[644]ロン・ポールの最新の発言の動画と、その他気になる記事を転載します。
SNSI研究員の根尾知史です。
以下、アメリカを代表するリバータリアン下院議員の
ロン・ポール(1935- )が、先週、7月29日(金)に
アメリカ連邦政府の借り入れ上限枠を増額するかしないか、
という審議が下院(ハウス・オヴ・レプリゼンタティヴス)で
行われていたときと、その後「ベイナー法案」が可決された
直後に発言している動画があるので、以下に転載します。
ロン・ポールがずっと言い続けていることは、
「もし問題が、国家が抱えた巨額の借金(負債、デット)だ
というのなら、借り入れ(負債・デット)の上限額を上げる
ことが問題の解決になるはずがないだろう」
という、シンプルな主張です。
それに対して、どのリポーターも「それでは、あなたの解決策は
デフォルト(債務不履行)ですか?」とお決まりのように
たずねています。
それに対する、ロン・ポールの返答は決まっていて、
「そうではなくて、米政府の支出(出費)をやめて、財政を
シャット・ダウンするしかないのだ」と答えています。
「デフォルトはいずれおこるのだから、そのときにはアメリカ
政府は、米ドル紙幣をさらに増刷したバッド・マネー(悪貨)で、
返済に充てるという方法しかとれないことは分かっている。
デフォルトといいながら、さらにドル紙幣を増刷して、さらに
通貨の価値をさげて、米ドルの購買力をさらに低下させるのだ。
その結果引き起こされるハイパーインフレーションを防ぐために、
今のうちに倒産(バンクラプト)せるべきだ。
これ以上、借金(債務、デット)を増やすやり方だけは
避けなければならない」
ということを、頑強に言い続けています。
以下、7月29日(金)の米下院でベイナー下院議長の法案が
可決しつつある時間帯の、ロン・ポールの発言の動画です。
Transcript(動画の会話の一部分)も載っていたので、
急ぎの日本語訳を入れて転載します。
(転載貼り付け始め)
●”Ron Paul: It’s All a Fraud – Boehner’s “Cuts” Are Fictitious”
「ロン・ポール:すべてペテンだ - ベイナーの「削減」は作り話である」
ロン・ポール・ドットコム(http://www.ronpaul.com/)から
2011年7月29日
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=kJ7dwmv8rVE
Transcript(動画の会話の一部分)
Larry Kudlow: (前 略) You are opposed to any debt ceiling increases. With all respect, isn’t that irresponsible? How can we operate without more borrowing?
ラリー・カドロウ: (前 略)あなたは、どのような債務上限額の
増加にも反対していますね。ご意見はごもっともですが、それでは
無責任ではありませんか。
さらに借り入れをする以外に、どうやって米財政を運営できるので
しょうか。
Ron Paul: Of course, that’s why I want to stop the borrowing. I think it’s irresponsible to keep borrowing. If you have a debt problem, how do you solve the debt problem by raising the debt?
ロン・ポール: もちろんできますよ。だから私はさらなる借り入れは
やめるべきだと言っているのです。借金を続けることの方が無責任だと
思います。もしあなたが借金の問題を抱えていたとして、さらに、
借金をすることでどうやって問題が解決するでしょうか。
See, that doesn’t make any sense to me, and it’s a spending problem and the Congress and the people don’t want us to really quit spending.
考えてみてくださいよ、私にはまったく理解できません。これは
(債務ではなく)支出(出費)の問題なのです。それなのに、
議会や議員たちは、私たちアメリカ政府がお金を使うのをやめる
ことを望んでいないのです。
Anytime you would have a token little cut, they yell and scream. So this crisis is going to evolve. I think everybody’s talking about default, but there’s not going to be any default in the sense that we’re not going to send the checks out and pay the interest; that’s not going to happen.
あなたたちはいつも「少しの削減」という言い方をして、
わめいたり叫んだりしています。それでは、この債務危機は
さらにひどくなりますよ。
誰もがデフォルト(債務不履行)の話ばかりしていますが、
私は、デフォルトなど起きないと思います。償還の支払いが
できないとか、利払いができない、という意味でのデフォルト
(債務不履行)は起きませんよ。
Look at the bonds today, they did quite well, interest rates are going down, nobody’s worrying about it. But the default comes when we just print the money and pass it out, and the default comes because people are going to lose their purchasing power in the dollar, and that’s where the real problems come out.
今の米国債を見てください。よくやっているじゃないですか。
金利は下がっているし、だれも心配していません。ところが、
もし私たちがさらに米ドル紙幣を印刷して市場に垂れ流し続けるなら、
デフォルトがやってくるでしょう。
デフォルト(債務不履行)が起きるのは、これから人々が米ドルで
物を買う力(購買力)を失うからです。そから、本当の問題が
起こるのです。
Larry Kudlow: Well, I just want to circle back, though, because you got a 100 million checks being mailed, and yes, you could cover the interest on the debt, I fully agree with you, and the government bond market is trading very nicely off of the recessionary forecast, what, 2.75%. But what about the 100 million checks, that’s the position you’d be put in; Social Security, health care, veterans pensions, military troops fighting, the FBI. If you don’t raise the debt ceiling at all, you would reek havoc on the budget, havoc on the states, havoc on the cities. I just don’t see how you can take that position, Mr. Paul.
ラリー・カドロウ:(前 略)しかし、社会保障や、国民健康保険、
退役軍人の年金や、現在、戦闘をしている米軍隊やFBIなどへの
支払い伝票はどうするんですか。
もしあなたが、借り入れ上限枠を上げなければ、米政府の予算に
大きな混乱を引き起こしますよ。州予算や都市の予算にも大混乱が
起きるでしょう。
あなたがそれをやれるというのが、どうしても理解できません。
Ron Paul: Larry, you know something about runaway inflation, severe inflation. You remember the 1970s, I think you were in Washington at that time. Remember the dollar was under attack, we went hat in hand to the IMF and got 30 billion dollars 30 billion dollars, which is equivalent to 3000 billion dollars, to bail out our dollar. So we were on the rocks then and that was a bailout again and in a way it was a default during that year when we reneged on our promises to pay with the Bretton Woods Agreement.
ロン・ポール: ラリー、急激なインフレーション、激しいインフレに
ついて知っているでしょう。1970年代を覚えていますね。当時
あなたはワシントンにいた。
米ドルが攻撃にさらされていたの覚えていますね。私たちは手を取り
合ってIMFを訪れて、米ドルを救済するために300億ドルの資金を
得ました。今の3兆ドルぐらいです。
私たち(アメリカの財政)は破産しかかって、救済資金をもう一度
もらいました。
あのとき、私たちは「ブレトン・ウッズ協定」の(米ドルを金地金とを、
1トロイオンス=35ドルのレートで交換するという)約束を破ったので、
それはある意味、デフォルト(債務不履行)だったのです。
So yes, I think it’s much worse to do what we’re doing, continue to spend, and usher in an age when all the checks bounce. And that is going to be much worse. You have to have priorities, and if Congress doesn’t give the President priorities on how to pay the bills, the President, I believe, has the prerogative of picking and choosing and spending the money as it comes in and face up to the fact that we are bankrupt.
そう、だからいま我々がやっているように、(さらに借金をすることで)
支出を続けて、すべての支払いが不渡りになるようになる瞬間まで先導
しようとするなんて、もっと悪いですよ。それではさらに悪化する
ばかりです。
優先順位を決めなければいけません。もし議会が、大統領に対して
支払いの優先順位を与えないのであれば、大統領が自分で選び出して、
収入が入った時にどのように支払いをするのか、を決める権限(大権、
prerogative)があるはずです。
To deny that we’re not bankrupt is a big problem and will usher in this age of just endless spending and endless debt. You cannot solve the problem of debt by accumulating more debt. You would never tell an individual that’s way over their head with credit card debt, “Oh, what you need is more debt, and you’re going to be happy”. A country can’t do it either.
私たち米国がまだ破産していない、と否定することが大きな問題であり、
そのために「終わりのない支出と果てしない債務」の時代にたどり着く
でしょう。
さらに借金を重ねることで、借金の問題を解決することはできません。
あなたも、クレジットカードの債務に苦しむ人に、「ああ、もっと
借金をすればいいんだよ。それで(借金を返せば)うまくいくよ」とは
言わないでしょう。国家にだって、同じことはできないのです。
(転載貼り付け終わり)
以下は、ロン・ポールとランド・ポールが親子でインタヴューに
答えています。親子の元気な掛け合いが印象的です。
(転載貼り付け始め)
●「Ron Paul and Rand Paul on the Debt Negotiations
By RonPaul.com on July 29, 2011
http://www.youtube.com/watch?v=1YpMVoYBJzs&feature=player_embedded
(転載貼り付け終わり)
これら以外の発言も、ロン・ポールの公式サイト
「ロン・ポール・ドットコム」http://www.ronpaul.com/ に
掲載されています。
さらに、以下の記事は、この下院の審議の直前に、速報のように
書かれた記事です。
アメリカの金融機関のすべてのプライマリーディーラー
(政府証券公認ディーラー)20社すべてを呼びつけて、
万が一、議会の審議が否決された場合のシナリオが
話し合われていたのではないかと推測します。
米国債をデフォルトさせないために、「米国債を投げ売り
するな」という指令を出すのか、あるいは、どのような順番で、
不払いや借り換えなどの処理を行うか、などの段取りについて、
打ち合わせ(共謀)が行われているのだと思います。
オバマ大統領や米議会からは見えないところで、このような
段取りの打ち合わせが、密かにすすんでいるのでしょう。
(転載貼り付け始め)
●「米財務省、債券ディーラーと債務上限問題などで会合開催へ-関係者」
ブルームバーグ 2011年7月29日
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=ayJHxoDPhjrM
米財務省は東部時間29日正午に債券ディーラーと会合を持つ予定だ。
8月に実施する四半期定例入札や債務上限問題について話し合う。
会合に詳しい複数の関係者が明らかにした。
会合についてまだ発表されていないとして匿名を条件に語った
同関係者によると、財務省は定期的に予定されている債券ディーラー
との個別会合を中止し、グループ会合の形を取る。会合にはプライ
マリーディーラー(政府証券公認ディーラー)20社すべてが招待されている。
(転載貼り付け終わり)
(転載貼り付け始め)
●「米財務省がプライマリーディーラーと会合、四半期入札発表控え市場の状況協議へ」
ロイター 2011年 07月 30日
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT895914020110729
[ワシントン 29日 ロイター] 米財務省は29日、
来週の四半期定例入札(クオータリー・リファンディング)
予定の発表を控え、プライマリーディーラー(米政府証券公認
ディーラー)と同日会合を開くと明らかにした。定例会合の
一環としている。
財務省当局者は「この定例会合は通常、われわれにとって
米国債購入者から最新の情報を得る機会となるが、議会がまだ
債務上限の引き上げで合意できていない状況にあるなか、
今回は特に有効な会合になると見込んでいる」と述べた。
財務省は来週、第3・四半期の借り入れ規模や国債発行計画に
ついて発表する予定。だがデフォルト(債務不履行)期限と
される来週8月2日を直前に控えた現在でも、債務上限引き上げ
交渉が決着しておらず、いかに財務省が新発債を発行できるのか
疑問が高まっている。
会合は、ニューヨーク連銀で米東部夏時間正午(日本時間30日
午前1時)に開催される。今回は従来方式と違い、プライマリー
ディーラー20社すべてが同じ会合に出席する形で行われるという。
(転載貼り付け終わり)
さらに、アメリカの中央銀行であるFRB(米連邦準備委員会)も、
米国内の銀行幹部に対して同じように、7月29日の審議の直前
のタイミングで、以下のように緊急対応のシナリオができあがって
いる、と述べていました。
アメリカの金融統制体制は、このようにして着々と構築されつつ
あるのでしょう。
(転載貼り付け始め)
●「FRB:銀行への指針を準備、8月2日の債務交渉決裂に備え-当局者」
ブルームバーグ 2011年7月29日
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=aMuVm_tdKQ.M
米連邦準備制度理事会(FRB)は連邦債務の上限が引き上げ
られず、財務省がすべての支払いに応じられなくなった場合に備え、
銀行に示す指針を準備している。政府当局者が明らかにした。
議会の債務交渉が継続中であるため匿名を条件に話した同当局者に
よると、指針には支払い方法や融資担保、監督・規制などに関する
内容が含まれる。
(転載貼り付け終わり)
最後に、以下の記事を転載します。
まず8月中頃までに支払期限を迎える社会保障給付や
軍人年金・給与など、もっとも不払い(デフォルト)に
なる可能性の高い米国債が、総額約1010億ドル(約8兆円)
あると書かれています。
さらに、8月中に償還を迎えるので「借り換え」をして
ごまかさなければならない米国債の総額が、5000億ドル
(約40兆円)とあります。
そして、軍人への給料・年金や社会保障よりも、米国債の
保有者(投資家)への償還や利払いを優先するだろうと、
米財務省の人間が、ぽろっと発言をしたことが分かります。
次の「Xデイ」は、870億ドル(6.7兆円)の米国債が
償還日をむかえる8月4日か、米国債保有者への290億ドル
(2.3兆円)の利払いが予定されている8月15日か。
(転載貼り付け始め)
●「米債務上限が引き上げられない場合、債券保有者への支払いを優先」
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 2011年 7月 29日
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/node_281750
米国議会が8月2日までに債務上限を引き上げられなかった場合、
財務省は他の債権者に優先して米国債保有者に対して支払いを
行う可能性が高いことを、関係筋が明らかにした。
米政府債務のデフォルト(債務不履行)を防ぐため、財務省は
8月15日に予定されている米国債保有者への290億ドルの利払いを
優先させる計画だ。それ以外にも、納入業者や社会保障給付の
受給者、軍人年金の受給者など、8月に支払い期限を迎える
約1010億ドルの債権保有者がいる。
オバマ政権高官は、債券関連の支払いができずデフォルト
が起こると、それが金融市場を揺るがして、別の金融危機や
リセッションを引き起こす恐れがあるとしている。
オバマ大統領は、一部の支払いを他の支払いより優先させる
ことは非常に難しいとし、議員に対して早急に結論を出す
よう求めている。
利払いに加えて、財務省は8月に償還を迎える5000億ドル
近くの債券の借り換えも行わなければならない。そのうち
870億ドルは8月4日が償還日だ。政府がデフォルトしない
限り投資家は債券の購入を続けると思われるが、リスクが
高まることからより多くの利払いを求めることも考えられる。
政府は8月3日に200億ドルを超える社会保障給付の支払い
を控えており、その後も軍人給与の支払いなど、多額の
支払いを予定している。
(転載貼り付け終わり)
根尾知史拝