原発が危ないなら管理して動かせば済む話

相田英男 投稿日:2023/02/21 22:44

相田です。

引用文の著者については、説明の必要はあるまい。いつもの「古賀節」で、反原発をカマしているのだが、今回はつっ込ませてもらう。

まず古賀氏は、「安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃」と書いている。ここに、最初の古賀氏の事実誤認がある。「安倍首相でもできなかった」のではない。安倍が重用した、経済産業省出身の周囲のブレーン達が、原発の再稼働を阻止したのだ。経済産業省の官僚達は、原発の再稼働をどうしても東電にやらせたくなくて、それによって、東電をさっさと潰して、電力利権を自分達に取り戻したいのだ。古賀氏も元経済産業省出身の官僚なら、その辺りの経産省の思惑は知っているだろう。知らないのならば、あなたは頭が悪すぎる、か、カンが悪すぎる。それだけだ。

さて古賀氏は、「原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器と、これを覆う格納容器は交換できない」と書いている。古賀氏の説明を逆に言えば、だな、圧力容器と格納容器以外の、ほぼ全ての原子炉の部材は交換が可能だ、ということだ。現に蒸気発生器(PWR)とか、シュラウド(BWR)とか、ポンプとか、その他の配管一式全て、などの原発の部品については、実際に現地サイトで新品に交換された実績がある。

確かに、圧力容器は大き過ぎて、交換はできないだろう。だけども、壊れるメカニズムを詳細に解析して、割れにつながる窪みや切り欠きの寸法を、実機で正確に測っている。割れの進展を加速させる中性子照射量は、実機にミニチュアの金属試験片を入れて、定期的に取り出して調査して、照射量のモニターを続けている。要するに、交換できる部品は全て新品に取り替えましょう。交換できない部品は、慎重に調査を継続しながら、運転を続けましょう、というスタンスなのだ。だから継続運転が可能と、規制委員会は判断したのだ。委員の一人を除いて、であるが。

ちなみに、共産党員の金属材料研究者で、井野博満(いのひろみつ)という方がおられる。井野先生は以前から、日本で使われる圧力容器の強度を計算する際の、数式が誤っている、と主張し続けている。本当の処は、材料強度屋でないとわからない。しかし、原子力規制委員会で認めている計算式は、アメリカの原子力規制委員会(NRC)が採用した数式が基本である。そのNRCの数式は、米国機械学会(ASME、アスメ)で長年にわたり議論されて決められた、強度計算式が元になっている筈だ。井野先生も、ASMEの技術者達が、膨大なテストデータを元に定めた強度計算式の、どこに問題があるのかを、はっきりと説明して頂けないか、と、かねがね私は思っている。

さらに古賀氏は「石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを、知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら、規制委の存在意義はない」とまで書いている。

ここにも、古賀氏の事実誤認がある。石渡先生は規制委員会では、地震や津波の審査を担当する委員である。が、石渡氏は岩石研究の専門家であって、地震や津波の研究の専門家ではない。地震や津波の専門家は、石渡先生の他にも大勢いる。ただその方々は規制委員ではない、というだけである。石渡先生が運転期間延長に反対を貫いた理由は、彼が地震の専門家だからではなくて、地団研のメンバーだからだ。科学的な判断に、政治的心情を持ち込む人物だからだ。

ちなみに古賀氏は、引用文の最後でプレートテクトニクスの話を持ち出して、日本の原発の危険性を述べている。トルコのプレートがどうのこうの、とか言って読者を煽っている。しかし私は問うが、古賀氏が専門家として、絶大な信頼を置いている石渡先生は、プレートテクトニクス理論を本当に信じているのだろうか?私には大いに疑問である。御自身が心の奥底で信用していない地震発生のメカニズムを使って、「原発は危ない」と言われたところで、全く説得力がないように思えるが。

プレートテクトニクスを本当に信じているのかどうか、規制委員の石渡先生には白黒はっきりさせて頂きたい。自分自身が信用を置いていない原理を使って、「原発が壊れます、危ないです」と主張されても、「ひとをバカにしとるんか?」という、怒りと情けなさしか、私には感じられない。「地向斜造山論でも地震は起きる」と言われるならば、それでもいい。是非そのように石渡氏には明言して頂きたい。

最後に古賀氏に問いたいが、自分をクビにした経済産業省から、実はパシリに使われているという自覚が、あなたには無いのか?情けないとは思わんか?これまで、安倍元総理を散々非難して、バカにしてきた古賀氏であるが、安倍総理がブレーンにしていた、宿敵である古巣の思惑に、あなたはマンマと乗せられているのではないのか?それとも、最初から古巣とグルでやってるのか?こちらも白黒はっきりさせて欲しいものである。絶対にやらんだろうけどさ。

「国民は、この危機的事態に声を上げなければならない」と、古賀氏は最後に煽る。「原発が動いている関西や九州よりも、関東は電気代が高いのを、なんとかしてくれ」という、関東民の危機的な声など、古賀氏にはどうでもいい訳だ。

(引用始め)

危ない原発ほど延命される愚策 
古賀茂明

危ない原発ばかりが延命されると言えば、そんな馬鹿な、と思う。だが、現にそういうとんでもない法律改正に向けて、岸田文雄首相が原子力規制委員会の山中伸介委員長と二人三脚で、暴走を始めた。安倍晋三元首相もできなかった「40年ルール」の撤廃を目指しているのだ。

 3.11の翌年2012年に原子炉等規制法が改正され、原発の運転期間は原則40年とし、1回に限り20年までの延長を認めた。最長でも60年で廃炉だ。これが「40年ルール」である。政府が現在検討中の法改正案では、まず、原発の運転期間に関する定めを規制委所管の法律から経済産業省所管の法律に移す。原発推進官庁であり福島第一原発の事故を起こした主犯格の同省に任せること自体が驚きだ。さらに、「40年ルール」の骨格を維持すると言いつつ、実際には、規制委による審査などで停止していた期間を除外し、その分を追加的に延長できるようにする。規制委の審査で20年稼働停止していれば、60年を超えて80年まで運転期間延長が認められる。驚愕の改正だ。

 現在、管理体制に不備があったり、活断層の存在が疑われるなどの理由で、規制委の審査を通らない原発がいくつもあるが、この改正により、そういう「危ない原発」ほど長い運転期間が認められることになる。どう考えてもおかしい。

 40年ルールの根底には、どんな設備でも経年劣化により故障や事故が増えるという「常識」がある。原発では、「心臓部」にあたる原子炉圧力容器とこれを覆う格納容器は交換できない。特に、圧力容器は核分裂で生じる強い放射線の中性子線にさらされ金属材料が劣化する。古くなれば危ないと考えるのは当然だ。

 マクロン仏大統領が原発建設を推進していると報じられるが、その理由は、同国の原発の約半数が老朽化による金属劣化や補修予定により稼働が停止し、停電リスクが高まったからだ。原発の老朽化リスクが顕在化しているのがわかる。

 しかし、山中委員長は「原発の寿命は科学的に一律に定まるものではなく、規制委員会として意見を言う立場にない」として、ルール変更を容認した。原発の経年劣化を考えれば、安全性と運転期間が無関係というのはあり得ない。一方、5人の規制委委員の一人石渡明氏は「科学的・技術的な新しい知見に基づくものではなく、安全性を高める方向での変更とは言えない」と述べて反対を貫いた。科学者の矜持を示したのだ。

 大地震に襲われたトルコは複数のプレートの境目にあるが、日本も4つのプレートが境を接する国である。世界の地震発生地点を赤丸で示す気象庁の地図では、日本は真っ赤に染まり空白地点はない。この小国で世界の地震の10分の1が発生しているという。そんな国で原発を運転するのだから、念には念を入れてと考えるのは当然だ。石渡氏は、地震や津波の審査を担当する委員である。彼ほど、日本という地域がいかに危ないのかを知っている人はいない。だからこそ、老朽原発の運転期間延長に反対を貫いた。そうした専門家の知見を無視して多数決で押し切るなら規制委の存在意義はない。

 40年ルール撤廃でより危険な原発の再稼働が促進される。国民は、この危機的事態に声を上げなければならない。

※週刊朝日  2023年3月3日号

(引用終わり)

相田英男 拝