[844]貿易収支赤字の原因は?

岸 圭介 投稿日:2012/01/27 10:49

2011年度の貿易収支の赤字の原因は、火力発電用燃料の輸入の増加にあるとする論説が以下のようにあります。本当に、火力発電用燃料の輸入の増加が貿易収支に影響を与えているのかを調べてみました。原発は必要キャンペーンの1つなのでは?と思ったからです。

財務省の資料(http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2011/2011_114.pdf)によると、昨年に比べて、輸出が1.85兆円減少、輸入が7.28兆円増加しています。輸入の増減寄与度が高いのは、1位 原粗油、2位 液化天然ガスです。
原粗油は、輸入量-2.7%、輸入金額+21.3%。金額で2.00兆円増えています。
液化天然ガスは、輸入量+12.2%、輸入額+37.5%。金額で1.30兆円増えています。
確かに、輸入増加7.28兆円のうち、この2品目で3.30兆円ですから、貿易収支に大きな影響を与えていますが、原粗油の輸入量はマイナスだし、液化天然ガスも価格上昇がなければ、+0.42兆円にしかなりません。ということは、輸入増加に一番影響しているのは、原粗油価格と液化天然ガス価格の上昇ということになります。

資源高と円高の影響ですから、原発の稼働停止の影響ではありません。

(以下 引用)

輸入は原粗油、液化天然ガス(LNG)などの増加で同12.0%増の68兆0474億円。2年連続で増加した。原油価格の高止まりや原発の稼働停止で、火力発電所向け液化天然ガスの需要が影響した。(朝日)
東日本大震災や円高などで輸出が落ち込む一方、原子力発電所事故を受け、火力発電に使う液化天然ガス(LNG)の輸入量が大幅増となったことなどが要因だ。(読売)
歴史的な円高に加え東日本大震災などの影響で輸出が落ち込んだ一方、東京電力福島第1原発事故に伴い火力発電向け燃料の輸入が大きく膨らんだ。(毎日)

東日本大震災や円高、海外景気の低迷で輸出が減少する一方、原子力発電所の停止で、火力発電用燃料などの輸入が増加した。(産経)

東日本大震災後の部品不足が輸出の足かせとなったほか、欧州債務危機や円高も輸出を下押しした。一方、輸入は火力発電用の燃料が増加。輸入の高止まりで、貿易赤字が定着する可能性もある。(日経)

一方で、福島第1原発の事故を受けて、火力発電用の燃料の輸入が大幅に増えたことなどから、輸入額は12%増加し、68兆0,474億円となった。(FNN)

東日本大震災の影響で自動車などの輸出が落ち込んだ一方で、火力発電所の燃料となる液化天然ガスなどの輸入が大幅に増えたことから2兆4927億円の赤字となり、31年ぶりの貿易赤字となりました。(NHK)

東日本大震災や円高の影響で輸出が落ち込む一方、東京電力福島第1原発事故後の全国的な原発停止の影響で、火力発電用の燃料輸入が急増した。(時事ドットコム)