[707]放射線のことを考え続けました

大川晴美 投稿日:2011/09/10 03:02

会員の大川です。高校時代から中高年の現在まで、ずっと文科系で科学は苦手でした。
2011年5月に福島で初めて放射線量を測定して以来、雨の日も晴れの日も、寝ても覚めても放射線のことを考え続けました。5月から8月まで4回、福島県を訪問しました。一般向けの本を手当たり次第に読み、毎週末ネットで調べました。専門家の講演を3回、聞きました。何度も夢に放射線が現れました。
・・・そして、ようやく次のことがわかりました。

1.年間被ばく線量が100ミリシーベルトの場合、致死的ながんのリスクが0.5%増加する。これはリスクを「最大限厳しく」見積もった場合であり、「大人でも子供でも」これより悪い影響は「今までに全く見つかっていない」。
2.年間100ミリシーベルトより低い放射線量では、「大人でも子供でも」、がんの発症リスクもそのほかの疾病のリスクも「今までに全く見つかっていない」。

それではなぜ日本では、平時において年間1ミリシーベルトなどという、100分の1もの低い数値が規制値となっているのでしょうか。その理由は、どんなに微量でも放射線は危険だ、という「直線しきい値なし(LNT)仮説(モデル)」にあるようです。

けれどもこの仮説は、未だに科学的に検証されていない仮説にすぎません。だから、「なぜ年間1ミリシーベルトなのか」という問いに対して、専門家の多くは、「“ほんのわずか”に危険性が増している“かもしれない”ことを“想定”して安全側に立つ」、などという、不可解な表現をするしかないのです。つまり、年間1ミリシーベルトにも20ミリシーベルトにも科学的な根拠はありません。

現時点で最も説得力のある基準は、年間100ミリシーベルトだと思います。しかし、そもそも空間線量で人々の生活を規制すること自体に、大きな疑問を感じます。避難するかしないかは、リスクへの対応を含め、原則として当事者が自分で決めるべきです。その代わり、放射線の放出源そのものを直接的に規制して、罰則を強化すべきではないでしょうか。

国際放射線防護委員会(ICRP)は2007年の勧告で、緊急時における目安として、1~20ミリシーベルト、20~100ミリシーベルト、100ミリシーベルト以上(急性または年間)、という3つの枠で示し、それぞれの枠内で適切な線量を選定することを勧告しました。これを受けて、日本政府は20~100ミリシーベルトの枠内から、最も低い20ミリシーベルトを選択しました。けれども、この時もし100ミリシーベルトを選択していたら、福島県でこれほど多くの人が何か月も避難し続ける必要はなかったのです。

参考資料: 山下俊一監修 「正しく怖がる放射能の話」 長崎文献社(2011) p.117-119 日本学術会議会長談話

大川晴美