中国のAP1000の蒸気タービンは、実は日本製だった

相田英男 投稿日:2018/10/19 12:32

相田英男です。

下の投稿に関係しますが、三菱日立パワーシステムズから、発表があったそうです。

(引用始め)
中国の三門原子力発電所1号機での引き渡し調印式を完了
MHPS製54インチ最終段動翼を採用したタービン発電設備が中国で初稼働
2018年10月12日

 三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、中国の三門原子力発電所1号機に納入した蒸気タービン発電設備について、必要な機能試験、安全確認試験および性能試験の全項目をクリアし引き渡しました。10月11日に顧客である三門核電有限公司との引き渡し調印式を完了しました。日本国内の原子力発電所で十分な実績があり、当社の主力モデルである54インチ最終段動翼を採用したタービン発電設備を備える原子力発電所が、初めて中国で稼働しました。

 三門1号機は、本年4月末に燃料装荷を開始し、8月半ばに100%出力に到達しました。9月21日に中国政府要求の168時間連続実証運転をクリアし、9月29日に性能試験を完了しました。また、125万kW加圧水型軽水炉(AP1000)の初号機となるため、原子炉側とタービン側とのインターフェースについても十分な事前検証を実施するとともに、きめ細かいプロジェクト管理と緊密なコミュニケーションにより、無事に営業運転に至りました。なお、後続する三門2号機は、9月30日に100%出力に到達し、営業運転に向けて試運転が順調に進捗しています。

(引用終わり)

中国の三門原子力発電所とは、東芝&ウェスティングハウスが受注した、あのAP1000のことです。アメリカでは、見るも無残な失敗に終わったAP1000の建設ですが、中国では立派にやり終えたようです。日本の報道では、AP1000は作るのが無茶苦茶大変だ、と盛んに言ってます。が、中国はあっさり作ってしまった。アメリカは屁理屈ばかりこねるけれど、単に作るのが下手くそだっただけです。

中国にAP1000が出来つつあるのは知ってましたが、蒸気タービンはどうするのか、私は全く気にしていませんでした。ところが東芝ではなくて、MHPSが作っていたのですね。ウェスティングハウスのPWRには、三菱製の蒸気タービンを付けるのがセオリーだろうとは、確かに思いますが。しかしこの話は、全く日本のニュースでは報道されません。電力業界御用達の電気新聞だけが載せてましたけど。朝日も毎日も日経も、中国の原発には全く関心がない様子です。九州電力が、太陽光発電を送電線から一時遮断する話は、「すわ大事件だ!!」とばかりに報じてますけど。

東芝がアメリカで大失敗した新型の原発が、中国で何の問題もなく建設されて、稼働する。その中核装置の一つの蒸気タービンを、三菱-日立の合弁会社が受注して建設を完了した。これって、原発反対派の皆さんには、どうでもいい話なのでしょうか?福島事故の反省も十分でない中で、海を隔てた隣国で新型原発が次々に建設されつつある。その際に、日本の技術が必要とされて、実際に製品が使われているのです。

これって、「福島事故の原因が未解決の状況で、原発が海外に輸出される」というパターンに、ドンピシャはまってる気がするのですが。それとも、原発の炉心を含む本体の輸出には問題がある。けれども、蒸気タービンは放射線を出す設備では無い。だから別に騒ぐ必要はない、という理屈なのでしょうか?

じゃあ、これから日本のメーカーは、中国やロシアが諸外国に原発を売り込むのにくっついて、原発と一緒に蒸気タービンだけをバンバン納品すればいい訳だ。GEがエジプトでやるみたいに。蒸気タービンだけでも、それなりの売り上げは稼げますからね。万が一事故が起きても、蒸気タービンなら、深刻な事態にはならないですし。

でも、果たしてそれでいいのか、とは、誰も思わないのでしょうか?

まあいいか。日本が蒸気タービンを作らなくても、中国はGEかシーメンスに頼めばいい話ですからね。ちなみに、GEがエジプトの原発に納入する蒸気タービンは、アメリカ製ではなく、フランスのアルストムが開発したやつみたいです。せっかくアルストムを買収したのだから、少しでも元を取らないと、とGEも焦ってるようですが、焼け石に水と思いますけど。