磁式分離装置が使用された。

    物理の問題を解く時に、理論に不備はあるものの、湯川秀樹の中間子のような仮想粒子をまずは考えて、最新型の加速器を使ってその存在を検証する。このやり方がローレンス・湯川モードである。

    対してアインシュタインの相対性理論のように、全てを完全に記述出来る理論式を、最初に提示する。その理論に合うような物理現象を予測して、実験で確認するやり方を、アインシュタインモードと呼ぶ。アインシュタインモードはトップダウン型、ローレンス・湯川モードはボトムアップ型の考え方といえる。

    実際の素粒子物理は、ローレンス・湯川モードで進んで来た。全ての素粒子の挙動を完全に記述する理論は、今でも存在しない。なので、試行錯誤で研究を進めるしか無かったのだ。しかし、「超ひも理論」に至った現状では、ローレンス・湯川モードは素粒子の問題解決法としては、有効で無くなっている。

    ちなみに有名な話だが、湯川秀樹本人は、中間子論を完成させた後では、自らの湯川モードを捨ててしまった。湯川は、極微細な領域では量子力学が成立しないと考えて、量子力学を超える新たな理論の構築を目指していたのだった。このやり方は、アインシュタインモードである。当時はドイツのハイゼンベルクも、同じように、量子力学の適用には限界があり得る、と言っていた。なので、湯川の意気込みも、あながち荒唐無稽とは言えなかった。

    そんな湯川を横で見ていた武谷は、「無茶な事はしないで、素直に、地道に研究を進めるべきだ」と、湯川を諭すために「三段階論」を提示したという。この事は西村肇先生の「自由人物理」の中に書かれている。しかし、武谷を超えるへそ曲がりだった湯川は、武谷の忠告を全く受けつけなかった。結果、中間子論以降の湯川は、新たな発見に至る事なく生涯を終えた。

    湯川の開拓した素粒子物理学は、その後に、くりこみ、NNG(中野・西島・ゲルマン理論)、クオーク、自発的対称性の破れ、と進歩を続けて、標準理論とされるワインバーグ・サラム理論(実は南部の、自発的対称性の破れ、の焼き直し理論に過ぎない)として、70年代半ばに一応の完成を見た。ローレンス・湯川モードによる着実な進歩の成果だった。

    湯川の晩年に、弟子の小林誠(2008年ノーベル賞受賞)が、京都大の湯川研究室のゼミで、ワインバーグ・サラム理論について説明した。その説明の途中で湯川は「そんなおかしなな考えは、聞いた事がない」と、いきなり激昂し、物凄く小林を怒りだしたという。世の中色々あったらしい。

    さて、ローレンス・湯川モードが役に立たない現在、ノーベル賞受賞を目指して、「超ひも理論」の研究に日々励む学者さん達には、御愁傷様としか私にはいえない。一方で、レベルの低い学者達には、素粒子で賞が出せない今は、絶好の受賞のチャンスだ。日本のマスコミ界では、まだまだ、ノーベル賞が相当にありがたがられている。なので、佐川も出来るだけ長生きするよう、日々、摂生すべきだろう。徳川家康作戦か?

    最後に、実験で検証出来ない「ノーベル経済学賞」は、一体何なのだ?という疑問が自然に湧く。あれは多分、ノーベル賞には到底値しない分野なのだ。世の中はいかがわしさで満ち溢れている。

    相田英男 拝

    タイトル
    レアメタルの話(追記あり)
  2. 相田英男
    2019-09-06 07:31

    相田です。
    新たなロイターの記事を引用します。

    風力発電のタワーが次々と倒れて、怪我人まで出るとは、最早、末期症状なのではないでしょうか?
    (追ってコメントを追加します)

    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    GE investigates new wind turbine collapse in Brazil
    GEはブラジルで起きた、新たな風力発電タービンの倒壊事故を調査している

    By Luciano Costa
    Reuters September 6, 2019

    SAO PAULO, Sept 5 (Reuters) – General Electric Co is investigating the cause of another accident involving wind power equipment it built and installed on a wind farm in Brazil operated by power company Omega, the two companies said on Thursday.
    SAO PAULO、9月5日(ロイター)-General Electric Coは、電力会社オメガが運営するブラジルの風力発電所に建設し、設置した、風力発電設備に関する別の事故の原因を調査していると、両社は木曜日に述べた。

    On Tuesday, a GE wind turbine fell to the ground from its tower at the Delta 6 wind farm in Brazil’s northern Maranhao state. A worker is being treated for injuries.
    火曜日に、ブラジルのマランハオ州北部にある、風力発電所のデルタ6で、GEの風力タービンの一基がタワーから地面に倒壊した。 労働者の一人が怪我の治療を受けている。

    Two months ago another turbine made by GE collapsed in Brazil when its tower broke in half. There have been three such collapses of GE wind turbines in the United States this year.
    2か月前、GE製の別のタービンがブラジルで崩壊し、タワーの高さが半分になった。 今年になり米国では、GE製風力タービンのこのような3つの崩壊事故があった。

    “We are working to contain and solve these problems as soon as possible to guarantee the safety and reliability of our equipment,” GE’s Brazilian unit said in reply to a request for comment by Reuters.
    「我々は機器の安全性と信頼性を保証するため、これらの問題を可能な限り早く解決し、解決するよう努めている」と、GEのブラジル部門は、ロイターによるコメント要請に応えて語った。

    “We are working to find the causes behind the accident,” GE said, adding that it was giving assistance to the worker injured in the accident and his family.
    「事故の背後にある原因を見つけるために、我々は取り組んでいる」とGEは語り、事故で負傷した労働者とその家族への支援をしている、と付け加えた。

    Omega said it was working with GE to discover the cause of the accident.
    電力会社のオメガは、事故の原因を発見するためにGEと協力していると述べた。

    RDS Energia, a Brazilian consultancy that develops wind farm projects, said this type of accident was unusual, since towers and turbines are designed to resist winds of up to 300 km (186 miles) per hour.
    風力発電プロジェクトを開発する、ブラジルのコンサルタント会社であるRDS Energiaは、このタイプの事故は珍しいと語った。なぜなら、タワーとタービンは時速300 km(186マイル)までの風に耐えるように設計されているからだ。

    RDS head Rodrigo Nereu dos Santos said a repeat of such accidents could have an impact on GE’s image and potentially hurt its chances in future tenders to supply equipment.
    RDSのロドリゴ・ネレウ・ドス・サントス長官は、このような事故の繰り返しがGEのイメージに影響を与え、将来の入札で機器を供給する可能性を損なう可能性がある、と述べた。

    GE has sold more than 3,000 turbines for wind farms in Brazil, accounting for around 5.5 gigawatts of generating capacity. Brazil has currently 15 gigawatts in wind power capacity, accounting for about 9% of its electricity generation.
    GEは、ブラジルの風力発電所向けに3,000台以上のタービンを販売し、約5.5ギガワットの発電能力を占めている。 ブラジルの風力発電容量は現在15ギガワットで、国家の総発電量の約9%を占めている。

    (Reporting by Luciano Costa; writing by Marcelo Teixeira Editing by Tom Brown)

    タイトル
    やっぱしダメだわ、この会社はもう
  3. 相田英男
    2019-08-21 23:01

    相田です。

    今回の件に関係して、以前に古村さんが翻訳された、マドフ事件についての本を紹介します。この先の成り行きに興味がある方は必見です。皆さん、是非とも買って読みましょう。

    『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』
    アダム・レボー著、副島隆彦 翻訳、古村治彦 翻訳、成甲書房、2010年)
    ISBN 9784880862620 ,1800円(本体)

    さて、昨日に続き、ロイターのスコット記者の記事を続けて載せます。今回は技術ではなく、保険に関する話なので素人の私は、意味を理解するのに難儀してます。

    でも保険関係者の意見だと、マルコポロスの方が正しいようですね。前々からGEの保険分野は危ないとの記事は出てましたが、SECが調査中なので様子を見てたんですね、みんな。

    そして、なかなか調査結果を出さないSECの対応に、業を煮やしたマルコポロスが今回の告発に出たと。彼はマドフを告発する際にまず、SECに何回も資料を提出したにもかかわらず、数年間は何も音沙汰が無かったようで、色々と遺恨があるようです。

    しかしながら、「俺は空売りしてるからな」と、堂々と公言して告発するとは、あまりにも痛快です。「文句がある奴は何処からでも来い」ですよね。

    こんなにも面白すぎる活劇が、日本で全くニュースにならないのは、残念でたまりません。

    そして、遂に東芝にもチャンスが来そうです。もうしばらく待てば東芝には、GEのヘビーデューティ・ガスタービン事業が丸々手に入るでしょう。買収費用の全額を出せなくても、アメリカの投資会社と折半すれば、多分買えるでしょうから。あの事業をマネージ出来る会社は、最早、東芝以外にはありません。三菱とシーメンスでは、独禁法に引っかかります。まさかアメリカも、中国にGEガスタービンを売る訳には、流石にいかないでしょう。

    そしたら、シベリアにバカスカとガスタービンを作って、天然ガスのパイプラインも北海道まで引いて、北方領土を発展させるのだ!!なんて処まで目指しましょう。

    (引用始め)

    UPDATE 1- General Electric ranks among riskiest long-term care insurers -Fitch
    GEはフィッチにより、最もリスクの高い長期介護保険会社のグループにランキングされた

    By Alwyn Scott
    ReutersAugust 20, 2019
    (Adds GE comment, share price)

    NEW YORK, Aug 20 (Reuters) – General Electric Co ranks among the riskiest backers of long-term care insurance, suffering from both high exposure to claims and a relatively small cash pile to pay them, Fitch Ratings said in a report on Tuesday.
    ニューヨーク、8月20日(ロイター)-ゼネラル・エレクトリックは、長期介護保険の支援者(パトロン)の中でも、最もリスクの高いグループにランキングされている。なぜなら、高い支払請求に対するエクスポージャー(価格変動リスクにさらされている金融資産の割合)と、それを支払うための現金積立が比較的少ないという、二つの理由に苦しんでいるからだ、と、フィッチは火曜日のレポートで語った。

    The Fitch report, which the credit rating agency produces annually, echoed concerns raised last week by financial investigator Harry Markopolos, who estimated that GE has under-reserved by $29 billion for its long-term care policies. GE stepped up its defense of its insurance accounting on Monday.
    信用格付け機関が毎年作成するフィッチレポートは、先週、GEが長期介護契約証のための準備金が290億ドル不足すると評価した、金融調査官のハリーマルコポロスによる提起を反映する内容だった。 GEは月曜日に保険部門の会計について対策を強化した。

    GE on Tuesday reiterated comments it made on Monday in response to the Markopolos report: “Our current reserves are well-supported for our long-term care portfolio characteristics,” GE said and provided details about how it set key assumptions used in determining its level of reserves.
    火曜日のGEは、マルコポロスのレポートに対して月曜日に出したコメントを繰り返した。「我々の資金保有量は、長期介護ポートフォリオの特性に対して、十分にサポートされている。」GEはそこで、準備金のレベルを決定する際の、主要となる仮定の設定方法について、詳細を示した。

    GE shares were down 2.7% at $8.44 in morning trading.
    GEの株価は、午前中の取引で2.7%下落し8.44ドルとなった。

    Long-term care coverage, which pays for assisted living and nursing home stays, has turned out to be far more expensive than insurers assumed when they sold policies decades ago, and has tipped some insurers into financial loss and even bankruptcy.
    介護付き老人ホームの滞在費を支払う長期介護保険の費用は、数十年前に保険契約を結んだたときに保険会社が想定したよりも、はるかに高額になることが判明した。一部の保険会社は、経済的損失や破産にさえ陥ることとなった。

    Fitch said GE is not alone, and that many insurers still have not set aside enough money to cover losses expected on long-term care policies, which are unusually risky because the costs are volatile and vulnerable to interest rate changes. Even insurers that have taken a more conservative stance and set aside more money have not avoided losses, Fitch said.
    フィッチは、GEの他にも、多くの保険会社は依然として、長期介護契約で予想される損失をカバーするのに必要な、十分な準備金を確保しておらず、非常に危険な状況だ、と述べた。長期介護に必要なコストは不安定で、金利の変動に対して脆弱である。より保守的な姿スタンスの、より多くの資金を確保している保険会社でさえ、損失を回避できないと、フィッチは述べた。

    But GE ranked second on Fitch’s list of the 16 riskiest long-term care insurers, just below Genworth Financial Inc a company that GE spun out in 2004 and that holds former GE long-term care policies.
    しかしGEは今回、フィッチの最もリスクの高い16の介護保険会社のリストの中で、2位にランクされた。これは、2004年にGEがスピンアウトした、元々はGEの介護保険会社であるジェンワース・フィナンシャルのすぐ下だった。

    GE has below average reserves and “very high” exposure to long-term care for more than 250,000 retirees and others who receive benefits paid for by such policies, Fitch Ratings analyst Anthony Beato told Reuters.
    フィッチ・レーティングズのアナリスト、アンソニー・ベアトはロイターに語った。「GEは、準備金の平均値が低く、同時に「非常に高い」危険度の長期介護に関するエクスポージャーを(5万人以上の退職者と、その他のGE保険契約により給付を受け取る人々のための)を持っている。」

    The other insurers cited as having below average reserves and very high exposure are Genworth, Unum Group and Senior Health Insurance Co of Pennsylvania.
    平均以下の準備金と、非常に高いエクスポージャーを持つ保険会社として、他に引用されたのは、ジェンワース、ユニムグループ、そしてペンシルベニア州のシニアヘルス保険会社だった。

    GE scored high, Beato said, because it has mostly older policies written when the costs of long-term care were poorly understood. A large portion of GE’s policies also provide lifetime benefits and some contain inflation protection benefits.
    ベアトは、「GEの危険度スコアが高いのは、長期介護に必要な費用が十分に理解されない時期に書かれた、古い保険契約がほとんどだったためだ」と語った。 「GEの契約の大部分は終身給付であり、一部にはインフレ時の損失を保証する内容までも含まれている。」

    “When you compound all of that together, (GE’s portfolio) looks much riskier than what the rest of the industry maintains,” Beato said.
    「これらすべてを組み合わせると、(GEのポートフォリオは)業界の他の企業が維持しているものよりも、はるかにリスクが高く見える」とベアトは語った。

    GE’s insurance group also has only about $1 billion in capital on a statutory accounting basis, Beato said. While GE, as the parent, has put in money to shore up reserves in the past, Fitch did not factor that into its rankings because it wanted a comparison of reported statutory capital levels across the industry, Beato said.
    また、GEの保険グループは法定会計ベースで約10億ドルの資本しか持っていない、とベアトは言った。親会社であるGEは、過去に準備金を支えるために資金を投入したが、フィッチは、報告されている業界全体での法定資本レベルとの比較を望んだめ、それをランキングに織り込まなかった、とベアトは述べた。

    “Should GE have to increase reserves further, the capital base continues to be dwarfed by this very large exposure” at GE’s insurance operating subsidiary, Beato said.
    「GEが準備金をさらに増額しなければならない場合、この非常に大きなエクスポージャーによって、資本基盤は更に縮小するだろう」と、ベアトは述べた。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    勝つのはマルコポロスの方だと保険関係者は語る
  4. 相田英男
    2019-08-20 17:42

    相田です。

    アメリカのニュースが錯綜している(私の見る限り)ようなので、1番信頼がおけそうな、アーウィン・スコット記者による記事を載せます。スティーブ・トゥサは、まだコメントしていないようです。

    この板に、誰が読むかわからないアメリカの記事を載せ続けて来ましたが、ここまで大事になるとは想像すらしませんでした。マルコポロスはイカサマ師の様に書かれる記事もありますが、GEと刺し違える覚悟で、命を張っています。

    一部の識者は、今回の事態を、アメリカ経済崩壊前のカナリアのさえずりだ、とみなしているようで、私だけでは、解説がいよいよ追っつかなくなって来ました。

    まだまだ唖然とするイベントが続きそうです。

    (引用始め)

    GE shares fall on Madoff whistleblower calling its finances a fraud
    GEの株は、かつてのマドフ告発者により、財務状況が詐欺であると指摘されたことで、下落した。

    Alwyn Scott, Ankit Ajmera
    AUGUST 15, 2019 / 9:11 PM

    (Reuters) – General Electric Co (GE.N) shares fell as much as 15% on Thursday after fraud investigator Harry Markopolos, who blew the whistle on Bernard Madoff’s Ponzi scheme, said GE was concealing deep financial problems, prompting a sharp rebuke from GE’s new CEO.
    (ロイター)-ゼネラル・エレクトリック社の株式は、木曜日(8月15日)に15%も下落した。バーナード・マドフのポンツィ・スキームを告発した事で有名となった、金融詐欺捜査官のハリー・マルコポロスが、「GEは深刻な財政問題を隠している」と述べたために。 マルコポロスの発言に対し、GEの新しいCEOは激しく非難した。

    Chief Executive Officer Larry Culp said Markopolos’ 175-page report contained factual errors and constituted “market manipulation – pure and simple,” because Markopolos stood to profit from short-selling tied to its release.
    GEの最高経営責任者であるラリー・カルプは、「マルコポロスの175ページのレポートには事実誤認があり、“ 市場操作 − あまりに純粋で単純な ” に過ぎない」と主張した。なぜなら、マルコポロスは彼の発表に関連して、GE株を空売して利益を得ていたからだ。

    Short sales, or bets that a share price will fall, have risen 17% in GE stock over the past month to 110 million shares worth about $995 million before the report came out Thursday, said Matthew Unterman, a director at S3 Partners, a financial analytics firm in New York.
    ニューヨークの財務分析事務所の、S3パートナーズのディレクターであるマシュー・ウンターマンによると、GE株への空売り、または株価下落へのベットは、過去1ヶ月の間に17%も上昇し、レポートが公表される木曜日の前には、約9億9,500万ドルに相当する1億1,000万株に達した、と述べた。

    In the report http://www.gefraud.com, Markopolos accused GE of hiding $38 billion in potential losses and asserted that the company’s cash and debt positions were far worse than it had disclosed.
    公表したレポートの中で、マルコポロスはGEが380億ドルの潜在的損失を隠していると非難し、会社の現金と負債のポジションは、開示されているよりもはるかに悪い、と主張した。

    “GE’s true debt to equity ratio is 17:1, not 3:1, which will undermine its credit status,” Markopolos said.
    「GEの真の負債比率(D/Eレシオ)は3:1ではなく17:1であり、これにより信用状態は弱体化しているだろう」とマルコポロスは語った。

    The report also says GE is insolvent and asserts that its industrial units have a working capital deficit of $20 billion.
    彼の報告書はまた、GEが支払不能に陥っており、その産業部門が200億ドルの運転資本不足に直面していると主張する。

    “He is selectively front-running widely reported regulatory processes and rigorous investigations without the benefit of any access to GE’s books and records,” GE board member and audit committee chair Leslie Seidman said in a statement, referring to Markopolos.
    GEの役員の一人で監査委員長のレスリー・サイドマンは、マルコポロスについて次のように言及した。
    「彼は、GEの帳簿や記録へのアクセス権を持っていない。このため彼は、報告されている規制プロセスと厳格な調査結果の、幅広い記載内容から、適当に選択してフロント・ランニング(顧客の注文情報を利用した自己売買のこと)を行なっている」

    While investors sent GE shares sharply lower, the report echoes the assertions of some of Wall Street’s more skeptical analysts, who have long raised alarms about GE’s low cash flow, frequent accounting charges and writedowns, and what they describe as opaque financial reports.
    投資家達がGE株を大幅に引き下げた一方で、このレポートは、GEの低いキャッシュフロー、頻繁に追加される会計費用と評価損、不透明な財務報告について、長らく警告を発してしてきた、ウォールストリートの(GEへの)懐疑的なアナリストの主張を反映したものだった。

    Culp, the first outside leader of the company who took over in October, has made no secret of its woes.
    10月に就任した、最初のGE外部からのリーダーであるカルプは、その悲惨な状況について隠すことはしなかった。

    The industrial businesses have seen a $2.2 billion cash outflow so far this year, and Culp said last month that GE may incur cash costs of $1.4 billion this year from the grounding of Boeing Co’s (BA.N) 737 MAX jetliner. GE makes engines for the jet through a joint venture with Safran SA (SAF.PA) of France.
    GEの産業機器部門は、今年になり22億ドルの現金流出を経験した。カルプは先月、ボーイング社(BA.N)737 MAXジェット旅客機の飛行停止により、GEは今年14億ドルの現金費用を負担する可能性があると述べた。 GEは、フランスのサフランSAとの合弁会社を通じて、このジェット旅客機用のエンジンを製造している。

    The report alleges that GE faces $38 billion in future expenses that it has not disclosed. “GE’s $38 billion in accounting fraud amounts to over 40% of GE’s market capitalization, making it far more serious than either the Enron or WorldCom accounting frauds,” the report says.
    マルコポロスの報告書は、GEが開示していない将来の費用として、380億ドルの負担に直面していると主張している。 「GEの380億ドルの会計詐欺は、GEの時価総額の40%を超えており、エンロンまたはワールドコムの会計詐欺よりもはるかに深刻だ」と報告書は述べている。

    In a statement GE said, “We remain focused on running our business every day and … will not be distracted by this type of meritless, misguided and self-serving speculation.”
    これに対し、GEは次のように述べた。「我々は日々ビジネスを運営することに注力している。このような無益で、見当違いの、利己的な憶測に気を取られることはない。」

    GE said it “stands behind its financials” and operates to the “highest-level of integrity” in its financial reporting.
    GEは自らの財務状況に責任を持っており、財務報告書に記したように、それは「最高レベルの完全性」で運営されている、と述べた。

    It also said Markopolos was known to work for unnamed hedge funds that typically benefit from short-selling a company’s stock.
    また、GEはマルコポロスについて、典型的な会社株式の空売りから利益を得るような、名前を公開しないあるヘッジファンドで働いている、とも述べました。

    BACKED BY A HEDGE FUND

    A disclaimer in the report stated that it was drafted by Forensic Decisions PR LLC, which will get compensation from a third-party entity that could benefit from a decline in GE’s share price. The report did not name the entity.
    マルコポロスのレポートの免責事項によると、Forensic Decisions PR LLC(という会社)が起草したものであり、GEの株価が下落した際に利益を得ることができる第三者組織から、マルコポロスは報酬を受け取ると述べている。 レポートはその組織の名前を明らかにしていない。

    Speaking on CNBC on Thursday, Markopolos said he would receive a percentage of any profits generated by the report. He declined to provide details about the compensation or name the fund involved, which he said was “a mid-sized U.S. hedge fund.”
    木曜日にCNBCの取材でマルコポロスは、彼のレポートによって生み出された利益の一部を受け取るだろうと述べた。 彼は補償内容の詳細を提供することも、関与するファンドの名前を語ることもしなかった。彼は「とある中規模の、米国のヘッジファンド」だと語った。

    GE shares closed down 11.3% at $8.01 on Thursday, its biggest one-day percentage drop since April 2008.
    GE株は木曜日に11.3%下落し、8.01ドルで取引された。これは1日における株価の下落では、2008年4月以来の最大のものだった。

    A regulatory filing showed CEO Culp bought GE shares worth nearly $2 million in open market purchase at an average price of $7.93 per share. In the past two years, GE has announced more than $40 billion in asset writedowns and accounting charges. The company also has said its accounting is being investigated by the U.S. Securities and Exchange Commission and the Department of Justice.
    規制当局に提出された資料から、CEOカルプは1株あたり平均$ 7.93の価格で、200万ドル近くのGE株を公開市場で購入したことがわかった。 過去2年間で、GEは400億ドルを超える資産評価減と会計費用を発表した。 同社はまた、GEの会計状況が米国証券取引委員会と司法省によって調査されていると述べた。

    The report details GE’s exposure to long-term care insurance, the subject of a federal class-action lawsuit awaiting a decision on GE’s motion to dismiss.
    マルコポロスのレポートは、GEの長期介護保険 (現在GEによる解約手続き決定に関して、民事集団訴訟の裁定中である)に関するエクスポージャー(価格変動リスクにさらされている金融資産の割合)について、詳しく説明してる。

    It says GE’s financial statements about its insurance business do not correspond to those of eight insurers that Markopolos says hold about 95% of GE’s exposure.
    それによると、GEの保険事業に関する財務諸表は、マルコポロスがGEのエクスポージャーの約95%を保持していると主張する、8社の保険会社の財務諸表とは一致しない、と記されている。

    Markopolos is best known for alerting regulators in the early 2000s to signs that money manager Madoff’s investment firm was a Ponzi scheme, a deception in which unusually high returns for early investors are generated with money from later investors. Madoff was arrested in 2008 and later sentenced to 150 years in prison.
    マルコポロスは、マドフがマネージャーを務めていた投資会社が、ポンツィ・スキームであったという兆候を、2000年代初めに規制当局に警告したことで有名である。 マドフは2008年に逮捕され、その後150年の刑を宣告された。

    John Hempton, co-founder of the Sydney, Australia-based Bronte Capital hedge fund, wrote in a blog post here on Thursday that GE’s 14.7% average profit margin in recent years was in line with the returns of its industrial peers, not “too good to be true” as Markopolos alleges.
    オーストラリアのシドニーに拠点を置くブロンテ・キャピタル・ヘッジファンドの共同設立者であるジョン・ハンプトンは、木曜日のブログ投稿で、「最近のGEの14.7%の平均利益率は、同業他社の利益と一致しており、マルコポロスが主張するような「事実よりもあまりにも良すぎる」訳ではない」と、書いている。

    “GE remains the unequivocal leader” in medical imaging and jet engines and its currently depressed profit margin will likely rebound, he wrote, adding, “Harry’s report is silly. The market should ignore it.”
    「GEは今後も、医療画像およびジェットエンジンの明確なリーダーであり続け、現在落ち込んでいる利益率が回復する可能性が高い」と、彼は書いた。「ハリーの報告書は馬鹿げている。 市場はそれを無視すべきだ。」と続けた。

    Worried investors jangled phones on Wall Street Thursday. Nick Heymann, an analyst at William Baird & Co, said questions focused on $18.5 billion of the $38 billion in charges that Markopolos says GE is concealing.
    心配になった投資家達は、木曜日にウォール街を多くの電話により混乱させた。 William Baird&Coのアナリストのニック・ヘイマンは、マルコポロスがGEが隠蔽していると主張する380億ドルの費用のうち、185億ドルに焦点を当てた疑問を語った。

    Markopolos said GE will need to set aside that money to cover its long-term care policies in addition to the $15 billion it has already begun to set aside.
    マルコポロスは、GEがすでに確保し始めた150億ドルに加えて、長期介護政策をカバーするためにその資金を確保する必要がある、と述べた。

    Heymann said the remainder of the $38 billion was already largely known: charges related to an accounting rule change coming in 2021 and potential losses on GE’s 50.4% stake in subsidiary Baker Hughes, which it plans to sell.
    ヘイマン氏は、380億ドルを暗示する物は、すでに広く知られていると語る。2021年に発生する会計規則の変更に関連する費用と、販売を予定している、子会社のベイカー・ヒューズの、GEの50.4%持分の損失可能性がそれである、と彼は語る。

    “I don’t know the validity of the $18.5 billion,” Heymann said. “I’m trying to figure it out.”
    「185億ドルの妥当性についてはわからない」とヘイマンは言った。「私はそれを理解しようとしている。」

    But he said if the figure was accurate, Culp would not have recently raised GE’s 2019 financial targets.
    しかし彼は、その数値が正確だったならば、カルプは最近GEの2019年の財務目標を引き上げることはなかっただろう、と述べた。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    いや~、こんなことになるとは思わなかっただよ
  5. 相田英男
    2019-08-16 16:52

    相田です。

    久々にGEネタを投稿した翌日に、あまりに衝撃的なニュースが出ました。
    取り急ぎ、日本語版を引用します。

    マルコポロスによると、「GEはチャプター11の申請を覚悟すべし」とのことです。

    (引用始め)
    米GEに不正会計疑惑、会計専門家が指摘 GEは反論
    日経新聞電子版
    2019/8/16 3:06 (2019/8/16 6:34更新)

    【ニューヨーク=清水石珠実】米国の著名会計専門家が15日、ゼネラル・エレクトリック(GE)が巨額な損失を隠すために不正会計を行っているとの報告書を公表した。「(2001年に経営破綻した)エンロンよりも巨額の不正を働いている」と指摘したことで、同日の米株式市場では追加損失が膨らむとの懸念から同社株は急落、11%安で取引を終えた。GE側は疑惑を否定している。

    GEの不正会計を指摘したのはハリー・マルコポロス氏で、リーマン・ショックをきっかけに発覚した史上最大規模の詐欺事件「マドフ事件」を告発したことで知られる。15日はGE株が一時15%超下落する場面もあった。

    GEに関する報告書は175ページに上り、あるヘッジファンドと協力して7カ月かけて調査したという。発見できただけで不正額は380億ドル(約4兆円)に上るが、それも「氷山の一角にすぎない」と指摘した。特に介護保険事業で、保険の引当金に不正があると問題視した。

    同日、米経済局CNBCに出演したマルコポロス氏は「(今回の不正会計摘発がGEの)経営破綻につながる可能性もある」と語った。

    GE側は「高い基準にのっとって企業活動を行っている。マルコポロス氏の主張に根拠はない」との反論コメントを発表した。保険事業についても「十分な引当金を積んでいる」とした。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    台風も高校野球も日韓関係悪化も、最早、私の頭には無い
  6. 相田英男
    2019-08-15 12:05

    相田です。
    数日前に出たGEについての記事ですが、忘備録的に載せます。

    スティーブン・トゥサの最新のコメントでは、相変わらずGEについてネガティブな内容で、株価の目標値は「5ドルだ」という激辛評価だったそうです。ボーイング737 MAX旅客機の飛行停止で、LEAPという最新型ジェットエンジンの販売が加速できていないのが、目下の悩みとのこと。

    このトゥサのコメントが出た翌日には、GEのCEOのラリー・カルプは、自分のポケットマネーから、GE自社株を300万ドル買ったそうです。去年の11月のCEO就任直後にも、220万ドル相当のGE株をカルプは買っており、アナリストとCEOの間で神経戦が繰り広げられているようです。

    (引用始め)

    J.P. Morgan Sees More Downside for General Electric (GE) Stock
    J.P モルガンはGE株価の一層の下落を予測

    Ben Mahaney, SmarterAnalyst August 11, 2019

    General Electric (GE) shares have fallen back to earth, wiping out this year’s gains, as the frenzy dies down.
    ゼネラルエレクトリック(GE)の株価は、今年の利益が一掃され、熱狂も衰えた事で、再び地に堕ちた。

    In late July, GE reported better-than-expected Q2 numbers, beating analysts’ estimates on both revenue and EPS. However, investors are still nervous on the road ahead, and one analyst says it’s time to take profits.
    GEは7月下旬に、予想を上回る第2四半期の数値を報告し、アナリスト達による収益およびEPS(1株当たり利益)予測の両方に打ち勝った。 しかし、投資家はGEの前途について未だに神経質であり、アナリストの一人は、今が利益を確定する機会だと言っている。

    5-star J.P. Morgan analyst Stephen Tusa, a frequent GE bear, has maintained his Underweight rating on GE stock, with a $5 price target, which implies nearly 45% downside from current levels.
    J.P.モルガンの五つ星アナリストであるスティーブン・トゥサ(彼はGEに対する悲観的な予想家である)は、GE株価のアンダーウェイト格付けを変える事なく、株価目標を5ドルとした。トゥサの予想は、株価が現在の水準から45%近くも下落する事を意味する。

    Overall, Tusa says GE’s recent quarterly results showed an operational miss driven by Aviation, with FCF below his estimates. Free cash flow ― a major point that many look to ― came in below Tusa’s estimates, further contributing to his disregard for the stock.
    トゥサのコメントを要約すると、GEの最近の四半期における結果は、FCFがトゥサの推定値を下回ったことを含めて、航空機エンジン事業(GEアビエーション)の経営舵取の失敗を示している、ということだ。フリーキャッシュフロー(多くの人が注目する主要ポイント)が、トゥサの予想を下回ることが、株価の下方予測を裏付けている。

    The main takeaway for Tusa is that the company operationally slipped. The analyst says, “the combined Power/Renewables segments [came in] worse,” despite help from “modest” growth in Healthcare. But the worst offender came from Aviation, which missed profit estimates and the segment Tusa calls “the key value driver.”
    トゥサの格下げの主な根拠は、会社経営の失敗にある。彼は、GEはヘルスケア事業の「ゆるやかな」成長の助けがあったにもかかわらず、「電力/再生可能エネルギーを合わせたセグメントが悪化した」と述べている。しかし、利益予想を誤った最悪の原因は航空機事業から来たもので、トゥサはそのセグメント(GEアビエーション)の事を「キーバリュードライバー」と呼ぶ。

    Indeed, GE’s aviation segment is the backbone of the company right now, and the lead generator of revenue. In the second quarter, the segment generated the plurality of total revenue, at $7.9 billion, or almost 30% of total revenue. Through CFM International ― a joint partnership between GE and the French Safran ― Aviation produces jet engines, including the new LEAP engines. But a major challenge of late for Aviation has been the grounding of the Boeing 737 MAX, a major buyer of the LEAP engines. While the company is still booking sales of the engine to other aircraft, there will be a continued holdback in revenue until the 737 MAX gets back in the air.
    実際、現在のGEにおいて、航空機事業セグメントは会社のバックボーンであり、収益の主要な発生源である。第2四半期に、このセグメントはGE総収益の中で最大となる79億ドル、約30%を生み出した。 GEとフランスのサフラン社との共同会社であるCFMインターナショナルを通じて、GEアビエーションは、新型のLEAPエンジンを含むジェットエンジンを製造している。しかし、GEアビエーションの最近の大きな課題は、LEAPエンジンの主要な買い手であるボーイング737 MAXの飛行停止にある。同社はまだ他の航空機へのエンジン販売を受注しているが、737 MAXの飛行が再開されるまで収益の低迷は続くだろう。

    Tusa continues to look at the numbers, and just does not believe GE’s stock is priced right. The analyst believes “the underlying core fundamentals are actually a bit worse,” which push him to reiterate his bearish rating.
    トゥサは引き続き数字を見ており、現在のGEの株価が適正だとは考えていない。 彼は、「GEの根本的なコアファンダメンタルズは、実際には少し悪い」と考えており、弱気の評価を繰り返している。

    All in all, for much of the year, Wall Street was bullish on GE. But that sentiment is beginning to change. TipRanks analysis of 10 analyst ratings shows a consensus Hold rating, with three analysts saying Buy, four suggesting Hold, and three recommending Sell. However, the average price target among these analysts stands at $11.36, which implies about 24% higher from where the stock is currently trading. (See GE’s price targets and analyst ratings on TipRanks)
    全体として、年間を通じてウォール街はGE株価に対して強気だった。 しかし、その雰囲気は変わり始めている。TipRanks(経済アナリストの格付会社) の10人のアナリストによる格付では、3人が買い、4人がホールド、3人が売りを推奨しており、現状維持のコンセンサスである。これらのアナリストのGE株価の平均目標値は11.36ドルであり、現在の取引価格から約24%高い。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    相変わらずGEに手厳しいあのアナリスト
  7. 相田英男
    2019-07-02 18:49

    相田です。

    色々と世の中は出来事が目白押しですが、私はこの話題で、しばらく押し通すつもりです。

    この話は、私も年初の記事で見かけて気に留めていました。が、遂に交換作業を始めるみたいです。

    変圧器というのは、トランスと言ったりもしますが、リング形状の鉄芯に二つの銅線コイルを巻いただけの、単純な構造の機械です。コイルの巻数を変えて電圧を変えるだけです。皆さんの周囲にある機械のどれか一つには、必ずこれが付いている筈です。この記事のような電力用になると、電流のエネルギーが桁違いに大きくなりますけど。

    記事では爆発した(explosions)と書かれていますが、おそらくは絶縁に使う樹脂材などが、高温で溶けて発火したのだと思います。しかしながら、トランスという枯れた古臭い技術の装置であるにもかかわらず、こんな事故を起こすなどとは、あまりにも製造技術のレベルが低すぎるとしか、言えません。製造元はまだ責任を認めてないようですが。

    評論家の野口悠紀雄氏などは、「日本は製造業に頼りすぎだ、製造業以外の産業に切り替えるべきだ」と、今でも盛んに主張されています。しかし、脱製造業化を進めるにしても、ここまで物作りの基礎レベルが、衰えてしまうのも、如何なものかと私は思えます。

    目先の利益がなかなか上がらなくても、日本では基礎的な製造技術を、将来もきちんと維持し続けるべきではないでしょうか。地味に技術をつないで生き延びる事が、日本人には向いているのではないのでしょうか?

    ぱっと見のカッコ良さばかり追っても、この元世界最強と謳われた会社のように、最後にドツボにはまって終わるのが、オチではないのでしょうか。

    我々も他人の失敗から、賢く学ぶべきだと考えます。

    (引用始め)

    After explosions, Brazil power transmission companies remove GE equipment
    爆発事故が続いたことから、ブラジルの変電設備会社はGE製変圧器の交換を始めた
    By Luciano Costa
    Reuters July 2, 2019

    SAO PAULO (Reuters) – After an unusual number of explosions, several Brazilian power transmission companies have started removing a piece of equipment made by General Electric Co , a blow for GE’s Brazil unit as it battles competing suppliers from China and India.
    SAO PAULO(ロイター) – 通常ではない数の爆発事故の後、いくつかのブラジルの送電会社は、GE製の変圧器の他社製品への交換を開始した。それは、ブラジルにおいて中国やインドの競合他社と戦っている、GEのブラジル事業部への打撃となる。

    Brazil’s grid operator ONS recommended replacing GE’s CTH-550 transformer model after registering 53 explosions, as Reuters exclusively reported in January.
    1月にロイターが独占的に報告したように、ブラジルの送電会社ONSは、53回に登る爆発事故が報告されたGE製の変圧器:CTH-550 について、他器への交換を推奨している。

    ONS said then that the equipment showed “a failure rate that is superior to what is expected” for such a device.
    ONSはその推奨の際に、GEの変圧器に関して「予想よりも高い故障率を示した」と、述べた。

    There are close to 700 pieces of that equipment in Brazil’s grid, each costing up to 100,000 reais ($26,000). Power transmission companies have already launched tenders to buy replacement transformers while they discuss the costs and a schedule for the changes with GE and regulators.
    ブラジルのグリッド(送電、変電インフラ設備)には、問題となる変圧器が700個近くあり、それぞれの交換に必要となるコストは最大10万レア(26,000ドル)となる。送電会社はすでに、交換コストとスケジュールについてGE及び規制当局と話し合いながら、交換用変圧器の購入のための入札を開始している。

    In a statement to Reuters, GE said it is investigating what caused the equipment failure in Brazil.
    ロイターへの声明でGEは、ブラジルでの変圧器の故障の原因を現在調査していると述べた。

    “GE Grid Solutions performed a series of checks in the equipment with its clients and, as of this moment, there is no evidence that the problems were caused by the design, components or production processes,” it said.
    「GEグリッドソリューションズは、顧客との間で一連の機器チェックを実施したが、現時点では問題が、設計、コンポーネントまたは製造プロセスによって引き起こされた、という証拠はない」と語った。

    Brazil’s electrical energy regulator Aneel said that, after conducting a detailed analysis, it has determined the problem is with the manufacturer.
    ブラジルの電力規制機関であるAneelは、詳細な分析を行った結果、問題は製造業者にあると判断した、と語った。

    “The transmission companies acquired a product which, according to the reports, has presented a high rate of failure,” Aneel director Sandoval Feitosa told Reuters.
    Taesa , one of Brazil’s largest power transmission companies, controlled by regional utility Cemig and Colombia’s ISA , said it has started replacing all GE model CTH-550 transformers in its networks.
    AneelのSandoval Feitosa社長はロイターに対し、「製品を回収した送電会社が作成した分析レポートによると、これらの回収した機器は高い故障率を示した」と述べた。地域最大手のCemig とコロンビアのISA によって管理されている、ブラジル最大の送電会社の1つであるTaesa は、送電ネットワーク内のすべてのGEモデルCTH-550 の交換を開始した、と述べた。

    Taesa’s CEO Raul Lycurgo Leite said the changes will be completed next year, adding that it will take time due to the buying process and coordinated grid work.
    TaesaのCEO、Raul Lycurgo Leiteは、来年には交換が完了すると述べ、購入プロセスとグリッド調整の作業のためには時間がかかるだろう、と付け加えた。

    China’s State Grid Corp , which has expanded strongly in Brazil this decade, has also confirmed plans to make the changes, but did not provide further details.
    この10年間で、ブラジルで大きく拡大した中国のState Grid 社もまた、交換事業に関与する計画を確認したが、それ以上の詳細は提供していません。

    Other companies such as Furnas and Copel said they have opened tenders to buy new transformers.
    FurnasやCopelのような他の会社は、彼らが新しい変圧器を買うための入札を開いたと言述べた。

    These companies are also negotiating with Brazil’s electricity regulator Aneel to have some fines suspended. They were fined due to interruption in the flow of power after the explosions and say they are not responsible for the outages.
    これらの会社はまた、ブラジルの電力規制者Aneelといくつかの罰金の停止について交渉中である。彼らは、爆発事故後に起きた電力供給の中断について罰金を科されており、彼らは送電機能停止に対して責任がないと言っている。

    (Reporting by Luciano Costa; writing by Marcelo Teixeira; Editing by Lisa Shumaker)

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    問題はタービンだけではない、まだまだ続くよGEパワーの闇
  8. 相田英男
    2019-06-25 12:18

    相田です。

    ロイターで、GEのガスタービン事情について、シャープな分析をしてくれるアーウィン・スコット記者の記事です。私はGEの報道については、彼の記事とトゥサのコメントを最も信頼しています。

    ただし今回も、読んだ後で「う~~ん」と唸るような内容です。

    H型ガスタービンというのは、今のHAモデルの先行機です。ジャック・ウェルチ時代にGEの威信を掛けて開発されたマシンです。当時の贅を尽くしたようなハイテク技術をふんだんに取り入れていました。その一つに、高温パーツの「クローズド蒸気冷却システム」というのがあり、高温パーツ内部に張り巡らせた細く曲がった通路内部に、蒸気を発生して循環させて温度下げる、という物でした。

    普通の空気を流すよりも、蒸気を使う方が冷却効果が高い、という考えに基づく設計です。ただし、タービンの運転中に、高温ガス中に蒸気が少しでも漏れると、ガスが強烈に冷えて発電効率が落ちるので、蒸気漏れを防ぐシール技術が大変そうでした。また、起動してから蒸気を加熱発生して、タービン内部を循環させるまでの時間がかかるのも、欠点だったようです。

    ガスタービンの最大のメリットは、停止からの起動が早いことです。今電気がいるな、というタイミングでバツンとスイッチを入れると、1時間くらいでタービンが起動して電気を作れることが、ポイントです。今の流行りの風力や太陽光発電などの、不安定な電源を使う時に、この高速起動出来るガスタービンの特徴は、非常に助かります。

    ところが、H型タービンの場合は、おそらくは、起動してから蒸気冷却システムが安定して、電気を供給するまでに数時間は掛かってしまうのです。これなら、自然エネルギーと組み合わせても、あんまりメリットがないじゃないか、という事みたいです。高いメンテ費用ばかりGEに巻き上げられて。後継機のHAモデルでは、蒸気冷却から普通の空冷式に戻したので、起動が早くなったようですが。

    そういえば、以前に広瀬隆大先生が「燃料電池が世界を救う」という御著書で、絶賛されていたのが、このGEのH型ガスタービンでした。それが今となっては、何とも間抜けな世界です。そうとしか言えない。

    ちなみに、入念に資料を集めるスコット記者も、今回うっかり失念したようですが、H型タービンを使う発電所は、英国のバグラン・ベイ以外にも存在します。それは、千葉の富津海岸にある東京電力のプラントです。

    最近のニュースで、東京電力がGEからHAタービンを3台買うとか買わないとかで、物議を醸していますが、どうも、このニュースに関係しそうな気が、私はします。もしかすると、富津のH型タービンをHA型にリプレースするのかもしれません。でも、本来なら、30年使える筈のマシンを、GEの都合で早めにリプレースする羽目になるなら、あまりに理不尽な話です。東電を問い詰めても、シラを切って、絶対答えないでしょうけど。

    (引用始め)

    General Electric to scrap California power plant 20 years early
    GEはカリフォルニアの発電所を20年も早くスクラップにする

    By Alwyn Scott
    Reuters June 22, 2019
    (Adds detail about GE-owned plants)

    NEW YORK, June 21 (Reuters) – General Electric Co said on Friday it plans to demolish a large power plant it owns in California this year after only one-third of its useful life because the plant is no longer economically viable in a state where wind and solar supply a growing share of inexpensive electricity.
    ゼネラル・エレクトリック社は金曜日に、カリフォルニアに作った大規模な発電プラントを、風力と太陽光による安価な電力供給がシェアを拡大している状態では、もはや経済的に成立しない事を理由に、耐用年数の3分の1しか経たずに、取り壊す計画を発表した。

    The 750-megawatt natural-gas-fired plant, known as the Inland Empire Energy Center, uses two of GE’s H-Class turbines, developed only in the last decade, before the company’s successor gas turbine, the flagship HA model, which uses different technology.
    インランド・エンパイア・エネルギーセンターとして知られる、750メガワットの天然ガス焚きプラントは、10年間に開発された、GEの2基のHクラスガスタービンを使用している。H型タービンは、その後継機であり現在は同社のフラッグシップ機となったガスタービンのHAモデルとは、異なる技術を使用している。

    The closure illustrates stiff competition in the deregulated energy market as cheap wind and solar supply more electricity, squeezing out fossil fuels. Some utilities say they have no plans to build more fossil plants.
    このプラントの閉鎖は、規制が緩和されたエネルギー市場において、安価な風力と太陽光がより多くの電力を供給する事で、化石燃料発電の割合を削り取るような、激しい競争の状況を反映している。複数の発電事業者は、今後は化石燃料の発電プラントを建設する計画はないと述べている。

    It also highlights the stumbles of Boston-based GE with its first H-Class turbine. The complex, steam-cooled H design takes hours to start, suffered technical problems and sold poorly, experts said.
    この発電所の閉鎖はまた、ボストンを拠点とするGEの、初の(高性能ガスタービンとなる)Hクラスタービンのつまずきを浮き彫りにする。この複雑な蒸気冷却システムを持つ、H型設計のタービンは、起動するのに何時間もかかり、技術的な問題を抱えており、そして殆ど売れていない、と、専門家は語った。

    “We have made the decision to shut down operation of the Inland Empire Power Plant, which has been operating below capacity for several years, effective at the end of 2019,” GE told Reuters. The plant “is powered by a legacy gas turbine technology … and is uneconomical to support further.”
    GEはロイターに対し、「我々は、数年前から出力を下げて稼働していたインランド・エンパイア発電所の運転を、2019年末には停止する事を決定した」と語った。この発電所は「旧式のガスタービン技術を用いており…これ以上のサポートを続けるのは、経済的ではない」と、述べた。

    GE declined to comment on whether it would take a charge for shutting the plant. GE operates few power plants of its own.
    GEは、プラントの閉鎖に費用がかかるかどうかについて、コメントを控えた。 GEは、自身では発電所をほとんど運転していない。

    In a filing with the California Energy Commission on Thursday, GE said the plant is “not designed for the needs of the evolving California market, which requires fast-start capabilities to satisfy peak demand periods.”
    木曜日にカリフォルニア州エネルギー委員会に提出した資料の中で、GEは「この発電所は、ピーク電力の需要時間に対応するための高速起動能力を必要とする、カリフォルニア市場の電力市場の発展のためには設計されていない」と述べた。

    GE’s newer HA turbine can power up in under an hour, more quickly than the H to match fluctuating supplies of wind and solar power, GE said. The large market for the H turbine that GE anticipated “did not develop and has resulted in an orphan technology installation at IEEC,” the filing said.
    「GEの最新のHAタービンは、風力発電と太陽光発電の電力変動に対応するために、1時間以内で起動することができる」とGEは述べた。「Hタービンのための大規模な市場は、GEが期待したように発展しておらず、結果としてHタービンは国際電気標準会議(?IEECのつもりですが自信ありません by 相田)の規準に従わない、孤立した技術の導入になっている」と、その資料には記されている。

    It added that GE will no longer support or make replacement parts for the H turbine. Only one other plant uses H turbines, Baglan Bay in Wales.
    その資料には、GEがもはやHタービンのためのサポートをしないか、交換部品を作ることもないであろうであろうと、付け加えられている。 他にHタービンを使用しているのは、ウェールズのバグラン・ベイ発電所(英国)だけである。

    California approved the Inland Energy Center, located in Riverside County, about 75 miles (120.7 km) east of Los Angeles, in 2003 and the plant opened in 2009. Industry experts estimated it cost nearly $1 billion. Similar combined-cycle gas-power plants run for 30 years before being decommissioned, according to a recent study by S&P Global Market Intelligence.
    カリフォルニア州は、2003年にロサンゼルスから東へ約75マイル(120.7 km)のリバーサイド郡にあるインランドエネルギーセンターを承認し、2009年に開業した。 産業界の専門家の予測では、その開業時には10億ドル近くの費用が掛かったという。S&P Global Market Intelligenceの最近の調査によると、同様のコンバインドサイクル用ガス発電所は、廃止されるまでに30年間は稼働する。

    One of the two Inland Empire turbines was mothballed in 2017, cutting the plant’s output to about 376 megawatts, according to the filing and the California Independent System Operator, which oversees the state’s electricity grid. Closing the plant will eliminate about 23 jobs, the filing said. GE has been promoting its “H-Class” turbines amid a severe downturn in demand for fossil-fuel power plants.
    GEの資料の記載と、カリフォルニア州の電力網を管理する独立系システム事業者の証言によれば、2つのインランド・エンパイアのタービンのうちの1つは、2017年に運転を停止し、プラントの出力は約376メガワットに削減された、という。工場を閉鎖することで、23人程のの雇用が削減される、とその資料は語っている。 GEは、化石燃料発電所の需要が大幅に低迷する中で、その「Hクラス」タービンの運転を推進している。

    The two “H” turbines being demolished in California differ from GE’s current HA, which uses air cooling, said a former GE engineer familiar with both turbine types.
    「カリフォルニアで解体されている2つの “H” タービンは、GEが現在推進するHA型とは設計が異なる。HAは空冷方式を採用している」と両方のタイプのタービンに精通している、GEの元エンジニアは語った。

    Still, premature closure of a turbine marketed as “H-Class” is a negative for GE as it struggles to restore profits at its power business, the expert noted. Power, once GE’s largest division, lost $22.8 billion last year as the company grapples with slack demand for fossil-fuel plants. The company is set to lose up to $2 billion in cash this year. GE is selling the California power plant site to a company that makes battery storage, which is increasingly used to make wind and solar power available when needed, replacing the need for some fossil fuel plants.
    「それでも、 “Hクラス” として販売されているガスタービンの、時期尚早の閉鎖は、電力事業での利益の回復に手間取るGEにとって、ネガティブな事件だ」と、その専門家は述べた。かつてのGE最大の事業部門だったGE-Powerは、化石燃料発電の需要の低迷に苦しんでおり、昨年は228億ドルを失った。同社は今年、最大20億ドルの現金を失うだろう。 GEはカリフォルニアの発電所の敷地を、蓄電池製造会社に売却する手続きを行なっている。これらの蓄電池は、一部の旧式の化石燃料発電所を置き換えるため建設される、風力及び太陽光発電システムに用いるため、需要が増加している。

    (Reporting by Alwyn Scott Additional reporting by Scott DiSavino; editing by David Gregorio and Leslie Adler)

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    広瀬隆が推薦したシステムも蓋を開けてみたら、この体たらくだったという話
  9. 相田英男
    2019-05-31 18:34

    相田です。ロイターのGEについての新たな記事を引用します。

    記事に出て来る「リーン生産方式」というのは、リーンスタートアップとも呼ばれる、アメリカで流行っている経営理論の一つだそうです。エリック・リースという起業家が書いた本が元になっており、新規の事業を始める時に、極力ムダを省いてスピードアップするのが特徴だそうです。

    何やら立派な話みたいですが、元ネタはトヨタがやってる「カンバン方式」らしく、日本では「何をいまさら」感もあり、あまり話題にはなりません。おそらくカルプは、GEに来る前にリーン方式についてもよく研究しており、ダナハーの株価を高めるのに役に立ったのでだと思います。

    カルプが問題の工場に行った、昨年の8月の時点では、CEOは前任者のフラナリーでした。グリーンビル工場というのは、ブレード破損を起こしたHAガスタービンを製造する中核工場です。そのGEの最重要工場の一つに、副社長のカルプがやって来て見たものは、旧態依然とした物作りの現場でした。投資家達から、「GEパワーの赤字はいつまで続くんだ?」とせっつかれたカルプが、うっかり内輪をバラしてしてしまったようです。

    元記事には書かれていませんが、カルプが見学した丁度そのタイミングで、ブレードトラブルが勃発しており、「全くしょうがねえなあ」と、今でも頭を抱えているのでしょう。ジャック・ウェルチの時代に「シックスシグマ」とか、散々ぶち上げていたのは、一体何だったのか?こんな会社を「世界最強」と崇め奉っていた、経済マスコミ関係者達も、一体何だったのか、私にはサッパリ理解できません。

    (引用始め)

    GE’s CEO ‘stunned’ that factory efficiency drive only just started
    GEの最高経営責任者(CEO)は、工場の効率化が始まったばかりであることに「驚いた」
    Reuters May 31, 2019

    By Alwyn Scott

    NEW YORK (Reuters) – General Electric Co’s chief executive said on Thursday he was “really stunned” to learn that a major factory had only recently started using lean manufacturing techniques.
    [ニューヨーク16日ロイター]ゼネラル・エレクトリック社の最高経営責任者(CEO)は25日、GEの大工場の一つが、リーン生産方式を採用し始めたばかりであることを知って「本当に驚いた」と述べた。

    “It put me back a little bit to go to our Greenville, South Carolina, plant last summer and to have the team regale me with a really good lean production (project) that had just been implemented,” Larry Culp said at an investor conference in New York.
    「昨年夏に私は、サウスカロライナ州グリーンビルの工場に行った。その工場のチームから、実際に業務効率の改善効果の高い、リーン生産プロジェクトについて、今まさに始めたばかりだ、と知らされた。その時に私は落胆し、少しだけ後ろ向きの気持ちになった」と、ニューヨークで行われた投資家との会議の席で、カルプは述べた。

    “They did a very nice job. But just — it really stunned me (to) be there in the summer of 2018 and have such an important plant at GE beginning its lean journey or re-beginning its lean journey.”
    「その時の彼らは、非常に素晴らしい仕事をした。しかし、私は本当に驚いた。その2018年の夏に(相田注;ガスタービンのブレードトラブルに直面した最中にもかかわらず)、GEにとって非常に重要な工場の一つで、リーンジャーニーを始めたり、仮に一時的にそれ中断していたのなら、その時にようやく再開したりすること、についてだ。

    Lean techniques are widely used to reduce manufacturing costs while increasing efficiency and quality. GE’s Greenville factory makes large, gas-fired turbines that generate electricity in power plants around the world. GE’s power business has been losing money and is the top priority in Culp’s efforts to turn around the company.
    リーン技術は、製造現場での効率と品質を高めながら、製造コストを削減するために、広く使われる手法である。 GEのグリーンビル工場は、世界中の発電所で電力を生み出す大型のガスタービンを製造している。 GEの電力事業は収益を失いつつあり、カルプが会社を好転させるための最優先事項となっている。

    “No business consumes more of my time right now,” Culp said.
    「私の時間をこれ以上消費する問題は、今のところはない」とカルプは語った。

    Culp also affirmed on Thursday that GE expects negative free cash flow in the second quarter, and said GE’s power division plans to cut costs by about 20% over the next two years as it tries to become leaner.
    木曜日の会議でカルプはまた、第2四半期にフリーキャッシュフローがマイナスになるとの予想を確認し、GEの電力部門は今後2年間でスリム化を図り、コストを約20%削減すると語った。

    Culp said GE cut $800 million in costs at the power unit last year, and has plans to cut another $1.6 billion.
    カルプは、GEは発電部門で8億ドルのコストを昨年削減し、さらに16億ドルのコスト削減を計画していると語った。

    (Reporting by Alwyn Scott; Editing by Leslie Adler and Phil Berlowitz)

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    イケメン社長がうっかり口をすべらせる
  10. 相田英男
    2019-05-16 12:04

    ー どうしたんですか、相田さん?今回の投稿は、GEのガスタービン事業についてのロイター記事の紹介でしょう?最近のおちゃらけ投稿じゃなくて、相田さん得意の技術の話じゃないですか。何で僕が呼ばれたんですか?

    (相田)いや、英文記事の意訳はできたんだけど、前振りの紹介文がなかなか書きづらくてさ。それで何とか対談で埋めようかと・・・・

    ー別にいいですけど、調子悪いんですか?

    (相田)何か、この間の改元のお気楽騒ぎになかなか乗れなくて、いまいちな。俺的には令和っていうのは、平成よりは響きが気に入ってるんだけど。何せ平成はカクカクし過ぎてダサく思えたからな。

    でも、最近タイマーズのアルバムを聞き返した時に「カプリオーレ」っていう曲があってさ。ブラームスだっけ?有名なクラシックの旋律に、キツイ内容の歌詞を付けて歌ってるやつだけど。

    ー「高速~道路に~ポリスが並ぶ~、な~んだか大変だね、ごくろ~お~さん」て歌ですよね。これ以上は、今の情勢だと歌詞が書けませんけど。

    (相田)あれを聴きかえすと、「前の改元の時は、こんな感じで暗い雰囲気だったよなあ」とか、思い出してさ。随分違うよな、今回はさ。何か変な話もどんどん続くし。あの、雑誌の中の映画宣伝の発言で、佐藤浩市が安倍首相の病気を揶揄したから許せん、って、盛り上がってるのは、一体何なのかな?

    さっき俺もコンビニに寄って、その雑誌を立ち読みしたんだけど(笑)、佐藤浩市の発言をどう読んでも、安倍を批判してるとか、そんな風には読めなかったな、俺には。百田達が「この三流役者が、許せん」とか、怒ってるらしいけど、被害妄想も甚だしいとしか言えないよな。

    何か、今の日本の右翼の奴らは、あまりにも過敏すぎるというか、精神的に脆いよな。頭が単純で悪すぎるだけじゃなくて。あれだと、左翼の連中から小馬鹿にされても仕方ないほどの、知能の低さと弱さだぜ。

    ー 百田への批判文の一つで「佐藤浩市を三流役者呼ばわりするのは、橋本環奈をブスというくらいの暴言だ」というのがあったのは、僕も笑いました。

    (相田)そんな感じに、軽く批判する位ならいいんだけどな。いきなり「三流役者が」とかブチ切れると、発言者の人間性を疑うよな。ただ、関係するネット記事のコメントを眺めると、殆どが佐藤浩市への批判なんだよなぁ。世の中みんな、あの発言に本気で目くじら立ててるのかね。そんなに八つ当たりしたい程、切羽詰まってるのか?

    ー 副島先生が言ってましたけど、世耕なんかが、ライター達を雇って、安倍の応援コメントを沢山書かせてるんですかね?もしかしたら、AIが勝手にコメント書いて投稿してるとか?

    (相田)一人の俳優のあのレベルの発言で、あそこまで批判されたら、これからの映画は、幼稚園のお遊戯会レベルの、無難な内容しか作れないぜ。一つの役に俳優が三人くらい並んで出て来さ、三人で同じセリフを喋るとかして。大勢の役者さん達に均等に機会を与えましょう、とか言ってさ。

    ー 相田さん、疲れてますね・・・・

    (相田)スランプ気味なんだよ、色々あって。

    ー それで本題ですけど、GEのガスタービンがまた売れ始めたんですよね、ロイター記事によれば。

    (相田)今朝のGE株価がいきなり3%以上も上がってたんで、何事だろうと思ったけど、そうらしい。今年の第1クオーター(四半期決算)で、6機のHA型ガスタービンを受注したんだと。三菱やシーメンスの受注よりも多かったらしい。ただ、三菱は5基、シーメンスは4基、それぞれガスタービンを受注してるんだよな。

    ー GEが勝ったといっても所詮は、三菱よりも一基多いだけだという・・・

    (相田)それで記事によると、GEが受注した6基のHAガスタービンの半分の3基は、どうやら東京電力が買うらしい。ロイターがGEに確認したら、そうだと認めた、と記事に書いてある。だけども日本ではそんなニュースは、全く報道されないよな。東京電力に売るという3基のHA型については、GEの四半期報告書にも書かれていなかったみたいだ。業界情報誌のマッコイパワーレポートがこの間の火曜日に出た。それをロイターの記者がよく見ると、GEのガスタービン受注数が増えてた、ということらしい。

    ー ロイターがマッコイに確認したら「さあ、よくわかりません」とか、すっとぼけられたみたいですね。記事によると。

    (相田)東電がこの状況で、HAガスタービンを3基も買うとなると、業界的にはトップニュースで報道すべきはずだけどな。でも日本では何も言わない。どう考えても怪しい裏があるよな、この話には。

    ー そもそもGEは、HAガスタービンのブレード破損問題については、まだまだ時間がかかると言ってます。そんな時に買っちゃっていいんでしょうか、東電は?

    (相田)ロイターによると、HA型の初段ブレードの耐久時間は7000時間らしいから、一年動かしたらブレードを全数交換しなくちゃならない筈だ。そんなんで、どうやってLTSA(メンテナンスのための保険)を結んだんだろう?LTSA契約の内容を是非知りたいよな。絶対に言わないだろうけど。だけど、GE側に有利な契約を結ばされて、事故が起こった時の費用が東電の持ち出しになると、電気料金がまた上がる。だから、消費者としても無視出来ない問題だよな。

    おそらくは、苦境から抜け出せないGEを助けるために、奥の院のモルガン財閥が、東電に指示してガスタービンを買わせる気なんだろうな。GEのガスタービンには東芝の蒸気タービンがもれなく付いてくる。だから、東芝への助け船にもなるし。東電も、中部電力に西名古屋発電所で点検したHAガスタービンの状況とかを、聞いている筈だから、それなりの対策はするんだろうけど。

    ー記事の最後に、シーメンスがガスタービン事業を分社化するとか、書かれてますね。

    (相田)遂にそうするみたいだな、シーメンスは。それならGEのガスタービンも切り離してシーメンスと一緒にしろ、という過激な意見もあるらしい。独占禁止法に引っかかるから無理だけど。

    でも、どうしてもGEがガスタービン事業を切り離すなら、その時には、東芝が買うというオプションが出てくる。また東芝は金が掛かるけど、経済産業省が資金援助してもいいんじゃないか、今回は。日産がルノーに分取られても、GEのガスタービン事業が日本の手に入れば、十分お釣りが来る。三菱では独禁法に引っかかるけど、東芝が買うなら問題ない。同じモルガングループだから、奥の院も絶対ダメとは言えないだろう。少なくとも中国に技術が渡るよりはマシだからな。

    多分、GEでは最早、最先端のガスタービン開発に、現場の技術がついていけなくなっている。軍事分野ならどんだけ予算を掛けても許されるけど、産業機器向けの技術だと、どうしてもコスト低減に迫られる。アメリカの技術開発はソフトウエアに力を投入し過ぎて、産業用のハードウエア開発には手が回らなくなっているみたいだ。HAガスタービンのブレード問題も解決に時間がかかり過ぎるし、AP1000の建設が失敗した理由もそれだ。中国ではAP1000をちゃんと作れたからな。

    3Dプリンタで 、ーGEではアディティブと呼ぶけどー 、これから色々部品を作ります、とか、GEではぶち上げてる。けども、ガスタービンの初段単結晶ブレードをアディティブで作るなんて、無理じゃんか。粉末金属を原料にするから、単結晶組織になるはずが無いだろう。アディティブでしか作れない画期的な材料なんて、おそらく存在しない。単なる株価を上げるための宣伝用の「ウソ技術」だぜ、アディティブは。昔も色々あっただろう。室温でも動作する(かもしれない)高温超伝導材料とか、バラード社の高分子型燃料電池、とかの、その場しのぎの「ウソ技術」が。所詮はアディティブも同じだ。

    トゥサ尊師も予言してるけど、GEの株価はそのうちに5ドルくらいまで、また下がるだろう。GEキャピタルの隠れ損失がまた発覚したりしてさ。東芝はその時まで待って、機会があれば、GEのガスタービン事業を安く買い叩く事だな。車谷会長も今が我慢のしどころだろう。そうなったら、肉を切らせて骨を断つ、じゃないけど、ウェスティングハウス買収でやられた損失を、一発逆転で取り返せる事になる。西室氏や西田氏や、その他大勢の無念も多少は癒されるんじゃないか。

    ー どっちかというと、それ、江戸の仇を長崎で取る、の方が近いんじゃないですか?

    (相田)そっちで決めてよ。もう疲れたから。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    (引用始め)

    GE books more power plant orders, beats Mitsubishi, Siemens: sources
    GEは発電プラント建設の受注で三菱、シーメンスを上回る
    Reuters, May 15, 2019
    By Alwyn Scott

    NEW YORK (Reuters) – General Electric Co won the most orders in the sharply contracting market for new gas-fired power plants in the first quarter, according to people familiar with the matter.
    ニューヨーク(ロイター) – ゼネラルエレクトリック社は、この分野の関係者によると、第1四半期の新規ガス火力発電所の契約で、最も多くの受注を獲得した。

    But GE faces rising competition, complicating new Chief Executive Larry Culp’s efforts to turn around the company’s ailing power unit.
    一方でGEは、この分野での競争の激化に直面しており、新しい最高経営責任者(CEO)のラリー・カルプが進める、GEの電力事業部門における収益好転への努力を複雑にしている。

    GE booked six orders for its advanced, HA-class turbines in the quarter, up from none a year ago, according to three people familiar with the situation and an industry report seen by Reuters on Tuesday. Rival Mitsubishi Hitachi Power Systems (MHPS) booked five orders, while Siemens AG booked four, the sources said.
    この分野の専門家3人のコメントと、火曜日にロイターが確認した業界レポートによると、GEは最新の四半期に、HAクラスタービンの6つの建設受注を予約し、1年前の受注ゼロから受注数は上昇した、ライバルの三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は5件、シーメンスAGは4件の受注予約を受けた、と情報筋は述べた。

    The standings highlight an intensifying battle for sales of these newest, most efficient “advanced class” generators capable of powering thousands of homes.
    この順位表は、これらの最も新しく最も効率的な「アドバンスドクラス」のガスタービン(これら一機で数千軒の家庭に電力を供給できる能力を持つ)の売り上げに対する戦いが、激化していることを強調している。

    Demand for gas turbines has fallen by half since 2014 as utilities rely more on wind, solar and power conservation. GE’s share is shrinking. It ranked second for advanced turbine orders in 2018 and is shutting manufacturing sites and laying off workers to reduce costs.
    ガスタービンの需要は、電力会社が風力、太陽光、そして節電対策に力を注ぐようになったため、2014年から半分に落ち込んでいる。 GEのシェアは縮小している。 2018年にはアドバンスドタービンの受注数でMHPSに敗れて2位となり、コスト削減のためのタービン製造拠点の閉鎖と、労働者の解雇を進めている。

    GE confirmed to Reuters it had booked three additional orders in the first quarter that were not counted in its first-quarter earnings report. The three additional units, sold to Tokyo Electric Power Co in Japan, were included in the closely watched McCoy Power Report published on Tuesday. McCoy declined to comment.
    GEはロイターに対し、第1四半期の決算報告に含まれていなかった追加の3つのタービンの作製について、既に受注予約したことを確認した。日本の東京電力に売却された3つの追加ユニットの記載は、火曜日に発行された調査会社のマッコイパワーによるレポートの中に、よく見ると含まれていた。マッコイは、この件についてのコメントを控えた。

    Siemens and MHPS also confirmed their tallies with Reuters.
    シーメンスとMHPSも同じく、ロイターの集計結果を確認した。

    GE has dominated power-plant sales for decades and has installed more than 7,500 gas turbines around the globe. But its position has weakened. Its backlog of power equipment orders is down 1.5% from a year ago, and GE faced pressure after an HA turbine broke at a plant in Texas last year, forcing GE to replace blades in dozens of plants.
    GEは何十年もの間、パワープラント機器の販売を支配しており、世界中に7,500以上のガスタービンを設置している。しかし、その立場は今では弱まった。電力機器の受注残は前年同期比で1.5%減少し、昨年はテキサス州の工場でHAタービンが故障したため、GEは数十の発電プラントでブレードの交換を余儀なくされた。

    Power was once GE’s largest unit, but it has been a drag on the company’s earnings. GE lost $22.8 billion last year due to a $22 billion write-down of power assets and an $872 million operating loss in its power unit.
    電力機器部門は、かつてはGE最大の事業ユニットだったが、それは今や会社の収益に悪影響を及ぼすものとなった。 GEは昨年、228億ドルの損失を出した。これは、220億ドルの電力資産の評価減と、その発電機器部門の8億7200万ドルの営業損失によるものだ。

    GE Power posted an $80 million profit in the first quarter of this year, after Culp restructured the unit in October to separate gas power from other types of power.
    Culp warned at GE’s annual meeting last Wednesday that the relatively strong first-quarter performance was not a trend, and remaining quarters would likely be weaker.
    10月にカルプがCEOに就任し、GEパワーのガス発電部門を他のタイプの発電機器部門から分離するリストラ対策を発表した後で、GE Powerは今年第1四半期に8000万ドルの利益を計上した。カルプは先週の水曜日に行われたGEの年次総会で、比較的好調な第1四半期の業績はトレンドではなく、残りの四半期ではおそらく弱まるだろうと警告した。

    Siemens, meanwhile, said this week that it will spin off its oil and gas, power-plant and grid businesses along with its 59% stake in Siemens Gamesa Renewable Energy to allow them to grow without competing for capital with higher-margin Siemens businesses. It plans to list the new company publicly by September 2020.
    一方でSiemensは今週、同社の石油&ガス、発電機器および電力網事業を、Siemens Gamesa Renewable Energyへの59%の持株分を加えてスピンオフして、Siemensの残りの一連の事業の利益率を高めて、お互いに競争することなく成長できるようにする、と述べた。 スピンオフした2020年9月までに上場予定である。

    (Reporting by Alwyn Scott; editing by Jonathan Oatis)

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    本当にGEから買うのか、東京電力?
  11. 相田英男
    2019-04-01 23:38

    相田英男です。

    不振に喘ぎ苦しむGEの下に助け船、ではないのでしょうが、ロシアからガスタービン建設の協力を依頼された、というニュースです。

    ロシアではご承知のように、天然ガスはわんさか出てくるのですが、そのガスを利用してガスタービンで効率良く発電したくても、なかなか上手くいかない、助けてくれ、ということみたいです。

    厄介なのは、ただガスタービンを作ってくれ、という訳ではなく、タービンの作り方、製造技術をロシアに教えてくれ、という話です。やっぱり美味しいだけではありません。トランプも、今のところロシアとの間で色々と物議を醸しているので、GEに表だってやれとは、なかなか言えないでしょうね。

    タービンの技術自体は、やろうと思えば産業スパイ達がそれなりに、図面や仕様書などをアメリカから持ち出せるでしょう。しかし、大型ガスタービンを組み上げてぶん回すとなると、頭の中で考えるようには、まず上手く行きません。実機の開発経験がどうしても必要です。GE自体も技術者の世代交代から、自前で設計したHA型タービンの致命的なトラブルを見逃してしまいましたから。明らかにあのトラブルは、開発経験の不足によるものです。

    でも、はっきりしたのは、ロシアにはガスタービンの巨大なビジネスチャンスが存在する事実です。インターRAOの社長さんがGEに語っているように。

    日本がロシアと交渉する場合、シベリアにMHPSがガスタービンを建設するのと引き換えに、北方領土を返してもらう条件を引き出す、とかのオプションに使えますよね。状況によっては。多分、日露間の交渉には、既に上がっているのでしょうけど。

    やっぱり、どっかの三流アナリストが書くみたいに、ガスタービンの事業は先が無いから、再生可能エネルギーに切り替えるべきだ、という主張は、とんでもない間違いのようです。長期的な戦略では。

    (引用始め)

    Russia’s Inter RAO says seeks gas turbines deal with GE by October
    ロシアのInter RAOは、10月までにGEとのガスタービン製造に関する契約締結を望む、と語った。

    Reuters, March 30, 2019

    KRASNOYARSK, Russia (Reuters) – The chief executive of Russia’s Inter RAO said on Saturday the energy holding hoped to reach a deal with General Electric Co by October to produce powerful gas turbines in Russia, either as a joint venture or by buying a licence from GE.
    [ロイター]ロシアのInter RAOの最高経営責任者は、電力の安定供給の観点から、10月までにゼネラルエレクトリック社と共同で、ロシアでの大出力のガスタービンの製造を、合弁会社か技術ライセンス購入のどちらかの形で要望している、と発表した。

    Russia, which does not currently produce mid- or high-power gas-fired power turbines, recently launched a 1.9 trillion rouble ($29 billion) programme to modernise a quarter of its power generation, or 41 gigawatt of coal- and gas-based plants.
    現在、中型または高出力型の発電用ガスタービンを生産していないロシアは、最近、それらタービンの出力の4分の1の、41ギガワットの石炭およびガスベースのプラントを近代化するために、1.9兆ルーブル(290億ドル)を投じたプログラムを開始した。

    It is seen as a rare opportunity for Western producers amid falling global demand for gas turbines in recent years, but Moscow has said investors must only use fully localised — domestically produced — equipment as part of a local content push.
    近年の世界的なガスタービン需要低下の中で苦しむ、欧米のタービンメーカーにとっては、まれな機会とみなされるが、モスクワでは、投資家は地元のコンテンツプッシュの一環として、完全に現地生産された国内設備のみを使用するべきだと、主張されている。

    Inter RAO CEO Boris Kovalchuk said the modernization programme would open a large market for GE for 10 years.
    Inter RAOのCEOであるBoris Kovalchukは、ロシアの発電事業の近代化プログラムは、GEに今後10年間にわたる広大な市場を解放するだろう、と語った。

    “We hope to reach all the agreements with them within half a year,” Kovalchuk told reporters during a conference in the Siberian city of Krasnoyarsk.
    「我々は半年以内に彼らと間で、すべての合意に達することを望んでいる」とKovalchukはシベリアの都市であるクラスノヤルスクでの会議中に、記者団に語った。

    A plant jointly owned by Inter RAO, GE and Russian state conglomerate Rostec produces 77-megawatt turbines in Russia’s central region of Yaroslavl.
    Inter RAO、GEおよびロシアの州のコングロマリットであるロステックが、共同で所有するある工場は、ロシアの中央部ヤロスラブリで77メガワットのタービンを建設した。

    The ongoing talks between GE and Inter RAO are for the local production of 185-195 megawatt turbines. Inter RAO may purchase Rostec’s stake in the plant as part of the deal with GE, Kovalchuk added.
    GEとInter RAOの間で進行中の協議は、185-195メガワットのタービンを現地生産のためのものである。インターRAOは、GEとの契約の一環として、ロステックのその工場に対する持分をインターRAOが購入する可能性がある、とKovalchukは付け加えた。

    A joint venture between Siemens and Russian firm Power Machines is already producing turbines in Russia. Siemens, which owns a 65-percent stake in the venture, has pledged to raise the level of localisation in the production process.
    シーメンスとロシアの工場のPower Machinesとの合弁会社では、すでにロシアでタービンを生産している。合弁会社の65%の株式を所有しているシーメンスは、製造工程における現地生産の比率を上げることを約束した。

    Russian state-controlled firms — Rostec, Rosnano and Inter RAO — have been trying to create their own gas turbine production but their prototype project failed testing, sources, familiar with the matter, told Reuters a year ago.
    ロシアの国営企業であるロステック、ロスナノとInter RAO は、独自のガスタービン生産を試みたが、プロトタイププロジェクトはテストに失敗したと、この問題に詳しい情報筋は、ロイターに1年前に語った。

    Kovalchuk said on Saturday that the project was continuing, and that Inter RAO had passed the second turbine to the project’s operator for improvement.
    ($1 = 65.6700 roubles)
    Kovalchukは土曜日に、プロジェクトは継続しており、Inter RAOは改善した2番目のタービンを、プロジェクトの運営者に渡したと述べた。
    (1ドル= 65.6700ルーブル)

    (Reporting by Anastasia Lyrchikova; Writing by Polina Devitt; Editing by Helen Popper)

    相田注:Inter RAOとはロシア最大の電力事業持株会社で、ロシア電力の海外との輸出入を独占している。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    お呼びが掛かるだけマシなのか?
  12. 相田英男
    2019-03-07 17:55

    相田です。

    直近のスティーブ・トゥサのGEへのコメントについて、記事を引用します。

    私の訳が悪いのですが、

    “We believe this is a broken business that is running out of backlog needed to feed an installed base that is now declining,” he added.

    という部分が、なるほどなあ、と納得しました。
    やっぱりそう考えているのか・・・・・そうだよね。

    (引用始め)

    GE Stock Plunges Further As Top Analyst Warns GE Power Business ‘Broken’
    トップアナリストがGEの発電事業は「壊れた」と警告したことで、GE株式はさらに急落した

    APARNA NARAYANAN
    March 6, 2019
    Investor’s Business Daily

    The General Electric (GE) announcement Tuesday that free cash flow from its industrial businesses will be negative in 2019 was “worse than we expected” and more pain may await holders of GE stock, according to JPMorgan. GE stock tumbled for a second straight session on Wednesday
    JPモルガンによると、ゼネラルエレクトリック(GE)が火曜日に発表した、2019年の産業事業からのフリーキャッシュフローがマイナスになるという内容は、「予想以上に悪い」もので、GE株の保有者に更なる苦痛を与える可能性がある。水曜日のGE株は、2日連けての下落となった。

    The firm’s analysts questioned the notion that GE Power is “not that bad” and called shares overvalued.
    同社のアナリストらは、GE Powerが「それほど悪くはない」との考えに疑問を投げかけ、GEの株式は過大評価されていると述べた。

    “As long as this sentiment prevails, we don’t think the stock can bottom,” widely followed JPMorgan analyst Stephen Tusa wrote in a note Wednesday. He reaffirmed a price target of 6 on GE stock ― but added that it “looks generous” after Tuesday’s news.
    JPモルガンのアナリスト、スティーブン・トゥサ氏は、22日、「このセンチメントが続く限り、株価が底値を打ったとは思わない」と指摘した。彼はGEの株価の6ドルの目標を再確認した – しかし彼は、それでも火曜日のニュースの後には「寛大に見える」、と付け加えた。

    On Tuesday, GE tied its grim outlook to continuing problems in its core power business. The industrial giant said cash flow challenges should ease in 2020 and 2021. GE’s industrial free cash flow shrank from $7.7 billion in 2015 to $7.1 billion in 2016 to $5.6 billion in 2017 and to $4.5 billion in 2018, before Tuesday’s shock news.
    火曜日にGEは、その中核となる電力事業における継続的な問題に対しての、厳しい見通しを発表した。 GEの産業事業のフリーキャッシュフローは、2015年の77億ドルから2016年には71億ドル、2017年には56億ドル、火曜日のショックなニュース前の2018年には45億ドルに減少した。

    GE Power A ‘Broken Business’
    GEパワーは「壊れている」

    But Tusa cast doubt on the idea that GE Power problems are fixable or isolated to the Alstom energy assets that General Electric bought in 2015.
    “We believe this is a broken business that is running out of backlog needed to feed an installed base that is now declining,” he added.
    しかしトゥサは、GE Powerの問題は、主に、GEが2015年に買収したアルストムのエネルギー資産に由来し、アルストムが解決出来れば困難は分離されるだろう、という考えに疑問を投げかけた。「GEの電力事業は壊れたビジネスであり、既に設定されている事業の推進に必要なサポート対応の多くが未処理のために、ベース事業自体が弱体化しつつある、と我々は考えている」と、彼は語った。

    Given negative free cash flow, JPMorgan’s estimate for the 2019 EPS “anchor” has gone from a prior view for positive 50 cents to negative 50 cents.
    フリーキャッシュフローがマイナスとなったことから、JPモルガンの2019年EPSの「アンカー」の推定は、以前の予想のプラス50セントからマイナス50セントに変更された。

    Restructuring Not a ‘Silver Bullet’
    リストラは「銀の弾丸」ではない

    But citing costs, Tusa said restructuring won’t be a “silver bullet” to a General Electric fix.
    しかし、費用の問題についてトゥサは、リストラはGEを修正するための「銀の弾丸」にはならないだろうと述べた。

    In late February, GE agreed to sell its biopharma business to Danaher (DHR) for $21.4 billion. Culp was previously CEO of Danaher.GE stock hit a 2019 high that day, briefly topping its 200-day before pulling back.
    2月の下旬に、GEはバイオ医薬品事業を214億ドルでダナハー社に売却することに合意しました。 カルプは、以前はダナハーの最高経営責任者でした。GE株はその発表の日に2019年の最高値を記録し、引戻し前には一時的にだが、株価の200日平行移動線を突破した。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    GEパワーは「壊れている」
  13. 相田英男
    2019-03-06 19:19

    相田です。ロイターの記事を「意訳」して引用します。

    昨日、GEのCEOのカルプとスティーブ・トゥサが対談したそうです。が、のっけからカルプは、もうダメだ、という感じだったみたいです。今回の相手には、おためごかしは最早通じないと、開き直ってたんでしょうか?正直なのは良い事ですが。

    昨年よりも今年の収益が悪化するだろう、と、カルプ自らが認めたため、株価は再び10ドルを割込みました。トゥサの目標の、6ドル目指して下がり続けるのでしょうか?

    記事をよく見ると、HAタービンのブレードトラブルの解決の目処が、当分の間立たない、というカルプの爆弾発言が、さりげなく載っています。

    やっぱりそうじゃんか。技術者のレイオフをやり過ぎて、タービンが治せなくなったんだよな。問題は技術力の低下だ。再生可能エネルギーに投資するとか言ってるのは、投資家を欺くための目くらましだろう。

    まあ、これから(も)大変だわな。

    (引用始め)

    GE’s CEO warns of negative industrial cash flow in 2019, shares drop
    Reuters March 6, 2019

    By Alwyn Scott and Rachit Vats

    (Reuters) – General Electric Co’s chief executive surprised investors on Tuesday by forecasting a net cash outflow from the conglomerate’s industrial businesses this year, a far more negative outlook than he offered previously, sending shares and bonds down.
    【ロイター通信】 – ゼネラル・エレクトリックの最高経営責任者(CEO)が火曜日に発表した、今年の産業事業部門からのキャッシュの流出が、以前の予想よりもはるかにマイナスになるとの見通しは、投資家達を驚かせ、株式と債券の下落を招いた。

    “Industrial free cash flow will be (in) negative territory,” CEO Larry Culp said in a webcast interview with JPMorgan analyst Stephen Tusa, a longtime GE bear.
    CEOのラリー・カルプは、GEに対し長年にわたり否定的な発言を続ける、JPモルガンのアナリスト、ステファン・トゥサとのウェブキャストインタビューで、「産業部門のフリーキャッシュフローはマイナスの領域になるだろう」と述べた。

    “I don’t want to sugarcoat that in any way,” Culp said, referring to GE’s ailing power business, which he said would lose more this year than the $2.7 billion in free cash flow it lost in 2018.
    カルプは、GEの苦境に喘ぐ電力事業について、「どんな甘い見通しも持つつもりはない」と語り、今年は2018年の27億ドルのフリーキャッシュフローを下回るだろうと、見通しを述べた。

    He added: “We’ll see that be a greater negative number in this year as we work through the restructuring, as we work through the runoff liabilities there and just the localization of timing around projects.”
    彼は付け加えた:「我々は今年の事業リストラの過程で、より大きなマイナスのキャッシュを見るだろう。負債の流出とリストラで生じる事業への影響は、最小限に止めるつもりだが」

    GE’s shares swiftly dropped below $10, which marked the biggest intraday percentage drop in more than three months, knocking more than $4 billion off the company’s market value. The shares fell as much as 7.6 percent on Tuesday and were still down 5.3 percent at $9.83 in late afternoon trading.
    GEの株価は急速に10ドルを下回った。これは3ヵ月ぶりの日中最大の落ち込みの記録で、会社の市場価値を40億ドル以上奪った。火曜日の株価は7.6%も下落し、午後遅くの取引では更に5.3%下がって9.83ドルだった。

    GE’s bonds also declined, with GE Capital bonds the hardest hit. A $2.25 billion issue at 4.5 percent coming due in March 2044 was down 1.65 percent.
    GEの社債も下落し、GEキャピタルの債券は最も大きな打撃を受けた。 22億5000万ドル発行済みの、2044年3月に償還予定の4.5%債権の価格は1.65%下落した。

    Earnings at GE’s power business collapsed in mid-2017 as sales fell and the company failed to make good on promises to increase profit margins after a $10 billion acquisition of Alstom of France.
    GEの電力事業は、フランスのアルストム社をを100億ドルで買収した後、利益率を向上させるという約束を守れなかったため、売上が減少し、2017年半ばの業績が落ち込んだ。

    Since then, GE has blamed its own poor management and a shift toward new wind and solar power plants for the power unit’s losses, which totaled $22 billion last year.
    それ以来GEは自らの電力事業について、経営管理が不十分で、昨年の合計が220億ドルに登るそこでの損失が、新しい風力および太陽光発電所へのシフトを促したと、非難している。

    The power unit is spending at least $480 million to fix thousands of turbine blades that are at risk after blades broke in 2015 and 2018, causing serious damage to power turbines and coinciding with a drop in GE’s market share.
    電力事業部門は、2015年と2018年に起きたガスタービンのブレード損傷事故の後、破損のリスクを今なお抱えている何千ものタービンブレードを修理するために、少なくとも4億8000万ドルを費やしている。

    GE also has poured billions of dollars into its insurance business, which includes thousands of money-losing long-term care policies written more than a decade ago. Some experts said GE may have to spend billions more to cover claims.
    GEはまた、10年以上前に発行された、何千もの「金が奪われる」長期介護保険契約を含む保険事業に、数十億ドルを注いできた。一部の専門家は、保険請求をカバーするために、GEはさらに数十億ドルを費やす必要があるかもしれないと述べた。

    Culp said the power business would face headwinds for “a couple of years,” would not resolve problems with breaking power turbine blades for “a while” and promised to step up restructuring in the business and elsewhere. GE declined to provide restructuring cost estimates. The company is due to publish a financial forecast on March 14.
    カルプは、電力事業は「数年間」逆風に直面するだろうと述べ、「しばらく」の間は発電用タービンブレードの損傷問題を解決することはできず、電力やその他の事業でのリストラを強化する、と約束した。 GEは、事業再編費用の見積もりの公表は控えた。 同社は3月14日に財務予測を発表する予定である。

    Culp’s comments on Tuesday went beyond his warning in January that investors could expect industrial free cash flow to weaken in 2019, and the cash flow would increase “substantially” in 2020 and 2021.
    火曜日のカルプのコメントは、1月に彼が投資家に語った「2019年には産業部門のフリーキャッシュフローが弱まるものの、2020年と2021年のキャッシュフローは「大幅に」増加するだろう」という「警告」を超える内容だった。

    Culp said on Tuesday that GE would continue to provide cash to its GE Capital unit for the foreseeable future, though probably not as much as the $4 billion it provided last year.
    カルプは火曜日に、GEは当面の間、GEのキャピタルに現金を提供し続ける、と述べた。が、おそらくは昨年の40億ドルほど多くはないだろう。

    GE Capital used to pay dividends to the parent company, but that stopped after losses mounted at GE’s reinsurance business in the second half of 2017.
    GEキャピタルはかつて親会社に配当を支払っていたが、2017年下半期にGEの再保険事業で損失が発生した後、配当の支払いは停止した。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    イケメンCEOも遂に白旗を揚げる?かな
  14. 相田英男
    2019-03-02 00:43

    相田です。

    今週の始めに、GEにまた動きがあった。GEの医療機器部門(GEメディカル)の中にある、バイオファーマ(生体医薬品)技術に関する、開発機器や検査設備製造のグループを、CEOのラリー・カルプがかつて率いていた、ダナハーという精密機器会社に、売却する事が決定した。この取引によりGEは、2兆円以上の高額の売却費をダナハーから受け取るという。その費用を、来年に支払期限が迫っているほぼ同額の負債の支払いに充てることで、当面凌ぐことが出来るという。本来、GEメディカルは、事業部全体を別会社として分離して上場、売却する予定だった。フラナリーCEOの時代はそのように発表していた。

    しかし、GEの事業の中でも最も利益を挙げている金の卵ともいえる部門が、メディカル部門だ。それを売却すると、その後にどうやって稼ぐのだという、もっともな批判が、アナリストから出されていた。そこで今回の取引では、メディカル事業部の中のバイオファーマに関するグループのみを分離して、MRI(核磁気共鳴)製造などの主力部隊は、GEに残すこととした。将来の金ヅルを残しながら、借金を返せますよ、偉いでしょう、という訳だ。株価は一旦は数ドル上昇したものの、また落ち着いたようだ。

    ダナハーはカルプがGEに重役として昨年迎えられる前に、15年間も社長を務めた会社だ。ダナハー側にも、カルプの采配で株価を5倍に上げてくれた恩義がある。カルプに頼まれたら、無理でも嫌とはいえまい。今回の交渉を見事なM&Aだ、とか書いた、某日経新聞もあった。が私には、保険の営業にパートで雇われたオバちゃん達が、ノルマ達成のために、自分の家族に必要もない保険を、無理矢理売り付けるように思えて、あまり感心しない。カリスマ経営者と期待されて迎えられカルプであったが、やる事は所詮は、保険のオバちゃんと変わらないのか。顔は爽やかなイケメンで、髪もフサフサなカルプは、ビジュアル度の方は前任者のF氏よりも相当高いのだが。

    とはいえ今回の借金を返しても、GEにはまだ10兆円近くの有利子負債が残っている。以前のトリプルA時代の格付けのGEならば、社債を大量に発行して乗り切れた。だが、今のGEの格付けは、ジャンク債レベルのトリプルBプラスまで下げられたので、社債が最早発行出来ない。事業の切り売り以外に、GEはどうやって10兆円を返してゆくのだろうか?新たな金ヅルを持っているCEOをつれてきて、カルプを首にして入れ替えたりするのだろうか?今のGEは、アクティビスト(物言う株主達)の要求を聞かざるを得ないらしいので、彼らならやりかねない気もするが・・・・

    正直、私は昨年の秋にGEの没落が決定的になって以来、気持ちがハイの状態が続いている。今まで当然だと思い込まされていたことが、全くのウソだった事実が白日の下に晒された。そのことで、私の頭の中に永年あった判断の基準が、大きく崩れてしまったのだ。

    GEこそは、アメリカの覇権を象徴する最強の企業であり、日本の発電・重電会社を牛耳る皇帝だった。圧倒的な資金力と最先端の経営技術を駆使する事で、最新テクノロジーを製品として具現化し、業界をリードし続けるのがGEであると、私は深く信じ込まされていた。

    それが、今の体たらくとは、一体何なのだ?

    史上最高の経営者と呼ばれたジャック・ウェルチが、自ら選別し、鍛え育てたエリート経営者達が、今のGEを導いているのではないのか?50兆円以上あった時価総額が、10兆円を切るまで落ちぶれるなど、アメリカ最高のエリート経営陣の采配として、許されるものでは無いだろう。

    結局は、今までマスコミや新聞社が持ち上げ、賞賛し尽くしてきたGEの栄光は、全くの嘘だったのだ。ウェルチ自身の栄光も、たまたま運が良かっただけだったのだ。何が伝説の経営者だ。よくもこれまで20年以上もの間、デマを吹聴し続けてくれたものだ。GEを見習え、アメリカの企業経営者達の振る舞いと判断を見習え、日本の企業は遅れて恥ずかしいのだ、などと。

    俺はもう、これからは、お前等には騙されない。

    さて、今回の状況について、我らが頼れるスティーブ・トゥサの意見はというと、「ザ マス イズ ザ マス」だそうである。数学は所詮は数学、単純な数字合わせで取り繕ったところで、中身が伴っていなければ無意味だ、という事らしい。ちなみに、株価の目標価格も6ドルのまま据え置くそうだ。

    「ザ マス イズ ザ マス」とは、何ともカッコいい響きである。一度言ってみたいものである。

    3月5日には、J.P.モルガンのカンファレンスで、GEの状況についてカルプ自らが説明し、その際にはトゥサとの間で、直接のQ&Aのやり取りも予定されているらしい。何が起きるか、今から楽しみである。

    (引用始め)

    Is Larry Culp Leading General Electric In the Right Direction?
    James Brumley
    Investor Place, March 1, 2019

    He certainly said all the right things, and, he said them in the right way … Now, just because General Electric CEO Larry Culp can make investors feel good, it doesn’t necessarily mean Culp can produce results that will drive GE stock higher.
    Boiled down to its most basic form, that’s the crux of the debate surrounding General Electric stock right now, following Tuesday’s release of Larry Culp’s first letter to owners of General Electric stock.
    彼の言った事と示した方向は、確かに正しいのだろう。しかし、ゼネラル・エレクトリックのCEOラリー・カルプ氏が投資家の気分を良くできたからといって、GEの株価を引き上げられるとは断言できない。火曜日のLarry CulpによるGeneral Electric株式所有者への最初の手紙の発表に続いて、最も基本的な問題点、つまり現在のGeneral Electric株式に関する状況が、議論の核心となっている。

    The message was long on ideas and goals. Yet, it was short on specifics regarding how he may actually be able to lead GE out of perdition and back to its former greatness.
    そのメッセージには、アイディアとゴールについて長く記されていた。それでも、彼がどのようにしてGEを現在の虐待から救い出し、かつての偉大さを取り戻すための方法についての詳細な説明は、とても短かった。

    The market is patient with the company right now, but that won’t be a permanent condition.
    市場は今のところ同社を辛抱強く見守っているが、それが永遠に続く訳ではないだろう。

    The Math Is the Math

    It was, by and large, a typical letter to shareholders, cheering the good, acknowledging the not-so-good, and painting a picture of a bright future that will focus more on the customer and improving the balance sheet.It also means little in the grand scheme of things, as most CEO missives to the market do.
    手紙の内容は概して、株主に宛てての典型的なものあった。良い事を持ち上げて、それほど良くないことは認める、そして、顧客とバランスシートの改善に、より焦点を合わせることで、明るい未来の絵を描き出していた。そこで書かれている物事の壮大な計画には、市場に向けて公表される数多くのCEO文書と同様に、ほとんど意味は無い。

    That doesn’t mean investors didn’t respond. They loved it, and had they not propelled GE stock up to the tune of 10% on Monday following news it was selling its biopharma unit to Danaher , they may have been willing to pour in again in a big way. Still, up more than 50% from its December low, clearly the crowd believes in GE again.
    それは投資家が反応しなかったという意味ではない。彼らはそれを愛した。月曜日に、バイオファーマ部門をダナハーに売却したニュースを受けて、GEの株価を10%まで引き上げていなかったならば、彼らは再び大いに注ぎ込むつもりだったのかもしれない。それでも、12月の安値から50%以上も株価は上昇し、明らかに群衆はGEを再び信じている。

    Not the whole crowd though.J.P. Morgan analyst Stephen Tusa is no stranger to being in the minority. Good thing too. His price target of $6.00 for GE stock is not only well below the stock’s current price near $10.70, it’s also the lowest target sported by Wall Street’s pros.
    しかし、群衆の全てが信じている訳ではない。J.P.モルガンのアナリスト、スティーブン・トゥサ氏は、少数派であることに不慣れではない。良いことについても。彼のGEの株価目標である6.00ドルは、現在の10.70ドル近くの株価をはるかに下回ると同時に、ウォールストリートのプロが予想する中で、最も低い目標でもある。

    And yet, Tusa’s view of General Electric may be the most sound, and least swayed by hollow hope.
    それでも、トゥーザのゼネラル・エレクトリックに対する見方は、最も健全で、そして、希望が無い状況でも揺るがないかもしれない。

    “At this stage of the game, the math is the math,” says Tusa, who believed GE’s free cash flow for the current year will be in the range of $1.5 billion to $2.0 billion. Tusa goes on to explain, however, “I can tell you right now, that $10 per share does not reflect where fundamentals currently stand.”
    「ゲームのこの段階では、数学は数学に過ぎない」とトゥサは語る。同氏は、GEの今年のフリーキャッシュフローは15億ドルから20億ドルの範囲になると信じている。しかしトゥサは続けて、「1株当たり10ドルは、ファンダメンタルズの現在の状況を反映したものではないことは、直ちに言える」と説明している。

    “They are giving a massive amount of benefit to a significant swing in Power, from negative $3.0 billion in free cash to probably about $1.0 billion(+) in free cash over the next three years,” continues Tusa, who adds “and they are also assuming that GE Capital is zero [in free cash flow]” when the company’s capital arm is still bleeding cash.”
    「彼らは今後3年間で、マイナス30億ドルのフリーキャッシュから、おそらく約プラス10億ドルまで、電力部門の利益がV字回復する事で、大幅な利益が得られると考えている」トゥサは続けて、次のように語った。「彼らは、GEキャピタルは(フリーキャッシュフローにおいて)ゼロであると仮定している。キャピタル部門のキャッシュの流出が止められない今の状況でも」

    Tusa doesn’t think the company’s Power arm will flip to profitability that quickly. He also points out “GE Capital is not a zero [in terms of cash burn]. GE Capital is a substantial negative … [with] significant drags over the next couple of years.”
    トゥサは、同社の電力部門がそれほど早く収益性を向上させるとは考えていない。また、「GEキャピタルはゼロではない(キャッシュバーンの観点から)。 GEキャピタルは実質的にはネガティブであり、今後数年間はマイナス方向に大きく引張るだろう」とも、トゥサは指摘した。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    ザ マス イズ ザ マス
  15. 相田英男
    2019-02-14 19:18

    相田です。

    ロイターの記事によると、2018年のガスタービンの受注量を集計したところ、タービン全体のシェアはGEがトップだったのですが、高効率型の最新機(ポストFクラス)の比較では、三菱のJ型がGEのHAの1.5倍の受注を取っていた、とのことです。

    ガスタービンの市場全体が縮小傾向にはあります。が、台数が少ないとは言えど、新型機の受注で三菱がGEを打ち破ったのは画期的です。

    昨日のダイヤモンドオンラインの記事によると、CEOのカルプが「ガスタービンの売上見込みが、当面の間立たないので、人員削減せざるを得ない」とか、言ったそうです。しかし、真実はその逆で、ガスタービンの人材を大勢解雇してしまったために、性能の低下と欠陥が生じて、結果として、三菱に負けてしまった、という事ではないでしょうか。

    市場が縮小したため事業転換するというのは、負け犬の体の良い言い訳に過ぎません。経済情報誌も、外人の白々しい言い訳を鵜呑みにして、安易に記事にするのは、大概にしてほしいです。

    (引用始め)

    GE wins most 2018 gas turbine orders; Mitsubishi wins on new technology: report
    2018年のガスタービン受注はGEがトップだが、新型機では三菱が勝利した

    Reuters February 13, 2019
    By Alwyn Scott

    NEW YORK (Reuters) – General Electric Co booked the most orders for electricity-generating gas turbines in 2018 but fell to second place for the largest and most advanced machines, behind Mitsubishi Hitachi Power Systems, according to a closely watched report seen by Reuters and people familiar with the matter.
    ゼネラルエレクトリック社は、2018年において最も多くの発電用ガスタービンを受注したが、大型で、且つ、最新のタイプのタービンの受注では、三菱日立パワーシステムズに敗れて2位に落ちたことを、ロイターおよび専門家は、最新の資料から確認した。

    Demand for gas turbines has been tumbling since 2011, stoking fierce competition for deals and prompting manufacturers to slash jobs and close factories. GE is in the midst of a multi-year restructuring of its power business, which lost $808 million last year.
    2011年以降のガスタービンの需要は大きく変動した。受注競争は激化し、メーカーは雇用の削減や工場の閉鎖も余儀なくされた。 GEは、電力事業の再編に見舞われ、昨年だけで8億800万ドルのリストラによる損失を計上した。

    The latest rankings show Mitsubishi won 41 percent of the orders last year for turbines that can produce 100 megawatts or more, compared with 28 percent for GE and 25 percent for Siemens AG, according to McCoy Power Reports data.
    McCoy Powerレポートのデータによると、昨年の100メガワット以上の大型ガスタービンの受注では、三菱(MHPS)のシェアが41%となり、28%のGEと25%のシーメンスを抑えてトップに立った。

    Among newest-generation turbines, known as “post F-class,” MHPS got 49 percent of orders, compared with 34 percent for GE and 16 percent for Siemens, the data shows.
    その中でも、ポストFクラスと呼ばれる最新世代のタービンの受注では、MHPSのシェアは49%と増加し、GEは34%、シーメンスは16%であった。

    Orders for the most advanced turbines have dwindled along with the entire market, even though they churn out the most electricity per unit of fuel burned. GE suffered a high-profile breakdown with one of its advanced turbines in Texas last year, and warned it may spend $480 million on repairs for the global fleet.
    最先端のタービンの近年の受注量は、単位あたり電力の発生に必要な燃料の消費を最大限に抑えるメリットにもかかわらず、市場全体と共に減少する傾向にある。 GEの開発した先進的なタービンでは、昨年、テキサスの発電所で大規模な故障が生じ、世界中の同型機タービンの修理には、4億8000万ドルを費やす可能性がある。

    GE last year held onto its longtime top spot when all orders were counted.
    昨年のすべてのタービンの受注がカウントされた時に、長年にわたって占めて来た受注シェアのトップの座を、GEは維持することができた。

    The rankings show GE dominated orders for older-technology F-class turbines and that it had an overall tally of 33 percent of orders by capacity, compared with 31 percent for MHPS and 26 percent for Siemens.
    このランキングによると、旧式のFクラスタービンの受注では、GEのシェアが33%とトップであり、MHPSが31%、Siemensが26%であった。

    GE is “proud to the leader … as it has been every year since 2010,” spokeswoman Kirstin Carvell said. Siemens did not immediately respond to requests for comment.
    Mitsubishi said in a statement on Tuesday that its ranking largely reflected orders for its new J-Series turbine, which the company said has greater than 64 percent efficiency and 99.5 percent reliability.
    GE広報担当者のKirstin Carvellは、「2010年から毎年、タービン受注シェアのリーダーであることを、GEは誇りに思っている」と述べた。 シーメンスはコメントの要請に即答しなかった。三菱は火曜日の声明の中で、「そのランク付けの結果は、大きくは、我々が開発した64パーセント以上の効率と99.5パーセントの信頼性を持つ、新型のJシリーズタービンの受注を反映している」と語った

    (Reporting by Alwyn Scott; Editing by Dan Grebler)

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    白々しい言い訳を真に受けて記事にするな
  16. 相田英男
    2019-02-13 18:48

    相田英男です。

    ダイヤモンドオンラインで、GEについてのコメントが出ていた。内容は、新しいCEOのカルプのリストラの効果で、GEの株価が大きく上昇しているというものだ。今後は火力発電事業から、再生可能エネルギーに経営の軸足を移して、復帰を模索している。日本のメーカーも、GEを見習って、リストラと事業転換を進めるべきだ。そうしないと、世界の流れから取り残されるだろう、と警告している。

    はっきり言って、この記事の内容は、頭がおかしいのか、と思う。此の期に及んでまで、アメリカの肩を持ち続ける、提灯持ちの考え方に、私は唖然とせざるを得ない。

    そもそも、根本的なところの理解が、この記事は間違っている。GEの株価が最近上がったのは、新CEOのリストラの効果などではない。JPモルガン・チェースの著名なアナリストである、スティーブン・トゥサが、昨年の11月の終わりだかに、GEの株価の今後の方向性を、ネガティヴからニュートラルに変更する、とコメントしたからだ。それ以来、7ドルを下回っていたGEの株価は、上昇に転じて、最近ようやく10ドルを超えた。

    要するに、スティーブン・トゥサが「GEの株価はこれから上がる」と発言したので、株価が上がった、それだけのことだ。

    スティーブン・トゥサのGE株価の予測はよく当たる。本当に当たる。かつて、GE株価が14ドル位の時に、トゥサが「GEの株価目標は11ドルだ」と言ったら、本当に11ドルまで下がった。昨年秋にCEOがカルプに交代した際に、トゥサは「6ドルまで株価は下がる」と言うと、本当に7ドル以下になった。あれには私は驚いた。GEの株価を日々追っていないと、わからない話なのだが。

    あまりに予測が当たるので、日本で米国株をやっている個人投資家達の一部では「トゥサ尊師」とまで呼ばれている。ただし、GEの株価のみの限定予測なのが問題だ。

    最近のトゥサ尊師の御告げでは、「目標株価を6ドルのまま据え置く」と仰った記事を私は見た、たぶん。なのでこれから、GEの株価はジリジリと下がり続けるだろう。トゥサの御告げも、別に適当な思いつきではない。司法省によるGEキャピタルへの会計調査は済んだものの、証券取引委員会(SEC)の調査の結論が、まだ出ていない。こっちは多分、相当に揉めている。HAガスタービンのブレードを毎年全数交換するのに、LTSAが黒字になる筈がないからだ。それ以外にも、まだまだ爆弾がGEには隠れているだろう。トゥサはその事を、よく知っているのだ。

    この数年の間に、30兆円もの株式時価総額を減らした会社に、「復活の兆しが見えてくる」などとは、随分と暖かく見守っているではないか。東芝が一連の騒ぎで計上した損失を合わせても、数兆円に過ぎないのではないか?東芝の時は、やれ崩壊だ何だ、と、散々叩いた。その一方で、東芝の10倍以上の莫大な損失を出した、外国の会社の肩を持つとは、一体どの様な判断の基準なのか?経済情報誌のコメントとして、あまりにも理解に苦しむのは、私だけであろうか?

    米国株投資家達の間では、GEはもはやボロクズの爆下げ株の筆頭だ。日々真剣に情報を追っている彼らの方が、よほど真実を見抜いている。

    (引用始め)

    1万人削減で株価上げたGE新CEOに立ちはだかるドイツの巨人
    2/12(火) 6:00配信

     低迷していた米ゼネラル・エレクトリック(GE)の株価が上昇に転じている。昨年、社外出身者として初めてCEO(最高経営責任者)に就任したローレンス・カルプ氏が、大なたを振るっているためだ。

    カルプ氏は1月31日、2018年10~12月期決算会見で、火力発電への逆風で不振にあえぐ電力部門のリストラを断行していることを何度も強調した。

     具体的な成果として、1万2000人のリストラ計画のうち1万人(電力部門人員の15%相当)を削減したことと、生産施設の3割を統廃合したことをアピールした。

     さらに、今後の市場動向についてシビアな見方を示した。顧客に引き渡される世界の発電用ガスタービンの総発電容量は2000~15年の平均約70ギガワットから25~30ギガワットに落ち込み、当面回復しないという。

     カルプ氏は「新たな現実に電力事業のコスト構造を合わせなければならない」と述べた。

     こうしたネガティブな発表にもかかわらず、GEの株価は同日、12%も上昇し、翌日も続伸した。

     株価急伸の背景には、損失発生リスクだった金融部門の住宅ローン事業をめぐる司法省の調査が同省との和解で決着したことによる安堵感がある。そして何より、そうやってリスクを切り離そうとするカルプ氏の経営姿勢が評価されたといえる。

    ● 再エネでの挽回が鍵

     もっとも、電力部門などのGEの主力事業が輝きを取り戻すのは容易ではない。かつて成長分野に位置付けていた医療機器部門などを分社し、一部売却も予定されており、稼ぎ頭は減っていく。

     再生の鍵になるのは火力から再生可能エネルギーへのシフトだ。

     GEは決算前日、送配電網や蓄電システム事業を再生可能エネルギー部門に移行、統合すると発表。発送電や蓄電を含め電力流通全体を効率化するソリューション事業を伸ばす方針を明らかにした。

     だが、風力など発電量が不安定な再生可能エネルギーを活用しながら電力を安定供給する技術では独シーメンスに一日の長がある。

     しかも、GEには発電機などの産業用機器のデータを集め、解析するIoT(モノのインターネット)で成長を遂げる戦略が頓挫した苦い経験がある。

     そうした厳しい条件をクリアし、再生可能エネルギーを核とした電力の最適化でシェアを奪還できれば、GE復活の兆しが見えてくる。

     片や、日系企業はどうか。火力発電機器でGE、シーメンスと肩を並べる三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は人員削減も工場再編も小幅にとどまり、再生可能エネルギーなどへの事業転換も打ち出せていない。GEほどの派手な構造改革は難しいにしても、早めに抜本的な策を考えなければ手遅れになりかねない。

    「週刊ダイヤモンド」編集部

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    経済情報誌の記事はデタラメだ
  17. 相田英男
    2019-01-28 19:18

    相田英男です。

    私が追うべき話題は、やはりGEの動向です。
    最近GEの株価が10ドル近くまで、少しずつ戻りつつあります。

    GEが抱える多くの事業の中で、資産価値の高そうな、航空機リース事業とか鉄道事業などを売却しそうだ、というニュースが流れる度に、株価が僅かずつ上がって行くようです。鉄道事業については、経営の何割かを売却する事が決まったみたいです。

    こんな感じで、手持ちの事業を切売りしながら、しばらくは凌ぐのでしょう。

    しかし問題は、どうやって、将来の長期的な収益を上げて行くかです。現状のリストラ計画では、金融事業とメディカル事業は売却して、残ったジェットエンジン製造と電力プラント事業に集約するとの計画です。かつては、事業の間をIoT(物のインターネット化技術)で繋いで収益の柱にすると、当時のイメルトCEOは打上げたものの、結局はデジタル事業の大部分を売却してしまいました。

    やはり、本業で稼ぐには、大赤字になっている電力事業を立て直すしか道はありません。そのGEの電力事業のコア技術となるべきは、発電用ガスタービンです。しかし、目下の最大の懸念事項である、HA型ガスタービンのブレードトラブルの状況について、GEは何も言わないままです。

    そのブレードトラブルについては、メディアの中ではロイターのみが、地道に取材を続けて動向を追っています。今回、新たなロイターの記事がでたので、全文を私の意訳付きで掲載します。

    ロイターの記事によると、昨年9月に起きたテキサスのエクセロンのトラブルの以前にも、自社のプラントで同様のブレードの破損が起きていたそうです。タービンは一つ前のタイプでしたが、破損の原因を十分に解明しないまま、新型のHA型タービンの顧客への引き渡しが始まってしまった、とのこと。うーむ、本来なら原因がはっきりするまで、顧客に渡すのを待つべきなのでしょうけど。三菱のJ型タービンに早く追いつきたいと、焦ったんですかね?

    最も衝撃的なのは、交換後のタービンブレードの使用時間を7,000時間未満にするように、GEが顧客にお願いしていることです。それ以上ブレードを使用すると、き裂(クラック)がブレードに徐々に生じて損傷が加速される、というのです。7,000時間といえば一年未満ですから、毎年タービンを止めてはブレード全数を交換しなければならない、ということですよね。HAタービンの場合は。

    本来なら25,000時間(約3年前)の使用を想定している筈が、とてもそこまでは保たないそうです。でも、毎年全数を交換するなら、長期保守契約(LTSA)などそもそも必要ありません。逆に、LTSAを結んでしまうと、ブレード交換費用のかなりの割合がGEの持ち出しになり、GE側が大赤字になります。事実は、既にそうなっているのでしょう。GEの呼びかけによる極秘会議が、ロンドンのロイズ(保険会社の)の古い図書室で開かれて、そこで説明されたらしいですが。

    解決には抜本的な技術改善策が必要なのですが、どうも難しいみたいですね。下町ロケットみたいには、カッコ良くは行かないようです。しかし、HAタービンのブレード修理の目処が付かないと、SEC(アメリカ証券取引委員会)が進めている、会計調査の結論がだせません。というか、そちらの内容でSECとGEの間ですごく揉めているのでしょうが、おそらくは。

    今の状況では、GEのガスタービンを売って保守契約で稼ぐというビジネスモデルは、完全に破綻しています。私が、GEはこれからも、もうダメだという根拠は、この辺にあります。

    (引用始め)
    Reuters, January 25, 2019
    By Alwyn Scott

    GE urges speedy fix for power turbine blades, says blade broke in 2015: sources
    GEはタービンブレードの修理を急ぐ一方で、2015年に既にブレード故障が起きた、と語る

    NEW YORK (Reuters) – General Electric Co is advising some buyers of its big power turbines to switch out faulty blades sooner than expected and has disclosed that a blade broke in 2015, according to a presentation reviewed by Reuters and people briefed on the matter.
    ニューヨーク(ロイター) – ゼネラル・エレクトリック社は、発電用大型ガスタービンの一部の購入者に、予定期間よりも早く故障したブレードを交換するように呼びかけている。一方で、ロイターおよび関係者への発表では、ブレードの故障は2015年に既に生じたと述べた。

    The second blade break, which has not been previously reported, involved an earlier turbine model and was similar to a break last September that severely damaged a turbine in Texas and shut it down for two months of repairs.
    今まで未発表だった2015年のブレードの故障は、HA型の一つ前の型式のタービンにも関係するもので、昨年9月のテキサス州のHA型タービンの深刻な損傷と似たものであった。テキサスではタービンを修理するため、2ヶ月間プラントを停止した。

    The defective blade issue affects GE’s newest turbine technology, which cost billions of dollars to develop, and is among the challenges facing new Chief Executive Larry Culp as he tries to revive the profits and share price of the 127-year-old conglomerate.
    このブレードの欠陥問題は、開発に数十億ドルかかるGEの最新のタービン技術に影響するもので、127年の歴史を持つコングロマリットの、利益と株価を復活させようとしている、新CEOのLarry Culpが直面する課題の1つである。

    GE’s advice for fixing the problem can curb turbine use by utilities, according to the sources and utilities that use GE turbines, potentially threatening the revenue streams at the power plants.
    GEのタービンを使用しているユーザーや公益事業者のコメントによれば、この問題を解決するためのGEのアドバイスは、ユーザーのタービンの使用を抑制し、結果、発電所の収入源を脅かす可能性がある。

    At private meetings in Florida and London last month, GE executives said the company is offering extended warranty coverage and making spare parts available to ease concerns of insurers, lenders and utilities interested in buying turbines, according to a GE executive’s slideshow presentation and three people who attended the meetings. Some said they signed non-disclosure agreements.
    先月のフロリダとロンドンで行われたプライベートな会議の場で、GEの幹部はスライド資料を用いて、タービンの購入に関心を持つ保険会社、貸し手、公益事業者達の懸念を和らげるために、タービンの保証期間の延長とスペアパーツの製造を増加すると説明した。参加した3人の関係者によると、彼らの幾人かは、会議の場で秘密保持契約に署名したと述べた。

    GE told participants that turbines with at-risk blades should run for fewer than about 7,000 hours depending on individual plant circumstances, before shutting down for blade replacement, according to two people who attended the meetings. GE said it had advised customers of the change. GE’s previous guidance for blades was after 25,000 hours.
    会議に出席した2人によると、GEは参加者に、危険なブレードを備えたタービンは、個々のプラントの状況を考慮して、運転時間を7,000時間未満に制限して、ブレードを交換するべきであると語った。GEの以前のブレードに関する手引書では、交換までの運転時間は25,000時間後だった。

    The executives also said in the meetings that the blade that broke in 2015 at an undisclosed power plant was in a GE 9FB turbine, which has similar technology to the HA turbine that broke in Texas. The 2015 break prompted GE to work on new protective coatings and alter a heat treatment process for the parts, a second presentation showed.
    GEの幹部らはまたその会議で、GEが管理する非公開の発電所で2015年に壊れたブレードは、テキサス州で壊れたHAタービンと同様の技術を持つ、一世代前の9FBタービンであると述べた。 2015年のブレードの故障を受けて、GEは新しいブレード表面の保護コーティングと、熱処理プロセスの変更に取り組むこととなった。

    GE told Reuters that after the blade broke in 2015, GE did not know at first that the problem would also afflict its HA models.
    GEは、2015年に9FBタービンのブレードが壊れた後、その問題がHAモデルにも影響するだろうことを、最初は考えなかったと、ロイターに語った。

    “The HA components were in development before the initial 9FB issue occurred, and the HA units began to ship while the root-cause analysis was in process and before it was determined that it was a component issue that impacted the 9FB fleet and the HA,” GE said in a statement to Reuters.
    「最初の9FBの問題が発生する前に、HAガスタービンは既に開発中だった。トラブルの根本原因の分析は継続していたが、9FBタイプとHAタイプの両方に影響を与える部品(ブレード)の問題である、と結論が出される前に、HAユニットは出荷を開始した。」GEはロイターへの声明で、このように述べた。

    GE declined to provide more detail about the 2015 blade break or usage restrictions, saying some of the information is proprietary.
    GEは、2015年のブレードの故障、または使用制限に関する詳細を報告することを拒否した。一部の情報は独自のものであると述べた。

    “We are executing the plan we laid out to fix the (blade) issue,” GE said in a statement to Reuters. “The feedback from customers has been positive, and they continue to choose the HA, which remains the fastest-growing fleet of advanced technology turbines in the world today.”
    「我々はブレード問題を解決するための計画を実行している」とGEはロイターへの声明で述べた。 「顧客からのフィードバックは前向きなもので、彼らは引き続きHA型タービンを選択して頂いている。HAは現在も世界で最も急成長している、先進技術を持つタービンである。」

    The details from GE’s meetings come as GE is installing new blades in about 50 9FB and 52 HA turbines, according to a person familiar with the matter, fewer than the 130 estimated after the blade break in Texas prompted it to warn that other turbines are at risk for blade failure.
    この会議の詳細から、GEは現在、約50機の9FBタービンと52機のHAタービンに、新しいブレードが取り付けられていることが、明らかになった。この問題に精通している人によれば、テキサス州でのブレード損傷後に、130機未満のタービンで同等のトラブルが予想されと語った。この事は、他のタービンにもブレード故障の危険があるとの警告を促している。

    Reuters previously reported that GE found an oxidation problem, not a break, in 2015 and developed a fix before the failure in Texas.
    ロイター通信は以前、GEは2015年に、破損(break)ではなく、酸化(oxidation )の問題を発見し、テキサス州でのトラブルの前に解決策を開発したと報告した。

    Scaling back use of GE turbines reduces how much electricity they produce, a threat to revenues and profits for Exelon Corp, PSEG Power LLC, Chubu Electric Power Co Inc and others with the 400-ton GE machines that form the core of modern gas-fired power plants, according to utilities and industry experts.
    電力会業界の専門家によると、GEタービンの停止による発電量の低下は、エクセロン、PSEGパワー、中部電力などの、400トンのGEの最新ガス火力発電機器を使用する電力会社の、収益を脅かすことになる。

    Japan’s Chubu Electric said it learned about the blade problem with its six new GE turbines last October. It is restricting operation time at one of the two plants that use GE’s HA turbines, but expects to have “enough reserve capacity to generate sufficient electricity to meet demand during this winter,” a spokesman told Reuters. He said Chubu will tally the financial impact “depending on how long the plants would be shut down” to replace blades. It expects repairs to be completed by the end of February.
    日本の中部電力は、昨年10月に6基の新しいGEタービンのブレード問題について、GEから教わったと語った。広報担当者によると、GEのHAタービンを使用している2つの発電所のうちの1つで、タービン運転時間が制限されている。しかし「この冬の需要を満たすのに十分な電力を生み出す、予備容量がある」と語った。中部電力は、ブレードを交換するための「プラントの閉鎖期間に応じ」て、財務上の影響を集計すると述べた。タービンの修理は2月末までに完了する予定である。

    PSEG Power and Exelon, based in the United States, declined to comment on how restrictions would affect them.
    米国を拠点とする電力会社のPSEGパワーとエクセロンは、タービンの使用制限が与える影響についてコメントを控えた。

    GE is continuing to sell turbines in a slumping market for big power plants, where it has lost share to rivals Mitsubishi Hitachi Power Systems and Siemens AG. GE has said it booked orders for three large turbines last month.
    GEは、低迷する大型発電所向けの市場でタービンを販売し続けているものの、競合他社である三菱日立パワーシステムズ、およびシーメンスAGにより、そのシェアを失った。 GEは先月、3つの大型タービンを受注したと発表した。

    GE’s share price fell after GE revealed a blade issue in Texas on September 19, saying such “teething problems” are not uncommon with new technology and would require “minor adjustments” to fix. GE has said it would set aside $480 million for repairs and warranty claims.
    GEが9月19日にテキサス州でブレードの問題を明らかにした後、GEの株価は下落した。GE は、そのような「ブレード先端がギザギザになる問題」は、新技術では珍しくなく、修理するために「細かい調整」を必要とする。 GEは、修理および保証請求のために4億8,000万ドルを確保すると発表した。

    Three days after the break in Texas became known, Electricite de France SA shut down its HA turbine to replace blades. EDF did not respond to requests for comment.
    テキサス州での停止が発表されてから3日後、フランスの電力会社のElectricite de France SAは、ブレードを交換するためにHAタービンを停止した。 EDFはコメント要請に応じなかった。

    At the London meeting, about 100 insurance industry people gathered in the oak-paneled Old Library room of Lloyd’s of London on December 13, according to the sources, who spoke on condition of anonymity to discuss confidential information.
    ある匿名の情報提供者によると、12月13日のロンドンの私的会議では、約100人の保険、産業業界の人々が、ロイズのオーク材パネルで囲まれた古い図書館の部屋に集まった。

    GE power executives Marcus Scholz and Tom Dreisbach gave presentations about GE’s turbine technology. In its turbine documentation, GE has advised its power customers to inspect turbines with so-called “Generation 1” blades after 25,000 hours of use. GE said its improved blades, known as “Generation 2,” are designed to last 25,000 hours or more before being replaced.
    そこでは、GEパワーの幹部のMarcus ScholzとTom Dreisbachが、GEのタービン技術について説明した。GEの説明文書では、いわゆる「第1世代」のブレードを使用したタービンの場合、25,000時間使用した後に検査するように、GEは電力会社にアドバイスしている。「第2世代」と呼ばれる改良されたブレードは、交換までに25,000時間以上使用できるように設計されている、とGEは述べた。

    According to page 11 of his presentation, Dreisbach said the Generation 1 blade that broke in 2015 failed after 22,000 hours. New parts treated with a special coating were inspected by technicians after about 12,000 and 16,000 hours and “cracking (was) still observed,” the presentation said.
    説明文書の11ページによると、Dreisbachは、2015年に壊れた第1世代ブレードは22,000時間後に故障したと述べた。 表面を特別なコーティング処理された新しいブレードは、約12,000および16,000時間後に技術者によって検査され、「クラッキング(き裂)が(もう既に)生じていた」と、発表では述べた。

    GE inspected other turbines at about 7,000 hours and “early stages of cracking (were) observed,” the presentation said.
    GEはさらに、約7,000時間運動後の他のタービンを検査した結果、「クラッキングの初期段階が、ブレードで観察された」と述べた。

    (Reporting by Alwyn Scott; Additional reporting by Yuka Obayashi in Tokyo; Editing by Joe White and Edward Tobin)

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    HAガスタービンのブレード寿命は7,000時間しかない
  18. 相田英男
    2019-01-25 12:26

    相田です。

    日立の原発建設中断の発表と同時期に、経団連の中西会長の原発再稼働を訴える発言が、ニュースに出ていた。日立の現会長でもある中西氏は、今回の英国原発の建設を強引に進めた張本人として、評論家から叩かれている。それ以外にも、大学生の就活ルールを撤廃しろとか、経団連会長の部屋で初めてパソコンを使った、とかの、ユニークなネタを色々と提供する人物である。しかし、これくらい間抜けっぽく見える人物がトップにいる方が、海外の経済ヤクザ集団も油断して、日本への厳しい攻撃が和らぐのでは、とも思える。

    (引用始め)

    「原子力を人類のために」経団連会長、原発再稼働を訴え
    朝日新聞デジタル、2019年1月16日13時32

    経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は15日、原発の再稼働が進まない状況について、「私はどんどん進めるべきだと思っている。原子力というエネルギーを人類のために使うべきだ」との見解を示した。そのうえで「原子力に関する議論が不足している」と述べ、政界や学界などを巻き込んだ討論会の開催を訴えた。

    同日の定例会見で記者の質問に答えた。中西会長は「安全性の議論を尽くした原発も多いが、自治体が同意しないので動かせない。次のステップにどうやって進めるのか。電力会社だけの責任では済まされない」と語った。

    エネルギーのあり方について中西会長は「長期的にみた場合、再生可能エネルギーでまかなえるとは思っていない。現在、電力源の8割を化石燃料に頼っていることも問題だ」と訴えた。新増設についても「私の世代はいいが、次の世代では原発がなくなってしまう。そのとき日本の電力事情がどうなるのか。大変危ない橋を渡っている」と述べた。

    (引用終わり)

    さて、日立は原発を作る会社なので、中西氏が原発再稼働を訴えるのは、立場としてはおかしな話では無い。しかし、中西氏の上の発言には、ひとつだけ大きな事実の誤認があると、私には思える。中西氏はコンピュータ事業の担当だったらしいので、重電部門の状況にはあまり詳しくないようだ。

    (引用始め)

    中西会長は「安全性の議論を尽くした原発も多いが、自治体が同意しないので動かせない。次のステップにどうやって進めるのか。電力会社だけの責任では済まされない」と語った。

    (引用終わり)

    現在停止している日本の原発が動かせないのは、地元の自治体が反対しているから、というのが中西氏の主張である。原発反対派の琴線に触れる微妙な発言だ。しかし本当は違う、と私は最近思うようになった。

    私は福島原発事故の後で、日本で原子力技術が導入される歴史について、多くの資料を読みながら紐解いている。その結果の一部をまとめて、一昨年に出した東芝本の後半に入れた。その過程で、まだ納得出来ない事も多いのだが、頭の中に浮かんだ仮説が一つある。

    今の日本で、原発が再稼働できない大きな理由は、原発の地元の自治体や、一般市民による反対運動では無い。原発再稼働に反対するのは、実は日本政府である。具体的には、経済産業省の役人達が、原発の再稼働に密かに強く反対してるのだ、と、私は考えている。

    私の考えは、一般のニュースや評論家達の主張と真逆である。他の方の主張では、安倍総理を影で支える経済産業省の役人達は、原発再稼働と外国への原発の輸出を、国策として推進している。それが上手くゆかずに、東芝は破綻し、東京電力の幹部達は裁判にかけられ、日立の英国での原発建設は中断の憂き目にあった。この一連のストーリーが、繰り返し述べられる。

    しかし、その話は事実ではない。フェイクである。

    経済産業省の役人達は、本当は、原発の再稼働を出来るだけやりたくないのだ。何故なら、それが彼らに、大きな利益をもたらすからだ。

    そもそも、経済産業省とは、日本の経済活動が活発になり、国民全体が豊かになる事を目指すための組織であろう。しかし、彼らは実際には、そのための努力を全く怠っている。

    今の日本では、原発が動いた方が、電力が安定供給され、電力会社の抱える負債は低下する。結果、電気料金は値下がりし、市民の生活は楽になるのは明白だ。工場が使う電気代も下がるので、いい事尽くめである。でも、現状では国民に原発の安全性について、納得してもらえない、というのが、通説だ。

    でも、納得させたいならば、単純に、国民に対して繰り返し説明をすれば良いではないか。説明すべき主なものは、次の三点だろう。

    ①原発を安全に動かせるか
    ②福島事故で放出された放射線の生活への影響(要するに、年間100mSv以下の低線量放射線の被曝により、癌になり得るのか)
    ③放射性廃棄物(核のゴミ)の保管と処理の方法

    この三点は全て、専門的には大きな問題は無いと、説明出来る筈だ。色々と批判もあろうが、大学の専門家達に声を掛けて、繰り返し説明する場を作るべきでは無いだろうか。既にリタイアされているが、湯川秀樹の後期の弟子である、元物理学会会長の坂東昌子氏のように、原子力業界に好意的な学者も数多くいる。専門家として理詰めに考えると、原発反対派の主張には、おかしな事が沢山ある。専門家の誰もが、武田邦彦のような、売名が目的のインチキ学者ばかりではない。彼ら(彼女ら)の、真当な専門家達の意見を集める努力を、経済産業省はすべきであろう。役人達が原発の再稼働を本当に望むのであれば。

    しかし、役人達は、国民を説得しようとする努力を何もしない。私は、これは、何らかの目的を持った、意図的な役人達のサボタージュだと思っている。

    話が長くなるので、結論を書く。

    経済産業省の役人達の目的は、電力会社が持っている、発電、送電事業の主導権を奪うことにある。原発の殆どが再稼働できない今の状況では、電力会社には大きな赤字が積み上がって行く。この動きを役人達は、意図的に加速させている。

    最終的には役人達は、「電力自由化」の美しい掛け声の下で、発電、送電共に、今の電力会社とは別の、数十の新しい民間企業に細かく分散させるつもりだろう。アメリカやイギリスのように。そうすると、当然ながら、今よりも停電が頻繁するようになる。そのため、多数の企業間を規制、調整するための、新しいルールが必要となる。天下りの為の、新たな調整組織も多数作られるだろう。役人達が口出しする機会が、当然ながら、今よりも増す事になる。

    現在の国内九電力会社を潰してその利権を奪う、そのためのレバレッジとして、原発の再稼働を意図的に遅らせている、と私は考えている。福島事故の責任の全てを電力会社に被せて、その隙に全てを奪うつもりなのだ。流石は東大卒のエリート達が考える作戦だ。あまりにもスマート、かつ、悪どすぎるやり口である。

    本当は、今の国内の九電力会社と経済産業省(旧通産省)は、物凄く仲が悪いのだ。電力会社は、政府に可能な限り口出ししないで欲しいと、強く望んでいる。だから原発導入時に電力会社は、政府が主導する国産原発技術の開発を断って、アメリカからの軽水炉の導入を進めたのだ、という事に、ようやく私は気づいた処である。

    経済産業省と電力会社の仲が悪いと明言した資料は、殆どない。しかし私はこの事を、森一久(もりかずひさ)という人物の、インタビューの発言から気づいた。森一久は、京都大学の湯川秀樹の弟子であり、卒業後に出版社に勤めたのちに、原子力産業会議(原産)という組織の重鎮として活動した。原産とは原子力開発をPRするために、正力松太郎初代原子力委員長が作った、体制側のプロパガンダ組織である。森は体制側の人物であるが、湯川仕込みの、真っ当な理科系の技術センスを持っていたため、原子力開発の経緯について、批判的な意見を数多く残している。

    森の残したコメントの中で、戦後の電力会社には「国管アレルギー」の雰囲気が強く残っていた、という内容が、繰り返し出てくる。「国管アレルギー」とは、電力会社が政府に色々と口出しされたくない、介入されたくない、という拒否反応である。このような雰囲気が、戦後の電力会社と政府の間に強く存在し、原子力事業にも影響した、と森は語っている。

    日本の電力産業の歴史については、数多くの文献がある。明治以降に外国の技術を受け入れて、百社を超える売電会社が国内に作られた。しかし、日中戦争が勃発し翼賛体制が強まる中で、電力会社は政府により日本発送電という一社に、強引に集約されてしまう。戦後になり、松永安左エ門(まつながやすざえもん)の活躍などで、地域ごとの9つに分割された体制が作られて今に至る。戦後の電力会社には、国により強引に体制を引き回された記憶が、強烈に残っており、国の事業への介入を可能な限り拒絶したい、と内心で思い続けているのだという。これが「国管アレルギー」の概要だ。

    私は「国管アレルギー」という言葉を見た時、その意味がよくわからなかった。しかし、森の話を繰り返し読むことで気づいたのが、要するに、電力会社は政府を非常に嫌っており、お互いの仲が悪い、という事だった。森によると、「国管アレルギー」とは当時の「雰囲気」であり、関係者達はお互いを嫌いだ、などという発言など、当然ながら全くしていない。しかし、そのような「雰囲気」は確かにあったのであり、私は記録として残すべきと思う、と語っている。

    森一久の残した記録の中で、「国管アレルギー」は最も重要な内容だと私は考える。この考えに従うと、今の原子力の状況が、良く理解出来る。経済産業省の役人達には、電力会社から発電事業の主導権を奪う事が、半世紀以上の時間を経て引き継がれた組織の悲願なのだ。原発が再稼働できない今の状況は、組織の悲願を達成するための絶好のチャンスである。そのため、電力会社の力が衰えるのを、彼らは、ただ傍観しているのだ。

    原発が停止したことで、日本は化石燃料を海外から、年間3兆円くらい買わざるを得ないという。年間3兆円のムダ金がただ飛んで行くのを、経済産業省の連中は傍観している。3兆円の損失よりも、自分達の組織の悲願が成就する事が、経済産業省には優先らしい。

    経済産業省とは、一体何のための役所であるのか?胸に手を当てて考えてみれば良い。

    相田英男 拝

    追伸

    森一久のインタビューは、私の尊敬するフェレイラ氏という技術者の方のブログで取り上げられ、初めて知った。興味ある方は御参照されたい。
    ferreira.exblog.jp

    タイトル
    原発を再稼働させないのは反対派ではない
  19. 相田英男
    2019-01-19 19:53

    相田英男です。

    日立が英国で計画を進めていた、原発の建設を取りやめて、三千億円の損失を計上すると、経営陣が会見で語ったという。私が以前に出した本の中で、日立は原発を必ず作るだろうと断言したが、私の予想は外れた。

    しかし今回の原発建設の中止の、本当の意味は、日本の原子力村の敗北や打撃では無いと、私は考える。

    今回の、英国での原発中止の発表は、日立の、いや、日本の全部の重電機メーカーの − ただし東芝だけ除く − 勝利宣言である。

    一体、何に対しての勝利なのか?

    それは決まっているではないか。アメリカへの、ゼネラルエレクトリック(GE)に対しての、高らかな勝利宣言である。かつての太平洋戦争では日本は大負けしたが、重電機技術の競争では、遂にアメリカを打ち破った、という事だ。

    ただし、圧倒的な派手な勝利ではなかった。ベトナム戦争で、B52爆撃機から大量の爆弾を落とされながらも、ベトコンが竹槍でアメリカ軍を敗走させたような、壮絶な、長いゲリラ戦だった。犠牲も多かった。東芝はボロボロになって一流メーカーから転落した。その前に、GEの設計基準に従ったまま、安全対策を疎かにした福島第一原発は、震災でメルトダウンした。それでも、最後の、この土壇場になって、GEの方があっけなく自壊してしまった。そして、今回の勝利宣言に至ったのだ。

    表では失望した表情で記者会見するものの、裏では、日立と三菱の上層部役員達は、それぞれか、はたまた一緒にか、祝杯を交わしながら歓声を、遠慮がちではあろうが、あげている筈だ。東芝の幹部達とそのOBだけは、苦虫を噛み潰しているだろう。「ああ、俺たちは、やっぱりGEに、騙されて終わったんだ」と。

    一連のニュースでは全くコメントされないが、今回の英国での原発建設事業は、日立とGEとの合弁会社で進められている。英語表記では “GE−Hitachi Nuclear Energy”と、呼ばれており、GEの方が日立よりも先に来る。海外のネームバリューは、日立よりもGEの方が、当然ながら上だ。だから今回の建設中止は、GEの国際プロジェクトの破綻の一つでもある。

    このプロジェクトが持ち上がった時には、イメルトCEOの時代で、まだまだGEの力は強かった。リーマン危機で損失も出したが、GEはまだ金を相当に持っていた。それで、米国側はベクテルが、日本側は日揮がプラント建設を請け負うことで、計画が進んでいた。しかし、昨年になりGEが3兆円もの巨額の赤字を計上し、GEの株価は一気に下落した。GEの金が期待できなくなったベクテルは、真っ先にプロジェクトから足抜けした。

    以前の日立ならば、GEに遠慮して、中止の決断を自ら言い出せなかっただろう。しかし、情勢は大きく変わったのだ。日立はGEの目を気にすることなく、経済的合理性のみを考慮して、建設中止を決めた。日本の重電メーカーが、遂にアメリカの束縛を気にせずに、自由に事業の決断が出来る時代になったのだ。

    今となっては原発の建設よりも、GEの崩壊の方が日本のメーカーには重要事項だ。これからは、GEの影響の無い新たなスキームでの事業展開を、早急に構築しなかればならない。具体的には、中国メーカーとの対応方法が重要だ。日本が原発の輸出をやめても、中国とロシアはドンドン原発を外国に売る。日本の左翼は「原発を輸出するな」と怒るのだが、何と、共産主義を掲げる2大超大国が、日本の代わりに原発を作り続ける、皮肉な状況になる。日本では原発全部をパッケージで作る事は出来なくとも、大型の蒸気タービンや、高精度の部品や、日本製鋼所の圧力容器等は、これからも必要とされるだろう。

    BWR型軽水炉など、東芝も日立も、本当は作りたくなかったのだ。アメリカ様から脅されて、渋々作り始めた原発だった。戦後の平和憲法と同じような、アメリカからの「押し付け原発」だ。これを機に日本は、BWR の建設からきっぱり足を洗って、GEのしがらみを断ち切れる。なんともありがたいことである。

    日本がGEに勝てたのは、発電用ガスタービンの開発競争で、三菱重工が一歩も引かなかった事が大きい。三菱にガスタービンの開発をやらせたのは、東北電力だった。東北電力はガスタービンの技術を、GEに全て握られるのは危険だと考えて、三菱を応援した。それで、三菱が最初に開発した高性能ガスタービン(G型)を、東北電力は新潟の発電所に、世界で初めて導入した。東京電力は別にGEのガスタービンだけでいいじゃん、というスタンスだった。東京電力が富津の火力発電所で、GEのH型ガスタービンを動かしたのは、新潟の後だった。

    東北電力のアシストで勢いを得た三菱重工は、GEのH型ガスタービンを超える性能の、J型ガスタービンの実用化に成功した。焦ったGEは、同等性能のHA(アドバンスドH型)ガスタービンを、三菱に遅れて製品化する。しかし、その頼りとするHA型ガスタービンが、ブレードのトラブルにより、世界中のプラントで次々と運転停止に追い込まれているのは、周知の事実だ。HA型ガスタービンには欠陥がある。慢心したGEが技術開発を怠ったツケが巡ってきたのだ。日本のメーカーと電力会社の連携が、GEを打ち倒したといえる。

    しかし、勝ったからとはいえ、あからさまに喜びを見せないところが肝心だ。調子に乗ると、アメリカがすぐに叩きに来る。当面は死んだふり作戦でやり過ごすのだ。「いやあ、うちも三千億円も赤字で大変なんです」とか、「MRJが、なかなか売れませんでねえ」とか、記者会見の度に、しかめ面しながら謝り続ければよい。いずれGEはもっと崩れる。東芝も、GEがこれから切り離す事業を、安値買いできる機会をじっくりと見極めることだ。

    流れは完全に変わったのだ。

    相田英男 拝

    タイトル
    実は勝ったのは日本だ
  20. 相田英男
    2019-01-09 20:52

    相田です。

    年明けから、どうでもいい的な話が続くかもしれませんが、橋下徹が「三角関数はいらない」と主張しているのについて、気になって読んでみました。彼の主張の最初の方だけ引用します。

    (引用始め)

    僕は大学生の頃は天皇制に反対だった。少し本を読みだした大学生にありがちな、青臭い頭でっかちな理屈を基にしてね。いわゆる大学という狭い世界に閉じこもったり、本を読んで知識を持っていることが立派だと勘違いしたりした者が、世の中を語るとおかしな方向に行ってしまう典型例。

    そういうインテリ連中の多くは、国民のことを「大衆」などとバカにし、国民の感覚で政治を行うことを「ポピュリズム」と批判するけど、教育レベルがある程度高い国においては、自分たちは賢いと信じているインテリたちの感覚よりも、国民大多数の感覚の方が賢明なことが多い。

    お正月にAbemaTV「NEWS BAR 橋下」のスペシャルで教育が話題になったときに、「三角関数なんて大人になってから使ったことがない。国民全員が絶対に学ぶべき義務教育と、さらに深く勉強する教育は分けて、後者は選択制にすればいい」旨、僕は発言し、その発言概要がネットで出回った。

    そしたら僕を批判する連中が、世の中で三角関数は使われている! 建築、建設の現場で三角関数は使われている! 俺は料理をするときにも三角関数を使っている! 人生の選択の幅を広げるためにも三角関数は必要だ! 三角関数くらい人間の教養として必要不可欠だ! なんて喚き始めた。

    中には、難しい数学の世界や物理の世界の話を持ち出して来て、「俺は三角関数を知っているからこういう話の面白さを理解することができるんだ、凄いだろ?」とその道のプロの学者でもない一般人が悦に入っているものも多くあった。

    この人たちの話を聞くと、あー、三角関数を知っていることで優越感を持ちたいんだな、と感じたね。

    三角関数が世の中で使われていることくらい、知ってるよ。僕が番組で発言したのは、「三角関数は世の中で生きて行くために絶対に必要不可欠な知識じゃない。国民全員が深く知っておくべき知識ではない。興味がわかないなら、無理やりやる必要はない。授業内容を理解できないまま席に着くことは拷問以外の何ものでもないし、三角関数ができないくらいで劣等感を抱く必要もない」ということ。

    今回、「三角関数は、国民全員が絶対に勉強しなければならない!」「これくらいのことを知らなければ恥ずかしい!」と叫ぶ人たちの姿をみて、僕は「あー、こういう人たちは世の中のことをほんと知らないんだな」とつくづく感じたね。

    三角関数なんか深く知らなくても人間的に立派な人、仕事を成功させている人、人生を謳歌している人たちはたくさんいる。むしろ、ここで三角関数は絶対に必要だ! と喚き散らしている人たちよりも、仕事面でも、収入面でも、生活面でも人生充実していることの方が多いんじゃないか? 僕は自分の人生の中で、そういう人たちをたくさん見てきた。だから「人生において三角関数は絶対に必要不可欠な知識ではない」と断言できるんだ。

    ところが、一部狭い空間だけで人生を過ごしてしまうと、そういう人生の充実者に出くわすことが少ないのか、三角関数が絶対的なものになってしまうんだろうね。そういう知識を持っているか否かで優劣が決まってしまう世界しか知らなければ、なおさらだ。

    (引用終わり)

    一見して、私には、何を言いたいのかよくわからなかった。何度か読み返して、印象に残ったのは、次の箇所だ。

    (引用始め)

    今回、「三角関数は、国民全員が絶対に勉強しなければならない!」「これくらいのことを知らなければ恥ずかしい!」と叫ぶ人たちの姿をみて、僕は「あー、こういう人たちは世の中のことをほんと知らないんだな」とつくづく感じたね。

    (引用終わり)

    こんな人達が本当に、世の中に大勢いるのだろうか?私は技術屋だが、「三角関数を知らない人はバカだ」などと思った事は、これまで一度もない。私は数学が元々得意では無かったが、その私でも、高校の三角関数は理解出来た。三角関数が理解出来なくて劣等感を抱いているなら、その人は、先生の教え方が単に良く無かっただけだと思う。その周りにいる人々が、数学の理解に協力的で無かっただけだ。劣等感を持つ必然性など全く無い。

    私の実感として、理科系を生業とする方々で、三角関数レベルの数学を日本人の誰もが理解するべきだ、などと思うのは、誰もいないのではないか?普段からそう思っているので、橋下が上のように喚いても、「何じゃソリャ」という違和感しか、私には持てない。

    橋下の議論は、現実に存在しない論争相手を仮定して、無意味な理屈を展開する事で、自分を正当化しようとしているだけだと思う。武谷三男という有名な物理学者がかつていた。武谷は、ルイセンコというソビエトのインチキ生物学者の主張を正当化しようとして、昔、他の学者と論争になった。その詳細を書いた伊藤康彦氏の著作によると、相手を論破する際に武谷は、相手が言ってもいない論点を持ち出して、それを否定する事で、相手を貶めるという反則技を、度々使っているという。

    今回の橋下の三角関数否定論も、存在しない相手の、架空の主張をデッチ上げて、それを論破する事で、自分の存在感を煽っているだけでは無いのか?

    三角関数は高校で習う内容なので、義務教育の課程では出てこない。しかし、高校数学の内容から三角関数を削ると、一体、数学の時間では何を教えれば良いのだろうか?高校では、数学そのものを選択科目にするしかないと思う。数学が苦手な高校生は、習わなくて良くなるだろう。そうすると、英語の苦手な高校生は英語をやらずに、社会の暗記が嫌な高校生は社会をやらなくなるだろう。

    しかし、高校の科目を全部選択制にするなら、そもそも、何のために高校に行く必要があるのか?高校に通わずとも、専門の塾とか語学学校などに通って、個別に単元を学べば、それで済むのでは無いのか?橋下の主張は、高校教育の否定にしか私には思えない。私の誤解なのだろうか?

    要するに、中学の義務教育を終わったら、あとは自分で必要に応じて好きに学べば良い、という事だ。しかし、それならそれで、中卒の学歴者であっても、生活に不自由なく仕事に就いて、家族を末永く養って行けるような、社会の仕組みを今の日本で作るべきだ、と私には思える。

    そんなことまで、橋下はちゃんと考えてくれているのか?元政治家として責任を持てるというのか?。

    高校で教わる内容にわからないところがあっても、そんなにも無駄なのか?誰もがそれで、たまらなくストレスを感じるのだろうか?世の中にある様々な学問の、入口だけでも覗いて見ることで、現実世界と精神世界の広がりと関係性を、何となく感じるだけで良い。それだけでも後の人生に十分役に立つのではないのだろうか。内容が理解出来なくとも。職業に結びつかない知識は、全て無駄だから切り捨てろ、とは、私には思えない。

    一見合理的な主張に思えるが、橋下の主張は、誰もが与えられている均等な学びの機会を剥奪するものでしかない。他の方も書かれていたが、橋下は、社会に存在する貧富の格差を固定する危険主義者である。原発推進を主張する私が見ても、そう感じる。

    相田英男 拝

    タイトル
    三角関数が解けても、優越感とか誰も持たないよ
  21. 相田英男
    2019-01-08 20:36

    相田英男です。

    年始に最終話が放送されたこのドラマには、私も観入ってしまいました。架空の話なので、細かいところに無理も多い内容ですが、私は素直にいい話と思いました。

    一方で、ネットには次のような意見もあります。一部を引用します。

    (引用始め)

    佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由

    1/8(火) 8:15配信
    ITmedia ビジネスオンライン

     先週、ドラマ「下町ロケット」(TBSテレビ)の新春特別編が放映され14.0%という高視聴率を叩き出した。
    (中略)

     このドラマは、ロケット技術者から町工場の社長となった主人公・佃航平と、彼が率いる「佃製作所」の社員たちが高い技術力を武器に、さまざまな困難に立ち向かって夢をつかむというストーリー。「ものづくり」に情熱を注ぐ技術者たちが織りなす感動ドラマに、お正月から胸が熱くなったという方も多かったのではないか。
    (中略)

     ただ、これから日本の労働現場であらためなくてはいけない「悪しき労働文化」が、このドラマで肯定的に描かれているどころか、現実にはあり得ないほど美化されてしまっているのは紛れもない事実だ。

     高校野球、大学スポーツ、アマチュアスポーツ団体などで体罰・パワハラ上等というゴリゴリの体育会カルチャーが根付くこの国で、常軌を逸した体罰や“しごき”を美化するスポ根アニメ・ドラマが公共電波でじゃんじゃん流されていたことを踏まえれば、「下町ロケット」が労働現場に与える影響を見くびってはいけない、と申し上げたいのである。
    (中略)

     「働く」ということは、「夢をかなえるため」「自分が成長するため」と経営者から叩き込まれた社員は、自らすすんで時間外労働やサービス残業に身を投じ、低賃金や低待遇であっても不平不満を口にしない。採用ページなどで「夢」「自己実現」「成長」といううたい文句を掲げるブラック企業が多いのはそのためだ。
    (中略)

     タイトルにもなっているロケットや、今回の無人トラクターなどは実はすべて社長である佃航平の「夢」だったが、彼の熱意にほだされるうち、気が付けば全社員がその「夢」を追いかけている。ブラック企業における「やりがい搾取」の典型的なパターンだ。

     だから、社員たちは自らすすんで残業をする。佃航平に「もう帰れ」と言われても自主的に遅くまで働いている。それどころか、業務外の労働まで喜んでやってしまう。

     ドラマをご覧になった方はよく分かると思うが、佃製作所の社員たちは、佃社長の思い付きで、他社の訴訟のために調査や、農作業など時間外労働にも駆り出されている。あれに賃金が支払われているか否かは不明だが、もし払われていないのなら完全に「やりがい搾取」である。
    (中略)

     もし佃製作所のような従業員200人規模の社長が、自分の「夢」を社員に押し付けて、それを理由に、長時間労働や、業務と関係のない仕事をやらせていたら――。間違いなく社員たちから不満が噴出し、「洗脳系ブラック企業」として大炎上してしまうだろう。

     いくら家族的な雰囲気の中小企業といえど、宗教団体ではないのだ。

    (引用終わり)

    相田です。放送された話の流れを単に追っていくと、上の通りです。が、技術屋としての私の感想は少し違います。

    前回のシリーズでありましたが、主役の佃社長という人は、天下の帝国重工に先んじて、高性能のバルブシステムを自ら考案して、特許を取ってしまいます。一流大企業が数十人のプロジェクトで開発した技術を、粗末な環境の中でも、たったの数人で先に開発し終わる設定です。少なくとも10年くらいは、他社よりも進んだ発想を持っていると予想します。会社の社長の前に、技術者として超一流の腕とアイデアを持つ人物です。

    佃社長くらいの能力があれば、彼が書く図面や技術レポートを読むことで、「凄い」と感動して、近くで技術を学びたいという若者が、自然に集まって来るでしょう。優れた技術には、他の技術者を感動させる力があります。私が若い時に、自分よりも何段階もレベルの高い能力を持つ技術者を見かけた時には、素直に感動した記憶があります。話の内容や、彼の書いた論文の記述が、非常に趣き深く、美しいのです。

    その人の存在を知った時には、「自分も努力したら、ああなれるかもしれない」と、寝る間を惜しんで実験したり、テキストを読んだりした記憶があります。ほんの数年間でしたが、技術者としてのレベルアップのきっかけになりました。

    一流の能力を持ってはいるけど、報われない。そんな技術者の周りに、腕に自信のある若手が自然に集まって出来たのが、佃製作所だと思います。

    佃社長は熱く理想を語って若手を洗脳するのではなく、本当は、黙って技術を見せるだけで導いているのだと、私には思えます。ただし、それだとドラマにならないので、テレビではわかりやすく、熱く語っているのです。

    佃社長の本当の姿は、アイン・ランドの「水源」の主役の、ハワード・ロークのような人だと、私は思います。不遇ではあるけれど、一流の技術力を持っていて、語らずとも見る人が見れば実力が分かる。私がテレビを見る時には、頭の中で勝手にキャラ変してたので、あまり違和感はなかったです。

    周りの若手も、優れた技術を学ぶために側にいるだけで、いつまでもブラックに甘んずる訳ではなく、いずれは独立するつもりでしょう。でも、技術屋でない人は、あれは浪花節で洗脳されてると、そのまま受け止めてしまうでしょうね。

    ただ私は、自殺してしまった電通の女の子のように、自らが望まずに激務に晒される事を良しとは思いません。相手の実力が自分を遥かに上回る事が、冷静に考えて判断できた時に、謙虚に学ぶ姿勢を持つことが大切だと思います。

    相田英男 拝

    タイトル
    下町ロケット(第2部)
  22. 相田英男
    2019-01-07 22:28

    相田英男です。

    新年になりました。昨年起きたゼネラル・エレクトリックの崩壊は、自分にとってあまりに衝撃的でした。9月以降は頭の中で、長年凝り固まった固定観念が、ガラガラと崩れ落ちる音がずっと続いていました。

    早く文章にまとめなければ、と気持ちが焦るのですが、自分の理解の速度が現実の早さに追いつけない状況です。ニュースが英語でしか報道されないせいもあるのですが・・・

    そんなイライラした心境で、以下の記事を見つけました。

    記事にある「姶良(あいら)カルデラ」というのは、2万年前のたった一度の噴火で、南九州一帯に数メートルの厚さのシラス台地を作りました。数日の間で、人間が見渡す限り以上の広さに、数メートルの火山灰が降り積もったのです。人類が未だに目にしていない規模の、あまりに巨大な噴火です。今同じ噴火が起きたならば、日本人の半分は逃げ遅れて死ぬでしょう。

    そんな巨大な災害の予測に、なぜ原子力規制委員会ごときが、率先して関わる必要があるのでしょうか?噴火が終わった数ヶ月くらい後で、九州にまた人が住めるようになる、などという、甘い事を、よもや考えているのでしょうか?

    起きたならば間違いなく、日本人の存亡の危機が生じる大災害の予測を、何でわざわざ原発に絡める必要があるのでしょうか?自然の起こす災害を、あまりにも軽く考え過ぎではないでしょうか?

    姶良カルデラがl噴火すれば、西日本の人間のほとんどは死んでしまうと、少しは想像力を使えばわかるでしょうに。その時に原発が壊れて、一体何が問題なのでしょうか?

    原発なんかほっといて、さっさと韓国か中国に脱出する事を考えるべきではないのでしょうか?でも、これだけ揉めていたら、水際で全員追い返されるでしょうけど。

    もしくは、原発をゴジラと同じ位の化け物だと、心底から錯覚しているとか?

    橋下徹がネットテレビか何かで、「三角関数を学校で教えるのは、意味がないから止めろ」と、発言したそうです。「人を馬鹿にするなよ、橋下の野郎」と、最初は私もカッとしました。でも、こんな提言が原子力規制委員会から出されるのですから、委員会の連中も全員、三角関数が理解できていないレベルの知能と思えます。

    (引用始め)

    「破局的噴火」を警戒、海底火山を常時観測へ
    1/7(月) 8:59配信、読売新聞

     原子力規制委員会は、火山の破局的噴火による原子力発電所への影響を評価するため、2021年度から鹿児島湾内の火山「姶良(あいら)カルデラ」の海底での常時観測に乗り出す。地殻変動や地震などのデータを集めて破局的噴火のプロセスを解明し、原発の安全審査に生かすのが狙いだ。

     破局的噴火は、噴出物の量が100立方キロ・メートル以上の超巨大噴火で、火砕流が数十~100キロ・メートル以上の範囲に到達する。国内では1万年に1回程度起きているが、縄文時代の7300年前が最後で、科学的な観測データがないため詳細はわかっていない。

     こうした噴火によってできた巨大なくぼ地はカルデラと呼ばれ、大部分は海底や湖底にある。海底でのカルデラの常時観測は国内初。規制委は19年度から予備調査を開始し、研究を委託する機関の選定などを進め、21年度に海底に地震計や水圧計などを設置、観測を始める計画だ。

     破局的噴火の原発への影響を巡っては、広島高裁が17年12月、阿蘇カルデラ(熊本県)の破局的噴火で火砕流が到達する恐れがあるとして、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを命じ、注目された。同高裁は18年9月に決定を取り消したが、この間、伊方3号機は停止した。

     九州電力の川内原発(鹿児島県)や玄海原発(佐賀県)でも、破局的噴火の懸念から運転差し止めを求める仮処分申請が相次いでいる。

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    新年早々いい加減にしろよ、どいつも
  23. 相田英男
    2018-12-11 17:48

    相田英男です。

    下の投稿で引用したロイター記事の、前半部分の説明記事が、同時刻に発表されていました。GEのガスタービントラブルの詳細に、かなり踏み込んだ内容が書かれています。GEは、トラブルの詳細を全く公表しないので、業を煮やしたロイターが、世界中の電力会社にあたって、HAタービンの状況について確認したようです。見えてきたのは、GEの大本営発表とは相当に異なる状況です。

    以下に記事の中で気になる部分を抜粋して、意訳を付けて解説します。私は英語が苦手なので、そっちの方は大目にみてください。

    【引用記事】
    Exclusive – GE’s push to fix power turbine problem goes global
    By Alwyn Scott, December 7, 2018, Reuters

    以下は、記事の一部の抜粋と私の解説です。

    1.タービンブレード損傷(oxidation issue)の実態について

    (引用始め)
    Photographs of the damaged turbine reviewed by Reuters show dozens of jagged and broken blades inside the massive machine, owned by Exelon Corp (EXC.N). The turbines are now running after two months of repairs, Exelon said.
    意訳:
    停止したエクセロンのHAタービンの写真を我々(ロイター)が見たところ、損傷して先端がギザギザの形状になったブレード翼が何個も確認された。このHAタービンは2ヶ月間の修理を経て、現在は運転を再開した。

    GE told Reuters it identified the oxidation problem in 2015, and developed a fix before the failure in Texas. The fix uses an earlier casting method that was employed on other turbine models.
    意訳:
    GEはロイターに、テキサスの発電所で故障が起きる前の2015年に、同様のブレードの酸化問題が起きていたと語った。その修理の際は、それ以前に別のタービンモデルに鋳造されたブレードを使って交換した。
    (引用終わり)

    相田です。9月にエクセロンのプラントが止まって以来、GEはHAタービンのトラブルについて、“oxidation issue” と述べるだけで、他に一切の説明をしていません。しかし、上のロイターの記事には、現地でのブレード損傷の一端について、具体的に書かれています。

    最も重要なのは、“Photographs show dozens of jagged and broken blades”という記載です。タービンブレードの先端は、本来なら平らの筈です。が、エクセロンの関係者に損傷した写真を見せてもらった処、ブレード先端がギザギザになっていたそうです。これはブレード先端の温度が高温になり、運転中に溶けて一部が飛散した事を意味します。単に表面コーティングが脱落しただけでなく、その下の基材のニッケル基超合金(Nickel based superalloy)が溶けたのです。深刻なトラブルです。

    GEの言うようにoxidation(酸化)が、そもそもの破損の原因かもしれません。しかし、酸化でブレード自体がここまで消失するのは、先端の温度が想定よりも相当に上がりすぎている事を意味します。ブレード内部の冷却機能が不足している、要するにGEが設計したブレードの冷却機能に問題がある可能性も、否定できません。

    “dozens of” という記載から、ギザギザのブレードは数本ではなく、数10本に及ぶと思われます。おそらくは、タービンの一周グルリとブレードがダメージを受けているのでしょう。製造の欠陥で、一部のブレードのみが性能が低かったのではなく、全てのブレードに問題があると思えします。

    記事には、2015年の時点でGEはブレードに問題があると知っており、その時の修理には、以前の鋳造技術(an earlier casting method)を使った、と書かれています。ここの記載がイマイチ怪しげですが、castingとはブレードを作る際の、最初にニッケル合金を溶かし鋳型に入れて固めるプロセスを指す筈です。酸化の問題があったのは前から知っていたが、その時には、古い作り方のブレードに交換して、取り敢えず済ませた、という場当たり的な対応に思えます。ロイターの記事の説明不足もあるでしょうが、釈然としない箇所です。そのうちに経緯がわかるでしょうが。

    2.他の発電所のHAタービンでもブレードの交換に着手した。

    (引用始め)
    Three plant operators using GE equipment that are shutting for blade repairs, Invenergy, Exelon and Tennessee Valley Authority, told Reuters GE has been transparent and responsive in installing new blades for free under warranty.
    意訳:
    ブレード交換のためにHAタービンを停止している電力会社、インベナジー、エクセロン、テネシーの三社の関係者は、GEは保険契約(注:LTSA契約のこと)に従い、透明で信頼出来る方法で新たなブレードの取付作業を行っていると、ロイターに述べた。

    “Overall, we’ve been very pleased with GE’s HA technology and its performance capabilities,” said Beth Conley, a spokeswoman at Invenergy, which is receiving replacement blades for three new HA turbines at a Pennsylvania plant that has not yet opened.
    意訳:
    “私達はGEのHAタービンの技術と性能にとても満足している”と、インベナジーのスポークスマンのコンレイ女史は語った。彼らの交換用ブレードの一式はペンシルベニアの新たなHAタービンまで届けられたが、タービンの解放作業はこれからである。
    (引用終わり)

    相田です。エクセロンの他に、フランスでもHAタービン停止と点検について報道されました。しかし、それ以外のインベナジー社(ペンシルベニア)とテネシー・バレー社でも、既にHAタービンを停止して、点検の準備に入っているようです。インベナジーではタービンの解放作業はまだですが、GEから交換用の新しいブレードが既に搬入されているようです。多分、覗き穴からファイバースコープを入れて見たら、ブレードがギザギザだったので、「これはもうダメだ」となったのだと思います。

    3.GEは楽観的な態度をあくまで崩していない。

    (引用始め)
    GE is setting aside $480 million (376 million pounds) to repair its 9HA, 7HA and 9FB model turbines as it restructures its power business. The 126-year-old conglomerate has declined to say how many have been shut down, or when it would replace parts – if needed – in as many as 130 such turbines it has produced.
    意訳:
    GEはHA, 7HA, 9FB 型ガスタービンの修理のため、480ミリオンドルの費用を準備している。GEは、修理のために停止するガスタービンの数と、タービンの部品交換が(必要であれば)行われる時期を、明らかにしていない。

    Power plant operators in Japan, Taiwan, France and at multiple U.S. sites have shut down – or plan to shut down – at least 18 of the 55 new HA-model turbines that GE has shipped so far, French utility data and interviews with more than 20 industry experts, including executives, plant operators, insurance specialists, engineers and consultants with direct knowledge of GE turbines show.
    意訳:
    日本、台湾、フランス、アメリカの幾つかのサイトの発電プラント関係者達の話をまとめると、GEにより世界中で55台導入されたHAタービンの内の、18台以上が点検、補修のために停止される予定である。

    In an interview, GE gas power systems CEO Chuck Nugent played down the significance of turbine shutdowns and the French data, saying that GE turbines are performing “extremely well,” despite the need for “early maintenance” to fix the blades.
    意訳:
    GEガスパワーシステムCEOのニュージェント氏は、一連のガスタービン停止とフランスの発電所の不具合データが深刻なものであるとは考えておらず、「GEのガスタービンはどれも“きわめて順調に”稼働している」と、インタビューで答えた。ブレード修理のための“早急なタービンの停止”が、必要であるにもかかわらず。
    (引用終わり)

    相田です。ロイターの調査では、タービンユーザーである電力会社の方は、ブレード損傷について危機感を持っているものの、GEは公式発表では前向きな発言を続けるのみです。GEと電力会社の発言には、明らかに温度差があります。

    おそらくは、今回のブレードのトラブルについて、GEは未だに抜本的な解決策を見出だせていないのだと、私は推測します。技術的な解決策も、LTSAに関するビジネス的な損失についても、両方についてです。

    GEのコメントの通りに、問題が収束しつつあるのならば、トラブルの状況と解決方法についての詳細なロードマップを、早急に開示するべきです。それならば投資家も安心して、株価の低下も早めに収まる筈です。しかし、事故の詳細情報を全く発表せず、アメリカ国内のユーザーから、ブレードの新品への交換作業を少しずつ進めています。問題の根深さが芋ずる式に明らかになる事を恐れている、としか思えません。やり方があまりに姑息です。

    今回のユーザー側からの調査により、GEの困難な状況が、また一つ明らかになりました。10日の月曜日のGEの株価は、終値で遂に7ドルを割りました。スティーブ・ツサが予言した6ドルの目標株価に到達してしまいました。

    GEが認めなくても、SECによるGEパワーへの調査から、問題はいずれ明らかなります。投資家達は、そてを見越して最後の期待も投げ捨て始めているのでしょう。

    相田英男 拝

    タイトル
    ブレード問題は未だに解決していない
  24. 相田英男
    2018-12-10 12:39

    相田英男です。
    先に書いた投稿の内容を一部差替えます。

    ロイターの速報ですが、初段ブレードのコーティング破損が問題になっていた、HA(アドバンスドH型)ガスタービンについて、世界中の発電プラントで少なくとも18機を停止して、点検する予定であることが、ユーザーの電力会社関係者からのインタビューで明らかにされたそうです。

    記事を以下に引用します。ロイターがまとめた停止検討中のプラントに、中部電力の西名古屋発電所に作られたHAタービン6機が、しっかり載っています。西名古屋のHAタービンは、運転開始後に世界最高の発電効率を更新した、凄いだろう、と大々的にマスコミ発表されていました。それが、まさかこんな羽目に陥るとは、全くの「想定外」だったでしょう。

    やっぱり三菱重工のJ型ガスタービンにしとけば良かった、とか、中部電力は後悔しているかもしれません。流石に今度の中部電力の6台のHAタービンが点検で停止するとなると、電気新聞も記事にしなければならないでしょう。すると、東京電力のHAはどうなんだ、とか、北海道電力の石狩湾発電所のやつは大丈夫か?とか、話が広がるでしょう、必然的に。もはや隠蔽は不可能です。

    GEにとって問題は、タービン翼の交換などの物理的な費用だけではなく、LTSA(長期保守契約、数年間の修理に伴う費用を電力会社が事前に、GEに保険として支払うこと)に伴い生じる追加費用です。電力会社はHAタービンの停止中に、止めていた旧式の発電設備を再稼働して、重油や石炭などの燃料を新たに買うとかする必要に迫られます。これら諸々の諸経費をまとめて全部、GEは負担しなければなりません。

    先週の記事によると、GEパワーの巨額赤字の内容を精査しているSEC(アメリカ証券取引委員会)は、ガスタービンのLTSA契約に伴う収入を、GEの経理部門が過度に盛っていた可能性が高いと、慎重に捜査を進めているそうです。SECも間抜けではないので、やっぱりそこが一番怪しいと思うでしょう。

    まあ、私はある程度予想していましたが、GEにとって最悪の展開になりつつあります。CEOの首を何度もすげ替えた処で、中身の毒は全く浄化されないことが、証明されました。

    (引用始め)

    Factbox – Power plants with GE turbines shutting for repairs
    ReutersDecember 7, 2018

    NEW YORK (Reuters) – Utilities are shutting down at least 18 of General Electric Co’s (GE.N) newest gas turbines for repairs at power plants from Taiwan to France, according to more than a dozen interviews with plant operators and industry experts.

    Here is a list of power plants that operators have shut down or plan to shut down for turbine blade replacements or other repairs following a blade failure at an Exelon Corp (EXC.N) plant in Texas in September, according to the sources.

    Plant name: Lackawanna Energy Center
    Turbines: 3 x GE 7HA
    Location: Jessup, Pennsylvania
    Owner: Invenergy

    Plant name: Allen Natural Gas Plant
    Turbines: 2 x GE 7HA
    Location: Memphis, Tennessee
    Owner: Tennessee Valley Authority

    Plant name: Nishi-Nagoya Thermal Power Station
    Turbines: 6 x GE 7HA
    Location: Nagoya, Japan
    Owner: Chubu Electric Power Co.

    Plant name: Dah-Tarn
    Turbines: 2 x GE 7HA
    Location: Taoyuan City, Taiwan
    Owner: Taiwan Power Co.

    Plant name: Bouchain
    Turbines: 1 x GE 9HA
    Location: Bouchain, France
    Owner: Electricite de France

    Plant name: Colorado Bend II
    Turbines: 2 x GE 7HA
    Location: Wharton County, Texas
    Owner: Exelon Corp

    Plant name: Wolf Hollow II
    Turbines: 2 x GE 7HA
    Location: Granbury, Texas
    Owner: Exelon Corp

    Sources: Companies, GE, Reuters research
    (Reporting by Alwyn Scott)

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    【速報】中部電力西名古屋発電所の6台を含む18台以上のHA型ガスタービンが停止される予定
  25. 相田英男
    2018-11-13 17:20

    相田英男です。

    先週末のGEの株価は、10ドルを下回り8.58ドルまで沈んでしまいました。そして、週明け月曜になると、株価はついに終値で8ドルを割りました。先週の木曜にアナリストのスティーブ・ツサが、「GEの適正株価を“6ドル”まで引き下げるべきだ」と、コメントしたのが波紋を呼んだそうです。株式時価総額も遂に、7兆円そこそこまで落ち込みました。昨年の4月には、GEの時価総額は25兆円を超えていたのです。が、たったの一年半で1/3以下に減ってしまいました。

    時価総額が8兆円以下になると、ソフトバンクグループや三菱UFJにも及びません。ソニーとほぼ同じレベルです。2000年頃にはアメリカ最強と呼ばれたあのGEが、何というショボくれた会社に落ちぶれてしまったのでしょうか。

    CEOのカルプは、GEパワー(発電部門)の危機的状況について、「そろそろ持ち直すだろう」’We’re getting close’ と、インタビューで述べたようです。ですが、赤字を脱却しても、GEには最早、金融事業もデジタル事業もメディカル事業も、売却してしまうため収益は期待出来ません。株価を反発させるための成長エンジンとなる事業が、GEには残っていないのです。ジェットエンジンと発電用ガスタービンを、地道に作って売るだけの、単なるメーカーになるしかありません。

    これまで日本では、アナリストや経済誌の記者達が、「日本の企業は製造業だけに頼っていても、ジリ貧になるだけだ。GEを見習って選択と集中をすべきだ。経営改革を早く進めろ」と、散々叫んできました。ところが、その「日本が見習うべき理想の企業」だった筈のGEが、何とこの有様です。今となっては、地道に「物作り」を続けてきた日本の会社の方が、しっかり生き残っているではないですか。失敗したのは、GEを見習って「選択と集中」に取り組んだ、あの東芝でした。アナリスト連中は、所詮は、その場の適当な思いつきをコメントするだけです。彼らには、先のことなど全く見えていないのが、よくわかります

    まだまだGEの危機はこれからです。行き着く所まで行くと思います。

    翻って日本では、東芝が、8日の木曜日に、2018年7月~9月決算と当面の事業計画を発表したそうです。車谷CEOになり初めての事業報告会です。しかし、「発表の会場が高級ホテルだったのがケシカラン」とか、「半導体を売却した後の成長戦略が見えない」とか、相変わらず経済マスコミ連中から叩かれています。

    でも私が考えるには、車谷会長はよくやっていると思います。おそらく何もしないで、当面の時間を稼ぐことが、今の東芝の最も重要な任務だからです。なぜならば、東芝はGEが今後分割して切り離すであろう不採算部門を、吸収、合併する必要があります。GEの最期のリストラで放出される経営資産(殆ど赤字の)を、受け止めるためのバッファ(緩衝材)となるのが、東芝に与えられた役割なのです。だから今の東芝は、新たな事業を勝手に提案して設備投資などして、お金を減らさないように、敢えて何もしていないように、私には見えます。

    せっかく半導体事業を打って、大金を得る見込みがついた。ウェスティングハウスの清算も終わり、アメリカのLNG事業も中国に買って貰える目処がついた。そして、「そのままでしばらく待て」という指示が、東芝の経営陣に出されているのです。「天の声(JPモルガン)」として。

    面白いのは、お金に余裕が出てきた今の東芝は、新規事業の開拓ではなく、自社株買いに積極的にお金を使っています。この自社株買いについても、経済記者達からは「金と時間の無駄遣いだ」と、非難の的になっています。日経の記事から引用します。

    (引用始め)
    東芝、7000億円の自社株買い発表 1株3635円 上場企業で過去最大規模
    日本経済新聞 2018年11月12日 19:15

    東芝は12日、今月8日の取締役会で決議した7000億円の自社株買いの具体的な方法を発表した。自社保有分を除く発行済み株式総数の約30%に相当する最大1億9257万2200株を、12日の終値と同額の1株3635円で買い付ける。13日の取引開始前に東京証券取引所の立会外取引で取得する。

    7000億円の自社株買いは国内の上場会社では過去最大規模とみられる。東芝は、昨年末の大型増資を引き受けた海外ファンドなどの応募を想定している。

    1株当たりの買い付け価格は、昨年末の増資の新株発行価格に比べ実質38%高い。

    一部のファンドは保有する東芝株を売却するとみられる。一方で、「再建でさらに株価が上昇する可能性もあり、東芝株の継続保有も検討する」としているファンドもある。東芝側も「今回だけで7000億円分を全て取得できるとは思っていない」(幹部)とみている。

    13日の立会外取引で7000億円分を取得できない場合は「国内の自社株買いでは一般的な、証券会社を通じたアルゴリズム取引で買い付けを進めていくのではないか」(市場関係者)とみられている。

    東芝は19年11月までに7000億円の自社株買いを終わらせる方針。取得した自社株については、一定規模を消却するという。
    (引用終わり)

    技術屋の私は株には素人ですが、自社株買いを行うと単純に株価が上がるため、既存の株主の利益が高まります。この東芝の自社株買いが、先にゴールドマン・サックスが増資のために集めて来た「物言う株主達」に向けての対応なのは、言うまでもありません。彼らも間抜けでは無いので、GEの赤字部門と東芝が合併するとなると、当然猛反発する筈です。なので、GEとの合併までに、株価を出来るだけつり上げておいて、彼らを儲けさせる必要があります。つまらない設備投資に資金を費やして株価を下げるのは最悪です。当面は手持ちの資金を減らさずに、自社株買いで海外投資家を儲けさせるのが、最善の策と言えます。

    なので、元銀行員の車谷CEOの今の対応は、とても理にかなっていると、私は考えます。今は何もしてはいけないのです。窮地に陥ったGEの、最期のリストラ作業が完了し、東芝との合併の準備が整うまでは。

    私達の日本という国家は戦後、アメリカのデモクラタイゼイション(強制的な民主化教育)を受けて、旧ソビエトや中国のバッファとして利用されて来ました。同じように、JPモルガンによりデモクラタイゼイションされた東芝は、壊れゆくGEのバッファとして使われるのです。まさに今、目の前で展開される貴重な、壮大な、デモクラタイゼイション・ドラマの成り行きから、しばらく目が離せません。

    相田英男 拝

    タイトル
    東芝はGEのバッファ(緩衝、衝撃吸収材)である
  26. 相田英男
    2018-11-01 12:36

    相田英男です。

    10月30日のNYダウ株価は、400ドル以上がった一方で、かのGEの株価は、10ドルそこそこに低迷しています。理由は簡単で、同日発表された18年度第2クオーター(7,8,9月)決算で、純損益が228億ドル(約2.6兆円)の大赤字を出したためです。アメリカの企業では史上最高額の赤字だそうです。アルストムの減損から予想はしていましたが、やっぱり凄まじい規模です。フラナリーに変わって社長になったカルプには、散々な門出になりました。

    今のGEの株式時価総額は10兆円くらいまで減りました(全盛期の2000年頃は50兆円を超えていた)。そこから2兆円の赤字が出てしまうと、いよいよ危ない領域になります。GEの危機は、アメリカ経済界でも、最もホットな話題の一つになりました。

    今回のカルプの発表では、大赤字以外にもいくつかの注目すべき内容が出てきました。ブルームバーグの以下の題目の記事に、大まかにまとめられており、箇条書きで説明します。

    〔参考記事〕
    GE Sinks to 2009 Low After Accounting Probe Adds to CEO’s Woes
    By Thomas Black, Natasha Rausch and Matt Robinson
    Bloomberg October 31, 2018

    1. 刑事訴訟される怖れがある?
    上記の記事について、一部の翻訳がネットにあったので一部引用します。

    (引用始め)
    米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、米証券取引委員会(SEC)による会計調査が拡大していると明らかにした。この発表で株価は9年ぶりの大幅安に見舞われ、ラリー・カルプ新最高経営責任者(CEO)にとっては厳しい船出となった。

    GEは30日、カルプCEO就任後初となる決算とともに、電力設備部門で計上した約220億ドル(約2兆4900億円)の費用についてSECの会計調査が広がっていると発表。同社が1日に明らかにしていたこの減損処理に関しては、米司法省も調査している。
    (中略)
    特に懸念されるのは司法省の関与だ。ブルームバーグ・インテリジェンスの法務アナリスト、ホリー・フラウム氏は、「事態は一段と深刻になっている」と述べた上で、「SECは民事提訴できるが、司法省は刑事訴訟を起こすことができる」と説明した。
    (引用終わり)

    相田です。昨年の12月にGEは、保険事業の焦げ付きで1兆円の赤字を出し、証券取引委員会(SEC)の会計調査が続いています。実はアルストムの「のれん減損」があまりに巨額なため、SECの調査が火力事業部のGEパワーにまで拡大した。それだけではなく、司法省(the Department of Justice)も、GEパワーの会計状況の調査を始めたというのです。犯罪の可能性があり、下手をすると不正会計による告訴も想定されるとのこと。だんだん大事(おおごと)になってきました。

    2. HAガスタービンの損傷トラブルは「ディープ・インパクト」だ。
    英文記事の和訳されていない箇所の、気になった記載の一つを引用します。

    (引用始め)

    The power unit’s difficulties will “persist longer and with deeper impact than expected,” Chief Financial Officer Jamie Miller said on a conference call Tuesday. As a result, GE will miss its full-year target for cash flow by a significant amount, she said.

    (引用終わり)

    今回の2兆円の赤字は、火力発電部門のGEパワーで生じたものです。GEの最高財務責任者であるミラー女史という方が、「火力発電部門が抱える問題の解決には、予想以上の困難が伴う」と発言したと、記事に書かれています。ミラー女史は、状況の深刻さを“deeper impact”と述べています。

    具体的な問題については、記事では触れていません。でも、私が思うに、“deeper impact” とは、HA型ガスタービンのブレード翼の損傷を指す筈です。ブレードのトラブルにより、エクセロンのコロラドの発電所と、フランスのブシャン発電所でもHAタービンは稼働を停止しました。でも、部品交換をしてタービンを動かせば解決する訳ではありません。

    HAタービンを納入する際にGEは、数年間は発生するタービンの修理、補修の費用を、全て負担する長期間の保険契約(LTSA)を、電力会社との間で結んでいます。今回のような想定外のトラブルによる停止が起きると、保障期間中の費用をGEは全て負担しなければなりません。場合によっては、修理費の他に、代替で動かす旧式発電設備の燃料代も含まれます。

    これらのLTSA契約により生じる、負担金額の総額が、GEは測りきれてないのだと私は思います。“deeper impact” とは、このことだろうと考えます。

    3. 発電事業は二つに分けられる

    現CEOのカルプが発表した最初の対策は、発電事業を担当するGEパワーを分割することです。具体的には、収益性の高い(と予想される)ガスタービンを中心とする部門と、「それ以外」の事業に分けると。後者の「それ以外」には、蒸気タービン、原発、送電、変電事業、等が含まれます。アナリスト達の間では、収益の悪い後者の部門をまとめて売却するつもりだろう、と噂されているそうです。

    この辺から私の最も興味がある話につながるのですが、私の予想では、GEからスピンオフした発電事業部門は、どこかの投資会社を一旦経由した後に、東芝と合併すると思います。最早言うまでも無いのですが、東芝の重電部門の技術はGEの完全なコピーです。何から何までコピーです。GEから手取り足取り教えてもらった技術なので、何の問題も無く、くっ付ける事が可能です。

    そんな不採算の事業を押し付けられても、東芝も引き受けるはずがないと、普通は考えます。が、多分東芝は受けます。何故ならば、今のGEには金がありませんが、東芝は金を持っています。半導体事業を売って儲けた2兆円があります。不採算事業を切り離した後でも、GEにはその部門を退職したOBへの年金の支払いを考える必要があります。しかしGEには年金を払う余裕が最早ありません。

    スピンオフした重電事業に、GEは年金の支払い枠をかなり乗せて東芝に引き渡し、東芝の2兆円を注ぎ込んで補填する、年金が増えてめでたしメデタシ、という筋書きだと、私は予想しています。なんといっても、GEの鶴の一声でウェスティングハウスの原発を買ってしまった東芝ですから、最後までGEに尽くして終わるのではないでしょうか。

    展開がますます楽しみになって来ました。

    相田英男 拝

    タイトル
    いよいよこれからが本番だ
  27. 相田英男
    2018-10-25 12:24

    相田英男です。

    トランプ大統領の横槍により、シーメンスがイラクで進めていた発電所建設事業の半分を、GEが受注することになりました。これについて、JPモルガンのアナリストの、“セルジオ越後”ではなくて、スティーブ・ツサが、相変わらずの辛口でコメントしています。

    ツサによると、今回の取引は事業金額は大きいものの、GEが得る利益は、期待される程に大きくはない。何故なら、蒸気タービン等の利益マージンの小さな装置がほとんどで、利益率の大きなH型ガスタービンの受注には未だに至っていない、ということです。イラクとGEとの契約内容の詳細が明らかではないが、おそらくは、イラクの発電所建設がGEの株価低迷に、歯止めをかけることはできない、とツサは言っています。

    それよりも、H型ガスタービンのトラブルによる停止の、株価へのネガティヴな影響が未だに大きい、とのこと。

    発電所の設備は何でも作れば良い、という訳ではなく、利益が大きな設備とあまり儲からない物があります。イラクで作るのは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わた、コンバインドサイクル設備(GTCC)のようです。ガスタービンを納入すれば、高温部品を頻繁に交換する必要があるため、末長い補修費用(LTSA)による売り上げが見込めます。

    一方で、蒸気タービンを受注しても、図体がでかくて作るのに手間が掛かる割に、点検の部品交換の頻度が少ないのです。ガスタービンのような超高温下で、部品が使われる訳ではないので。部品を交換する時も、装置が馬鹿でかいので、ガスタービンよりも手間暇が掛かります。だから、あまり部品交換が必要ないように、最初から作られているのです。

    シーメンスにも意地があるので、ドイツ政府と連携して、本命のガスタービンの受注だけは、絶対にGEに渡さないように、頑張ったのだと思います。トランプは、「この間の戦争で何千人もアメリカ兵が死んだんだぞ、インフラ建設の美味しい所だけ、ドイツに持っていくとは何事だ」みたいな剣幕で、イラク政府を脅したみたいです。けれども、GEがもらえたのは、結局はマージンの少ない装置や水処理施設などの、どうでもいい周辺設備だけになりそうだ、とのことです。

    (引用始め)

    GE-Iraq Deal May Not Be What It Seems Despite Trump Pressure
    APARNA NARAYANAN
    Investor’s Business Daily, 10/22/2018

    General Electric (GE) and Siemens both signed agreements for power generation in Iraq, after the Trump administration reportedly intervened on behalf of the American industrial conglomerate’s GE Power unit.

    GE announced Sunday it had signed “principles of co-operation” to add up to 14 gigawatts of power generation capacity, with 1.5 GW set to come online as soon as next year. Siemens said Monday it had entered into a “memorandum of understanding” to add 11 gigawatts of power generation capacity in four years.

    But analysts at JPMorgan called the GE Iraq deal a “vague collection” of conversions, services and upgrades, mainly of low-margin steam turbines, with projects involving the advanced H-frame gas turbines yet to be decided.

    In addition to the deal’s terms, the language of GE’s statement was “vague” while that of Siemens was “more firm, “JPMorgan analyst Steven Tusa said in a note Monday, noting both involved “unrelated throw-ins” like water treatment units.

    “It appears GE does not have entitlement to the large frame turbines, despite a rich legacy of installed base in Iraq, and despite the well-publicized intervention of the U.S. government,” he wrote.

    (引用終わり)

    相田英男 拝

    タイトル
    GEがイラク発電所建設に参画しても、株価上昇への御利益はなさそうだ
  28. 相田英男
    2018-10-23 07:40

    相田英男です。

    あれほど問題が噴出しているにもかかわらず、最近のGEの株価は、11ドルから12ドルくらいに、セコく上がり続けています。何ですぐに株価が暴落しないのか不思議でしたが、理由の一つを説明する記事を見つけました。

    (引用始め)
    Iraq lines up GE and Siemens for power infrastructure work
    Reuters October 21, 2018

    BAGHDAD, Oct 21 (Reuters) – Iraq has signed agreements with General Electric and Siemens (SIEGn.DE) over potential deals to develop the country’s power infrastructure, the electricity ministry said on Sunday.

    Siemens had been favourite to win a contract to supply 11 gigawatts of power-generation equipment in a possible $15 billion deal, though the Financial Times reported on Wednesday that the German group may have to share the work with U.S. rival GE after pressure from U.S. President Donald Trump’s administration.

    An Iraq electricity ministry official confirmed there had been pressure from the United States.

    “We received key offers from Siemens and then General Electric to revamp Iraq’s power sector … the pressure by the Americans was heavy,” the official said without elaborating.

    (引用終わり)

    ことしの始め頃に、ドイツのシーメンス社は、イラク政府との間に発電所の建設事業について合意したと。総発電量は11ギガワットで、事業費用は15億ドル(1兆5千億円くらい)の大型プロジェクトです。

    ところが今になって、トランプ大統領が、建設工事の幾ばくかをアメリカの電気会社に、当然GEになりますが、渡せと、イラク政府に強く要望したと。それで、イラク政府は止むを得ず、工事をGEとシーメンスの両方に分けることに、合意したという話です。

    別の記事によると、ドイツ産業連盟という組織のディレクターが「国際企業間の経済交渉に、アメリカ・ファースト・ドクトリンを持ち込むとは何事だ!?」と、怒って抗議したみたいです。「アメリカ・ファースト」の言葉の使い方が間違っている気もしますが、それはさておき、どんな手を使っても、アブク銭を手に入れたいんでしょうかね?あのかつての栄光のコングロマリットは。

    「電気新聞」によると、北海道電力の石狩湾発電所のLNG発電所が運転を開始した、と書かれていました。冬場の電力不足解消が期待される、とか言ってました。まだテスト運転の段階らしいですが。一方で、アメリカでGEのHAガスタービンがトラブル停止したニュースは、全く書かれていません。9月初旬までの電気新聞のバックナンバーを辿って見ましたが、トラブルの記載は全くありませんでした。

    GEのHAタービンのトラブルは、海外電力業界の最大の話題の筈です。が、電気新聞には全く書かれていない。おそらくは、ヤバくて書けないのでしょう。HAタービンのトラブルの話を書いてしまうと、石狩湾のHAタービンは大丈夫なのか?と、当然、自ら新聞に書かなくてはいけませんから。ヤブヘビですね。

    石狩の方は、停止したエクセロンのHAタービンとは、コーティングのタイプが微妙に異なる、とか、3年間の稼働は持たないけど、毎年ブレードを全数交換すれば大丈夫だ、とか、何か異常があったらGE御自慢のIoTシステムの「プレディックス」ですぐに検知できる、とか、色々と電力会社を煙にまく説明を、GEは北海道電力にしていると思います。その辺を是非知りたいですね。

    アメリカで停止したエクセロンのプラントでも、タービンの運転状況を「プレディックス」でモニターしていた筈です。なのに運転を停止してから、コーティングが剥離した事に目視(もくし)で気付いたんですよね。「プレディックス」とやらも、呪い(まじない)程度にしか役に立たないんじゃないでしょか。

    中部電力と東京電力も、HAタービンを発電所に入れています。停止したニュースは報道されていないので、点検せずに動かし続けているのでしょう。GEからは、詳しい技術説明は受けているとは思いますが、中部電力も東京電力も、ヒヤヒヤものではないかと思います。もしかすると、「迂闊にタービンを停めるんじゃない」とか、トランプ大統領にクギを刺されているのかもしれません。

    相田英男 拝

    タイトル
    大統領の口ききでセコく稼ぐあの会社
  29. 相田英男
    2018-10-19 12:32

    相田英男です。

    下の投稿に関係しますが、三菱日立パワーシステムズから、発表があったそうです。

    (引用始め)
    中国の三門原子力発電所1号機での引き渡し調印式を完了
    MHPS製54インチ最終段動翼を採用したタービン発電設備が中国で初稼働
    2018年10月12日

     三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、中国の三門原子力発電所1号機に納入した蒸気タービン発電設備について、必要な機能試験、安全確認試験および性能試験の全項目をクリアし引き渡しました。10月11日に顧客である三門核電有限公司との引き渡し調印式を完了しました。日本国内の原子力発電所で十分な実績があり、当社の主力モデルである54インチ最終段動翼を採用したタービン発電設備を備える原子力発電所が、初めて中国で稼働しました。

     三門1号機は、本年4月末に燃料装荷を開始し、8月半ばに100%出力に到達しました。9月21日に中国政府要求の168時間連続実証運転をクリアし、9月29日に性能試験を完了しました。また、125万kW加圧水型軽水炉(AP1000)の初号機となるため、原子炉側とタービン側とのインターフェースについても十分な事前検証を実施するとともに、きめ細かいプロジェクト管理と緊密なコミュニケーションにより、無事に営業運転に至りました。なお、後続する三門2号機は、9月30日に100%出力に到達し、営業運転に向けて試運転が順調に進捗しています。

    (引用終わり)

    中国の三門原子力発電所とは、東芝&ウェスティングハウスが受注した、あのAP1000のことです。アメリカでは、見るも無残な失敗に終わったAP1000の建設ですが、中国では立派にやり終えたようです。日本の報道では、AP1000は作るのが無茶苦茶大変だ、と盛んに言ってます。が、中国はあっさり作ってしまった。アメリカは屁理屈ばかりこねるけれど、単に作るのが下手くそだっただけです。

    中国にAP1000が出来つつあるのは知ってましたが、蒸気タービンはどうするのか、私は全く気にしていませんでした。ところが東芝ではなくて、MHPSが作っていたのですね。ウェスティングハウスのPWRには、三菱製の蒸気タービンを付けるのがセオリーだろうとは、確かに思いますが。しかしこの話は、全く日本のニュースでは報道されません。電力業界御用達の電気新聞だけが載せてましたけど。朝日も毎日も日経も、中国の原発には全く関心がない様子です。九州電力が、太陽光発電を送電線から一時遮断する話は、「すわ大事件だ!!」とばかりに報じてますけど。

    東芝がアメリカで大失敗した新型の原発が、中国で何の問題もなく建設されて、稼働する。その中核装置の一つの蒸気タービンを、三菱-日立の合弁会社が受注して建設を完了した。これって、原発反対派の皆さんには、どうでもいい話なのでしょうか?福島事故の反省も十分でない中で、海を隔てた隣国で新型原発が次々に建設されつつある。その際に、日本の技術が必要とされて、実際に製品が使われているのです。

    これって、「福島事故の原因が未解決の状況で、原発が海外に輸出される」というパターンに、ドンピシャはまってる気がするのですが。それとも、原発の炉心を含む本体の輸出には問題がある。けれども、蒸気タービンは放射線を出す設備では無い。だから別に騒ぐ必要はない、という理屈なのでしょうか?

    じゃあ、これから日本のメーカーは、中国やロシアが諸外国に原発を売り込むのにくっついて、原発と一緒に蒸気タービンだけをバンバン納品すればいい訳だ。GEがエジプトでやるみたいに。蒸気タービンだけでも、それなりの売り上げは稼げますからね。万が一事故が起きても、蒸気タービンなら、深刻な事態にはならないですし。

    でも、果たしてそれでいいのか、とは、誰も思わないのでしょうか?

    まあいいか。日本が蒸気タービンを作らなくても、中国はGEかシーメンスに頼めばいい話ですからね。ちなみに、GEがエジプトの原発に納入する蒸気タービンは、アメリカ製ではなく、フランスのアルストムが開発したやつみたいです。せっかくアルストムを買収したのだから、少しでも元を取らないと、とGEも焦ってるようですが、焼け石に水と思いますけど。

    タイトル
    中国のAP1000の蒸気タービンは、実は日本製だった
  30. 相田英男
    2018-10-11 12:18

    相田英男です。

    本件もGE絡みですが、重掲にGE話ばかり載せるにもアレなので、こちらに載せます。

    GEネタは今が旬の真っ盛りです。私にとっては東芝が潰れる時よりも、GEの方が重要問題です。GEこそが本家であり、東芝は所詮は、GEの東アジアの出先機関にすぎません。分家よりも本家のイザコザ話の方が、スケールも大きく百倍も面白いのです。

    さて、以下のブルームバーグの記事ですが、エジプトに作る予定の原発用の蒸気タービンの製造をGEが受注した。それで、700億円の売り上げにつながるだろう、との話です。パッと見たときに、「エジプトの原発? はっ? 何それ」と疑問を感じました。とりあえず、記事の抜粋を引用します。

    (引用始め)

    GE Says It Wins $700 Million Order for First Egypt Nuclear Plant
    Salma El Wardany
    BloombergOctober 9, 2018

    General Electric Co. secured a $700 million contract to supply turbine and generator units for Egypt’s first nuclear power project, the company said.

    GE will supply four turbine units for the country’s planned 4,800 megawatt El Dabaa nuclear facility, it said Tuesday in a statement. The company will deliver one turbine each year from 2023 until 2026, and the units will begin operating at the rate of one per year from 2026 until 2029, Michael Keroulle, chief commercial officer for GE’s Steam Power business, said in a phone interview.

    The contract was awarded by AAEM, a joint venture between GE and Russia-based Atomenergomash that will design and supply the turbine system for the reactor, GE said in an emailed response to questions.

    Egypt, with an expanding population of more than 95 million and vast energy needs, wants to diversify its energy sources. In addition to building a nuclear plant, the country has said it wants to boost capacity to generate solar and wind power. The North African nation, which currently relies on oil and natural gas for more than 90 percent of its power, targets producing 20 percent of its electricity from renewables by 2022.

    “Egypt has tremendous energy needs, and growth comes with higher energy consumption,” Keroulle said. “It’s starting projects in coal, nuclear and renewable energy, in addition to the existing gas and fuel projects, which adds security, sustainability and predictability in its energy sources.”

    (引用終わり)

    昨年報道されたみたいですけど、エジプト政府がエネルギー資源の分散化の目的から、原発の導入を決めた、と。それで、コストとかの観点から、西欧、日本製ではなく、ロシアから原発を買うことにしたそうです。ロシア製とはいえ、出力120万キロワットと大型の、最新モデルです。VVER1200という第三世代プラス型のPWRで、ウェスティングハウスのAP1000のように、上から水が落ちたりはしないようですが、溶融した炉心を受け止めるコアキャッチャーを、底部に付けており、安全性も高めています。原発を4機作って、蒸気タービンをそれぞれに4つ付けるそうです。

    それで、原発の本体はロシア製なのだけれども、蒸気タービンの方はGEが作る事で、エジプト政府と合意した、という話です。

    何も考えずにこの記事を読むと、「GEは、火力のガスタービンがトラブルで不調でも、原発の蒸気タービンを受注して盛り返すつもりなのか、さすが、スマートな戦略だよな」と思えます。が、よく考えるとこの記事は、ツッコミ所が満載です。

    そもそもBWR型原発の開発会社であるGEが、何で他社の原発の、よりによって、仮想敵国(だった筈)のロシア製の原発の、蒸気タービンの製造だけを、下請けとして担当するのでしょう?自らが開発した第三世代、及び第三世代プラス型の新型BWRを売り込めば良かったのではないでしょうか(自分でBWRを作れない事は、わかってますけどね)

    しかし、アメリカの誇りだった天下のGEが、ロシアの原発の下請けに回るとは、何ともはや……時代は変わった、というか、全くもってダサい会社に落ちぶれた、というべきか…

    ついでに日本では、原発反対派が、おしなべて「福島原発事故が起きた原因が、十分に解明されていない状況で、外国に原発を輸出するなど許されない」と、叫びまくっています。そうすると、今回のGEの対応は、許されるのでしょうか?三菱重工や日立が代わりに、エジプトに蒸気タービンを売ったりしたら、袋叩きに会うことは必至ではないでしょうか?

    「フクシマの責任取れとか言っても、日本人が勝手に叫んでいるだけで、別にアメリカ人の俺たちには関係無いぜ」で、反対派は済ませて良いのでしょうか?そもそもが、福島第1原発を作ったのは、GEだったというのに。原発反対派も、日本のメーカーや電力会社に対しては散々文句を言えても、アメリカの会社には、英語でしゃべるのが面倒なので、文句が言えない、のでしょうか?

    まあGEに向かって「福島の原因がはっきりするまでは、蒸気タービンを外国に売るな」と追及したところで、「事故の原因は、とっくの昔に解明して、詳しい社内レポートに纏めてるんだよ、見せてないだけで。フクシマは俺たちが作った原発だから、一番よく知っとるわ」とか、言い返されるのがオチだとも思えますが。日本の間抜け連中が作った「四大事故調査報告書」よりも、遥かにレベルが高くて正確な内容の「GE福島事故調査報告書」が、当然あるでしょうからね。絶対に外には見せないでしょうけど。

    ついでにGEは、日立製作所と一緒にイギリスに原発を作る件について、一体どうするつもりなのでしょう?あの原発は日立単独ではなくて、GE-Hitachi Nuclear EnergyというGEと日立の合弁会社(日本での略称はHGNE)で作る筈です。プラント施工はベクテルと日揮が担当する予定でした。が、先日ベクテルが、実作業の方から抜けたいと、泣きごとを言い出しました。かなりヤバイ展開になってます。

    ベクテルも、GEが金持ちだから信用して、原発のコンソーシアムに加わった。でもGEが短期間でここまで落ちぶれるとは、想定していなかった。なので、弱音を吐くのも仕方ないと思います。もしもGE-Hitachiが原発をやめると、イギリスもやむを得ないので、他を当たるしかありません。ロシアとイギリスは何かとキナ臭い関係なので、頼むとしたら中国でしょう。すると、中国は待ってましたとばかりに、華龍1号(ファールン1号、中国製の輸出仕様第三世代型PWR、現在中国内で初号機を建設準備中)の売込みにかかるでしょう。その時にGEはまた、華龍1号の蒸気タービンの下請けを受注して、セコく稼ぐつもりなのでしょうか?だとすると、さすがはGE、あまりにも遠大すぎる戦略という他ありません。

    地味に蒸気タービンを売って小銭を稼ぐなんていう商売など、投資家はGEには期待していないと、私は思いますけどね。

    相田英男 拝

    タイトル
    あんまりセコイ商売などするな