あんましウソ技術を広めるんじゃない

相田英男 投稿日:2021/04/23 23:07

 相田です。

 私には、懐かしい味わいを感じる記事だ。でも、内容を良く読むと、脱力でげんなりしてしまう。

(引用始め)

核融合炉は日本では「次世代原発」として語られることが多いが、電力供給が止まれば反応が止まるため、従来の原子力発電に比べれば安全性は非常に高く、廃棄物も出ない。

(引用終わり)

 本気でこのように思っているのなら、筆者は完全に頭がおかしい、としか言えない。そうではなく、単に勉強不足なのであろうが。

 日本の核融合研究のメッカは、茨城県にある旧原研の那珂(なか)研究所である。イーター(ITER)という国際核融合実験炉を誘致する際に、実際に那珂研で核融合反応を起こしたらどうなるか、検証した。すると、D – T(デュユートロン:重水素 – トリチウム:三重水素)反応で生じた14MeV の高速中性子が、住宅街を突っ切って太平洋までバンバン到達してしまう、と、計算でわかったのだ。これではアカン、と、那珂研への誘致をやめて、六ヶ所村に切り替えた、という関係者達の逸話がある。結局イーターはフランスに行ってしまったが。私は大変セイセイしたよ。

 Googleマップで、那珂研と太平洋の位置関係を調べてみれば良い。核融合炉が稼働すると、その範囲全てが、大量の高速中性子にさらされるのだ。高速中性子は電荷を持たないので、物を置いて遮蔽する術(すべ)が無い。D – T反応タイプの核融合炉が稼働すると、その周囲に、JCO臨界事故の騒ぎとは比較にならない、桁違いの中性子による被曝を巻き起こすのだ。それが核融合炉の実態だ。少し頭を使えば、誰でも気づくのだが。

 そんな話は、少し前の技術者達は皆常識で知っていた。だから日本では核融合研究は廃れたのだ。Googleだろうがアマゾンだろうが、大金をいくら積んで研究しようが、自然界の摂理そのものは変えられない。素人投資家達からあぶく銭を巻き上げるための、ウソ技術として、核融合研究が吹聴されているのだ。

 勝手にやって、踊っとれ。アホども。

(引用始め)

次世代技術「核融合」、欧米と日本でこんなに違う扱い
4/19(月) 11:00配信 日本経済新聞

 米グーグルのほか、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが出資するのが、次世代原発の1つの形態である核融合炉開発だ。従来型の原発に比べて安全性は非常に高く、廃棄物も出ないが、日本ではこの技術を手掛けるベンチャー企業の境遇は厳しい。欧米と違って投資家の動きが鈍いからだ。

 ドーナツ形の真空容器の中に、セ氏1億度を超える超高温の重水素と放射性物質であるトリチウム(三重水素)を閉じ込め、原子をくっつけることでエネルギーを生み出す――。ここで起きているのは地球と1.5億kmも離れた太陽の内部で起こっているのと同じ反応だ。酸素がない宇宙空間で生じている反応であり、もちろん二酸化炭素(CO2)を排出しない。そんな太陽と同じ反応を地上で再現するのが核融合炉だ。

●グーグルやアマゾン創業者が出資

 米グーグルのほか、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが出資するのが、次世代原発の1つの形態でもある核融合炉開発だ。核融合炉は日本では「次世代原発」として語られることが多いが、電力供給が止まれば反応が止まるため、従来の原子力発電に比べれば安全性は非常に高く、廃棄物も出ない。

 この分野の研究は、日米中韓、欧州連合(EU)、インド、ロシアの7国・地域が共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)が約20年前に着手した。しかし、国家間の調整が進まないことからプロジェクトの進捗が遅れている。こうした現状を横目に、盛んになっているのが民間企業の動きだ。ここ数年で欧米中心に40~50社の関連企業が生まれている。

 「核融合発電に必要な機器を作ってくれないか」。欧米の核融合炉関連企業からそうした引き合いがくるのが、2019年10月に設立した京都大学発のベンチャー、京都フュージョニアリング(京都府宇治市)だ。核融合炉は、プラズマの中で核融合反応を起こす過程と、そこで発生する熱を取り出す過程から成る。京都フュージョニアは後者で利用する機器に不可欠な独自技術を持ち、共同創業者の小西哲之・京大エネルギー理工学研究所教授の研究成果がベースになっている。

 グーグルが出資する米TAEテクノロジーズやゲイツが投資する米コモンウェルス・フュージョン・システムズは数億ドルレベルの資金を投資家から調達している。一方、京都フュージョニアは累計調達額が5億円程度にすぎない。調達資金の規模には2ケタの違いがある。

●「海外ではチャンスでも日本ではリスク」

 背景にあるのが、重厚長大産業のベンチャーが育ちづらい日本の土壌だ。米国では電気自動車(EV)メーカーのテスラを筆頭に重厚長大産業で新しい会社が生まれているが、日本市場に目を向けると主要プレーヤーの顔ぶれはここ数十年代わり映えがしない。

 「海外ではビジネスの種と捉えられても、日本ではリスクとしかみられない」と京都フュージョニアの長尾昂CEOは嘆く。実用化は「50年以降」(小西氏)とみられている核融合炉。たしかに設立数年で大きな売り上げ、利益を上げるのは難しい。それが、米国では助走期間と解釈してもらえるのに対し、日本では「なかなか収益を上げられない会社」と見られてしまう。

 現状では、核融合を手掛ける多くの欧米企業は多くが最終製品メーカーであるため、技術が実用化されなければお金にならない。それに対し、京都フュージョニアはそれらのメーカーに機器を販売するBtoB(企業向け)事業を手掛けるので、実用化以前でも売り上げは立つ。それでも、日本で活動していると投資家の目は厳しいのだという。

●民間の動きが鈍い日本

 これと似た現象が先行して起きているのが宇宙産業だ。米国の宇宙産業は当初、国が主導して進められていたが、近年では専門のベンチャー企業が生まれ、IT関連企業との連携も進み、民間主導へ移行した。一方、日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とする国主導の形態は変わらず、米スペースXのような中核企業は育っていない。日本の宇宙産業の市場規模は数千億円。米国と比べると2ケタ違う。民間の動きは鈍い。

 エネルギーの分野は日々革新が進む。ただでさえハードルが高い2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)を実現するには、イノベーションや大規模な資金は欠かせない。日本の産業界、投資家が及び腰のままでは、世界競争の中での成功はおぼつかない。

 「脱炭素」に関して、日本の政府が企業の研究開発を支援するために創設した基金は、今後10年間で2兆円だ。4年間で2兆ドル(214兆円)を投じる米国や、約30年間で水素戦略だけで4700億ユーロ(約60兆円)を投じる欧州連合(EU)に、大きく水をあけられている。

 もっとも、国が巨額を投じるだけではイノベーションは生まれない。国が新たな市場の立ち上がりを支援しながら、米国のように民間企業に資金が回るような土壌づくりが不可欠だ。

中山 玲子

(引用終わり)

相田英男 拝