[892]福島第一原発跡地における核廃棄物最終処分場建設計画における行政区の役割

川原 浩 投稿日:2012/02/23 21:07

福島からの現地報告です。

行政区とは行政区設置要綱により、各自治体の区域ごとに設けられている地縁血縁の団体である。行政区長はこの要綱に基づき、首長から委嘱状を渡され1年の任期で区長を務める。建前では地方自治法による自主運営組織であるが、その実態は江戸時代の5人組で 住民に連帯責任でその責務と任務を押しつけるシステムである。具体的には、草刈り 溝さらい 消防団参加 除染作業参加 冠婚葬祭の参加 納税組合参加 集落排水共同事業への参加などを強制するシステムである。行政区設置要綱では住民の参加を義務付けている。行政区の活動に参加しないと自動的に村八分になる。憲法では集会 結社の自由は保障されている。よって、自治体による住民への行政区参加を義務付けることは違憲である。ところが 「この要綱は条例とは違って、法的拘束力はない。要綱に違憲な内容が書かれていても、拘束力がないので違憲にはならない」(福島県のある弁護士の見解。)
 要は行政区とは都合のいいように官と民を使い分け、住民に相互監視の下 義務と任務を負わせる組織である。地方にはこうした地域のルールを強要するシステムがある上に 今回更に「絆(きづな)応援事業」と県で実施して地域ルールの強要を更に強化している。
(福島県では絆(きづな)応援事業という洗脳事業を行っています。)

大熊町の仮設住宅は、この行政区ごとに入居を義務付け、入居審査の際には行政区長の許可を必要とする。(行政区長の許可を入居条件にしているのは大熊町だけであろう)この行政区が地上げの最終段階でうまく利用されるのではないかと推察します。理屈は用地の地上げ交渉を行政区の単位ごとに行い、対象となる住民全てがその交渉に応じて地上げ金額に同意すれば、幾ばくかのボーナスを行政区へ別途支給する制度である。これは納税組合が完納した際のボーナスと同じ戦略である。
 大熊町では行政区と大熊町復興計画検討委員会 おおくまの絆 これらの組織と事業を巧みに利用して、行政区ごとに地上げ交渉を進めるだろう。絆(きづな)や復興という言葉を全面に出して 半強制的に示談書にサインを迫るであろう。万が一交渉に応じない場合には「あなた一人の身勝手のせいで大熊の復興が遅れる。地域の絆をあなたは壊すのか?」等の文言で脅迫して示談に応じるように強制するであろう。
 地方の行政区の圧力は、暴力団組織レベルの高いものある。近隣が地縁 血縁で固められた地域で、その地域のルールに従わないと生きていけないシステムになっている。学校で子供はいじめられる。PTA等の付き合いも拒絶される。ごみ置き場の利用も拒否される。親戚からも付き合いを拒否される等々。あらゆる嫌がらせを受ける。田舎で自殺率が高いのもこの閉鎖社会と深く関わりがある。(私のいる中島村の前村長も自殺、隣村の前前村長も自殺です。)田舎の現実は近隣親類縁者であっても皆仲がいい訳はなく、先代からのしがらみ 妬み 恨みを引き継いで生きています。こうした現実を無視して、突如「絆(きづな)応援事業」として意味のない連帯と安心感を強要することは、不自然極まりないことである。

地上げの手段にこのシステムを利用しない手はない。(除染につてもこの行政区を巧みに利用すると推察します。)
 「大熊町では既に1世帯5千万から1億円での示談に応じた人がいる」と仮設住宅(難民キャンプ)の中にある売店で働く女性が教えてくれた。
後に残された難民には訴訟を起こす気力も能力もお金もない。残りかすを分け合うだけであろう。万が一だだをこねると難民キャンプにもいられなくなるかも知れない。

除染と行政区
県南地域でも学校や子どもの通学路は、除染が行われた。通学路を除染するのは、その地域の消防団 PTA 行政区 など地元の団体が自主的に行った。知人もこの除染に参加した。本心は参加したくなかったが、参加せざる負えなかった心境を語ってくれた。「こんなことをしても意味はない。けど参加しないと参加した連中から後指をさされて、この地域で暮らせなくなる。おまえの子どもは通学路を通るな等 自分の子供もいじめの対象になるから仕方なく参加したんだ。」
このように行政区はどんな無意味なことでも強要することができる。