フラーの論考を読んで

宮林謙吉 投稿日:2021/05/21 09:00

相田さんが引用しておられるフラーの論考は、西欧の研究者が日本の研究者や技術者に対して抱く観点を説明したものですが、これは今や日本人研究者の中で科学の真髄に触れた人が中国の研究者の研究スタイルに抱く感想と似ているかも知れません。

中国の研究コミュニティは競争が激しいのか、身につけた技能で可能なテーマに手当たり次第に手をつけ、論文を出版した数を稼ごうとするスタイルが鼻につく研究者が実際にいます。結果を得たときに、ある世界観・自然観に照らして、それらが深まるために役割を果たし得る知見をもたらすかどうかを考慮して研究テーマの選択をする、というセンスが感じられないのですね。文化大革命で、アカデミックな活動をするコミュニティの、ある年代の層がごそっと抜けた断絶の影響であるかも知れません。

その中国は、もう10年以上にわたって、欧米や日本で研究歴があり、ひとかどの仕事がまとまった人を、ポジションを用意して呼び戻すことを続けていますから、サイエンスの研究に臨むときの世界観・自然観を体得した研究者もこれから増えてくることは間違いないでしょう。