風力発電の盲点 その①(その②は無いかもしれない)

相田英男 投稿日:2022/02/26 20:03

相田です。

世間の流行りはウクライナだが、私は地味に行く。

風力発電は反原発主義者達にとって、期待の星とも言えるシステムだ。ヨーロッパや中国で導入が先行しており、「日本も遅れるな」「日本政府はもっと政策支援すべきだ」などと、毎日のごとくネットで記事を見かける。

でも風力発電の技術は厳しい。機械の構造は極めて単純だ。要するに、歯車が組み合わさって、風車と発電機を回すだけである。しかし、単純なだけに、技術的には誤魔化しが効かない。超重量級の歯車がぶつかり合って、物理(機械)エネルギーを伝達しながら、10年以上も発電機を回し続けるのだ。しかも、風車の構造自体が、片持ちはりの、回転軸にモーメントが加わる形である。ちょっと考えるだけで、歯車や軸受に、強い負荷が掛かり続ける事がわかるだろう。

そして、引用記事にもあるが、風車の導入価格はコストダウンが著しい。安く作れば買う方はありがたい。が、そこには盲点がある。部品や設計コストを下げなけらばならない、という盲点が、だ。

当たり前だが、部品や設計の手を抜くと、故障の確率が高くなる。故障した部品は、洋上の100mを超える高所に存在するのだ。その修理には、海上に大型クレーンを新たに浮かべて、数十トンを軽く超える大型発電機やギヤシステムを、吊り上げる必要がある。修理をするスタッフも、大型船舶をチャーターして、風車の脇の洋上で、数十日間も過ごさねばならない。陸上なら毎日、宿まで往復出来るが、船中の寝泊まりは過酷である。

はっきり言って、原発の修理や定期点検以上に過酷で、高コストになるのだ。発電量とのバランスを考えると、明らかに風車の方が高コストである。

だから、風力発電システムを売る側は、メンテナンスの過酷さをあまりわかっていないか、知っていても、顧客に詳しく説明しないのである。

(引用始め)

この世界では、中国の躍進が目覚ましい。21年には、中国国内で4757万kWの風力発電容量を生み出し、そのうち1690万kWが洋上風力だ。企業のコスト競争力も強く、欧米勢でも苦戦しつつある。

日本でも富山県沖での洋上風力発電プロジェクトで中国企業の「明陽智能」(世界シェア6位)が発電ユニットを受注するなど、その存在感は高まるばかり。このままでは政府の思惑とは裏腹に、国内の洋上風力発電ビジネスが中国に牛耳られてしまう可能性さえある。

(引用終わり)

発電システムを安く買ったはいいが、保証期間(大概は2年)が過ぎて、ギアパーツが壊れ出してから、修理見積もりをとった。出された修理代がべらぼうで、文句を言うと、それっきり中国メーカーから音沙汰が無くなり、途方に暮れる、などと、ならないように、重々気を付けることだ。しっかりとした長期保証契約を結べば済むのだが。買い値が上がらなればの話だが。

もっと書く事があるが、あまり書き過ぎると、池田何某あたりにネタをとられそうなので、この辺にしとくわ。

(引用始め)

世界が注目する再エネの切り札! 「洋上風力発電」の開発競争に日本はどう向き合うべきか?
2/25(金) 6:00配信

(この記事は、2月21日発売の『週刊プレイボーイ10号』に掲載されたものです)

* * *

洋上風力発電が注目されている。政府は2040年までに最大で原発45基分相当の4500万kWを導入する方針だ。

風力発電はCO2を排出しない、原発のように核ゴミを出さない、太陽光と違い夜間でも発電できるなどのメリットがある。発電単価も急激な技術進歩で世界トップレベルならkWh当たり5円前後、日本国内でも同12~16円前後にまで下がっている。

特に無人の海上に建設される洋上風力は、長さ100m超の長大なブレード(羽)を回す空間の確保が陸地より容易だし、風車による低周波振動の被害を心配する人々の反対も受けにくいといった長所がある。領海の広さが世界6位の海洋大国ニッポンにとって、洋上風力はとても魅力的な電源になるだろう。

また、洋上風力は日本の成長戦略の柱になる可能性がある。どういうことか、説明しよう。

洋上風力には大きくふたつのスタイルがある。ひとつは海底に埋め込んで固定された構造物が風力発電の施設を支える「着床式」。水深50m以下の浅い海に適している。もうひとつが、海底に固定したアンカーでつながれた水上でプカプカ浮かぶ巨大な構造物が風力発電の施設を支える「浮体式」。水深50m以上の深さの場合、このスタイルになる。

国内で強い風が吹く海域は水深50m以上の深海が多く、日本の洋上風力では浮体式が有力だとされる。より広い海域で風力発電の建設が可能になるため、世界でもニーズが高まっている。とはいえ、浮体式は設置方法などの技術が完全に確立したとはいえず、世界の勢力図もまだ定まっていない。

そこで、日本政府は国内企業に浮体式の製造や設置の技術を磨いてもらい、日本の風力発電産業復活につなげることを狙っている。

だが、現実はそう甘くはない。そもそも、風力発電の世界シェアは欧米や中国などの海外勢に握られ、国内に風力発電の製造を手がける企業はほぼゼロになってしまった。昨年末に三菱商事が千葉県など3海域の洋上風力発電事業を落札したが、その発電ユニットを納入するのは米ゼネラル・エレクトリック社だ。

この世界では、中国の躍進が目覚ましい。21年には、中国国内で4757万kWの風力発電容量を生み出し、そのうち1690万kWが洋上風力だ。企業のコスト競争力も強く、欧米勢でも苦戦しつつある。

日本でも富山県沖での洋上風力発電プロジェクトで中国企業の「明陽智能」(世界シェア6位)が発電ユニットを受注するなど、その存在感は高まるばかり。このままでは政府の思惑とは裏腹に、国内の洋上風力発電ビジネスが中国に牛耳られてしまう可能性さえある。

日本政府は19年4月から「再エネ海域利用法」を施行し、洋上風力振興に乗り出したが、この程度では、日本の遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。

それでも私が「まだ期待できる」と考えるのは、発電ユニットの重要なパーツや素材を供給する「下請け」メーカーの存在だ。

日本には高機能なブレードや発電機を製造する企業が多くある。主契約者として洋上発電のメイン設備を納入できなくても、その中身はメイド・イン・ジャパンばかり、となれば十分に日本の成長戦略として成り立つ。そのためには、政府がもう一段本腰を入れて規制緩和などの政策的支援を強める必要がある。

●古賀茂明(こが・しげあき) 1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。

(引用終わり)

相田英男 拝