経済情報誌の記事はデタラメだ
相田英男です。
ダイヤモンドオンラインで、GEについてのコメントが出ていた。内容は、新しいCEOのカルプのリストラの効果で、GEの株価が大きく上昇しているというものだ。今後は火力発電事業から、再生可能エネルギーに経営の軸足を移して、復帰を模索している。日本のメーカーも、GEを見習って、リストラと事業転換を進めるべきだ。そうしないと、世界の流れから取り残されるだろう、と警告している。
はっきり言って、この記事の内容は、頭がおかしいのか、と思う。此の期に及んでまで、アメリカの肩を持ち続ける、提灯持ちの考え方に、私は唖然とせざるを得ない。
そもそも、根本的なところの理解が、この記事は間違っている。GEの株価が最近上がったのは、新CEOのリストラの効果などではない。JPモルガン・チェースの著名なアナリストである、スティーブン・トゥサが、昨年の11月の終わりだかに、GEの株価の今後の方向性を、ネガティヴからニュートラルに変更する、とコメントしたからだ。それ以来、7ドルを下回っていたGEの株価は、上昇に転じて、最近ようやく10ドルを超えた。
要するに、スティーブン・トゥサが「GEの株価はこれから上がる」と発言したので、株価が上がった、それだけのことだ。
スティーブン・トゥサのGE株価の予測はよく当たる。本当に当たる。かつて、GE株価が14ドル位の時に、トゥサが「GEの株価目標は11ドルだ」と言ったら、本当に11ドルまで下がった。昨年秋にCEOがカルプに交代した際に、トゥサは「6ドルまで株価は下がる」と言うと、本当に7ドル以下になった。あれには私は驚いた。GEの株価を日々追っていないと、わからない話なのだが。
あまりに予測が当たるので、日本で米国株をやっている個人投資家達の一部では「トゥサ尊師」とまで呼ばれている。ただし、GEの株価のみの限定予測なのが問題だ。
最近のトゥサ尊師の御告げでは、「目標株価を6ドルのまま据え置く」と仰った記事を私は見た、たぶん。なのでこれから、GEの株価はジリジリと下がり続けるだろう。トゥサの御告げも、別に適当な思いつきではない。司法省によるGEキャピタルへの会計調査は済んだものの、証券取引委員会(SEC)の調査の結論が、まだ出ていない。こっちは多分、相当に揉めている。HAガスタービンのブレードを毎年全数交換するのに、LTSAが黒字になる筈がないからだ。それ以外にも、まだまだ爆弾がGEには隠れているだろう。トゥサはその事を、よく知っているのだ。
この数年の間に、30兆円もの株式時価総額を減らした会社に、「復活の兆しが見えてくる」などとは、随分と暖かく見守っているではないか。東芝が一連の騒ぎで計上した損失を合わせても、数兆円に過ぎないのではないか?東芝の時は、やれ崩壊だ何だ、と、散々叩いた。その一方で、東芝の10倍以上の莫大な損失を出した、外国の会社の肩を持つとは、一体どの様な判断の基準なのか?経済情報誌のコメントとして、あまりにも理解に苦しむのは、私だけであろうか?
米国株投資家達の間では、GEはもはやボロクズの爆下げ株の筆頭だ。日々真剣に情報を追っている彼らの方が、よほど真実を見抜いている。
(引用始め)
1万人削減で株価上げたGE新CEOに立ちはだかるドイツの巨人
2/12(火) 6:00配信
低迷していた米ゼネラル・エレクトリック(GE)の株価が上昇に転じている。昨年、社外出身者として初めてCEO(最高経営責任者)に就任したローレンス・カルプ氏が、大なたを振るっているためだ。
カルプ氏は1月31日、2018年10~12月期決算会見で、火力発電への逆風で不振にあえぐ電力部門のリストラを断行していることを何度も強調した。
具体的な成果として、1万2000人のリストラ計画のうち1万人(電力部門人員の15%相当)を削減したことと、生産施設の3割を統廃合したことをアピールした。
さらに、今後の市場動向についてシビアな見方を示した。顧客に引き渡される世界の発電用ガスタービンの総発電容量は2000~15年の平均約70ギガワットから25~30ギガワットに落ち込み、当面回復しないという。
カルプ氏は「新たな現実に電力事業のコスト構造を合わせなければならない」と述べた。
こうしたネガティブな発表にもかかわらず、GEの株価は同日、12%も上昇し、翌日も続伸した。
株価急伸の背景には、損失発生リスクだった金融部門の住宅ローン事業をめぐる司法省の調査が同省との和解で決着したことによる安堵感がある。そして何より、そうやってリスクを切り離そうとするカルプ氏の経営姿勢が評価されたといえる。
● 再エネでの挽回が鍵
もっとも、電力部門などのGEの主力事業が輝きを取り戻すのは容易ではない。かつて成長分野に位置付けていた医療機器部門などを分社し、一部売却も予定されており、稼ぎ頭は減っていく。
再生の鍵になるのは火力から再生可能エネルギーへのシフトだ。
GEは決算前日、送配電網や蓄電システム事業を再生可能エネルギー部門に移行、統合すると発表。発送電や蓄電を含め電力流通全体を効率化するソリューション事業を伸ばす方針を明らかにした。
だが、風力など発電量が不安定な再生可能エネルギーを活用しながら電力を安定供給する技術では独シーメンスに一日の長がある。
しかも、GEには発電機などの産業用機器のデータを集め、解析するIoT(モノのインターネット)で成長を遂げる戦略が頓挫した苦い経験がある。
そうした厳しい条件をクリアし、再生可能エネルギーを核とした電力の最適化でシェアを奪還できれば、GE復活の兆しが見えてくる。
片や、日系企業はどうか。火力発電機器でGE、シーメンスと肩を並べる三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は人員削減も工場再編も小幅にとどまり、再生可能エネルギーなどへの事業転換も打ち出せていない。GEほどの派手な構造改革は難しいにしても、早めに抜本的な策を考えなければ手遅れになりかねない。
「週刊ダイヤモンド」編集部
(引用終わり)
相田英男 拝