地球の電気2
澤田正典です。会員番号2953です。今日は平成26年8月30日です。
つづき
この平衡状態は外部から破られる場合があります。太陽風は、水素原子と電子がバラバラのプラズマ状態で、高速の微粒子の集合として地球にやってきます。太陽風では内部において粒子密度に疎密があることはもちろんですが、電荷分布も疎密を持ちます。太陽風を構成する巨大な高速粒子の集合体のサイズに対して、地球の大きさは微々たるものですから、太陽風のうち地球に衝突した部分においては、構成粒子の電荷がプラスもしくはマイナスのどちらかに偏っていることが普通だと思います。(実際、太陽風の磁場の向きは北向き、もしくは南向きに偏ることが多いのですが、これは太陽風の高速プラズマ構成粒子の電気的な偏りの実在を示していると思います。)これにより地球の電気的な平衡状態が崩れます。地球は、偏って侵入してきた電荷を平衡状態に至るまで地球全域に分散させる必要に迫られます。
プラスの電荷に偏った高速の太陽風プラズマが地球にやってくると、まず北極と南極の上空の地球大気に衝突して、電離層においてオーロラを作ります。そして運動エネルギーを電磁波と熱のエネルギーに変換しながら、速度を落とし、電離層の一部になります。プラスの電荷の正体は、基本的に電子を失った水素原子なので非常に軽いため、粒子としてはこれ以上大気の奥まで進入できません。これにより電離層は全体として電荷がプラスに偏り、電離層の下面に集まります。(※ここでの電荷の移動は、荷電粒子自体の移動として行われます。電気回路において導体中を電子が移動するときの電流のイメージとは少し異なります。それよりも、静電気の移動と考えたほうがよく、帯電させたプラスチックの板やウールのセーターを手に持って移動するようなイメージのほうが近いです。これも電荷の移動そのものですから電流となり磁場を発生させます。)
地殻表面では、上空の電離層にプラスの電荷が強くなったことを受けて、大気電場の強度が上昇します。そして地面や海面からマイナスの電荷が電離層へ向けて上空へと引き寄せられます。このようにして、プラスの電荷は平衡状態へと向かう過程において必要な範囲で、電離層から地殻内部や海中に移動していきます。地殻内部には部分的に、電気を流しにくい絶縁体(誘電体)の性質の強い領域があるので、プラスの電荷の一部はそういった境界面に蓄積されます。なお、海水は地殻よりも電気抵抗がずっと小さいので完全に導体の扱いとなり、海底まですみやかにプラスの電荷が移動したあとで、そこから地殻内部にプラスの電荷が移されていきます。
このように、地球に過剰に加わったプラスの電荷は電離層から成層圏、対流圏、地殻へと地球全体に拡散されながら、全体として地球は次の電気的な平衡状態へと移行していきます。
つづく
澤田正典 拝