[962]フフホト通信(山東省青島市から)

石井裕之 投稿日:2012/05/16 03:09

中国の内蒙古自治区からフフホト通信を石井裕之がお伝えします。
前回の投稿で住居を山東省の青島市に移している最中だとお伝えしました。
この街は伝統的に朝鮮族(少数民族の一つで、韓国語を普通に話せる人たち)が多い地区としても知られています。大連と並んで、日本人に馴染みの深いところでもあります。
現地の人に聞いたところ、現在の青島市の人口は900万人足らずということです。北京や上海、天津や成都といった街と比べるとやや小ぶりではありますが、それでも大きな街であることには変わりありません。
青島駅(街の西外れ)から飛行場(街の北外れ)まで、地下鉄の建設が急ピッチで進められています。
現在ここには、仕事で滞在している韓国人が150万人くらい居るそうです。統計データはありません。また、日本人も40万人くらい滞在しているそうです。
今まで私の居たフフホトには、日本人が数十人しか居なかったことを思えば物凄い数と言えるでしょう。勿論、日本人会もありますし、日本人学校もあります。ちょっと驚いたのは、私は岡山県の出身ですが、何と岡山県人会があるということです。来月食事会がある、ということなので、ちょっと覘いてこようと思っています。

街の中には御他聞に漏れず超高層ビルが立ち並んでいます。しかし、上海や北京と違ってどこか懐かしい雰囲気を醸し出しているのです。ビルの配置が北京のように無機的ではなく、地面の起伏と上手くバランスを取っているように観えるからでしょうか。例えて言えば日本の「神戸」の雰囲気ですね。北から迫る六甲山と南に広がる瀬戸内海の間で、東西に細長く街を横たえているその姿に、ここ青島の街並みは実に良く似ています。

海産物が新鮮で美味いのも欠かせません。今、海鮮市場に行くと鰆が並んでいます。400円/kgくらいの値段です。刺身にすると本当に旨いですね。大降りの岩牡蠣やサザエも沢山あります。内蒙古では肉料理が中心だったため、ここに来ると天国のようです。

この時期の気温は24度/15度で、非常に過ごしやすいですね。年間降水量は1000ミリくらいとのことですから、日本と比べると雨は少ない地域と言えるでしょう。夏も日本ほどジメジメしていない、とのことです。

街の至ることろで、HSBC(香港上海銀行)の店舗やATMを見掛けます。
HSBCと言えば、日本では先ごろプレミアム口座を撤退してしまいました。昨年の3月11日の地震災害の件が響いているのだろうな、とは思っていたのですが、最近日本と同時期にお隣の韓国やタイからもHSBCが撤退している、という事実を知りました。
理由はというと、「地政学リスク」を嫌ってのことらしいのです。
韓国は北との緊張が高まっています。タイは洪水が相次いでいます。
では、日本は?
やはりイギリス本部の判断は自然災害と放射能汚染を念頭においているのでしょうか。

私はHSBCの日本での成績不振と昨年の地震が重なって撤退の決断をしたのだと思っていたのです。事実去年の3月11日以降、東京からは外国人スタッフは全員居なくなったそうですから。
しかし、口座の新規開設申し込みは増加傾向にあったそうです。日本のエリートサラリーマンなどが、日本と香港にそれぞれ口座を開設し、自身の現金資産を避難させるのにHSBCのプレミアム口座が一役買っていたようなのです。ですから日本のプレミアム口座の撤退問題が出たころ、東京と香港ではさかんに反対したそうですが、本部の意向には逆らえなかったようです。
このHSBCのプレミアム口座の撤退発表があった当日、政府は、日本からの海外送金の一回当りの限度額を200万円に引き下げたことを小さく発表しています。

恐らく数十億円規模以上現金資産をお持ちのお金持ちの人たちは、資産の分散管理を既にしていらっしゃることでしょうから、今回の措置に当たってもビクとのしないと思いますが、穿った見方をすると、一般庶民のカネの自由が奪われたように感じられるのは私だけでしょうか。

そう言えば、中国と仲の良いタイやベトナムへの日本企業の投資をミャンマーに向けさせるような働きかけを外務省や経産省が積極的に行っています。副島先生は2015年に中国がアメリカに替わって覇権を握ると、4月号の月間BOSSにも書かれていましたが、そうなると困る人たちが多いのもまた事実なのでしょう。

生意気なようですが、今こそ日本人は官僚の圧政から逃れる為に立ち上がるときのような気がします。中国や香港に手持ち資金を逃がすのも一つの方法でしょう。何があっても良いように、パスポートとビザ(査証)くらいは持っておきたいものです。外国人の友達を確保するのは基本中の基本だと言えるでしょう。
井伊大老や吉田茂が結んだ不平等条約は生半可なことでは覆りません。岩倉具視や大久保利通らがこしらえた官僚機構も、出来た当初から民衆不在なのですから今更そのことを嘆いても仕方ないと思うのです。
行政が一般庶民の為にしてくれることは何もありません。分別ある大人の嗜みとして、せめて最低限の逃げ道くらいは確保しておきたいものですね。