[757]フフホト通信(中国内蒙古自治区より)

石井裕之 投稿日:2011/10/23 02:58

中国は内蒙古の石井です。
ヨーロッパでは、ギリシャの破綻がいよいよ現実味を帯びてまいりました。これが呼び水となって、世界がまたもや金融恐慌へと突入してしまうのか、片時も気の抜けない状況になってきております。
中国でも最近では不動産バブルの崩壊が市民の間で語られるようになってきました。温州や福建の不動産ディベロッパーの倒産が発生してきている、というのです。
私は個人的には、後2年くらいは中国の不動産バブルの崩壊まで猶予があるのではないか、と勝手に思い込み、先日も100平米程度のマンションを買い増ししたところですが、現実にはXデーが早まりそうな気配です。
そこでこの不動産バブルの崩壊が、中国経済全体に与える影響を図ってみようと思います。
去年の1月18日付けのチャイナネットによると、2009年の中国全国の平均不動産販売価格は4600元/平米だそうです。
日本の経済産業省のHPから、2009年の中国の新築不動産販売量を8.5億平米と拾うことが出来ます。
上記二つの条件から、不動産業の2009年実績は約4兆元であると求められます。
2009年の中国のGDP総額が34兆元ですから、不動産部門が占める割合は、実に12%に上ります。
仮に、不動産バブルが弾けて、マンションの単価が1/2や1/3に落ちてしまった場合、大多数の不動産業者が倒産してしまうことは、日本の過去の歴史からも明らかです。
ただ、日本の場合と大きく違う点は、土地は国家の財産である、という点でしょう。これは見方を変えると、中国政府が「1単位の土地」にレバレッジを掛けて100倍にも、1000倍にも付加価値を創造していたようにも取れるのです。
中国では、住宅を購入する場合に、2つ目以降は住宅ローンが使えません。投機目的で購入するには、勢い現金で買うしかないのです。
毎日額に汗しながら懸命に働いているサラリーマンには、決して2つ目、3つ目のマンションなど買えっこないのです。
では、誰がマンション転がしをやっているかというと、地方政府の役人やそれに群がる輩どもです。そして、商売で成功した人たちが、他に投資先がないから、という理由で不動産購入に走っています。
仮に経済の活性化の条件を、お金の循環という観点から観てみると、今の中国のように、高いところに溜まり掛けているカネを、不動産バブルの崩壊という手段を用いることにより、一気に再分配することが出来るというものです。
しかも、日本のときもそうでしたが、不動産バブルが崩壊したからと言って、実は一般庶民の生活には何の不具合も生じないでしょう。逆に、マンション価格が下がることにより、今まで購入出来なかった層の人たちも、マンション購入予備軍に入れることが出来るようになるのです。
1990年に躓いた日本経済と違い、中国は非常に旺盛な内需を持っています。不動産バブルが弾けて、中国全体のGDPの値は一時的に伸び悩みを見せることもあるかもしれませんが、上記のような理由により、中国経済全体にはほとんど悪影響を及ぼさないと思われるのです。