[945]中国の内蒙古から(フフホト通信)

石井裕之 投稿日:2012/04/17 15:34

内蒙古の石井から、「フフホト通信~番外編/黒龍江省通信」です。
先日、黒龍江省まで行ってまいりました。
日程は、3月26日から30日です。
当初は、2月に行く予定だったのですが、打ち合わせ先の都合で延びてしまいました。
添付ファイルの地図を御覧下さい。

今回、山東省の青島(チンタオ)から移動しましたが、先ず「哈??(ハルピン)」に飛行機で入りました。
それから夜行汽車で8時間ほど揺られて「佳木斯(ジャムス)」へ。
最後に高速バスで3時間少々掛けて「富?(フージン)」へ移動しました。
デジカメに写真を一杯撮って帰ってくる予定だったし、事実写真は一杯撮ったのですが、肝心のカメラを途中のホテルかタクシーの中に置き忘れてしまい、結局出てきませんでした。
街並みを今回は皆さんに送れません。

ハルピンは色々な国が実効支配した箇所なのでしょう。
フフホトと違って、古い(と言ってもせいぜい100年くらいだと思われますが)5~6階くらいの建物と最新の30階建てのビルが混在していました。街にはロシア人も多いのでしょう。ロシアの土産物屋が街中至るところに目に付きました。また、ロシア人ダンサーによる「夜総会(ナイトクラブ)」も多数有りました。生憎、妻と一緒だった為、生ロシア人を観ることは出来ませんでした。
ハルピンに住む中国人の中に、妙に色の白い、彫りの深い顔立ちの人も多少目に付きましたが、街中をロシア人がウロウロしているような様子では無かったです。
因みに、街中の一等地で25~30万円/m²(分譲マンション価格)だそうで、特に値段は下がっていないそうです。

ジャムスは通り過ぎただけなので、駅前の混沌とした雰囲気しか覚えていません。
大きな街ではないですね。感覚的にはハルピンの1/10くらいの規模の街でしょうか。

ジャムスからはバスで移動しましたが、道中目の前に広がる広大な黒土の大地が全て水田になっているのには驚いてしまいました。
このフージンという所は、人口が40万人程度の小さな町みたいですが、ここで1年間に生産される米の量は、何と中国の米の消費量の3年分に相当するとのことです。統計の裏付けはしていません。
試しに有機栽培の米を買って帰って試食しましたが、見た目は日本の米と変わりません。
甘みが無いので何とも言えませんが、中国の一般的な米に有りがちな臭いはありませんでした。

今回の出張の目的は、日本から導入した特別な有機栽培肥料(土地改良剤)を生産する工場の建設計画の話を、黒龍江省のトップとする、ということでした。
間に入ってくれていた人の話によると、政府が1億元の投資をしてくれるから、我々は1円の投資の必要も無い。技術だけ持ってくれば良い、ということだったのです。我々の提供する有機栽培肥料によって、中国全土の農業事情が良くなり、国民全体が健康で豊かになれるのなら、これほど有難い話はない、ということだったのです。

ところが道中で紆余曲折ありまして、結局のところハルピンでの打ち合わせではなく、上記の方法でフージンまで移動しての打ち合わせになってしまったのです。。
疲れ切った我々を、フージン市の招商局の役人が待ち構えていました。
黒龍江省のNO.3が、フージン市長に連絡して、そこから件の役人に連絡があった、ということです。
我々を出迎えてくれたのは主任クラスの役人です。
日本からわざわざ投資をする為に来てくれた、と思っている訳ですからゾンザイな扱いはないです。
延々と夜行列車や高速バスに連続して揺られ、フージンには朝の10時くらいに着いた訳ですが、そのままバスで直行していますから顔も洗っていません。
ネクタイを締める暇もなく打ち合わせに向かわされたのは非道い仕打ちでした。

一応の投資申請書類を提出すると、審査に1週間くらい掛かると言われました。
日本から来ているので、明日には帰らないといけないと言うと、超特急で対応すると約束してくれたのでホっとしていると、その昼食のときです。
昼食は件の役人がご馳走してくれました。そこへ後から遅れて現れたのが、招商局の局長でした。
我々の投資申請書を観るでもなく、「ここはあなたの来るところではない」というニュアンスのことを言うだけ言って立ち去ってしまいました。
結局、彼等が欲しているのは「工場」であり、地元民の就業機会を一気に増やすことの出来る施設であったのです。別に「健康」が欲しかった訳ではなかったのですね。
しかも、政府の助成があるとしても全額補償ではなく(考えてみれば当たり前ですが)、場合によって半分まで助成しますよ、でも固定資産に対してだけですし、その資産評価は政府がします、ということだったのです。

黒龍江省に行く前には、「政府を挙げてお招きします。直ぐに契約調印をして、その場に新聞記者やテレビ局も立会います。」という話だったのに、随分と落差が生じたものです。非道い脱力感で、帰りの道すがら妻との間にはお互い一言も会話が無かったほどですから。
そんなに上手い話がむやみやたらと転がっている訳ではないことを、改めて認識させられた一件でした。

久々の失敗です。
お恥ずかしい話ですが、恐らく私のようなお気楽な日本人が何度と無く非道い目に合っていることでしょう。
それもこれも確認不足が招くことですから、結局は自分が悪いのですが、日本人はそうは思わないことでしょう。
きっと、「俺は中国人に騙された」という結論に至るのだと思います。
只でさえ中国嫌いなのに、このようなことが起きると、二度と中国になんか行きたくない、ということになってしまうのでしょう。

ただ、収穫もありました。
このフージンの農民が皆豊かだということが判ったのと、広大な水田には農薬の空中散布まで行っているところもある、ということが判ったことです。
内蒙古の農民もそれほどヒモジイ思いをしていないということは判っていました。飢えに苦しんでいる農民というのを、私は今住んでいるフフホト周辺の農村で見たことがありません。皆豊かな食生活を送っています。
しかし、フージンはレベルが違っていました。
農民が普通に乗用車に乗っているのです。これにはタマゲテしまいました。
ここ中国では、家計収入が13万円/月くらいの家庭でようやく100万円クラスの乗用車に乗れるのです。
それが300万円クラスの乗用車をフージンの農民は購入し乗っている訳ですから、日本人の感覚だと、百姓が皆ベンツを転がしているような感じです。
フージンの米が、内蒙古のジャガイモよりも高値で売れるのと(当たり前ですが)、皆1000畝(1畝=6.66アール)くらいの農地を確保しているということですから金を持っているのも頷けます。日本で一反だ二反だと言って騒いでいる百姓に聞かせてやりたいです。

中国の「空」が、民間に開放されるかもしれない、というのは、以前どこかのニュースで観たことがありました。
また、最近、小型飛行機のディーラーが上海か北京にオープンした、というテレビのニュースも観たばかりだったのですが、何とフージンでは農薬を空中散布していました。
この広大な国土を、ちまちまと自動車では移動していられません。高速鉄道にも限界があります。
すると、地方の空港をもっと整備して、空を開放してしまえば交通の便も良く、経済もますます刺激される、と踏んだのでしょうか。
実際の法律がどうなっているのか、まだ確認していませんが、仮にこれが事実ならアメリカやヨーロッパのようにプライベートジェットが「飛ぶように」売れる、一大市場が出現することになります。
中国はEUとFTAの協議をしているということですから、双方のプライベートジェットの乗り入れにも規制が掛からない可能性も出てきます。

また、フージンは川一つ隔てるとロシアです。
川岸にロシアとの交易を目的とした港湾開発も進んでいました。
海外との遣り取りとなると、すぐに海の港を思い浮かべる「島国立国」の日本人の私には、非常に新鮮な驚きでした。

次は、中国の南の地方「貴州省の省都/貴陽市」のお話を予定していますが、これを読んでいたっしゃる人で、まだ中国の経済が早晩崩壊すると思っていらっしゃる方がいるのでしょうか。