[77]厚生労働省元村木厚子氏とマイケル・グリーン氏の記事(1)

山口@福岡 投稿日:2010/09/05 23:42

今朝、厚生労働省元村木厚子氏、マイケル・グリーン氏の記事がありましたので、転載します。

朝日新聞 朝刊
(転載開始)
検察捜査は「魔術のような怖さ」村木・厚労省元局長語る
2010年9月5日3時1分
 郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で起訴され、無罪を主張している厚生労働省元局長の村木厚子被告(54)が10日の大阪地裁での判決公判を前に、朝日新聞の単独取材に応じた。164日間の逮捕・勾留(こうりゅう)中に検事とのやり取りを記したノートなどを手にしながら、「(公判では)やれることをすべてやった。真実は強いと思っています」と今の心境を語った。

 元局長は昨年6月、自称障害者団体が同制度を利用するための偽の証明書を発行するよう部下に指示したとして、虚偽有印公文書作成・同行使容疑で大阪地検特捜部に逮捕された。元局長と弘中惇一郎・主任弁護人から判決前の記事化について承諾を得た上で、2日に埼玉県内の元局長の自宅で取材。元局長は容疑者自身が取り調べ状況などを記す「被疑者ノート」などの記録をもとに振り返った。

 ■大阪地検特捜部の捜査について

 取調室は私、検事、事務官の3人。そこで、検事は特捜部が作った私が知らない事件の「ストーリー」を繰り返しました。途中で「そうかもしれない」と思い、自信を持って否定できなくなる。「魔術」にかけられそうな怖さがありました。

 取り調べが始まって10日目、検事があらかじめ作った供述調書を持ってきました。それには、これまで言ったことがない元上司や部下の悪口が書かれていました。「こんなものにサインできない」と断ると、検事は「私の作文でした」と認めました。

 逮捕から6日後の昨年6月20日の取り調べでは、検事に「容疑を認める気持ちはないか」と説得され、さらに「執行猶予付き(の有罪判決)なら大したことはない」と言われた時は、怒りで涙が出ました。「一般市民には犯罪者にされるかされないか、公務員としてやってきた30年間を失うかどうかの問題だ」と訴えたことも覚えています。
私の指示で偽の証明書を発行した、と捜査段階で説明した当時の係長(上村勉被告、同罪で公判中)らを恨む気持ちはない。逆にそういう調書を作った検事が怖い。公判では、凛の会側から証明書発行の口添えを依頼されたという国会議員が、その日に別の場所にいたことも明らかになりました。私たちは検察を頼りにしているし、必要な組織。捜査のプロとしてきちんとやってほしかった。

 ■164日間の大阪拘置所生活

 朝晩の点呼の時は自分につけられた「13番」と答えました。昨年6月14日の逮捕の翌日、容疑者が裁判官の勾留質問を受けに行くための専用バスに乗る際、初めて手錠と腰縄をつけられました。腰縄をきつく締められた時、「これが犯罪者の扱いなんだ」と感じました。

 拘置所では約150冊の本を読みました。朝と夜に聴けるラジオでは、頻繁に児童虐待事件のニュースを耳にしました。そのたびに(雇用均等・児童家庭局長だった自らの立場から)「何とかしたい」と思いました。

 家族との接見が禁止されている時は弁護士が何度も接見室を訪れ、アクリル板ごしに「しっかり心をもって」「100%信頼しています」などと書かれたり、夫(56)と長女(25)、次女(19)が並んだ写真が張られたりした手紙を読ませてくれました。3人とは100回以上、文通もしました。夫と頻繁に手紙をやり取りしたのは初めてで、気持ちを伝えたい大切な相手だと改めて気づきました。
 否認を貫けたのは、娘2人の存在があったから。自分が頑張れない姿を見せてしまうと、「2人が将来つらい経験をした時にあきらめてしまうかも」と思ったのです。共働きだったので、娘と一緒にいる時間が少なくて、申し訳ないとずっと思っていました。今回はそんな2人に助けられたのです。大学受験を控えていた次女は私と接見するため、夏休み中は大阪の短期マンションを借り、塾に通いました。
■判決前の心境

 やれることは全部やりました。言えることは全部言いました。真実は強いと思っています。静かな、落ち着いた気持ちで判決を待っています。(板橋洋佳、平賀拓哉)
     ◇
 〈郵便不正事件〉 障害者団体向けの郵便割引制度を悪用し、実態のない団体名義で企業広告が格安で大量発送された事件。大阪地検特捜部は昨年2月以降、郵便法違反容疑などで強制捜査に着手。自称障害者団体「凛の会」が同制度の適用を受けるための偽の証明書発行に関与したとして、村木厚子元局長や同会の元会長ら4人を虚偽有印公文書作成・同行使罪で昨年7月に起訴した。
 捜査段階で元局長の指示を認めたとされる元部下らは公判で次々と証言を覆し、地裁は供述調書の大半を証拠採用しないと決定。立証の柱を失った検察側は6月、推論を重ねることで元局長から元部下への指示を説明し、懲役1年6カ月を求刑した。
参照先;http://www.asahi.com/national/update/0904/OSK201009040094.html
(転載終了)

日本経済新聞 朝刊 2010/9/5付

(転載開始)
(民主代表選 私はこう見る)「内向き日本、対米関係漂流」 現実路線で安定政権を 元米大統領補佐官 マイケル・グリーン氏
――民主党代表選の政治への影響をどうみますか。

 「菅直人首相が勝利しても、残念ながら安定した民主党の構造はつくれない。小沢一郎前幹事長が不安定要因になり続けてしまうからだ。小沢氏が敗北して離党すれば、民主党の基盤は弱くなる。逆に要職に起用して挙党体制を築けば、菅氏の支持率が落ちる」
 「小泉純一郎元首相の例にならって小沢氏を抵抗勢力に仕立てる方法もあるが、菅氏には難しいだろう。菅氏勝利の場合には、いずれにせよ弱い政権になる可能性が高い」
 「逆に小沢氏が勝った場合には、国民に不人気のため長期政権は築けない。今回の代表選はどのような結果でも、日本の政治が安定する展開にはならない」

反米発言が傷に
 ――米政府は小沢氏を警戒しているようです。
 「小沢氏の反米的な発言は日米関係にダメージを与えてきた。反米ポピュリズムを繰り返せば、日米関係を少しずつむしばむ傷になっていくだろ う。この先も短期政権が続くならば、長期的な日米間の安全保障協力は進まない。日本は内向きになっている。内向き状態が続けば、すべての日米関係が“永田 町の論理”で漂流するだろう」
 ――小沢氏は米海兵隊がいなくても第7艦隊で十分だとしています。
 「あまり深く問題を考えないで、適当に発言しているという印象が強い。東アジアの安全保障問題を分析したうえでの発言とは思えない。海兵隊 は2日以内に世界中のどの地域にも展開し、補給なしで60日間連続で活動することができる。朝鮮半島での戦争から東南アジアでのテロまで様々な有事に対応 できる。豪州、韓国、東南アジアなどの日本の周辺国は海兵隊の役割に期待している」

同盟発展に影響
 ――代表選が日米関係にも影響すると。
 「日米関係にとっては間違いなく気がかりだ。オバマ大統領の訪日を11月に控えている。私がホワイトハウスにいたころは、首脳訪日となれば 数カ月前から準備を進めていた。日本の政治混乱で、オバマ政権内には積極的に日米同盟を発展させることへのあきらめが出てきていると思う。非常に残念なこ とだ」
 ――日本は政治の混乱を続けている余裕があるのでしょうか。
 「あるわけがない。中国の大国化で、アジア地域のバランスが変わりつつある。北朝鮮の核武装による脅威が目の前にある。日本経済の財政危機 は数年内に現実になるかもしれない。55年体制は崩壊したが、新しい政治構造を生み出すまでに時間がかかる。日本の民主主義を強化するためには、政治再編 のプロセスは避けられない。可能な限り混乱は早く終結してほしい。日米安全保障のために現実的な安定政権を望む」
(聞き手はワシントン=弟子丸幸子)
=随時掲載
(転載終了)